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バイオ施設の安全性に関する質問主意書

衆議院 第147回 第14号検討してまいりたい ×3

提出者
衆議院
提出日
2000年3月8日
内閣転送 2000年3月13日
答弁書受領日
2000年5月12日
提出から65日
答弁の項目数
11
質問 2,284字/答弁 3,137字

質問本文

現代は「突発出現ウイルスの時代」と呼ばれるように、WHO(世界保健機関)は過去二十年間に三十以上の未知の新しい感染症が登場したと報告している。その原因として遺伝子組換えをあげる有力な学説もあり、未知のバイオハザード(生物災害)の危険性が憂慮されている。

こうした病原体や組換えDNA、実験動物等を扱うバイオ施設は、排気、廃棄物、排水、排煙等を通して、周辺への最大の汚染源となる可能性がある。その場合、原因となった病原体等を直ちに検知することは困難であり、漏洩が超微量でも一定の条件下では増殖も有り得る。

しかし、我が国は欧米諸国と異なり、これらバイオ施設への立地規制や届出制度、査察制度もなく、文字通り無法状態にある。その結果、多くのバイオ施設が人口密集地あるいはその周辺に立地し、各地でバイオ施設規制の住民運動が取り組まれてきたが、一方で、圧倒的多数の住民は、こうした危険物と背中合わせに生活していることすら知らされてはいない。昨年九月三十日に起きた東海「臨界事故」の教訓は、バイオ施設に関しても生かされるべきである。

二十一世紀に向けて、政府はバイオテクノロジー分野の研究・開発の推進に前向きのようであるが、推進にあたってはバイオ施設に対する法的・社会的規制の確立が望まれる。

以下、バイオ施設の安全性確保について質問する。

一 日本全国にある組換えDNA研究施設、病原体施設、実験動物施設の立地状況・安全性確保の実態を政府及び各地方自治体が、現在どの程度把握しているのか明らかにされたい。また、把握状況が不十分であれば、至急に全国調査が必要と考えるが、いかがか。

二 前項の各施設の名称、立地場所、事業項目、病原体等の種名を国民への安全性情報の開示の立場から公表すべきと考えるが、いかがか。

三 病原体の扱いを定めた法令のない日本では、国立感染症研究所病原体等安全管理規程が全国の病原体を扱う施設において参考にされてきた。しかし、この規程は感染症研究所の内部的な規程にすぎず、今後、法令の整備が必要と考えるが、いかがか。

四 バイオ施設から病原体や組換えDNAが漏出した場合、周辺環境への影響を把握するための調査等の手法の確立が必要と考えるが、いかがか。

五 WHO『Safety in Health-care Laboratories』(1997年 和訳『保健関係施設の安全性』)では「高度封じ込め実験施設あるいは危険な実験施設は、患者や公衆のいる地域とよく使われる道路から離れて立地されなければならない。」(P.16)とし、バイオ施設の立地について規制している。日本でもこれに従い住宅地及び公衆の集まる地域に立地することを禁ずる法的な規制が必要と考えるが、いかがか。

六 前項との関連で、建築基準法別表第2(と)三(16)で、「安全上若しくは防火上の危険の度又は衛生上若しくは健康上の有害の度が高いことにより、住居の環境を保護する上で支障がある」事業を政令で定め、こうした事業を営む工場の住宅地への立地を禁ずるものとしているが、この政令は未だ制定されていない。今後、この政令で定める事業の中にバイオ試験研究を含めるべきと考えるが、いかがか。

七 住宅地に立地する研究施設について、昭52住指発778号通達で、近隣の居住環境を害する恐れのある用途が主である施設は、旧第二種住居専用地域(現第1種中高層住居専用地域)には立地できないとされている。この点で、バイオ研究施設は少なくとも第一種中高層住居専用地域には立地できないと考えるが、いかがか。

八 阪神淡路大震災の被災状況を踏まえて一九九六年十月に建設省が制定した「官庁施設の総合耐震計画基準」(以下「建設省耐震基準」という)では、病原菌類を扱う試験研究施設に対し、石油類、高圧ガス、火薬類等を扱う施設よりも厳しい耐震安全性を求めているが、現行の建築基準法では、石油類等の消防法で定める危険物や高圧ガス、火薬類を危険物の対象としているものの、病原菌類は対象とはしていない。この点で今後建築基準法を早急に整備し、病原菌類を危険物の対象とすることが必要と考えるが、いかがか。

九 組換えDNA実験指針では、地震時、火災時、停電時など非常時における安全対策について具体的に触れられておらず、各事業者任せになっている。地震国日本においては、地震時における物理的封じ込めを維持することが病原菌類を扱う施設の安全性確保の必須条件であるが、そのためには建築基準法の遵守だけでは不十分である。そこで、バイオ施設については、官庁施設のみならず民間施設についても少なくとも前掲の「建設省耐震基準」を適用することを義務付けるべきと考えるが、いかがか。

十 組換えDNA実験で有効に機能しなかったベクターの保管・廃棄状況を政府はどのように把握しているのか明らかにされたい。

十一 病原体や組換えDNAの輸送中の事故対策について政府はどのように策定しているのか明らかにされたい。

十二 各省庁にまたがるバイオテクノロジーの安全性確保のために統一的な対策が必要と考えられるが、中央省庁改革の中で主務官庁をいかに位置付けるのか。文部科学省を主務官庁とし、中心となって取り組む考えはあるか。また、昨年九月の東海村臨界事故の教訓から行政の推進機関と安全機関との分離が指摘されている。その点から、組換えDNA実験の安全審査は環境省が担うのがふさわしいと考えるがいかがか。あるいは、第三者的審査機関の設置について検討する意向はあるか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一及び二について

組換えDNA技術又は病原体を用いて実験又は研究を行う施設(以下「実験研究施設」という。)については、そのすべての立地や安全性の確保の状況を把握する体制になっていない。これらの施設の全国調査については、今後、関係省庁の間で必要性の有無を含めて検討してまいりたい。

また、現在把握している情報の公表の在り方については、関係実験研究施設の権利、競争上の地位その他正当な利益を損なうおそれがないかどうか等の観点から検討いたしたい。

三について

国立感染症研究所病原体等安全管理規程(昭和五十六年十一月五日国立予防衛生研究所部長会議決定)は、世界保健機関が公表した実験室バイオセーフティ指針に準拠して同研究所が定めたものであり、病原体を取り扱う他の実験研究施設においても同規程を参考にする例があると聞いている。また、同規程の外にも、大学等における研究用微生物安全管理マニュアル(案)が学術審議会特定研究領域推進分科会バイオサイエンス部会において作成されるとともに大学に示され、農林水産省において家畜衛生試験場微生物等取扱規程(平成五年十二月一日5家衛C第七百八十七号家畜衛生試験場内部規程)が定められるなど、各実験研究施設の自主的な規制の下で病原体を用いた実験又は研究が行われてきている。

世界保健機関においては、現在、実験室バイオセーフティ指針の改訂を検討中であると聞いており、その動向及び各実験研究施設の規程等を踏まえつつ、病原体の取扱いに関する法令を定める必要性等について検討してまいりたい。

四について

実験研究施設から病原体や組換え体(組換えDNA分子が移入された生細胞をいう。以下同じ。)が漏出することのないように、組換えDNA実験指針(昭和五十四年八月二十七日内閣総理大臣決定)や各実験研究施設の規程等においては、病原体等の取扱いを含めた安全管理の基準が定められており、実験装置から病原体等が漏出したとしても、施設内に封じ込められるように設備及び施設が設計され、運用されていることから、施設外に病原体等が漏出することは想定し難く、お尋ねのような調査等の手法を検討することは考えていない。

五について

お尋ねの「Safety in health - care laboratories」は、世界保健機関の公式文書ではなく、内容についてはその著者が責任を持つとされていると承知している。また、同文書の十六ページにおいては、高度封じ込め実験検査室あるいは感染リスクの高い実験検査室は、患者のいる場所や公共部分あるいは人の行き来の多い通路から離れて設置すべきである旨が記載されているが、これは、病院等の施設内においてどこに実験検査室を配置するかを論じているものであり、実験検査室が住宅地及び公衆の集まる地域に立地することの是非を論じているものではないと承知している。

なお、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号に規定する用途地域内の建築物については、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)により、その用途に応じてその建築が制限されている。

六について

実験研究施設については、それぞれの施設ごとに設備の内容、取り扱われる物質等が多岐にわたり、一律に工場に該当するとしたり、住居の環境を保護する上で支障があると判断することはできないことから、建築基準法別表第二(と)項第三号(十六)の規定に基づく政令により、住居の環境を保護する上で支障がある事業として定めることは適当ではないと考えている。

七について

実験研究施設が建築基準法別表第二(は)項第二号に掲げる建築物に該当するか否かについては、名称等による形式的な判断ではなく、個々の施設ごとに建築計画等を勘案して実質的に判断すべきものと考えている。

八について

建築基準法第二十七条第二項第二号に規定する危険物は、防火上の安全性を確保する観点から定められているものであり、病原菌類を当該危険物の対象とすることは適当ではないと考えている。

病原菌類を取り扱う施設においては物理的封じ込め、生物学的封じ込め等の措置を適切に講ずることが重要であり、現時点において、建築物の構造について特段の規制を行うことは考えていない。

九について

実験研究施設においては、組換えDNA実験指針等に基づき、病原体等の物理的封じ込め、生物学的封じ込め等の措置を適切に講ずることにより安全性を確保することが重要であり、現時点において、建築物の耐震性について特段の規制を行うことは考えていない。

なお、地震によって病原体等の漏出による重大な事故が起こった例も報告されていない。

十について

組換えDNA実験は、組換えDNA実験指針等に基づいて実施されており、同指針においては、実験終了後、お尋ねの有効に機能しなかったベクターを含め、実験に係る生物に由来するすべての廃棄物等を廃棄の前に不活化すること、試料及び廃棄物を一定の基準に従って保管すること並びに試料及び廃棄物の記録を作成し、保存することが定められている。

なお、国公立及び民間の実験研究施設が実施する組換えDNA実験については、その実施件数が科学技術庁に報告されるとともに、安全性評価等のために国の指導の下に行ったものについては、組換え体の保存及び処分の状況を含めた実験結果の概要も報告されている。

十一について

病原体や組換え体の輸送は、郵便、民間運送事業等として行われている。

郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)第十四条により、生きた病原体及び生きた病原体を含有し、又は生きた病原体が附着していると認められる物は、官公署、細菌検査所、医師又は獣医師が差し出すものを除き、郵便物として差し出すことができないとされている。生きた病原体及び生きた病原体を含有し、又は生きた病原体が附着すると認められる物のうち、官公署、細菌検査所、医師又は獣医師が差し出すものについては、郵便規則(昭和二十二年逓信省令第三十四号)第八条第一項第三号等により、びん、かん等に入れ、これを内容品が漏出しないよう密封した上、外部の圧力に耐える堅固な箱に納め、箱には、万一容器は破損しても完全に漏出物を吸収するよう綿その他の柔軟な物を詰め、郵便物の表面の見やすいところに品名及び「危険物」の文字を朱記することとされている。

なお、組換えDNA実験指針においては、組換え体の運搬について、同様の取扱いをするよう定めている。

さらに、国際連合危険物輸送専門家委員会等は、輸送にかかわる者及び一般公衆の安全を確保すること等を目的としたガイドラインを示しており、これに沿って航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)等により所要の規制が行われている。

これらの法令、ガイドライン等の適切な実施によって、輸送中の病原体等の漏出の防止に努めているところである。

十二について

バイオテクノロジーは、実用化段階では食品産業、化学工業、医薬品産業、農林水産業等の幅広い分野で用いられており、現在、関係省庁が連携を図りつつ、それぞれの所掌分野において安全性の確保に努めている。中央省庁等改革後も、関係省が連携して安全性の確保に取り組んでまいりたい。

また、組換えDNA実験の安全性評価については、現在、科学技術庁又は文部省において、専門家で構成される科学技術会議ライフサイエンス部会組換えDNA技術分科会又は学術審議会バイオサイエンス部会組換えDNA専門委員会の審議を経て行っているが、中央省庁等改革後も、文部科学省において、これまでと同様に専門家による審議を経た上で、適切に行うこととしたいと考えている。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

検討してまいりたい ×3

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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