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令和六年一月二日に東京国際空港で発生した航空機事故に関する質問主意書

参議院 第213回 第2号趣旨が明らかではない ×1

提出者
参議院
提出日
2024年1月26日
内閣転送 2024年1月31日
答弁書受領日
2024年2月6日
提出から11日
答弁の項目数
4
質問 1,940字/答弁 861字

質問本文

令和六年一月二日に東京国際空港で発生した、日本航空A350型機と海上保安庁DHC8型機の衝突事故において、五名の海上保安庁職員の方々が尊い命を落とされた。

事故直後から、新聞やテレビ等を通じて、事故原因や当時の状況について断片的な情報が「関係者」という無責任な情報源に基づいて報道される状況が続いている。加えて、その情報をもとにSNS等で関係者を犯人扱いするような発言が繰り返され拡散されている。

このような世論誘導が航空事故の真相解明と再発防止の妨げとなり、再び今回のような惨事を招きかねない事態となっている。

これら断片的な情報による誤った世論誘導の原因は、日本において、航空事故やインシデント等で死傷者が出た場合、刑事告発される可能性がある国だということ、同時に事故調査資料が刑事裁判の証拠として利用される国であるという状況に起因している。

そのため、調査の対象となる者は、自身への刑事責任を免れるため又は軽減するために、事故について知り得る事実の全てを明らかにせず、別のストーリーを立てて聴取に対応したいという心理が働くことが考えられる。刑事上の取り調べには黙秘権は認められるが、事故調査に黙秘権を行使することが前提になるなら事故の再発防止に資する情報を収集し教訓とするという目的を果たす妨げとなる。

すなわち関係者個人の責任を問い、罰することが目的の刑事捜査が優先されたり、そうした方向に沿って事実の断片だけを取り上げるような言説や報道がなされたりするなら、本来、再発防止のみに役立てるべき事故調査が歪められることになる。これは結果として、今後の再発防止につながらない調査としてしまうリスクを生む。

航空機事故の場合は複数の原因が複雑に絡み合って発生することから、「誰か」ではなく「何が」「どのように」原因につながり事故を生み出したかを解き明かすことが新たな悲劇(事故)を引き起こさないためにとても大切である。

ついては、我が国においては、国際民間航空条約(以下「シカゴ条約」という。)に準拠しながら、その規定と全く相反する「刑事捜査が事故調査に優先する」仕組みを時代に合わせて変えなければならない状況である認識が必要である。

これらを踏まえ質問する。

一 今回の東京国際空港で発生した事故の原因調査においては、運輸安全委員会の調査を刑事捜査に優先させるシカゴ条約第十三附属書の立場で実施しているのか。報道によれば、既に事故当日から警視庁は海保機長ほか関係者の聴取や滑走路その他の施設に立ち入って捜査を開始し、捜査本部を羽田空港署内に置いたとされるが、これは刑事捜査優先の実態を示しているのではないか。

二 報道や週刊誌等においては、「警視庁関係者に対する取材による」として、海保機長や、管制官の人為的ミスが要因として、業務上過失致死容疑を視野に捜査をしているといった記事を掲載している。これら事故原因究明に先んじて捜査を行っている捜査官は、具体的にどのような原因特定に必要な専門知識と経験を有しているのか。また、テレビや週刊誌報道で「警視庁関係者」「捜査関係者」から取材、聴き取りをした話として、「海保機の錯誤」とか「管制のミス」などといった話が出ているが、これは運輸安全委員会による調査に先んじて刑事責任の所在を印象づけるような世論誘導につながり、望ましくないと考えるが、政府はこれを問題ないとするのか。

三 平成九年六月八日に発生した日本航空MD11機乱降下事故において、事故調査が優先され、業務上過失致死傷で起訴された機長が、その後平成十九年に無罪判決となった事例も、刑事捜査が優先されていなければ、避けられた事案であった。この経験を受けて事故調査プロセスにおいては、どのような再発防止策がとられることとなっていたのか。あるいは、そのような対策については検討も策定もされていなかったのか、明らかにされたい。

四 本来、事故調査においては、組織としての独立性が重要であり、それがあるべき基本であるが、現在日本では、運輸安全委員会が国土交通省の下部組織として位置づけられており、その独立性に疑問がある。たとえば、報道で警視庁捜査が問題にしているかのように伝えられている空港における管制業務は、多くの場合、国土交通省航空局が所管し実施している。調査検証機関が同省傘下では、十分な調査権限の下で公正・中立な立場での調査を実施していく妨げになるのではないか。また、シカゴ条約第十三附属書でも事故調査は独立機関が公正・中立な立場で行うことが望ましいとされているが、我が国の運輸安全委員会はこの国際民間航空のあり方を規定した条約の趣旨に沿うものになっているのか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

御指摘の「シカゴ条約第十三附属書」(以下「附属書」という。)においては、御指摘のような「運輸安全委員会の調査を刑事捜査に優先させる」ことは規定されていないものと承知しているが、運輸安全委員会(以下「委員会」という。)においては、捜査機関とは独立した立場で附属書の趣旨に沿って、御指摘の「事故」に係る原因の調査を行っているものと考えている。また、委員会は、当該事故の当日から航空事故調査官を東京国際空港に派遣し調査を開始しており、「刑事捜査優先の実態を示している」との御指摘は当たらないと考えている。

二について

前段のお尋ねについては、捜査員の有する知識及び経験については、これを明らかにすることにより、今後の捜査活動に支障をもたらすおそれがあり、お答えすることは差し控えたい。

後段のお尋ねについては、個別の報道の内容に関するものであり、政府としてお答えすることは差し控えたい。

三について

御指摘の「刑事捜査が優先されていなければ、避けられた事案であった」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、御指摘の「事例」を受けて、御指摘の「再発防止策」及び御指摘の「対策」について特段検討を行っていない。

四について

お尋ねについては、令和元年六月十二日の衆議院国土交通委員会において、石井国土交通大臣(当時)が「運輸安全委員会は、国家行政組織法第三条に基づくいわゆる三条委員会でございます。府省の大臣などからの指揮や監督を受けず、独立して権限を行使することができる合議制の機関でございます。特に、運輸安全委員会は、国土交通大臣への勧告、意見の発出を行うこともあるため、運輸安全委員会設置法第六条に基づき、委員長及び委員の職権行使の独立性が担保されております。このため、国土交通大臣は、個別の調査案件につきまして、運輸安全委員会に対して特段の指導等を行う立場にはございません」と答弁したとおりであり、委員会においては、独立した立場で附属書の趣旨に沿って事故原因の調査を行っているものと考えている。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

趣旨が明らかではない ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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