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核燃料加工工場臨界事故に関する質問主意書
衆議院 第150回 第56号
質問本文
一九九九年九月三〇日に起こった核燃料加工工場臨界事故は、二名の尊い人命を奪った、最悪の原子力事故であった。政府の「ウラン加工工場臨界事故調査委員会報告」(九九年一二月。以下「報告」。)が、『原子力の「安全神話」や観念的な「絶対安全」という標語は捨てられなければならない』(報告�V−五〇)、と指摘しているように、根底にある「安全神話」への深刻な反省が行政と原子力業界に求められるところである。
同時に、事故の直接の原因である、臨界安全形状管理がされていない沈殿槽への臨界量以上のウラン溶液の投入という事態に、なぜ至ったのか。その徹底解明も必要である。この点で見過ごせないのは、事故施設を加工施設として許可申請した時点では、事故に至った「均一化工程」は想定されていなかったという事実である。「報告」も、「六〜七バッチを均一な一ロットとすることは、許可申請書と設工認申請書のいずれにも記載されていない」(�V−三四)、「複数の製品容器を用いて均一化の操作を行うに当たっては複数ユニットの臨界安全について十分に評価する必要があるが、その点に関する記述は見当たらない」(�V−三五)と指摘している。
そこで、問題の「均一化工程」に関して以下の点を明らかにされたい。
一 第一に、「均一化工程」に係る許認可についてである。
1 日本核燃料コンバージョン(現ジェー・シー・オー。以下「JCO」。)が一九八三年一一月に行った核燃料物質加工事業変更許可申請に対して、政府は一九八四年六月に許可を出している。この申請と許可に問題の「均一化工程」は含まれていないのではないか。含まれていたのなら、申請書の該当個所を明示するとともに、「報告」が指摘した「複数ユニットの臨界安全」に係る政府の安全審査の記述を明示されたい。
2 「報告」によれば、該当する記載はなく、「均一化工程」については申請も許可もされていないことは明らかである。従って、無許可の「均一化工程」を伴うJCOの中濃縮ウラン溶液製造は、その当初から違法な作業だったのではないか。
3 「報告」の参考資料�V−一七「転換試験棟の硝酸ウラニル溶液製造工程」図において、ステンレス容器による溶解について「違反行為(未許可)」とし、沈殿槽による混合均一化は「違反行為(取扱量の超過)」、貯塔による混合均一化は「違反行為(多量ウランの注入)」と明記している。しかし、クロスブレンディングによる混合均一化については、同図に示された「許認可上の工程」とは明らかに異なるのに、その違法性を何ら指摘していないのはなぜか。
4 また、「均一化工程」自体が違法であることを、政府が明言しないのはなぜか。
二 第二に、「均一化工程」が導入された経緯についてである。
1 臨界事故調査委員会の資料八−三でも紹介されているように、「均一化工程」が導入されたのは、中濃縮ウラン溶液の発注元、納品先である動力炉・核燃料開発事業団(現核燃料サイクル開発機構。以下「機構」。)の要求によるものである。要求した内容とその動機を改めて明らかにされたい。
2 機構は、核燃料取扱いに関しては、他のどの組織にもまして精通しているはずである。機構は、要求した「均一化工程」が想定されていなかった工程、新たな許可なしには違法となる工程であることを、十分に承知していたはずである。この点を政府はどう認識しているか。
3 また機構が、「均一化工程」に伴う許認可の変更申請等について、JCOにどのような指導、助言等を行ったのか明らかにされたい。
4 機構が、一回の輸送量にあわせてJCOに「均一化工程」を要求(八六年五月二九日)してから、JCOの回答を経て、契約(一〇月二四日)まで、五ヵ月しかないが、この短期間で、JCOが変更許可申請を準備し、申請し、国の審査を経て許可を受けるのに十分な期間といえるのか。
5 機構が、ウラン溶液をJCOに発注する際に、JCOが機構の要求する仕様のウラン溶液を適法に製造できる事業者であることを確認しなかったのかどうか明らかにされたい。
三 第三に、「均一化工程」における臨界管理についてである。
1 JCOは当初、臨界管理のため二・四キログラムウランの質量制限をもうけ、これを一バッチ(作業単位。)とするとともに一ロットとする予定だったが、機構は、一回の輸送量にあわせて六〜七バッチを一ロットとすることを要求した。これに対して、JCOは、均一化のための専用設備も無しに、製品容器をならべて、そこから一〇分の一ずつ汲み出して移し替える「クロスブレンディング」という方法による均一化を回答(六月九日)したとされている。この「クロスブレンディング」による均一化作業は、一バッチの質量制限で臨界管理するという許可条件に反するものではないのか。政府の見解を明らかにされたい。
2 「均一化工程」について、事故直後は、形状的に臨界管理された貯塔で行うべきものを沈殿槽で行ったことが作業手順違反であると発表されていた。後に、事故調の第七回会合(一一月二六日)において、実は貯塔で行うことも裏マニュアルであり、本来はクロスブレンディングで行うことになっていたことが明らかにされた。ところが、政府は、機構からの聞き取りで九九年一〇月二一日にこの事実を知っていた。このような重要な事実の公表が一月以上も遅れたのはなぜか。
3 機構は、要求した一ロット(六〜七バッチ)が臨界量を超過するものであることを、十分承知していたはずである。機構は、臨界管理のために一バッチという量的制限を設けていたJCOに対して、その臨界管理の制限を越える危険な作業を要求したことになるのではないか。政府の認識を明らかにされたい。
4 JCOが想定していなかった「均一化工程」という機構の要求により、新たな臨界管理が必要となるはずだが、機構には、そういう認識があったのかどうか、また、機構には、JCOに対して臨界管理の助言を行うなど核燃料の専門家集団として当然の責任があるはずだが、機構がそうした助言等は行ったのかどうか、明らかにされたい。
四 第四に、硝酸ウラニル溶液で納品させたことについてである。
1 臨界管理という点では、粉末による乾式法に比べ溶液による湿式法は臨界に達しやすく危険性の高いものではないのか。
2 欧米では、過去の臨界事故の教訓から、濃縮ウランの再転換では湿式法をやめて乾式法に切り替えてきたが、日本だけがなぜ、危険な湿式法を用いなければならないのか。
3 これまで政府は、JCOに対して溶液での納品を要求した理由を、機構の再処理工場運転に向けて行われた日米再処理交渉の結果、核不拡散上の観点から混合転換法により硝酸プルトニウムと硝酸ウランニル溶液を混合した上で混合酸化物に転換することになったからだと説明している。しかし、JCOから粉末で仕入れて機構内で溶液にして使用することも選択し得たはずである。危険な工程をあえて民間企業に要求したのはなぜか。
4 政府は、一民間企業に危険な業務をさせた結果、重大な事故に至らしめたという事実を、自らの責任としてどう考えるか。
右質問する。
政府答弁書
一及び三の1について
株式会社日本核燃料コンバージョン(現在の名称は、株式会社ジェー・シー・オーであり、以下「JCO」という。)が核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「法」という。)に基づいて、昭和五十八年十一月に提出した核燃料加工事業に係る許可申請書(以下「許可申請書」という。)及び昭和六十年八月に提出した核燃料加工事業に係る変更許可申請書(以下「変更許可申請書」という。)において、製造された硝酸ウラニル溶液を入れた複数の容器内の硝酸ウラニル溶液の濃度を同じにする作業(以下「均一化」という。)についての記載はない。しかしながら、許可申請書及び変更許可申請書においては、硝酸ウラニル溶液を貯蔵することについて記載されており、一般的に、液体を貯蔵する際には、その一環として、当該液体を別の容器に詰め替えて複数の容器内の液体の濃度を同じにすることはあり得ることから、硝酸ウラニル溶液に係る適切な臨界管理の方法に従った均一化については、JCOが許可された行為の範囲内に含まれていると考えている。
変更許可申請書において、複数の容器を用いて硝酸ウラニル溶液を貯蔵する場合については、容器ごとの臨界管理を行うことに加えて、容器間の配置の管理による臨界管理を行うことが記載されている。JCOが、硝酸ウラニル溶液を複数の容器から同量ずつ取り出して別の複数の容器に配分する行為(以下「クロスブレンディング」という。)による均一化を行うに当たっては、変更許可申請書に記載された硝酸ウラニル溶液の貯蔵に係る適切な臨界管理の方法に従ったとの報告を受けており、当該報告が事実であれば、当該均一化は違法な行為とはいえないと考えている。
なお、科学技術庁が許可申請書及び変更許可申請書の審査の際に作成した安全審査書においては複数の容器を用いて均一化を行う際の臨界管理の方法に関する明確な記載はない。
二の1について
硝酸ウラニル溶液の輸送については、核燃料物質等の工場又は事業所の外における運搬に関する規則(昭和五十三年総理府令第五十七号)第十六条第一項第六号の規定に基づく発送前の点検のために、硝酸ウラニル溶液の分析が必要とされているところ、動力炉・核燃料開発事業団(現在の名称は、核燃料サイクル開発機構であり、以下「サイクル機構」という。)は、当該分析を実施する回数を減らすため、同一の硝酸ウラニル溶液として取り扱うことができる一単位の量を増やすことができないかどうかをJCOに対して検討依頼したものと承知している。
二の2及び三の3について
一及び三の1についてで述べたとおり、JCOがクロスブレンディングによる均一化を行うに当たっては、変更許可申請書に記載された硝酸ウラニル溶液の貯蔵に係る適切な臨界管理の方法に従ったとの報告を受けており、当該報告が事実であれば、当該均一化は違法な行為とはいえないと考えており、また、臨界を発生させるものでもない。
二の3について
サイクル機構においては、JCOに対してクロスブレンディングによる均一化について指導、助言を行ったことはないと聞いている。
二の4について
JCOは、サイクル機構に対してクロスブレンディングによる均一化を行うことを説明しているが、クロスブレンディングによる均一化については、硝酸ウラニル溶液に係る適切な臨界管理の方法に従っている限り、JCOが許可された行為の範囲内に含まれており、法第十六条第一項の規定に基づく核燃料加工事業の変更許可(以下「加工事業の変更許可」という。)を要するものではないと考えている。なお、加工事業の変更許可に係る申請の準備から許可までに必要な期間については、申請の内容により異なるため、一概にはいえない。
二の5について
サイクル機構においては、JCOが法に基づく核燃料加工事業に係る許可を取得していることを確認した上で、硝酸ウラニル溶液に係る契約を結んだものであると承知している。
三の2について
平成十一年十一月二十六日の原子力安全委員会ウラン加工工場臨界事故調査委員会第七回会合においては、JCOが当初クロスブレンディングによる均一化を行っていたこと、その後貯塔を使って均一化を行っていたが、これは許可された行為の範囲を逸脱する作業であったこと等を報告した。科学技術庁は、平成十一年十月二十一日のサイクル機構からの聞き取りの時に、これまでに用いられた右のような均一化の方法を知り、その後、JCOに対して、その事実の詳細の調査を行っていたものである。
三の4について
サイクル機構は、JCOがクロスブレンディングによる均一化を行うに当たって、一つの容器に入れる硝酸ウラニル溶液を、JCOが臨界管理のために定めた硝酸ウラニル溶液の取扱いの制限質量である二・四キログラムウラン以下とし、かつ容器を適切に配置して取り扱うと認識していたため、JCOの臨界管理の方法に問題はないと考えていたと聞いている。
また、サイクル機構においては、クロスブレンディングによる均一化について、指導、助言を行ったことはないと聞いている。
四の1及び2について
同じ濃縮度のウラン化合物を製造する場合、湿式法による臨界量は、乾式法による臨界量より小さくなるが、いずれの方式についても十分な臨界管理を行うことができ安全上問題ないと考えている。なお、ウラン化合物の製造について、欧米で湿式法から乾式法に切り替えられている場合があるが、その主な理由は、経済的なものであると承知している。
四の3について
サイクル機構においては、硝酸ウラニル溶液の製造等のウランの転換加工に係る技術が既に確立したものであり、また、適切な臨界管理の方法に従って行われれば安全なものであると考えたことから、民間の事業者から硝酸ウラニル溶液の供給を受けることとしたものと承知している。
なお、サイクル機構は、JCOが昭和四十七年以降サイクル機構からウランの転換加工を受託してきた住友金属鉱山株式会社から事業を継承しておりウランの転換加工について豊富な実績を有していること及びJCOがウランの転換加工について豊富な技術を蓄積していることを踏まえて、JCOに対して、硝酸ウラニル溶液の供給を求めたものと承知している。
四の4について
核燃料加工事業については、事業者から許可申請があった場合には、法第十四条第一項の規定に基づき審査を行った上で、許可をしてきたところであり、核燃料加工事業に係る許可を受けた事業者(以下「加工事業者」という。)が当該許可の内容を遵守すること等により、核燃料加工事業における臨界の発生を防止できると考えている。しかし、JCOは、許可の内容に反した違法な作業を行っていたために臨界を生じさせたものである。
政府としては、今般、加工事業者についての施設定期検査制度及び保安規定の遵守状況に係る検査制度の創設などを内容とする法の改正が行われたことを踏まえ、今後とも、加工事業者の監督等に万全を期してまいりたい。
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