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硫黄島の復興計画と旧島民の帰島に関する質問
参議院 第85回 第2号お答えすることは困難 ×1検討してまいりたい ×3
質問本文
硫黄島の復興計画と旧島民の帰島に関する質問主意書
戦禍の地・硫黄島は、昭和四十三年六月二十六日、小笠原諸島の日本復帰に伴い、東京都小笠原村の一部として発足した。しかるに、戦後三十三年、復帰後十年の歳月を経た今日においてもなお、旧島民の生まれ故郷、墳墓の地へ帰りたいという素朴な願いはかなえられず、また、小笠原諸島復興計画においても、硫黄島は、その対象から除外されている。
第二次世界大戦中の昭和十九年七月初旬、米軍の第一回小笠原諸島攻撃に際し、軍の命令により働き手を軍属として残し、急拠本土に強制疎開をせざるを得なかつた旧島民は、その後、異郷の地にあつて、苦しい生活を余儀なくされながらも、帰島運動を営々として続けている。
帰島を熱望する旧島民の「未だ疎開中である私どもにとつて、今次の戦争は終つていない。日本国民として、日本の領土である生まれ故郷になぜ帰つてはいけないのか。私どもの故郷を想う気持をもう少し汲みとつてほしい」という訴えは理屈を超えて説得力を持つている。
この際、政府は旧島民の心情に想いを至し、早急に硫黄島復興計画を策定し、帰島の早期実現を図るべきであると考えるので、次の事項について、政府の明確な見解を求めるものである。
一 小笠原諸島復興計画は、昭和四十五年三月三十一日閣議決定の上、五箇年間の復興事業に着手し、その後、昭和四十九年六月十八日改定十箇年計画として実施期間を昭和五十三年度まで延長したが、この間、硫黄島の復興の方途については全く考慮されていない。政府は硫黄島の復興計画を策定するとともに、それを積極的に推進すべきであると思うが、その対象から除外してきた理由は何か伺いたい。
二 硫黄島復興計画策定のため、これまで政府はどのような実情調査を行い、また、その結果に基づきどのような検討を行つてきたのか。その内容及び硫黄島の将来計画に関する基本的見解を伺いたい。
三 硫黄島は遺骨の収集、不発弾の処理が未済であり、また、地盤隆起等のため、帰島が不可能であるとされているが、防衛庁の配慮により、昭和四十五年六月一日、一泊二日の島内視察を許された旧島民は「立入禁止区域は、米軍のローラン基地、防空壕(硫黄島防衛のための戦略基地で、その構築が膨大で、内部構造が迷路のため)で、その他は全島自由に歩き回ることができ、帰島は可能だ」と主張している。島の現況並びに政府の判断を明確に示されたい。
四 小笠原諸島復興特別措置法改正の際、附帯決議において、遺骨収集と不発弾処理等について早急に調査を行い国の責任において解決を図ることが望まれているが、遺骨の収集状況、残存遺骨数と今後の収集計画、また、不発弾の処理状況、推定埋没量、今後の処理計画はどうなつているか伺いたい。
五 疎開当時、硫黄島には千二百人程度が生活し、主産業は農業で、主にサトウキビ栽培に従事していた。現在、米軍、自衛隊が賃借している用地を除外しても約二千ヘクタールの耕作可能地が残るといわれており、政府の強力な助成のもとに、熱帯果樹又は花卉園芸の振興を図ることにより、生活が十分可能であると考える。農用地の造成及び農業経営の可能性として、どのような見通しを持つているか伺いたい。
六 漁業者の帰島、定着は可能であるか。また、硫黄島周辺の漁業資源の現況及び遠洋漁業基地としての開発の可能性について見解を示されたい。
七 旧島民の帰島が可能となつた場合、何人程度が収容できると考えるか。また、そのためには、住宅、飲料水、教育施設、診療施設等の生活基盤の整備が伴わなければならないが、どの程度の社会資本の投下を想定しているか。
八 旧島民の帰島に対する最大の関心は交通問題である。疎開当時の交通は、日本郵船株式会社の定期船が東京から年六便、父島からの離島航路が年十二回であつたことを考えると、今日、東京から父島まで週一便の定期船があり、今後、離島航路の再開により十分交通の確保が図れると思うがどうか。また、同島の開発に必要な交通輸送手段として、空港の整備、特に防衛庁硫黄島飛行場の民間機との共用の可能性、あるいは拡張の適否などについて、どのように考えるか伺いたい。
九 港湾施設の建設は技術的に可能か。その場合、港湾の規模はどの程度のものがよいと考えるか。また、その港湾は避難港、あるいは中継基地としての役割を果たせると考えるか伺いたい。
十 硫黄島の土地の用途区分及び土地所有権移転の状況はどうなつているか。また、土地の境界復元の見通しについて、どう考えているか伺いたい。
十一 硫黄島産業株式会社が所有している旧農地について、旧小作農家から「旧小作地に係る賃借権の帰属がはつきりせず、法的に確定して貰いたい」との強い要望があるが、これに対し、どう対処する考えか伺いたい。
十二 「小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律」の第十二条の規定に基づく土地の使用及び防衛施設庁が賃借している用地の損失補償費の年度別推移は、どうなつているか伺いたい。
十三 小笠原諸島における島別、年度別の地盤隆起の状況はどうなつているか。また、その原因及び危険度について、どう分析しているか伺いたい。
十四 硫黄島の観光資源、特に自然景観のレクリエーション的利用の将来見通しについて、見解を伺いたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
小笠原諸島の硫黄島は、第二次世界大戦の激戦地であつたことから、同島の復興に当たつては、遺骨の収集及び不発弾の処理という特別な事情を考慮する必要があり、また同島の立地条件の特殊性として火山活動についての安全性の確認を前提として開発の可能性を検討することが必要であつたところである。
小笠原諸島復興計画において、硫黄島について帰島及び復興計画の当面の対象としていないのは、このような事情についてその目途を得るに至つていないからである。
二について
硫黄島については、昭和四十九年から昭和五十年にかけて現地調査を実施したところであり、その結果等を参考に同島の取扱いについて検討しているところであるが、引き続き、各般の事情を勘案のうえ、将来の問題も含めて、小笠原諸島復興審議会の意見等をも聴き、十分検討してまいりたい。
三について
硫黄島の現況については、不発弾処理等の未済という状況がなお引き続いており、しかも火山活動による地盤隆起という自然条件の下にあり、安全性の確認も得られないことから、現時点における帰島については、慎重に対処すべきものと考える。
四について
硫黄島の遺骨調査については、昭和二十七年から昭和四十八年までの間に五回にわたつて行い、遺骨収集については、昭和四十四年から現在まで八回にわたつて実施してきており、収集数は、四千八百十五柱となつている。
同島戦没者約二万人のうち、その多くは、同島に撃ち込まれた鉄量約四万トンといわれる米軍の猛攻撃によつて地上において戦死されたものと推定されるが、昭和二十七年に政府派遣団が同島を訪れたときは、地上において発見される遺骨はほとんどなかつた。現在、同島に残存する遺骨は、地下壕(総延長約十八キロメートル)内に在るものであるが、目下、この地下壕について、機械力を用いて埋没している壕口を掘開し、遺骨収集を実施している。なお、残存遺骨数は壕内に在る数千柱と推定される。
今後も引き続き遺骨収集を行つてまいりたい。
また、返還以降自衛隊が行つた同島での不発弾の処理実績は現在までで合計約二十一トンである。
なお、埋没量は、陸上部における不発弾について、サンプル調査によれば、約千トンと推定される。
今後の処理については、引き続き検討してまいりたい。
五について
硫黄島については、不発弾等の存在が農業開発に当たつての障害となると考えられる。
仮に、その障害を除去した場合においても、火山活動、農業用水の確保等の自然立地的な間題もあり、また、導入作物の選定、当該作物の経済性、消費地への輸送手段等の面の隘路も多く、更に飲料水、医療施設等農業者の生活環境の整備等も必要であるので、慎重に検討すべきものと考える。
六について
硫黄島周辺の漁業資源は、ほとんどが回遊性魚類であるため、年間を通じて安定的な漁業生産を上げることができず、変動的であると考えられる。
また、遠洋漁業基地としての位置的価値は認められるが、同島の地形・地質上、漁港その他の各種施設整備について、その適地に乏しく、かつ、その建設は、地盤隆起等の障害があり、極めて困難である。
このような事情から、同島における漁業については、経営規模、採算性等についても、多くを期待し得ないものと考える。
七について
硫黄島への帰島可能性については、一について及び三についてで述べたような事情に加えて、同島が隔絶した外海離島である条件にかんがみ、その土地利用、帰島後の生活と就業の見込み、水資源、電力確保等検討すべき数多くの要素がふくそうしているため、結論を得るに至つていないところである。したがつて、帰島可能者数、各種施設の整備目標等について、試算するには至つていないところである。
八について
硫黄島について、将来その開発が行われ、旧島民の帰島等により同島への交通の確保の必要性が生じた場合には、航路の再開についても検討いたしたい。
また、同島は火山活動による地盤隆起等があり、民間機との共用については、滑走路の安全性確保等のため、十分な調査、検討が必要であり、慎重な考慮を要する。
九について
港湾施設を建設すると仮定した場合、現在の技術水準で必ずしも不可能とは考えられないが、建設資材等をすべて本土からの輸送に依存するため、膨大な投資を要し、また、同島の海岸は漂砂現象が激しく、かつ、火山活動による地盤隆起もあり、なお、十分な調査が必要である。
また、港湾の規模については、人口、産業規模等との関連において考慮されるべきところであり、避難港あるいは中継基地としての役割を果たし得るかについては、その他の条件にもよるものであるが、これらの前提条件について、いまだ結論を得るに至つていないところである。
十について
硫黄島の土地利用の現況については、総面積約二千二百ヘクタールのうち、自衛隊の施設約五百ヘクタール、駐留軍に提供している施設及び区域約四百五十ヘクタールで、その他約千二百五十ヘクタールは利用されていない土地である。
同島の土地については、その総面積のほぼ三分の二を占める国有林地以外の土地のほとんどが登記されているが、その筆数は、二百十三筆(民有地百八十六筆、国公有地二十七筆)であり、これらの登記簿上の地目は、ほとんどが畑である。
また、復帰後現在までになされた土地の所有権移転登記の申請件数は、十件(民有地を国有名義とする売買による移転)である。
なお、土地の位置及び境界を一応明らかにする地図として防衛施設庁が復帰後作成した地図を現在東京法務局において管理しているが、この地図による境界について争いがある土地については、本土の場合と同じく関係所有者間において、協議又は裁判により境界を確定すべきものである。
十一について
小笠原諸島内の旧小作地に係る賃借権については、小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律(昭和四十三年法律第八十三号)第十三条の規定によりその保護を図ることとしているが、同条の適用をめぐる一部関係者の賃借権の有無に関する事実関係については、民事上の問題であるので関係者間の協議等により解決すべきものと考える。
十二について
年度別の損失補償費及び賃借料の支払額は、次のとおりである。
年 度 支払額
昭和四十三年度 千六百万円
昭和四十四年度 二千九百万円
昭和四十五年度 三千六百万円
昭和四十六年度 三千九百万円
昭和四十七年度 四千六百万円
昭和四十八年度 四千六百万円
昭和四十九年度 五千万円
昭和五十年度 五千万円
昭和五十一年度 五千万円
昭和五十二年度 四千九百万円
十三について
小笠原諸島において、地盤隆起が生じているとみられるのは、目下硫黄島のみである。
同島における地盤隆起の状況は、昭和四十七年及び昭和五十年に行つた調査によると、年平均隆起量は、それぞれ二十八センチメートル、三十六センチメートルであつた。
地盤隆起の原因は、通常の活火山の地熱地域から放出される量と比較してかなり大量の熱エネルギーの連続的放出と地下深所からの大量の熱供給によるものと考えられ、ひとたび熱放出と供給の均衡が破れた時には、大規模な地かく変動が発生する可能性があるとみられている。
十四について
硫黄島は、摺鉢山をかなめとした扇形の平坦な台地を形成し、地表は主としてギンネムで被覆された単調な景観であるが、海岸線は比較的変化に富んでいる。
そのレクリエーション的利用については、戦跡であることによる国民特に遺族の感情についての配慮及び不発弾処理の問題も前提として慎重に考慮する必要がある。
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