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政見放送の情報アクセシビリティに関する質問主意書
衆議院 第218回 第19号お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×6
質問本文
我が国において、国政選挙及び都道府県知事選挙に際して行われる政見放送(以下「政見放送」という。)は、公職選挙法に基づき日本放送協会及び民間放送事業者のテレビ・ラジオを通じて無料で放送される仕組みとなっている。
また、我が国は障害者権利条約を批准しており、同条約は障害を有する全ての人々の社会参加や情報へのアクセス権を保障している。加えて、障害者基本法や障害者差別解消法においても、公的な情報の提供に際し、障害当事者が情報にアクセス出来る適切な配慮を行う必要性が示されている。
しかし現行制度下における政見放送は、手話通訳や字幕の付与は義務化されていない。また、付与が可能であっても政党あるいは候補者の任意に留まっており、これを行わない政党や候補者により、特に聴覚に障害のある有権者に対しての情報提供が十分でないとの指摘がある。
加えて近年では政党や候補者がYouTube等の動画共有プラットフォームやSNSで動画を公開することが増えているが、多くの動画共有プラットフォームで用いられている音声認識AIによる自動字幕機能は必ずしも正確ではなく、候補者が意図する内容を有権者に伝えるには不十分と考えられる。そのため、政見放送自体に手話通訳や字幕が付されていなければ、聴覚障害者は候補者の主張を十分に知ることができず、選挙権の行使に支障を来たすおそれがある。
選挙権は条件を満たす全ての日本国民の権利であり、身体的特徴によってその行使に影響が出ることは最小限に留めなければならないと考える。
以上を踏まえ、以下質問する。
一 政見放送及び経歴放送への手話通訳や字幕付与の導入状況等について
1 スタジオ録画形式においては参議院比例代表選挙でのみ政見放送への字幕を付すことが出来るが、同形式を採る衆議院比例代表選挙や都道府県知事選挙、並びに一部の候補者における参議院選挙区選挙において、字幕放送が付与できない理由を明らかにされたい。
2 衆議院小選挙区選挙ならびに参議院選挙区選挙での持ち込みビデオにおいて、手話通訳や字幕を付していない政党・候補者が存在する事に対し、聴覚障害者への情報保障観点での政府の評価について示されたい。
3 衆議院比例代表選挙や都道府県知事選挙等の政見放送及び経歴放送において、参議院比例代表選挙と同等もしくはそれ以上の水準で手話通訳や字幕放送を導入する制度整備の意向があれば示されたい。
4 衆議院小選挙区選挙での持ち込みビデオにおいて、手話通訳や字幕放送を導入する制度整備の意向があれば示されたい。
二 公共放送を担う日本放送協会で放送される経歴放送では手話通訳及び字幕放送が行われていないが、今後どのような働きかけが必要か、政府の見解を示されたい。
三 政見放送の手話通訳や字幕付与の実施状況と障害者権利条約及び障害者差別解消法との整合性には疑問が残る。
1 障害者権利条約は「手話はろう者にとっての言語である」と明示しており、障害者差別解消法でも公的情報の提供における合理的配慮を行う義務を定めている。政見放送における手話通訳や字幕の付与の現状が、同条約と同法律の趣旨を満たしていると考えるか、見解を示されたい。また、手話通訳や字幕放送の義務化についての見解を示されたい。
2 ろう者の中には字幕の読解が困難な方もおり、手話通訳がなければ十分な意思疎通を図れない場合がある。こうした事情に対し、政府としてはどの様に対応策を講じているか示されたい。また、現状の対応策が十全でない場合、今後の計画について示されたい。
四 YouTube等の動画共有プラットフォームで政党や候補者が公開している動画を以て政見放送の不足を補う考えに対し、諸ウェブサイトでの自動字幕機能の精度が公的情報の補完手段として適切な水準にあるか、政府の評価を示されたい。
五 政見放送の手話通訳や字幕付与を行き渡らせるには、公費負担及び制作支援が必要になると考える。
1 政見放送や経歴放送に関わる費用は公費で賄われているが、手話通訳や字幕を付する際の追加費用について、政府や地方自治体が適切に支援・補助する制度の整備状況を示されたい。
2 政見放送における手話通訳者や字幕制作スタッフの確保、並びに放送局の体制整備等について、政府が公的に支援する計画があれば示されたい。また、計画がない場合は今後の方針を示されたい。
3 衆議院比例代表選挙や都道府県知事選挙等のスタジオ録画を行う政見放送に関しては、日本放送協会の他、民間放送事業者による放送も行われている。特に都道府県知事選挙では、独立放送局を含む地方局が収録・放送を担う事例もあり、手話通訳や字幕を付する資金が十分にない事例が指摘されている。更なる公的支援の必要性について、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
お尋ねについては、令和七年三月二十五日の参議院政治改革に関する特別委員会において、政府参考人が「NHKによりますと、全国のほとんどの放送局では字幕付与に対応できる専門的なノウハウと技術を持った人材や会社が地域にないのが実態で、加えて、字幕を付与するための機材の整備などの課題もあるとのことであり、現状としては限られた期間に全ての選挙区で対応することは困難な状況であるとのことで、事情は変わっていないというふうに聞いてございます。」と答弁しているとおりである。
一の2について
公職選挙法(昭和二十五年法律第百号。以下「法」という。)第百五十条第一項の規定により、候補者届出政党又は公職の候補者が録音し又は録画した政見をそのまま放送する場合においては、政見放送に手話通訳や字幕を付することが可能であるが、手話通訳や字幕を付するかどうかは、各候補者届出政党又は公職の候補者により判断されているものと考えている。
一の3について
お尋ねの「参議院比例代表選挙と同等もしくはそれ以上の水準」及び「導入する制度整備」の意味するところが必ずしも明らかではないが、衆議院比例代表選出議員の選挙及び都道府県知事の選挙の政見放送において手話通訳を付することは可能であり、また、字幕を付することについては、一の1についてでお答えした理由により、現時点では困難であると考えている。
都道府県知事の選挙の経歴放送(法第百五十一条の経歴放送をいう。以下同じ。)において手話通訳や字幕を付することについては、手話通訳や字幕を付することに関する要望の有無や日本放送協会(以下「協会」という。)及び基幹放送事業者(法第百五十条第一項に規定する基幹放送事業者をいう。以下同じ。)の実務上の課題等現状の把握に努めてまいりたい。
一の4について
お尋ねの「導入する制度整備」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一の2についてでお答えしたとおり、手話通訳や字幕を付することが可能である。
二について
経歴放送において手話通訳や字幕を付することについては、手話通訳や字幕を付することに関する要望の有無や協会の実務上の課題等現状の把握に努めてまいりたい。
三の1について
お尋ねの「政見放送における手話通訳や字幕の付与の現状が、同条約と同法律の趣旨を満たしている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)の趣旨も踏まえ、聴覚障害者等に配慮し、手話通訳士の確保状況や協会及び基幹放送事業者の体制等、環境が整った選挙から順次政見放送において手話通訳や字幕を付することを可能としており、政見放送が実施されている選挙においては、手話通訳又は字幕のどちらか一方は付することが可能となっている。
また、政府としては、障害者に対する公職の候補者等に関する情報提供の充実を図ることは重要な課題であると認識しているが、政見放送において手話通訳や字幕を付することを義務付けることについては、選挙運動の在り方に関わる問題であることから、各党各会派において御議論いただくべき事柄と考えている。
三の2について
お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、手話通訳については、政見放送が実施されている全ての選挙において付することが可能となっており、お尋ねのように「現状の対応策が十全でない」とは考えていない。
四について
お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、御指摘の「動画共有プラットフォームで政党や候補者が公開している動画を以て政見放送の不足を補う」という考えを有していないため、お尋ねの「自動字幕機能の精度が公的情報の補完手段として適切な水準にあるか」について評価することは困難である。
五の1について
協会又は基幹放送事業者が行う政見放送及び経歴放送に係る経費の支払基準については、国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律(昭和二十五年法律第百七十九号)第十一条の規定により、総務大臣が定めることとされているところ、総務省において、手話通訳や字幕を付した場合における経費についても、それぞれ算定しており、協会又は基幹放送事業者に周知の上、衆議院比例代表選出議員の選挙及び参議院比例代表選出議員の選挙については同基準により同省が協会又は基幹放送事業者に支払っており、これら以外の選挙についても同基準により支払うことを各都道府県選挙管理委員会に要請している。
五の2について
お尋ねの「政府が公的に支援する計画」の意味するところが必ずしも明らかではないが、総務省において、政見放送における手話が可能な手話通訳士を十分に確保するため、平成二十九年度から研修会を開催しており、引き続き必要な研修を実施してまいりたい。
五の3について
協会又は基幹放送事業者が行う政見放送及び経歴放送に係る経費の支払基準については、物価変動等を踏まえて改定しており、今後も同様に改定していくこととしている。