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納税者の権利憲章に関する質問
参議院 第142回 第16号
質問本文
納税者の権利憲章に関する質問主意書
平成十年四月八日の参議院予算委員会において、「G7の国の中で納税者権利憲章等を持たない国は、日本とイタリアの二国だけである」旨を指摘したところ、松永光大蔵大臣から、「憲法、国税通則法等により、納税者憲章等のある国と同等の権利が保障されていると理解している」旨の答弁があり、重ねて「日本の租税法では更正請求、更正決定など事後の手続は述べられているが、肝心の申告、調査、課税処分の手続等、事前手続については全く定められておらず、課税庁である国税庁と納税者との間のトラブルの多くが事前手続にあることを認識し、先進資本主義国の中で最も遅れている納税者の権利を法律をもって定めるべきである」旨の質問を行ったところ、尾原榮夫大蔵省主税局長は、「一つの法令等にまとまったものがないという指摘は、そのとおりだが、納税者の権利は憲法及び法律の規定等で既に保障され、加えて我が国の税務行政は権限の範囲内で納税者の権利保障に十分配慮しながら適正に行われていると考えており、改めて納税者権利憲章等を制定する必要はないと認識している」旨の答弁を行っている。
このような政府の答弁に対し、改めて質問する。
一 納税者の権利憲章等で定められているような納税者の権利については、憲法及び法律の規定などによって既に保障されているとしているが、国税通則法その他各種租税法で定められているのは更正の請求、更正決定の手続等事後手続についてであり、所得税法、法人税法及び相続税法などで規定する質問検査権の行使にあたって、事前手続は定められていない。各種租税法等で、税務調査手続について事前手続が具体的に記されているのであれば、 その法律名と条文を示されたい。
二 一般に納税者の権利憲章と言われているのは、先進諸国において納税者の権利保護を目的として法律又は公文書(国民に発表するもの)の形で制定、公布されたものであり、具体的には次のものである。
年 国 名 法律・公文書名
一九七五 フランス 税務調査における納税者憲章
一九七七 西ドイツ 租税基本法改正
一九八一 フランス 租税手続法
一九八五 カナダ 納税者の権利宣
一九八六 イギリス 納税者憲章
一九八六 ニュージーランド 基本的宣言
一九八七 フランス 納税者憲章改訂版
一九八八 アメリカ 納税者権利章典
一九八八 アメリカ 納税者としてのあなたの権利
一九八九 オーストラリア 国税庁サービス方針
一九九一 イギリス 納税者憲章改訂版
一九九七 韓国 納税者権利憲章
これらの法律又は公文書に共通しているのは次の項目である。
イ 丁重かつ配慮ある対応
ロ 誠実性の推定
ハ 文書による調査の事前通知
ニ 調査理由の開示
ホ 納税者憲章の交付又は情報の提供
ヘ 調査期間の制限、再調査の禁止
ト 結果の通知(是認通知を含む)
これらの項目が具体的に定められている租税関係法規があるとすればその法律名と条文を示されたい。例えば国税通則法第一六条第一項第一号の申告納税方式のなかに上記イ、ロの趣旨が含まれていると理解してよいのか。含まれていない場合は、これらの趣旨が含まれている法律名と条文を示されたい。
また、税務行政の中で内部職員を拘束する訓令である税務運営方針(国税庁長官昭和五十一年四月)をさすのであるとすると、これは国民に発表されていない文書であるし、しかも質問検査権の行使で納税者のところに訪れる税務職員ですらその文書の存在を知らないというものである。これ以外にあるとすると、その法律名と条文を示されたい。
二 我が国の経済は先進資本主義国の仲間入りをしているが政治は後進国であると言われており、その典型例として「納税者の権利の問題」がある。主権在民という現行憲法、法制下では、納税者・国民が主人公であると同時に国家財政を支えている主人公そのものなのである。納税者が気持ちよく税金を納め国を支えるという方向にするために、納税者の権利憲章の法制化は急務であると考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
諸外国の納税者憲章等において納税者の権利として掲げられている項目及びその法的位置付け等は、各国によって異なっており、必ずしも共通するものではないと承知している。我が国においては、かかる諸外国の納税者憲章等に掲げられているような納税者の権利については、日本国憲法第八十四条に定められているいわゆる租税法律主義の下、国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)その他の国税に関する法律(以下「各税法」という。)において具体的な規定が設けられているものがあること及び各税法の具体的規定等の趣旨に則した適正な税務行政により、基本的にその保護が図られている。税務調査については、例えば、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二百三十四条に質問検査に関する規定が設けられているが、最高裁判所の裁判例によれば、「質問検査権を行使しうべき場合につき、具体的かつ客観的な必要性のあることを要件としており、質問検査の範囲、程度、時期、場所等、権限ある収税官吏の合理的な選択に委ねられていると解される実施の細目についても、質問検査の必要と相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度内という制限を課して客観的にその範囲を画定している」と解されている(昭和五十八年七月十四日最高裁判所判決)。したがって、質問検査の範囲、程度、時期、場所等の税務調査の実施の細目は、権限ある税務職員の合理的な選択にゆだねられており、質問検査の必要と相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度内という制限を課して、客観的にその範囲が画定されているものと考えている。また、国税庁において税務行政を遂行する上での基本原則を税務職員に示した税務運営方針(昭和五十一年四月一日)は、一般の税務調査においては事前通知の励行に努めること等としている。税務調査における納税者の権利は、このような質問検査に関する所得税法第二百三十四条を始めとする各税法の規定、税務運営方針等の趣旨に則した適正な税務行政を通じて保護が図られているところである。
二について
御指摘のイから卜までに掲げられている項目は、必ずしも各国の納税者憲章等に共通して掲げられているものではないと承知している。例えば、アメリカ合衆国の「納税者権利章典」及び「納税者としてのあなたの権利」においては、誠実性の推定、税務調査の事前通知及び調査期間の制限に関する項目は掲げられていないと承知している。
我が国においては、御指摘のイから卜までに掲げられている項目については、調査の目的を達成することができなくなるような場合を除いて事前通知を行うこと、必要に応じて概括的な調査理由の開示を行うこと、再調査は新たな資料情報等によって先の調査で把握した所得金額が過少であることが判明した場合等に行うこと等、所得税法第二百三十四条を始めとする各税法の規定、税務運営方針等の趣旨に則した適正な税務行政を通じて、基本的にその保護が図られているところである。なお、申告納税方式には、御指摘のような趣旨は含まれていない。
三について
一について及び二についてで述べたとおり、我が国においては、諸外国の納税者憲章等に掲げられているような納税者の権利については、基本的にその保護が図られており、改めて納税者憲章等を制定する必要はないと考えている。なお、今後とも納税者の権利に配慮した適正な税務行政に努めてまいりたい。
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