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近年の冤罪事件を受けて警察庁が公表した「警察捜査における取調べ適正化指針」に関する質問主意書
衆議院 第169回 第28号検討してまいりたい ×1
質問本文
冤罪という言葉について、「政府答弁書一」(内閣衆質一六八第一一一号)では「お尋ねの『冤罪』については、法令上の用語ではなく、様々な意味で用いられることがあるものと承知しており、お尋ねについて一概に答弁することは困難である。」との答弁がなされ、確たる定義はないとの政府の見解が示されているが、当質問主意書においては、富山県氷見市の柳原浩氏が強姦などの容疑で富山県警に誤認逮捕され、二年あまり服役した後に無罪が確定した事件(以下、「富山事件」という。)や、二〇〇三年の鹿児島県議選において中山信一氏と志布志市の運動員ら十五人を公職選挙法違反容疑で逮捕し、強圧的な捜査等により自白を強要し、後に全員の無罪が確定した事件(以下、「志布志事件」という。)の様に、無実の人間に罪を着せることを冤罪と定義する。右と「政府答弁書二」(内閣衆質一六八第一三八号)及び「政府答弁書三」(内閣衆質一六八第一七三号)を踏まえ、以下質問する。
一 警察庁は二〇〇八年一月二十四日、「富山事件」や「志布志事件」等近年の冤罪事件により低下した警察庁の信頼を取り戻し、右の冤罪事件の再発防止のため、来年四月以降に全国の警察署にある約一万千カ所の取り調べ室を新たに設置される監督担当者がマジックミラーを通して監督する等の仕組みの導入等を謳い、取り調べ中に行うことを禁止する、監督対象行為となる七つの行為(以下、「行為」という。)を定めた「警察捜査における取調べ適正化指針」(以下、「指針」という。)を発表したと各紙新聞は報道(以下、「報道」という。)しているが、「指針」の内容を改めて詳細に説明されたい。
二 「報道」によると、「指針」では全国の警察本部に容疑者の取り調べを監督する監督担当課を新たに設置し、捜査部門以外の警察官を監督担当者(以下、「監督担当者」という。)として取り調べ中に「行為」が行われていないかチェックさせる方針であるとのことであるが、「監督担当者」は取り調べを監督しながら、取り調べがどの様に行われているか、取り調べの中で「行為」が行われていないか等、詳細な記録を作成することは義務付けられるか。
三 「監督担当者」に、警察官以外の者を含める考えはあるか。
四 三で、「監督担当者」に警察官以外の者を含める考えがなく、「監督担当者」が警察官のみで構成されるのならば、警察官である「監督担当者」が、同じく警察官が取り調べにおいて「指針」に反して「行為」を行ったとしても、適正な判断を下し、然るべき対処をすることができないケースもあり得ると考えるが、政府の見解如何。
五 録画・録音等の方法による取り調べの可視化(以下、「可視化」という。)について、「政府答弁書二」と「政府答弁書三」では、それぞれ「現在の刑事訴訟の実務上、適正な取調べによって得られた被疑者の供述が事案の真相を解明する上で極めて重要な役割を果たしていることにかんがみると、取調べの全過程について録音・録画を義務付けることについては、被疑者と取調官との信頼関係を築くことが困難になるとともに、被疑者に供述をためらわせる要因となり、その結果、真相を十分解明し得なくなるおそれがあるほか、取調べ中における組織犯罪に関する情報収集や関係者の名誉・プライバシーの保護に支障を生ずるおそれがあるなどの問題があるので、慎重な検討が必要であると考えている。」、「取調べの全過程について録音・録画を義務付けることについては、第二回答弁書七及び八についてで述べたとおり種々の問題があるので、慎重な検討が必要であると考えている。」と、「可視化」の実施について慎重であるべきとの答弁がなされている。「報道」によると、取り調べに関して容疑者から苦情があった場合には、「監督担当者」が事実関係を調査する方針であるとのことであるが、二で、「監督担当者」が取り調べの監督記録を作成することが義務付けられないのならば、果たして容疑者からの苦情に対して適正な調査を行えるのか。
六 二で、「監督担当者」が取り調べの監督記録を作成することを義務付けられるにしても、警察官のみが「監督担当者」の任に就くのならば、四で述べた様に、自身と同じ警察官である取り調べをした側に寄った判断を下すこともあると考えるが、政府の見解如何。
七 五と六のケース両方を鑑みても、真に公正で公平な取り調べを行い、冤罪をなくす上でも「可視化」の実施は必要であると考えるが、政府の見解如何。
八 七で、それでも政府が「可視化」の実施に対して慎重であるべきと考えるのなら、具体的にどの様なケースが五の政府答弁にある様に「被疑者と取調官との信頼関係を築くことが困難になるとともに、被疑者に供述をためらわせる要因」となり得ると政府が考えるのか、その具体的根拠を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一及び二について
警察庁が平成二十年一月に作成した「警察捜査における取調べ適正化指針」においては、警視庁及び道府県警察本部の総務又は警務部門に取調べに関する監督を担当する所属(以下「本部監督担当課」という。)を置くとともに、本部監督担当課及び警察署の総務又は警務部門に取調べに関する監督を担当する監督担当者を置き、取調べに係る不適正行為につながるおそれのある行為(以下「監督対象行為」という。)の有無を確認すること等により、取調べに関する監督を行うこととしている。監督担当者は、取調べ状況を把握した上、監督対象行為がなされた可能性があると認めたときは、関係書類の閲覧、捜査主任官等からの報告聴取、取調べの外形的状況の確認等の調査を行い、当該調査結果を書面に記録するとともに、監察部門等に通報し、懲戒処分等に活用することとしている。取調べに関する監督の実施状況については、定期的又は随時に都道府県公安委員会に報告することとしている。
また、犯罪捜査規範(昭和三十二年国家公安委員会規則第二号)第百八十二条の二第一項の規定により、身柄を拘束されている被疑者又は被告人を取り調べた場合に作成が義務付けられている取調べ状況報告書について、身柄を拘束されていない被疑者又は被告人を取り調べた場合にも作成を義務付けることとしている。
さらに、取調べ時間の管理の厳格化を図るため、取調べは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に又は長時間にわたり行うことを避けなければならないこととするとともに、一定の時間帯等に取調べを行おうとするときは、警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長の事前の承認を受けなければならないこととすることとしている。
これらに加えて、取調べ状況の把握を容易にするため、取調べ室の整備の充実を図るほか、捜査に携わる者の意識向上を図るため、教養の充実、勤務成績の処遇への的確な反映、監督対象行為を認めた場合の厳正な対処等を実施することとしている。
なお、「警察捜査における取調べ適正化指針」の全文については、警察庁のホームページに掲載されている。
三について
警察庁としては、監督担当者は警察官を含む警察職員とする方向で検討中である。
四について
警察庁としては、都道府県警察において犯罪の捜査を直接担当しない総務又は警務部門に取調べに関する監督を担当させ、必要な体制を整備することにより、監督対象行為の有無の確認、監督対象行為が行われた場合における監察部門等への通報等が適切に行われるものと考えているが、御指摘のようなことがないよう、都道府県警察に対し、制度の趣旨の周知及び必要な指導の徹底を図ってまいりたいと考えている。
五及び六について
一及び二についてで述べたとおり、警察庁としては、監督担当者が、取調べ状況を把握し、監督対象行為がなされた可能性があると認めたときは、所要の調査を行い、当該調査結果を書面に記録することを義務付けることとしている。また、四についてで述べたとおり、警察庁としては、都道府県警察において犯罪の捜査を直接担当しない総務又は警務部門に取調べに関する監督を担当させ、必要な体制を整備することにより、監督対象行為の有無の確認、監督対象行為が行われた場合における監察部門等への通報等が適切に行われるものと考えている。これらにより、監督担当者が、取調べについての苦情に対して適正な調査を行うとともに、適切な判断を行うことができるよう、都道府県警察に対し、制度の趣旨の周知及び必要な指導の徹底を図ってまいりたいと考えている。
七について
取調べの全過程について録音・録画を義務付けることについては、衆議院議員鈴木宗男君提出富山県における冤罪判決に関する再質問に対する答弁書(平成十九年十月三十日内閣衆質一六八第一三八号)七及び八についてで述べたとおり種々の問題があるので、慎重な検討が必要であると考えている。
八について
お尋ねについては、例えば、被疑者が、録音・録画により記録された取調べにおける供述の一言一句、その際の動作や表情等が後に再生され、近親者、知人等取調官以外の第三者がこれを視聴することとなる場合があり得ることを意識し、自己のプライバシーにわたる事項等を供述することをためらい、取調官との信頼関係を築くことが困難になるケース、組織犯罪の被疑者が、取調べの録音・録画の記録を視聴した犯罪組織の関係者から報復等を受けることを恐れ、当該犯罪組織の実態や当該犯罪組織における上位者の関与状況等を取調官に対して供述することができなくなるケース等が考えられる。
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