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米国原子力艦の原子力災害対策に関する質問主意書

参議院 第165回 第32号お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×1承知していない ×3

提出者
参議院
提出日
2006年12月11日
内閣転送 2006年12月13日
答弁書受領日
2006年12月19日
提出から8日
答弁の項目数
19
質問 3,819字/答弁 3,851字

質問本文

幸いなことにこれまで原子力艦での重大事故は起きていないが、一九六四年の佐世保への初入港以前から周辺住民を始め、多くの国民から事故への不安の声が上がっている。これに対し、米国は一九六四年及び一九六七年にエードメモワールなどの文書による説明を、政府はモニタリングポストなどによる放射線監視を、また横須賀市では独自マニュアルを作成するなどの措置をそれぞれ講じてきた。その後、政府は、防災基本計画に原子力艦の原子力災害についての記述を追加し、関係省庁が一体となった防災活動が行われるよう原子力艦の原子力災害対策マニュアルを作成したが、米国は、事故は起こり得ないという立場を崩さず、防災対策の根幹が不十分なままである。こうした中、昨年一〇月二八日に米国は、横須賀基地に原子力空母を配備すると通告し、本年四月一七日には、合衆国原子力軍艦の安全性に関するファクトシート(以下「ファクトシート」という。)を外務省に提出したが、事故は起こり得ないという米国の姿勢は依然として変わっていない。

このような状況下において、政府は原子力防災に対して、国民の生命と安全に責任を持つべきであるとの観点から、以下質問する。

一 事故発生時の迅速な情報提供の必要性について

1 原子力災害においては事故の予兆の段階で、放出源情報が国や自治体等に迅速に通報され、住民の避難などがスムーズに行われるようにすることが必要である。原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)においても、原子力施設内で放射線量の異常などがあった場合には、現場の責任者から直接、国及び自治体に一五分以内に通報することが罰則付きで義務付けられている。しかし、原子力艦に対しては原災法は適用されず、原子力艦の原子力災害対策マニュアル、ファクトシートともに米国から日本への通報という記載しかない。また、通報手続の根拠として、一九九七年三月の日米合同委員会合意があるが、これを基に通報された事例についても、事故から何時間も経過した後に通報されており、通報されなかったことも少なくない。重大事故につながりかねない二〇〇四年六月の佐世保での原子力潜水艦火災事故の際にも、市民からの通報を受け、市が米軍に問い合わせている。

原子力事故への対応の中では、初期段階での現場からの通報が重要であり、原災法はその重要性を意識して策定されているのに対して、原子力艦への対応は明確ではなく、その落差は大きいと考えるが、政府の認識を示されたい。また、原子力艦への対応が現状で十分であるとするならば、その根拠を示されたい。

2 ファクトシートの記述からは、原子力艦の原子炉操作に関して、作業手順や緊急時の手続を規定したマニュアルが存在すると考えられる。このようなマニュアルが存在するのか明らかにするとともに、原災法と同様に、緊急時には短時間で日本の国及び自治体などに通報する義務が規定されているか明らかにされたい。また、通報に関する米国側からの説明内容及び日本側からの要請内容を示されたい。

3 SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測)システムは、原子力災害発生に際して、住民を速やかに、安全に避難させるために重要な役割を持っていると言われている。しかし現状では、原子力施設の放出源情報が不明であるために、SPEEDIシステムが十分に機能しないと思われるが、拡散予測など避難のために必要な情報をどのように収集し対処するのか明らかにされたい。

二 原子力施設への立入検査について

1 原災法では原子力施設に関しては事業者の防災計画作成が義務付けられ、作成にあたって関連自治体と協議することになっている。また、国及び自治体がいつでも無通告で立入検査ができるという規定もある。立入検査は、安全性を担保するために最も基本的な対策であると思われるが、原子力艦については全く制度化されていない。原子力艦についても立入検査等、原災法と同様の対応が可能か明らかにされたい。

2 立入検査等、安全性を担保するための方策について、米国側と協議しているか否か明らかにするとともに、協議している場合は、その内容も明らかにされたい。

3 原子力艦の安全性を担保する方法を明らかにされたい。

三 事故発生時の対応について

1 放射能放出事故の影響について、原子力艦の原子力災害対策マニュアルでの影響範囲(半径約三キロメートル)とファクトシートで説明している範囲(基地内)とは異なっているが、違いがなぜ生じたのか、事故の際の影響範囲の根拠について、それぞれ明らかにされたい。

2 米国のゴードン・トンプソン博士、日本のNGOである原子力資料情報室などが、それぞれ事故のシミュレーションを公表し、ともに甚大な被害を及ぼす危険性を示している。

(一) これらのシミュレーション結果に対する政府の見解を明らかにされたい。

(二) これらのシミュレーションに対して、政府は検証を行ったのか明らかにされたい。

(三) 事故が起きた場合の政府のシミュレーションは存在するのか明らかにするとともに、存在するのであれば、その結果を示されたい。

3 ファクトシートでは、悪影響を及ぼすようなかたちで日本に寄港するようなことはないとしているが、一九九〇年、空母ミッドウェイが弾薬庫爆発の危険性がある火災を起こしながら、横須賀港に入港したケースがある。

(一) 原子炉自体の事故でなくとも他の要因から原子炉に影響が及び、原子力災害となる場合もあり得ると考えるが、「悪影響」の判断基準を明らかにされたい。

(二) 原子炉自体の事故でなくても、原子力災害につながる危険性があれば、入港しないと考えてよいのか、明らかにされたい。

(三) 政府は「悪影響」の有無をどのように確認するのか明らかにされたい。

(四) 日本近海で何らかの異常事態が発生した場合、ファクトシートによれば日本に寄港するようなことはないが、当該原子力艦のその後の対応について、米国側から説明を受けたのか否か明らかにされたい。また、説明を受けているのであればその内容を示されたい。

4 ファクトシートでは、原子力艦が寄港中にトラブルを起こした場合には、速やかに影響のない場所(一二海里以遠)に移動することになっている。周辺の人口密集地の存在や、東京湾の船舶交通量などを考えると、単に横須賀から一二海里以遠ではなく、少なくとも房総沖一二海里以遠に移動する必要がある。

(一) 一二海里の起点を明らかにするとともに、米国側と起点についての協議をしているか否か明らかにされたい。

(二) トラブル発生から移動目標地点までの所要時間を具体的に示されたい。

(三) 寄港中にトラブルが発生し、影響のない所に移動する等の原子力防災訓練の実施を政府は検討しているか、また、そのような訓練を米国側に提案することを考えているかそれぞれ明らかにされたい。

四 メンテナンスについて

1 原子力空母が横須賀を母港とした場合でも、エードメモワールに従えば、横須賀では修理・整備を行わないことになるが、政府はそれをどのように担保するのか明らかにされたい。

2 航海中に修理が必要になり、固形廃棄物が出てくることがあり得ると考える。

(一) 固形廃棄物の管理方法を明らかにされたい。また、その管理が適切になされているかについて、政府はどのように確認しているのか明らかにされたい。

(二) 固形廃棄物の管理区域からの放射能漏れや放射性物質の拡散の防止方法を明らかにされたい。また、その防止が適切になされているかについて、政府はどのように確認しているのか明らかにされたい。

(三) 一九七五年のイオン交換樹脂の投棄を含め、原子力艦がこれまでに投棄した固形廃棄物について、投棄した時期、中身及び量を明らかにされたい。

五 原子力防災関連事項について

1 政府はモニタリングポストの増設を発表している。しかし、外部に放出された放射性物質を検出するより、原子力艦からのリアルタイムの通報が、万が一の際の住民の安全対策などにはより有効であると考える。原子力艦内部、原子炉周辺を含めたモニターのデータをリアルタイムで提供するシステムが存在するのか否か明らかにされたい。

2 二〇〇六年九月一四日、横須賀港で原子力潜水艦ホノルルの出航後、周辺海水からコバルト五八、コバルト六〇が検出された。二〇〇六年一〇月五日の原子力艦放射能調査専門家会合による「横須賀港における放射能調査の結果について」では、原子力潜水艦ホノルルによるものとは断定できないとの結論を出しており、原因究明には至っていない。

(一) 微量であるために影響はないとの結論になっているが、今後のために原因究明を徹底して行う必要はないか、政府の認識を示されたい。

(二) 異常な放射能が検出された場合でも、今回の調査では原因究明ができなかったことになる。モニタリングポストの増設以外の方法で、異常な放射能検出の原因を究明するための体制の確立について明らかにされたい。

(三) 万が一の場合、日米地位協定により人的被害は補償されるはずだが、物的・経済的被害についての補償制度の有無を明らかにされたい。また、被害が生じた場合、日米地位協定以外の政府の救済措置についても明らかにされたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一の1について

我が国に寄港した米国の海軍(以下「米海軍」という。)の原子力推進型の軍艦(以下「原子力軍艦」という。)において原子炉に係る事故が発生した場合、昭和三十九年八月二十四日の「外国の港における合衆国原子力軍艦の運航に関する合衆国政府の声明」(以下「合衆国声明」という。)や平成九年三月三十一日の在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続に関する日米合同委員会合意に基づき、事故の発生日時及び発生場所等について、米国政府の当局が、我が国政府の当局に対し、直ちに通報することとなっており、適切に通報が行われるものと認識している。

一の2について

米海軍の原子力軍艦の原子炉の操作に関し、米海軍部内にいかなる文書が存在するかについては、政府として承知していないため、お答えすることは困難である。また、米海軍の原子力軍艦において原子炉に係る事故が発生した場合に、米国政府の当局から我が国政府の当局に対し通報される内容は、一の1についてで述べたとおり、事故の発生日時及び発生場所等についてであるが、我が国政府の当局から米国政府の当局に対し要請する内容については、個別具体の状況に即して判断する必要があり、あらかじめ一概にお答えすることは困難である。

一の3について

我が国に寄港した米海軍の原子力軍艦において原子炉に係る事故が発生した場合には、米国政府の当局から我が国政府の当局に対し、直ちに通報が行われることになっている。また、仮に当該通報がない場合でも、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測)システムにより、一定の放射性物質の放出を仮定し、気象条件等を基に放射性物質の拡散の方向や速さを予測することが十分可能であると考えている。

二の1について

一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されず、このことは、我が国に駐留する米軍についても同様である。したがって、米海軍の原子力軍艦について、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)は適用されない。

二の2及び3について

米国政府が、米海軍の原子力軍艦について、累次にわたる政府声明及び覚書をもってその安全性を保証するとともに、その運航に関連して米国の港においてとられる安全上のすべての予防措置及び手続を我が国の港においても厳格に実施することを保証してきていること、本年四月十七日にシーファー駐日米国大使から麻生外務大臣に対して手交された、米海軍の原子力軍艦の安全性に関する事項が記載された文書(以下「ファクトシート」という。)において、米海軍の原子力軍艦の安全性に関する方針をすべて堅持し厳格に実施するとの米国政府の従来からの方針が改めて明示的に確認され、また、米海軍の原子力軍艦の設計や構造に関する情報を含め、従来よりも詳細な説明がされていること、並びに我が国寄港時を含め、米海軍の原子力軍艦について、これまで長期間にわたって安全に運航してきた実績があることから、政府としては、米海軍の原子力軍艦の我が国寄港時の安全性が確保されることを確信している。

政府としては、米国政府に対し、我が国に寄港する米海軍の原子力軍艦の安全性について引き続き万全の対策をとるよう働きかけていく考えである。

三の1について

「原子力艦の原子力災害対策マニュアル」(平成十六年八月二十五日中央防災会議主事会議申合せ)においては、各国の原子力軍艦に搭載された原子炉システムが、実際にどのような構造となっているかについて公表されていないことから、十分な安全裕度を考慮して、原子力軍艦による原子力災害が発生した場合、放出源情報等が十分に得られない状況下で避難・屋内退避等の防護措置を実施する範囲(以下「応急対応範囲」という。)を定めたものである。一方、ファクトシートにおいて、これに相当する範囲は、実際の米海軍の原子力軍艦に搭載されている原子炉の実態に即して、米国政府にて試算したものであると承知している。

三の2の(一)及び(二)について

お尋ねの米国の一研究者等が行った研究については、詳細を承知していないので、政府としてコメントする立場にない。

三の2の(三)について

原子力艦の原子力災害対策マニュアルにおいては、通常の運転時に原子炉内で冷却材喪失事故が起き、それに伴って燃料損傷が発生したという事故を想定して影響評価を行い、応急対応範囲を定めているところである。

三の3の(一)及び(三)について

政府としては、米海軍の原子力軍艦の我が国寄港に際して、関係機関の緊密な連携の下、原子力軍艦放射能調査(以下「放射能調査」という。)を実施し、米海軍の原子力軍艦に起因して人体、海洋生物又は環境の質に影響を及ぼすような放射能の異常値が検出されないか否か確認してきている。

三の3の(二)及び(四)について

お尋ねの「原子力災害につながる危険性」及び「何らかの異常事態が発生した場合」については、これらが具体的にいかなる状態を指すのか必ずしも明らかではないが、米国政府は、米海軍の原子力軍艦の運航に関連して米国の港においてとられる安全上のすべての予防措置及び手続を我が国の港においても厳格に実施することを保証し、米海軍の原子力軍艦の安全性に関する方針をすべて堅持し、厳格に実施するとの米国政府の従来からの方針を明示的に確認してきている。

三の4の(一)及び(二)について

お尋ねの点が、ファクトシートのいかなる部分に基づくものであるのかは明らかではないが、米国政府は、事故の発生により航行不能となった米海軍の原子力軍艦を安全な状態とする責任を負う旨を合衆国声明において明らかにしており、我が国に寄港した米海軍の原子力軍艦において原子炉に係る事故が発生した場合、我が国政府は米国政府に対し、当該原子力軍艦につき、適切な措置を講ずるよう要請することとなる。また、ファクトシートにおいて、適切であると判断されれば、艦船自体の推進力により又は必要に応じてタグボートの補助を得て、原子力軍艦を移動させることができ、問題が生じた原子力軍艦を移動させるためのいかなる措置も我が国政府との協議を経た上でとられることとなる旨明記されている。

三の4の(三)について

横須賀市においては、毎年、横須賀市原子力総合防災訓練を市主催で実施しているが、原子力空母への交替に伴う今後の訓練の在り方については、現在、関係者間で検討を行っているところである。

四の1について

政府としては、ファクトシートで示されているとおり、昭和三十九年八月十七日のエード・メモワールで表明された燃料交換及び修理に関する米国政府のコミットメントは、引き続き完全に堅持され、燃料交換及び原子炉の修理については、我が国では行われないと承知している。

四の2の(一)及び(二)について

ファクトシートで示されているとおり、固形廃棄物は、適切に包装された上で、米国の沿岸の施設又は専用の施設船に移送され、承認された手続に従って米国国内で処理されると承知している。

四の2の(三)について

政府としては、米海軍の原子力軍艦からの固形廃棄物の投棄の状況について、その詳細は把握していない。

五の1について

ファクトシートで示されているとおり、米海軍の原子力軍艦においては、いかなる予期せぬ事態が発生しても、これが検知され、迅速な対応がなされることを確保すべく、原子炉冷却水中の放射能のレベルを毎日モニターしていると承知している。

五の2の(一)について

お尋ねのコバルト五八、コバルト六○の検出については、原子力艦放射能調査専門家会合において、人体及び環境に全く影響のないものであるとともに、原子炉に係る事故、トラブルに起因するものではないと判断されていることから、これ以上の原因究明を行う必要はないと認識している。

五の2の(二)について

周辺住民等の健康と安全を守る観点において、現状の放射能調査体制に特段の不備があるとは認識していない。また、必要な場合には、米海軍に対しても情報提供を要請することとしている。

五の2の(三)について

万が一、日本国において米海軍の原子力軍艦が原子力事故により第三者に損害を及ぼした場合、人的損害については、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)第十八条5が適用される。日米地位協定第十八条5(a)は、「請求は、日本国の自衛隊の行動から生ずる請求権に関する日本国の法令に従つて、提起し、審査し、かつ、解決し、又は裁判する。」と規定しているところ、具体的には、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)が適用され、米国が無過失責任を負う。

また、物的損害のうち、いわゆる小規模海事損害については、昭和三十七年十一月一日防衛施設庁告示第五号に明記されているとおり、日米地位協定の規定を適用することについて日米両政府間で確認されており、前述の人的損害と同様に処理される。

その他の物的損害については、日米地位協定が適用されないところ、そのような場合は、日米両政府間の外交交渉によって問題の解決を図ることができることとなっており、また、米国の国内法による救済の途も開かれている。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×1承知していない ×3

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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