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医薬品販売の規制緩和の危険性に関する質問主意書

参議院 第156回 第36号検討してまいりたい ×1

提出者
参議院
提出日
2003年6月16日
内閣転送 2003年6月18日
答弁書受領日
2003年7月25日
提出から39日
答弁の項目数
6
質問 4,603字/答弁 1,949字

質問本文

本件については去る二〇〇一年一〇月二二日に行政監視委員会で質問したところ、厚生労働省より、「医薬品は薬局の開設者や薬事法に基づく販売業の許可を得た者でなければ販売等をできない。一般小売店で販売することはできない。医薬品は国民の健康や生命に直接かかわるものであり、また過量使用とか副作用のおそれがある。専門的知識を有する薬剤師等の管理のもとで使用されるべきものであり、一般小売店で医薬品を販売することは認められないと従来より主張している。今後とも国民の安全性を第一に、医薬品が適切に国民に提供されるよう、安易に取り扱われることがなきよう、業務に取り組んでいく」旨の答弁を得ているところである。

しかし政府の総合規制改革会議は今年になって再び「医薬品の一般小売店における販売」を、小泉首相と経済財政諮問会議に迫っている。

もしこれが実施されると、後述のように国民生活の安全に大きな脅威となるので、以下のとおり質問する。

一、薬事専門家不在の規制緩和論議について

厚生労働省は前記答弁にもあるとおり、医薬品は、過量使用・副作用のおそれがあるため、薬剤師が常駐して対面で服薬指導を行える薬店などでしか販売してはならないとしてきた。

ところが総合規制改革会議のアクションプラン実行ワーキンググループは、「一般の薬店、ドラッグストア等で対面指導されている実態は乏しい。消費者ニーズに対応するためにも危険性の低い医薬品については販売可能とすべきだ」と、規制緩和の方向へまとめようとしている。

しかしここに至る同グループでの論議の経過を聞くと、専門外の委員ばかりの間で多くの誤解や早飲み込みがあって「自由化」が急がれていると思われる。例えば宮内義彦同グループ主査(オリックス(株)代表取締役会長)は、「事故を防ぐよりも医薬品をよく利用してもらうことの方が重要なのかも分からないという感じで聞いていた。」旨述べている。

同じく鈴木良男副主査((株)旭リサーチセンター代表取締役社長)は、「医薬品の中で、作用・効果の非常に大きなものは特殊な商品だろう。そうした商品と例えば、うがい薬あるいは非常に副作用の軽微なかぜ薬、目薬のたぐいといったこの二つを区別して考えなくてはいけない。医薬品といったら、もう一つの商品だ。これらは生命、身体にかかわるから別だというとらえ方は、現実的ではないと思う。薬を薬として、売らせるべきだと思う。したがって、いかに軽微なものでも、多少の副作用はあるかもしれないと、国民に伝えた上で、売るべきだと私は思う。」旨発言している。

これらの発言は、医薬品の一面の危険性を認識せず、単なる商品に分類し、「消費者の利便性」を盾に、売上増のため一般小売店での販売を可能にしようとしているのにすぎない。

この方向性を出した総合規制改革会議の一五人の委員のうち、一〇人が産業界代表、五人が学識者であり、薬事の専門家が一人もいない。委員の構成を改善すべきではないか。

二、市販薬による薬害の実態について

現に市販の医薬品について、今年五月三一日の新聞各紙は、一九九八年以降一八のかぜ薬で二六人の間質性肺炎の発症が判明したとし、市販の軽微なかぜ薬であるパブロンゴールド錠、エスタックイブ、ストナプラス2、新ルルエース、コンタック総合感冒薬、新ジキニン顆粒、ベンザブロックなど四二のかぜ薬の製造元一五社に対し、厚生労働省が、「間質性肺炎の副作用が起きるおそれあり」として、使用上の注意を改訂するとともに、薬局等に速やかに情報提供し、消費者に注意を喚起するよう呼び掛けたことを報じている。

最近では、鼻炎やかぜ薬の成分PPA(フェニルプロパノールアミン)の副作用、かぜ薬、解熱鎮痛剤とスティーブンス・ジョンソン症候群、ライエル症候群の関係、さらに解熱鎮痛剤とインフルエンザ脳症の関係、咳止めシロップ、咳止め薬の多用による覚醒事件、過去にはアンプルかぜ薬の多用による死亡も相次いでおり、これらはすべて市販の軽微なかぜ薬で起きている。

目薬についても、総合規制改革会議のメンバーは、副作用が軽微だから売るべきだと主張しているが、充血を取る成分ナファゾリンが多用され、血管の膨張を招き、まぶたが開かなくなる事件もあった。

うがい、洗眼に使用されたホウ酸は、一九六〇年代に子供のホウ酸中毒を起こし、現在は眼科での洗浄のみに使われている。同じくうがいに使われるイソジンの頻回使用は、ヨウ素アレルギー、甲状腺障害、耳下腺炎の副作用を起こすことが判明している。

市販の乗り物酔い止め、鎮咳去痰薬、禁煙補助剤では、テオフィリン、アミノフィリンの血中濃度上昇に伴い、心室性細動、心室性頻脈、心停止などの循環器症状、興奮、けいれん、昏睡などの中枢神経症状、嘔吐、吐き気、心窩部痛などの消化器症状、その他電解質異常、横紋筋融解症、呼吸促進等中毒症状が発現しやすくなり、急に重篤な症状が発現することがある。

正露丸等の胃腸薬についても肝機能障害の報告がある。胃腸薬のロートエキス剤は緑内障等重篤な症状が悪化する。

店頭で山積みのパップ剤成分のインドメタシンは使用上の注意を守らないと副作用が起こりやすく、一一歳未満は使用してはならないことになっている。

このように、たとえ軽微なかぜ薬、目薬のたぐいでも重篤な副作用のあることは前述のとおりである。医薬品を一般商品と考え、売れることを優先する産業界主導の不適切な規制緩和は国民の健康に重大な薬害被害を与えることは目に見えている。

国は規制緩和の前に、このような不適切な医薬品使用の危険な実態についてもっと広報し、薬剤師その他による適切な販売管理を徹底すべきではないか。

三、立入検査結果について

総合規制改革会議の八代委員((社)日本経済研究センター理事長)は、「厚生労働省の検査によれば薬局に薬剤師がいない場合がある。これは当たり前であって実効性のない規制に基づく指導を強化しているわけだが、消費者の利便性を考えているのかお聞きしたい。」旨述べて、危険な違反実態をむしろ是認している。

しかしながら薬事法に基づく医薬品の販売等に関する諸規制は、医薬品の品質、有効性及び安全性を確保し、国民の生命、健康を守るために必要不可欠な社会規制であり、経済的規制ではない。

「ドラッグストア等一般販売業に薬剤師が不在で薬を売られているから、規制緩和して、医薬品をどこでも売れるようにしよう」という理論は、「法律を守らないものが多いから守らない人に合わせよう」という法治国家では通用しない理論である。

一九九八年、首都圏でチェーン展開のドラッグストア等一般販売業を立入検査した折、薬局でさえ九・一%、一般販売業では実に三一・四%で薬剤師が不在であった。一九九九年の全国一斉監視では若干減って、薬局の三・四%、一般販売業の二二・八%で薬剤師が不在であった。二〇〇〇年は、全国では、薬局二・六%、一般販売業一九・一%と承知しているが、二〇〇一年、二〇〇二年の立入検査の実態はどうだったか。

四、行政監視について

二〇〇一年一〇月二二日参議院行政監視委員会で、片山総務大臣も「薬というのはこれは大変特殊な製品でございますので、対面の指導その他、今も薬剤師さんを各薬局に置いてちゃんと管理させろと、こういうお話がございましたが、私もかなり同感の部分がございますので、今後の行政監視・評価等につきましては、御指摘の点を踏まえて対応してまいりたい」と答えている。

末端の薬事監視員は、「総合規制改革会議のやり方、言い分を聞いていると監視が非常にやりにくい」と言っている。総務省としても、対面指導販売が行われているかどうか、国民・消費者の立場に立った行政監視・評価を続けているのか。

五、わが国独特の販売・指導システムの活用について

日本は第三次薬物乱用期にあり、なかなか終息しないものの、先進国の中の薬物乱用比較は、アメリカ約四〇%、ヨーロッパ約二〇%に比べ日本が約一%で、先進国の中、唯一成功を収めている。その理由の一つに、江戸元禄のころより三百年来、全国津々浦々ヒューマンな「先用後利」の福祉的精神で医薬品を供給した医薬品配置販売(これは世界大衆薬会議で世界に冠たるシステムを絶賛された)、二百年来の薬種商・特例販売業、明治より百年来の薬剤師制度等が、きめ細かな医薬品供給システムを構築し、安易に快楽を求める風習を定着させなかったことや、薬事法による薬事行政及び薬物取締法による強力な取締りが、功を奏したことが挙げられる。

加えて現在、全国二万人の薬物乱用防止推進委員制度による官民一体となった国民一人一人への啓発活動が挙げられる。薬物乱用防止推進メンバー八団体のうち、薬剤師会、薬種商協会及び医薬品配置協会は、重要な構成員として働いてきた。地域においても対面指導をし、ヒューマンエラーを無くすよう生涯学習制度を取り入れ、研修制度を実施し、薬害を出さないよう努力している。

他方、若者の間では、アメリカ等のドラッグ社会の影響から、薬物に対する認識不足は拡大している。医薬品の一般店での販売を可能にし、放置すれば、薬物乱用はたちまちヨーロッパ、アメリカ並みに近づくであろう。折しも六月二六日は「国際麻薬乱用撲滅デー」で、テーマは「薬物乱用とエイズの撲滅」であり、小泉首相は、薬物乱用対策推進本部長でもある。

わが国における医薬品事故の予防と、薬物乱用の歯止めには、このようにきめ細かな医薬品流通網が国民の健康と安全を守ってきた実績を評価し、活用すべきであると考えるが、いかがか。

六、医薬部外品指定について

医薬品の販売許可制度は、人の命と健康を守るための大切な規制であり、一般の経済活動を制限するものではない。医薬品は必ず副作用が存在するので、専門知識を有する薬剤師等の関与の下で提供されるべきであり、国民の生命、健康の保護を第一に、利便性は第二と考えるべきである。

そこで、医薬品をよく審査し、作用の緩和なものは医薬部外品に指定してコンビニ等の一般小売店でも売れるようにするという、一九九八年三月一二日の中央薬事審議会の判断は、専門家として正しいと思うがどうか。

また、専門家により構成される新指定医薬部外品検討会を活用し、作用の緩和なものについては、医薬部外品に移行することにより、一般小売店での販売に対応すべきと考えるがいかがか。

七、危険かつ違反である販売方法の「緩和」について

現在まで、チェーン展開する大型店による薬剤師不在の医薬品販売や、都市型事業所中心の不特定多数販売を行う配置販売は、違反であるにもかかわらず売上げ至上主義で一世を風靡してきた。それを見た産業界等のメンバーが規制改革を旗印に参入しようとしているのが、今回の規制緩和論の実態である。これは消費者にとって危険であると同時に、まじめな薬業人にとっては、廃業・倒産し(自殺者もでている)、一般大企業等の軍門に降るほかない生業の危機である。

コンビニなど一部大手流通業者による、よく売れる薬のみを置き、知識や資格の無いアルバイトなどに売らせる、利益追求のみで危険な、利用者不在の規制緩和は、許されるべきではないと考えるがいかがか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

総合規制改革会議の委員については、規制改革全般について優れた識見を有する者のうちから、学識経験、産業分野、性別等を考慮し、偏りなく、適切に選任しているところである。また、同会議は、調査審議の過程において、課題の内容に応じて様々な専門的立場の者から意見を聴くとともに、必要があるときは専門委員が任命され、様々な角度から幅広い検討を行っているところであり、同会議の委員の構成に問題はないものと考えている。

二について

医薬品は、疾病の治療等の効能を有する一方で、副作用による健康被害を発生させるおそれもある。

このため、一般用医薬品を含めた医薬品の安全性に関する情報については、厚生労働省において、医薬品によるものと疑われる副作用症例、当該医薬品に係る安全対策の概要等を掲載した「医薬品・医療用具等安全性情報」を毎月発行するとともに、その内容を同省のホームページに掲載する等、医薬品のより安全な使用のための情報提供を行っているところである。

また、医薬品は、専門的知識を有する薬剤師等による情報提供等を伴って販売されるべきものであるため、薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)は、原則として薬剤師等が配置された薬局等に限って医薬品の販売を許可するとともに、消費者に対する情報提供を行う努力義務を課している。厚生労働省においては、毎年度、都道府県の協力を得て、薬剤師等の配置、情報提供の実施等に関する医薬品等一斉監視指導を行う等、薬局等に対する監視指導に努めているところである。

三について

医薬品等一斉監視指導における立入検査の結果によれば、平成十三年度には、薬局の二・六パーセント、一般販売業の二十二・六パーセントで立入検査時に薬剤師が不在であり、また、平成十四年度には、薬局の二・五パーセント、一般販売業の二十三・一パーセントで立入検査時に薬剤師が不在であった。

四について

総務省においては、平成十三年六月、厚生労働省に対し「医薬品に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」を行ったところであり、これに対する改善措置状況の調査を行ってきている。

お尋ねの「対面指導販売」に関しては、薬局及び一般販売業の店舗における薬剤師の配置、薬剤師による情報提供等の状況について、毎年度、厚生労働省が都道府県の協力を得て医薬品等一斉監視指導等を行い、実態を把握し、指導を行っているところである。

総務省においては、今後とも、国会での御議論、厚生労働省における取組等を踏まえつつ、行政評価・監視等においていかなる対応が可能か検討してまいりたい。

五について

医薬品の適正使用を図るため、薬事法は、原則として薬剤師等が配置された薬局等に限って医薬品の販売を許可するとともに、消費者に対する情報提供を行う努力義務を課している。

また、薬物乱用の防止については、覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)等に基づき、医療用麻薬等の流通を厳しく規制するほか、これらの規制の対象外であって乱用のおそれのある医薬品についても、不適正使用を防止するため、薬局に対する行政指導を行うとともに、医薬品販売業者等の関係団体による自主規制が行われているところである。

このように、医薬品販売業者等の協力も得て、医薬品の適正な使用の推進に努めており、これが、医薬品による健康被害の発生及び薬物乱用を防止するために一定の役割を果たしてきていると考えているところであり、今後とも、このような取組を推進してまいりたい。

六及び七について

平成九年三月二十八日に閣議決定された規制緩和推進計画においては、「医薬品のうち人体に対する作用が比較的緩和で、販売業者による情報提供の努力義務を課すまでもないものについて、一般小売店においても販売できるよう、医薬品のカテゴリーを見直す」とされ、平成十年三月の中央薬事審議会医薬品販売規制特別部会の報告書において、一部の医薬品について「現行「医薬部外品」のカテゴリーに編入させることにより、販売の自由化を行うことが適当である」とされたことを受けて、厚生省(当時)は、ビタミン含有保健剤等の十五製品群を医薬品から医薬部外品へ移行させたところである。

医薬品の一般小売店における販売については、本年六月二十七日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」において、「利用者の利便と安全の確保について平成十五年中に十分な検討を行い、安全上特に問題がないとの結論に至った医薬品すべてについて、薬局・薬店に限らず販売できるようにする」とされたところであり、今後、医学、薬学等の専門家の意見を聴きつつ、適切に対応してまいりたい。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

検討してまいりたい ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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