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台湾条項消滅に関する質問主意書

衆議院 第68回 第14号

提出者
衆議院
提出日
1972年6月13日
内閣転送 1972年6月14日
答弁書受領日
1972年6月23日
提出から10日
答弁の項目数
5
質問 1,767字/答弁 1,162字

質問本文

衆議院議長 ※(注)田 中 殿

台湾条項消滅に関する質問主意書

本年二月のニクソン米大統領の訪中により、米中両国は平和を共通の目標として、冷戦から共存へと米中関係正常化に向かつてその巨歩を踏み出したことは、まさに刮目すべき事柄である。

わが国においても、つとに日中貿易の促進、政党の中国訪問等の積み重ねにより、日中間の友好、交流が強まつており、日中国交正常化のすみやかな実現は、今やわが国政の最重要課題となつている。

しかしながら、日中問題の核心は台湾問題であり、なかんずく、一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明にある“台湾の安全は日本の安全にとつて極めて重要な要素である”とする、いわゆる台湾条項が、―今後も存続するのか、もしくは消滅したのであるか、―この点の疑義が明らかにされるのでなければ、日中国交正常化への進展は、到底望むべくもないと考える。

ついては、この際次の諸点に関する政府の見解を明確に示されたい。

一 台湾の法的地位については、カイロ宣言で、“満州、台湾及び膨湖島のごとき日本国が中国人より盗取した一切の地域を中華民国に返還すること”が明示され、これを受けて、ポツダム宣言は“「カイロ」宣言の条項は履行せらるべし”として、日本の降伏条件を明定し、かつ、日本は、降伏文書でこのポツダム宣言の条件を受諾したものであり、この歴史的経緯にかんがみるときは、台湾が中国の領土に属することは、もはや国際常識であり、疑う余地はないと考えるがどうか。

二 さきに台湾政府を追放するアルバニア決議案が国連総会において採択され、このように国連の決定が下された以上、国連中心主義を外交政策の基本とするわが国としては、中国を代表する唯一の正統政府は中華人民共和国政府であることを厳粛かつ率直に受けいれ、対中国政策を積極的に推進すべきであると考えるがどうか。

三 台湾は中国の領土であり、中国を代表する唯一の正統政府が中華人民共和国政府であるとの前提に立つときは、台湾問題は中国の内政問題であつて、国際法上他のいかなる国もこれに介入する権利を持たないのであるから、今更日米安保条約が台湾の防衛のために発動できるものとするがごときは、矛盾撞着もはなはだしいと考えるがどうか。

四 台湾問題が中国の内政問題である以上、日米安保条約の極東における国際の平和及び安全の維持に関するいわゆる極東条項は、共産圏地域たるべき台湾に対しては、建前としてはもはや機能することの意義を失い、したがつて、この極東条項は台湾問題に関する限り空文化したものと考えるがどうか。

五 以上の認識に立つときは、一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明にあるいわゆる台湾条項は、中国の内政問題に介入することとなるので、最近、政府の言明する通り、それは事実上消滅したものと考えるがどうか。

六 本年二月の米中共同コミュニケで、米国は、中国の平和五原則(主権と領土保全の尊重、他の国家に対する不可侵、不干渉、平等互恵、平和共存)を認め、台湾問題が中国人自身により平和的に解決されるという見通しの下に、米軍兵力及び軍事施設を台湾から漸進的に削減することを声明しているが、このような動きは、台湾問題に関する日米安保条約の極東条項ならびに佐藤・ニクソン共同声明の台湾条項の形骸化を裏づける証左であると考えるがどうか。

七 およそ国家間の合意は、関係国にこれを遵守する義務を負わせるものであるが、その後においてその合意成立当時の国際事情に重大な変化を生じたような場合には、いわゆる事情変更の原則を類推し、その合意の内容に変更を加えられたものと解するのが相当であり、したがつて、一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明にある台湾条項は、その後における中華人民共和国の国連復帰等の事情変更により、それが事実上消滅したものであることをあらためて、ここに確認すべきであると考えるがどうか。

八 一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明にある台湾条項は、それが事実上消滅したものとすれば、その存在こそが日中国交回復を妨げる大いなるネックであり、かつは、すでにそれが極東における国際の平和及び安全に何らかかわりがないものとなつた以上、すみやかにこれを削除すべきものと考えるがどうか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

わが国は、サン・フランシスコ平和条約により、台湾に対する一切の権利・権原を放棄しているのであるから、台湾の帰属については発言する立場にない。

しかしながら、「台湾が中華人民共和国の領土である」との中華人民共和国政府の主張は、御指摘のような従来の経緯、国連において中華人民共和国政府が中国を代表することとなつたこと等から、十分理解しうるところである。

二について

政府としては、国連において中華人民共和国政府が中国を代表することとなつたことを十分念頭におき、中華人民共和国政府が中国を代表する正統政府であるとの認識に立つて日中国交

正常化のための政府間交渉に臨む考えである。

三、四、五及び七について

政府としては、いわゆる台湾問題については、両当事者間の平和的な話し合いによつて、公正、妥当な解決がはかられるよう衷心希望するものであり、また、幸にして、このような話し合いによる解決がもたらされれば、その結果を尊重する考えである旨を従来より一貫して明らかにしてきている。

台湾地域の国際的な緊張は、米中関係改善の動きを中心とする最近の国際情勢の変化により、全体として緩和の方向に向かつており、この地域をめぐつて武力紛争が発生する可能性は幸にしてほとんどなくなつたと考えられる。このような意味において、一九六九年の日米共同声明第四項において述べられている台湾地域における平和と安全に関する見解(いわゆる台湾条項)の基礎にあつたこの地域の情勢に対する認識は変わつたものと考える。

なお、仮定の問題として、この地域をめぐつて武力紛争が発生する事態においては、ひとりわが国のみならず、周辺アジア諸国にとつても、国際の平和及び安全の維持という見地から重大な関心事とならざるをえない。したがつて、現状においては、政府として、日米安保条約の極東の範囲を改めることは考えていない。

六について

米中共同声明において米国政府が確認している台湾からの米国軍隊と軍事施設の撤退という最終目標及びこれに至る過程における緊張緩和に伴う漸進的な米国軍隊と軍事施設の減少についての意向表明は、わが国としても大いに歓迎すべきものであり、いわゆる台湾問題が平和的に解決され、かかる目標が実現した暁においては、安保条約の極東の範囲についても、所要の調整が行なわれることとなるものと考える。

八について

いわゆる台湾条項及び安保条約の極東の範囲に関する政府の見解は、以上で述べたとおりである。

日中間には各種の問題があり、かつ、日中双方にはそれぞれの立場と主張があるが、日中双方が善隣友好関係の樹立を標榜して政府間の話し合いを積み重ねてゆくことができれば、相互理解と相互信頼がもたらされるであろうし、日中関係は大きく前進するものと考える。

右答弁する。

衆議院の原文

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