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中国の反スパイ法等に基づく日本人及び在日中国人の拘束事案に係る危機意識の喚起と政府対応に関する質問主意書
参議院 第217回 第91号お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×3
質問本文
中国における二〇一四年の「反スパイ法」施行以降、少なくとも十七名以上の日本人がスパイ行為などの容疑で拘束されており、容疑の具体的内容や証拠の提示もないまま、長期にわたって勾留されている。さらに、二〇二三年七月の改正反スパイ法の施行により、「国家の安全を害するおそれのある行為」が新たに取締り対象として加えられたことで、企業活動、学術調査、文化交流など、通常の民間活動についても摘発のリスクが生じている。また、反スパイ法に関連して、中国当局が設置した「秘密警察拠点」が国際的にも問題視されている。報道によれば、中国当局は、これらの拠点を通じて在日中国人を監視し、中国帰国時に拘束・尋問する事例が確認されている。米司法省は二〇二四年十二月、ニューヨーク市で中国の「海外警察署」を運営していたアメリカ市民が、中国当局の工作員として活動していたことを認めたと発表しており、人権団体は、中国当局がこうした海外拠点を通じて、外国在住の中国人に対する脅迫・監視を行っていると非難している。
我が国でも中国の「秘密警察拠点」の存在が確認されており、中国当局が反スパイ法を根拠として、在日中国人のみならず日本人に関する情報収集も行っている可能性が指摘されている。これらの動向は、日本の主権及び法秩序に対する重大な侵害であり、同時に日本人及び在日中国人の安全と人権を著しく脅かすものである。しかし、政府による国民への危機意識の喚起、中国渡航時の注意喚起や安全対策などは十分とは言い難く、現行の「危険情報」の内容が現在の実態に即しているかについても疑問が残る。
政府には、これらの問題に対し、より強い危機意識を持って国民への注意喚起、法的及び外交的対応を講ずるとともに、情報発信や民間団体との連携を含む包括的な体制の整備が強く求められる。
以上を踏まえ、以下質問する。
一 中国における反スパイ法の運用に関連し、二〇一四年以降、現時点までに中国において拘束された日本人の人数及び政府が把握している範囲における各事案の概要について明らかにされたい。また、同期間において、中国に渡航後、同様に拘束された在日中国人(日本に居住していた者)に係る事例の有無及び人数についても示されたい。
二 中国における反スパイ法の運用に関連し、容疑の具体的説明や証拠の提示が不十分なまま、日本人が長期間拘束される事例が報告されている。こうした拘束の実態を踏まえ、同様の事案が今後も発生する可能性について政府はどのように認識しているか示されたい。また、現在の「危険情報」が現状に即したものとなっていると考えるか示されたい。
三 中国に渡航する日本人(渡航者、駐在員、研究者、観光客等)に対し、反スパイ法に基づく拘束リスクや監視体制に関する情報提供・注意喚起を政府としてどのように実施しているか示されたい。また、危険情報の見直し、ACジャパンなどを通じた国民への注意喚起の徹底など、今後の改善策を示されたい。
四 在日中国人が中国当局の監視対象となり、帰国時に拘束・尋問を受ける事例が報じられている。これらの事例を放置することが、今後、日本の法秩序や主権にどのような悪影響を及ぼすか政府の見解を示されたい。
五 中国国内で拘束された日本人に対し、迅速かつ実効的な対応を図るため、在外公館による支援に加え、人質交渉や国際人権保護の分野に知見を有する民間団体とも連携を強化し、包括的な支援体制を構築すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
六 中国における日本人の拘束事案は、理由も明示されず一方的に拘束されるという意味で、第二の拉致事件とも言うべき深刻な問題である。我が国の主権を侵害しかねないこの状況に対し、政府としてこれまでどのような外交的・法的対応を講じてきたのか、また、被拘束者の解放を実現するために、どのような具体的方針を定め、取組を行っているのか明らかにされたい。あわせて、これまでの拘束事例について、政府として事例ごとの調査・分析を行っているのか示されたい。行っている場合は、その実施状況及び結果について、政府は公表すべきと考えるが政府の見解を示されたい。
七 中国における日本人の拘束事案が繰り返される現状を踏まえ、我が国として、国民の安全確保及び被害抑止の観点から、中国国籍者の入国制限や査証審査の厳格化などの必要な措置を検討しているか示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねの「中国における反スパイ法の運用に関連し、二〇一四年以降、」令和七年四月十四日までに「中国において拘束された日本人の人数」は合計十七名であると承知している。お尋ねの「各事案の概要」については個人情報が含まれることなどから、また、後段のお尋ねについては、お尋ねの「事例」があることは承知しているが、それ以上の詳細については我が国の情報収集能力等を明らかにするおそれがあることなどから、お答えすることは差し控えたい。
二の前段及び四について
お尋ねの「同様の事案が今後も発生する可能性」については御指摘の「中国当局」による「反スパイ法の運用」に関わる事柄であり、また、「これらの事例を放置すること」の具体的に意味するところが明らかではないためお答えすることは困難であるが、政府としては、引き続き、情報の収集及び分析に努めるとともに、適切な措置を講じてまいりたい。
二の後段及び三について
海外に渡航・滞在する邦人向けに安全等に関する情報を発信する外務省海外安全ホームページ上の「危険情報」(以下「危険情報」という。)の項目については、政府として、渡航・滞在に当たって特に注意が必要と考えられる国・地域に関して、日本国民の生命又は身体に対する脅威を考慮しつつ、中長期的な観点から、当該国・地域の治安情勢を始めとする政治情勢、社会情勢等を総合的に判断して決定してきており、お尋ねの「現在の「危険情報」」についても、これらの観点を踏まえ、適切に判断してきているものである。
また、政府としては、これまで、危険情報を始めとした適時適切な情報発信、注意喚起等を行うことを通じ、海外に渡航・滞在する邦人の安全確保に努めているところであり、中国については、同ホームページ上の中国に関する危険情報の項目において「中国では、「国家安全に危害を与える」とされる行為は、刑法、反スパイ法、軍事施設保護法、測量法等に基づき取調べの対象となり、国家安全部門に長期間の拘束を余儀なくされるのみならず、裁判で有罪となれば、懲役などの厳重な刑罰を科されるおそれがあります。」といった記載をするとともに、同ホームページ上の中国に関する「安全対策基礎データ」の項目において「中国においては、街中に監視カメラが設置されており、犯罪を未然に防止する等の措置がとられています。携帯電話やパソコン等の通信機器は、機器やアプリを通じて盗聴されている可能性があることを認識してください。」といった記載をすることなどを通じ、中国に渡航・滞在する邦人に対して注意喚起を行っているところである。今後も引き続き、中国に渡航・滞在する邦人に対し、適時適切な危険情報の見直しも含め、きめ細やかな情報発信や注意喚起を行ってまいりたい。
五について
在外公館における邦人保護の在り方については、これまで、現地情勢に関する知見を有する民間団体との意見交換等を行い、当該団体の経験や知見も参考にして検討を進めてきており、引き続き、こうした団体と連携を取りつつ邦人保護のための体制の強化に取り組んでまいりたい。
六について
お尋ねの「法的対応」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、これまで中国側に対し、例えば、令和七年三月二十四日の参議院外交防衛委員会において、岩屋外務大臣が「昨年十二月、私が訪中して行った日中外相会談において、私から王毅外交部長に対して、まず邦人拘束事案ですね、拘束された邦人の早期釈放・・・を求めた上で・・・反スパイ法の・・・透明性の向上についても求めたところであり、今般の東京での日中外相会談においても同じくそのような申入れをしたところでございます」と述べたとおり、累次働きかけているところである。今後も御指摘の「中国当局」に邦人が拘束されている事案それぞれの具体的状況を踏まえつつ、引き続き、このような働きかけを粘り強く継続していく考えである。
政府としては、御指摘の「中国当局」に邦人が拘束されている事案の具体的な状況の把握及び分析に努めているが、その内容については、個人情報が含まれるためお答えすることは差し控えたい。
七について
お尋ねの「入国制限」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、これまで、中国国籍者を含む外国人(以下「外国人」という。)に対して、我が国への入国に際して査証の申請があった場合には査証の発給基準に基づいて当該査証の発給に係る審査を厳格に行っているほか、外国人から上陸のための申請があった場合には上陸のための条件に適合しているか否かの審査を適切に行うなどしてきており、引き続き、このようにして我が国に入国する外国人の公正な管理に努めていく考えである。