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ヒートアイランドにおける「嫌熱」から「活熱」・「利熱」への施策の転換に関する質問主意書
参議院 第176回 第49号
質問本文
二〇一〇年の北半球の夏は、極めて異常高温な夏であった。また同時に、南半球の冬は大寒波となり多数の死亡者が発生した。
ロシアでは、森林火災の延焼面積が、北海道の二倍の面積に相当し、モスクワでは濃いスモッグ(ヘイズ)の影響で市民の健康が危ぶまれた。ロシアに続き、アマゾン、アフリカ、アジアでも異常気象により森林火災が連続して発生するなど、地球規模で極めて深刻な事態にあることを指摘する。とりわけ深刻なことは、泥炭層、炭化成分の多い土壌での燃焼で、その結果、膨大な二酸化炭素が発生した。
中国大陸においては、三峡ダムが世紀の大放流をしなければならないほどの豪雨の連続で大水害が発生し、同様の大洪水は、バングラデシュにおいても発生した。
そして、日本列島においても記録的な猛暑であった。各地で猛暑日の記録更新が相次ぎ、日本の最高気温の記録に頻繁に名前がでてくる館林市のある群馬県では、県下の高崎市、太田市、安中市、沼田市などの一二市を始め、その他町村においても厳しい暑さの連続であった。
館林市は、四〇日を超える猛暑日になったと言われ、日本列島の猛暑による熱中症の大量発生は、各種統計を確認すると、大災害とも言うべきものである。
これら猛暑都市を安全・安心な都市にする上で、対処療法的な対応では市民の健康、生命を守ることは困難な状況にある。従って、(1)熱中症への対応はもとより、(2)ヒートアイランド現象への機敏、かつ的確な対応、また、より根本的には(3)気候変動への対応が重要である。これらの三者の一体的、計画的なパッケージ政策が必要である。
以上の基本的視点を、改めて重視・認識すべきことと同時に、関係府省庁及び関係府省庁連絡検討会が一層強力な暑熱対策を推進することを強く求めるものである。
以上を踏まえて、質問主意書の本旨に入る。
今後のヒートアイランド対策においては、排熱・廃熱を最大限抑えることが重要であり、さらに、風を資源と考えることで風力発電が活性化したように、排熱・廃熱も資源と捉えるべきである。
そのためには、太陽熱や「都市熱」を資源と考え、暑熱に嫌悪を感じる「嫌熱」から、熱を活かす「活熱」へと発想を転換することが不可欠である。その上で、「嫌熱」から「活熱」・「利熱」の視点を明確にし、「活熱」のための新しい工夫・仕組みを導入し、「利熱」につなげる具体的な施策の展開が必要であると考える。
そこで、以下質問する。
一 排熱・廃熱エネルギーの活用による利熱について
排熱・廃熱、省エネ等の熱エネルギー管理の強化に向けた熱エネルギー利活用状況のチェック改善制度の創設、中小企業における排熱・廃熱対策の推進、熱などの未利用エネルギーのカスケード利用(多段階的利用)の促進、熱源の節減や排熱・廃熱の削減のためのLEDの普及・拡大、蓄熱技術の開発が必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。
二 熱電発電の導入と実証実験について
熱電素子による熱から直接発電する「熱電発電」の発電効率の向上のための研究開発投資を拡大するとともに、事業所等からの排熱・廃熱利用の普及・拡大を目指して、熱電発電による本格的な電気回収実証実験の取組を開始すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
三 再生可能エネルギーの普及・拡大について
ソーラーシステム、太陽熱温水器、空気集熱器などの普及、地中熱システムや空気熱利用システムの普及・拡大、効率的な太陽熱発電の積極的推進、熱利用推進のための「熱エネルギー版」全量固定価格買い取り制度の創設等を含めた、熱政策を作り上げることについて、政府の見解を示されたい。
四 公共施設や工場等の事業所におけるESCO事業の積極的拡大について
公明党がエネルギーや電気代の節約のためにつくった「環境配慮契約法」(議員立法)は、公共施設等を対象とするESCO事業(省エネルギーに関する包括的なサービスを提供する事業)の推進に役立っており、LED照明などの普及・拡大に大いに寄与するものであると考える。そこで、以下の点について政府の見解を示されたい。
1 地方公共団体を含めた公共施設等を対象とするESCO事業の、より一層の加速化を図るべきである。
2 ヒートアイランド化を抑制するため、工場等からの大量の排熱・廃熱などの熱漏れを利用したヒートポンプや、熱電発電によるエネルギーを冷暖房等に使用するなどのシステムを構築すべきである。
3 オフセット・クレジット制度(J-VER)と国内クレジット制度を本格運用させるとともに、将来的には、両制度の統合を行うべきである。また、行政が、ESCO事業の積極的拡大を図るために、「環境配慮契約法」の啓蒙を行うとともに、より一層のインセンティブが働くための規制緩和、費用支援などの関係制度の導入についても検討・推進すべきである。
五 地域発の改造EVや小型EV等の開発推進と加速的導入について
舗装道路は高温に熱せられている上に、ガソリン車やディーゼル車から車外に排気されるエアコンの暖気とともに、エンジン部の排気弁のところで約一〇〇〇℃にもなる高温の排熱が大気中に排出されている。
その結果生ずる道路沿いのヒートベルト(熱の帯)は、EV(電気自動車)の加速的普及・拡大によって解消すべきであり、新車EVに限らず地域発の改造EV、小型EVへの支援措置を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
廃熱等の未利用熱の有効活用については、政府としても、熱エネルギーの有効利用による省エネルギーの観点から重要と考えている。
お尋ねの「熱エネルギー利活用状況のチェック改善制度の創設」については、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和五十四年法律第四十九号)第五条第一項の規定に基づき定められた工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準(平成二十一年経済産業省告示第六十六号。以下「判断基準」という。)において、事業者に廃熱の回収利用等を求めるとともに、同法第十五条第一項の規定に基づき、一定のエネルギーを使用する事業者に、廃熱の回収利用の状況等について定期の報告を求めている。
お尋ねの「中小企業における排熱・廃熱対策の推進」については、中小企業における省エネ技術・設備の導入可能性に関する診断事業等により推進している。
お尋ねの「カスケード利用(多段階的利用)の促進」及び「LEDの普及・拡大」については、判断基準において、事業者に対して、廃熱等の未利用エネルギーの多段階的利用等や、白熱電球に比して廃熱が少ないLED照明の採用の検討を求めている。
お尋ねの「蓄熱技術の開発」については、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という。)において、次世代の高効率なヒートポンプの研究開発の一環として、蓄熱技術の開発も行っている。
二について
熱電発電については、その発電効率を向上させるため、NEDOにおいて、廃熱等から生じる温度差を利用した発電システムに用いる熱電発電モジュールの研究開発を行ったところであり、当該開発に参画した事業者の一部は、既に熱電発電モジュールを実用化させている。
三について
政府としては、国内エネルギー消費に占める割合が大きい冷暖房、給湯等向けのエネルギーに、再生可能エネルギー源から得られる熱を活用していくことが必要と考えている。そのため、再生可能エネルギー源から得られる熱を活用した設備の普及拡大に向けて助成措置を講じているほか、熱利用設備の価格が割高であること、安価で正確な熱量の計量方法が存在しないこと等の課題の解決に向けた調査を実施している。
四の1について
国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成十九年法律第五十六号。以下「環境配慮契約法」という。)第五条第一項の規定に基づき定められた「国及び独立行政法人等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基本方針」(平成二十二年二月五日閣議決定。以下「基本方針」という。)においては、国及び独立行政法人等は、ESCO事業(環境配慮契約法第五条第二項第三号に規定する省エネルギー改修事業をいう。以下同じ。)導入のフィージビリティ・スタディを実施し、ESCO事業を可能な限り幅広く導入するものとされている。
また、環境配慮契約法第十一条においては、地方公共団体及び地方独立行政法人(以下「地方公共団体等」という。)は、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する方針を作成するよう努め、当該方針を作成したときは、これに基づき温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進を図るために必要な措置を講ずるよう努めるものとされている。政府としては、同条の規定に基づきESCO事業の導入に向けた地方公共団体等の取組が進むよう、今後とも、情報提供等必要な支援を行ってまいりたい。
四の2について
NEDOにおいては、廃熱等の未利用熱を有効活用するため、次世代の高効率なヒートポンプの研究開発に取り組んでいる。こうした技術も活用し、工場等からの大量の廃熱等を利用する仕組みを構築することは、省エネルギーや熱の有効活用の観点から重要であると考えている。
四の3について
オフセット・クレジット(J―VER)制度及び国内クレジット制度については、カーボン・オフセットを通じた国内の温室効果ガスの排出削減及び吸収の促進や、大企業等からの資金、技術等の提供を通じた中小企業等による温室効果ガスの排出削減の推進といったそれぞれの趣旨に沿って運用している。今後とも、制度の更なる運用改善や活性化の在り方について検討しつつ、こうした仕組みの活用により省エネルギー等の取組の促進に努めてまいりたい。
また、ESCO事業については、基本方針に基づき、国及び独立行政法人等においてESCO事業を可能な限り幅広く導入するなど、引き続きその推進に努めてまいりたい。
五について
電気自動車は、電気を動力源として用いることから、走行中に排出ガスを排出しないなど環境性能に優れた自動車であり、また、電気自動車市場は、今後世界的に拡大が想定される分野である。このため、環境問題への対応と経済成長の実現の観点から、政府としても、電気自動車の加速的な普及の促進に努めている。
具体的には、政府としては、量産型の電気自動車の購入に対する助成措置を講ずるとともに、電気自動車に使用される蓄電池の技術開発に対する支援、充電設備の設置に対する助成等の措置を講じている。
一方、既存自動車を改造した電気自動車を含め、量産型ではない電気自動車については、今後の市場の評価や需要の動向等を慎重に見極めて対応していくこととしている。
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