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保険者がレセプトや電子カルテ等の医療情報にアクセスして医療の質や費用対効果を分析できる環境整備の重要性等に関する質問主意書
参議院 第217回 第103号お答えすることは困難 ×4趣旨が明らかではない ×4
質問本文
我が国の医療保険制度は、国民皆保険の理念の下、必要な医療を公平に提供する仕組みであるが、制度の持続可能性を確保し、医療の質を高める観点から、保険者の機能を強化する必要があると思料される。保険者機能とは、本来、被保険者の資格管理や診療報酬支払明細書(レセプト)のチェックなど、保険者が幅広い業務について主体性を発揮することを指す。「医療制度改革と保険者機能」(山崎泰彦・尾形裕也編著、東洋経済新報社、二〇〇三年)の第一章「保険者機能と医療制度改革」において、山崎氏は、保険者が被保険者の利害を代弁しつつ、医療のアクセス改善や質・効率性の調整を通じて、医療提供体制の適正化などに影響を及ぼし得る立場にあるとした上で、保険者機能を「医療制度における契約主体の一人としての責任と権限の範囲内で活動できる能力」、保険者機能の発揮を「保険者が自立し、医療制度における他のプレーヤー(サービスの受け手・プロバイダー)と直接かつ対等に十分な対話ができること」と定義しており、我が国の医療保険制度においても、保険者機能の強化は極めて重要である。
保険者機能の強化のためには、保険者がレセプトや電子カルテ等の医療情報にアクセスし、医療の質や費用対効果を分析できる環境を整えること、保険者が過剰・不適切な医療に対して支払を拒否・制限できる権限を持つこと、保険者が被保険者に対する受診行動の助言・誘導ができる制度を整備すること、保険者の取組の成果に基づいた財政的インセンティブを与える制度を設計すること等が必要であると考える。
また、診療報酬制度が公定価格である現状において、保険者が柔軟に報酬を調整できる仕組みや、質の低い医療機関に対するペナルティの導入についても、制度上の検討が求められる。
これらを踏まえ、以下質問する。
一 保険者による医療情報へのアクセスについて
1 保険者が、被保険者のレセプトデータ及び電子カルテデータにアクセスすることは現行法令上可能か、その理由と併せて示されたい。
2 前記1について、アクセスが不可能又は制限されている場合、①当該規制の法令上の根拠、②当該規制の趣旨目的及び③当該規制の趣旨目的と規制内容との因果関係を示されたい。
3 保険者が、匿名化や本人同意を前提として、医療機関やシステム事業者から個別の医療情報を収集・分析することは現行法令上可能か、その理由と併せて示されたい。また、可能である場合、何らかの制約があればその詳細も理由と併せて示されたい。
二 医療の質と支払適正化に関する保険者の権限について
1 保険者が、明らかに過剰・不適切と認めた医療行為について、保険者の判断で当該診療報酬の支払を拒否又は減額することは現行法令上可能か示されたい。
2 前記二の1について、不可能である場合、その制度的・法的障壁は何か全て示されたい。また、当該障壁の趣旨目的を示されたい。
3 前記二の1について、不可能である場合、これを改める考えはあるか、理由と併せて示されたい。
4 診療報酬は公定価格で設定されているが、保険者が独自に診療報酬の点数の増減又は一点当たりの金額を増額又は減額などの調整を行うことは現行法令上可能か示されたい。不可能である場合、不可能とされている制度上の理由及び趣旨目的を示されたい。
5 保険者が医療の質が著しく低いと評価している医療機関を被保険者が受診した場合において、保険者が当該診療報酬の支払を拒否又は制限することは現行法令上可能か示されたい。また、不可能である場合、これを改める必要性があると考えるが、不可能とされている制度上の理由及び趣旨目的並びに法令上可能とするための制度改正について、政府の見解を示されたい。
三 医療機関選択及び受診行動に関するナビゲーション機能について
1 保険者が被保険者に対し、医療の質や費用、受診履歴等のデータを基に、受診すべき医療機関や適切な受診タイミングについて推奨・誘導を行うことは現行法令上可能か、理由と併せて示されたい。
2 前記三の1について、制度として整備・推進していく考えがあるか、政府の見解を理由と併せて示されたい。
3 予防医療及び重症化予防等、予防に関する保険者の支援活動について、政府は保険者への支援又は必要な法整備をする考えはあるか、検討状況を理由と併せて示されたい。
四 保険者機能の強化に対するインセンティブ制度の設計について
1 米国では「Accountable Care Organization(ACO)」や「Pay for Performance(P4P)」(以下「P4P」という。)等、医療費適正化と医療の質向上との両立を目的とした制度が導入されているが、政府は同制度について認識しているか示されたい。また、認識している場合、これまで同制度の導入を我が国で検討したことはあるか、理由と併せて示されたい。
2 前記四の1について、我が国においても、医療の質や費用対効果に資する取組を行う保険者に対して、成果に応じた財政的インセンティブを付与する制度を導入すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
3 現行制度では、保険者による重症化予防、健康指導、医療費適正化等の取組に対する成果評価及び財政的措置を行う仕組みはあるか示されたい。当該仕組みがある場合、その概要を示されたい。
4 医療の質に応じて医師や医療機関に金銭的なインセンティブを与える制度として、医療におけるP4Pが平成十二年以降、多くの国で導入されている。現在の我が国の医療制度でP4Pを導入したものはあるか示されたい。また、導入例がある場合、導入時期と概要を示されたい。
5 前記四の4について、今後、我が国の医療制度においてP4Pを組み込んだ制度改革を推し進める考えはあるか、政府の見解を理由と併せて示されたい。
質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内の答弁となっても私としては差し支えない。
右質問する。
政府答弁書
一の1及び2について
お尋ねの「アクセスすること」及び「アクセスが不可能又は制限」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「レセプトデータ」及び「電子カルテデータ」は、病歴等を含む個人情報であることから、医療保険者は、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)その他の関係法令の規定に基づき、これらのデータを取り扱うことが原則であるところ、「レセプトデータ」については、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第七十六条第四項等において、「保険者は、保険医療機関又は保険薬局から療養の給付に関する費用の請求があったときは、・・・審査の上、支払うものとする」等と規定されているとおり、医療保険者が審査を行うこととされており、また、「電子カルテデータ」については、現行法令上、当該データを医療保険者が取得し、又は提供を受けることについて定めた規定はない。
一の3について
御指摘の「個別の医療情報」の具体的に指し示すものが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、一の1及び2についてで述べたとおり、医療保険者は、個人情報の保護に関する法律や健康保険法等に基づき、「医療情報」を取り扱うこととなっている。
二の1から3まで及び5について
御指摘の「明らかに過剰・不適切と認めた医療行為」及び「保険者が医療の質が著しく低いと評価している医療機関」の具体的に指し示すものが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、我が国においては、健康保険法第七十六条第四項等において、「保険者は、保険医療機関又は保険薬局から療養の給付に関する費用の請求があったときは、・・・審査の上、支払うものとする」等と規定されているとおり、医療保険者が診療報酬の審査及び支払を行うこととされており、また、同条第五項等に基づき、医療保険者は、当該審査及び支払に関する事務について、審査支払機関に委託することができることとされ、当該審査支払機関が、個別の診療報酬請求の審査において、個別の症例に応じて、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号)、診療報酬の算定方法(平成二十年厚生労働省告示第五十九号)等に基づき、適切に行っているところである。
二の4について
お尋ねについては、健康保険法第七十六条第二項等において、「療養の給付に要する費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより、算定するものとする」と規定されているとおり、現行法令上、御指摘の「保険者が独自に・・・調整を行うこと」は認められておらず、お尋ねの「理由及び趣旨目的」に関しては、令和五年三月二十九日の衆議院厚生労働委員会において、加藤厚生労働大臣(当時)が「国民皆保険の下で誰もがどこでも一定の自己負担で適切な医療を受けられるという意味において、一律の点数が設定される、これは被保険者間の公平も期すということでつくられている。・・・基本はどこでも同じような負担で医療が受けられる、そういった必要性から一律の診療報酬になっている」と答弁しているとおりである。
三の1及び2について
御指摘の「医療の質・・・を基に」及び「誘導を行うこと」の具体的に意味するところが明らかではないため、これに関するお尋ねについてお答えすることは困難であるが、御指摘の「費用、受診履歴等のデータを基に、」「受診」の「推奨」を「行うこと」については、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第八条においては、厚生労働大臣は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図る観点から、医療に要する費用の適正化を総合的かつ計画的に推進するため、当該適正化に関する施策についての基本的な方針を定めることとされ、同条に基づき同大臣が定める医療費適正化に関する施策についての基本的な方針(令和五年厚生労働省告示第二百三十四号)において、「生活習慣病の発症予防として、個人の生活習慣の改善を促す取組を進めることや重症化するリスクの高い医療機関未受診者等に対して医療機関の受診を勧奨し、必要な治療を行うことなど、その重症化を予防するための取組を進めることが重要である。生活習慣病予防の対策のため、平成二十年度から、特定健康診査等・・・の実施が保険者に義務付けられている。・・・令和六年度から始まる第四期の特定健康診査等実施計画・・・の計画期間においては、特定保健指導にその成果が出たことを評価する評価体系(アウトカム評価)の導入、ICTの活用等により、特定健康診査等の実施率の向上を図り、更に効果的かつ効率的な取組を進めていくことが期待される。また、糖尿病の重症化予防の取組としては、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」(平成二十八年四月策定、平成三十一年四月改定)に基づき、都道府県、市町村(特別区を含む。・・・)をはじめとする保険者等と地域の医師会等の関係者が協働・連携し、ハイリスク者に対する受診勧奨、保健指導等の取組が進められている」としているとおりであり、これに基づく取組を推進していくこととしている。
三の3について
御指摘の「保険者への支援」については、三の1及び2についてで述べたとおりであり、また、御指摘の「法整備」については、例えば、先の答弁書(令和七年四月十五日内閣参質二一七第八三号)四の2についてで述べたとおり、令和六年十月三十日に開催された第百十一回社会保障審議会医療部会において、「オンライン資格確認等システム」を拡充し、「各種健診結果を医療保険者及び全国の医療機関等や本人等が閲覧できる」ようにすることが確認され、このことも含む医療法等の一部を改正する法律案を今国会に提出しているところである。
四の1、4及び5について
御指摘の「医療費適正化と医療の質向上との両立を目的とした制度」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「米国」の「Accountable Care Organization(ACO)」及び「Pay for Performance(P4P)」については把握している。
また、御指摘の「同制度の導入」、「P4Pを導入したもの」及び「P4Pを組み込んだ制度改革」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「米国」の「P4P」を我が国に導入することについては、平成二十年十月二十九日に開催された規制改革会議第十三回医療タスクフォースにおいて、厚生労働省から、「我が国の医療保険制度においては、診療行為に応じて支払いがなされる出来高払い方式を原則としており、米国とは支払制度そのものが異なるため、その導入の必要性を含め、慎重な検討が必要であると考えている」と回答しているとおりであり、現在も同様の考え方である。
四の2及び3について
御指摘の「前記四の1について」及び「医療の質・・・に資する取組を行う保険者」の具体的に指し示すものが明らかではないため、これに関するお尋ねについてお答えすることは困難であるが、御指摘の「保険者による」「費用対効果に資する取組」及び「重症化予防、健康指導、医療費適正化等の取組」に関しては、例えば、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第七十二条第三項の規定に基づき、被保険者の健康の保持増進、医療の効率的な提供の推進その他医療に要する費用の適正化等に係る取組について「評価」を行い、交付金の交付による「財政的措置」を行っているところである。