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東海地震と浜岡原発の耐震性等に関する質問

参議院 第150回 第14号

提出者
参議院
提出日
2000年11月28日
内閣転送 2000年11月29日
答弁書受領日
2000年12月26日
提出から28日
答弁の項目数
9
質問 3,860字/答弁 2,821字

質問本文

東海地震と浜岡原発の耐震性等に関する質問主意書

東海地震の発生が非常に切迫していることを地震の専門家らがデータに基づいて警告している。科学技術庁防災科学技術研究所の岡田義光地震調査研究センター長は、「東海地震の震源域の駿河湾沿岸を中心とした静岡県中部地域で、昨年(一九九九年)夏から地震の回数が減っている。経験則からこの静穏化現象は、大地震の典型的な前兆現象として知られており、少なくとも一五年間で初めてのことである」(二〇〇〇年二月、地震予知連絡会に提出した観測レポート)と述べている。

東海地震の発生に関してその前兆現象の監視・把握の任務を担い、最も信頼できるデータを把握している地震防災対策強化地域判定会の会長である溝上恵東京大学名誉教授は、一一月一四日に開催された静岡県等主催の「地震防災シンポジウム」で、「一九九六年に川根町直下で発生した地震を節目に、東海地震の震源と想定されているプレート同士の固着域で地震の静穏化が続いていること、御前崎の沈降の状況が変化したと見られること、最近の伊豆諸島周辺の地震活動などを解析し、総合的に考えて、東海地震は一段と切迫し、ステージが進んだとの疑いを持ちながら、更に追跡していく必要がある」という見解を述べている。

政府がマグニチュード八クラスの巨大地震を想定している東海地震の想定震源域の真ん中に、中部電力浜岡原発の四基の原子炉があるが、東海地震は浜岡原発にとってほぼ直下の巨大地震となり、震度七の地震動となることを地震の専門家が指摘している。石橋克彦神戸大学教授は、「(原発の耐震設計は)地震の想定が根本的に間違っており、きわめて不十分(中略)、正常な安全感覚があるならば、(中略)浜岡原発は廃炉を目指すべきである。」と提言されている(岩波書店「科学」一九九七年一〇月号)。

政府も中部電力も「浜岡原発は想定されるいかなる地震にも耐えられる」と主張しているが、その地震の想定が間違っていれば、浜岡原発が東海地震に耐えられないのは当然のことである。去る一〇月六日に発生した鳥取県西部地震は、原発の耐震安全性の根拠となっている「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(以下「耐震設計審査指針」という。)及び安全審査が間違っていることを改めて認識させる地震であった。

原子炉内でウランを核分裂させて発電する原発は、膨大な放射能を内蔵する原子炉の健全性を守るために、あらゆる設備が完璧な耐震性を有していなければならず、地震により数ミリの亀裂が入ることも許されない。また、放射性物質は莫大な崩壊熱を有するため、発電中も、原子炉停止後も常に水で冷却して崩壊熱を除去しなければならない。したがって、炉心に水を送るすべての配管に絶対的な健全性が要求される。しかし、浜岡原発では、それぞれ重大な事故歴があったり、老朽化問題、原子炉圧力容器底部のひび割れ事故、配管検査データ捏造事件などがあり、絶対的な健全性を有しているとはいえない。

浜岡原発が切迫している東海地震に耐えられるかどうかは、地域住民はもとより、すべての国民にとって重大な関心事である。政府がこの不安に対し、すべてを科学的なデータに従って健全性を明らかにすることは、高速増殖炉「もんじゅ」ナトリウム火災事故やJCO臨界事故等によって増大した原子力に対する国民の不安感と不信感を払拭するための唯一最高の手段であると考えるので、以下質問する。

一 東海地震の発生が切迫している可能性があるとする岡田義光氏や溝上恵氏の警告について、政府はどのように評価しているか明らかにされたい。

二 東海地震発生時の震源断層破壊の進行については様々なケースが考えられるが、浜岡原発一、二、三、四、五号機の耐震設計においてはどのようなケースを想定しているか。各号機についてすべてのケースを明らかにされたい。

三 二のそれぞれのケースについて、解放基盤表面での地震動及び周波数特性の計算手法、計算式、計算値を、浜岡原発一、二、三、四、五号機すべてについて、ケースごとにすべて明らかにされたい。

四 去る一〇月六日に発生した鳥取県西部地震は、気象庁の発表によると日野町観測点(以下「日野町」という。)では震度六強であった。原子力発電所の安全審査の手法を用いて、歴史地震から、日野町での最大震度を評価すると、最大震度五となり、それによる解放基盤表面での最大速度は九・六カインとなるが、これに間違いはないか。間違いであるとすれば何カインとなるか。

五 原子力発電所の安全審査の手法を用いて、活断層から、日野町での値を評価すると、震源距離から求める最大速度は一二・〇七カイン、断層距離から求める最大速度は一二・七八カインとなるが、これに間違いはないか。間違いであるとすれば何カインとなるか。

六 原子力発電所の安全審査の手法を用いて、地震地体構造から、日野町での値を評価すると、最大速度は一七カインとなるが、これに間違いはないか。間違いであるとすれば何カインとなるか。

七 原子力発電所の安全審査の手法を用いて、直下地震から、日野町での値を評価すると、最大速度は一三・五カインとなるが、これに間違いはないか。間違いであるとすれば何カインとなるか。

八 鳥取県西部地震発生以前に、日野町において原発の設置許可申請を行っていれば、最大速度は一七カインの想定で安全審査を通っていたこととなるが、これに間違いはないか。間違いであるとすれば、正しくは何カインで安全審査を通っていたことになるのか。

九 科学技術庁防災科学研究所のデータから、鳥取県西部地震における日野町での解放基盤表面での最大速度を求めると四四・〇七カインとなる。原子力発電所の安全審査の手法を用いて算定した最大速度一七カインは、その二分の一以下である。鳥取県西部地震に当てはめると、現行の安全審査及び耐震設計審査指針における最大速度の想定は著しく過小評価となると言わねばならないが、これに対する政府の見解を明らかにされたい。

十 現行の原子力発電所の安全審査及び耐震設計審査指針において、解放基盤表面における最大速度の算定に使われている金井式については、科学技術庁のK-ネット・データの実測値と比較した場合、鳥取県西部地震に当てはめた場合などから過小評価になることは明らかである。兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全性検討会委員である渡部丹慶応大学教授、東海第二原発訴訟政府側証人である伯野元彦東洋大学教授ほか、多くの専門家が既にそのことを認めている。したがって、政府が山口哲夫参議院議員提出の「浜岡原子力発電所の耐震性に関する質問主意書」に対する答弁書(一九九七年五月三〇日)で「金井式は、地震工学の分野において一般にその妥当性が十分認められており、今日においてもなお広く使用されている経験式である。浜岡原子力発電所は岩盤に直接支持される設計になっているため、岩盤上における地震動を算定する計算式として金井式を用いることは適切である」と回答したことは間違いと言える。そこで、政府の現時点での金井式についての見解を明らかにされたい。

十一 現行の原子力発電所の安全審査及び耐震設計審査指針において、活断層の認識されていない地点での直下地震の想定はマグニチュード六・五でよいとしている。しかし、活断層の認識されていなかった地点において、マグニチュード七・三(暫定値)の鳥取県西部地震は発生した。これは現行の安全審査及び耐震設計審査指針が明らかに誤りであることを示している。これについての政府の見解を明らかにされたい。

十二 地震学会会長である入倉孝次郎京都大学教授は、その論文「阪神・淡路大震災を起こしたものは何であったのか」(岩波書店「科学」二〇〇〇年一月号)で、「現行の耐震設計審査指針は、一九七八年に制定されたもので、阪神・淡路大震災の経験と二〇年間の地震学及び地震工学の研究成果をふまえた検討が必要と考える」と指摘している。最新の知見を用いた耐震設計審査指針の改定が早急に必要であると考えるが、これに対する政府の見解を明らかにされたい。

十三 東海地震発生が切迫している可能性があるにもかかわらず、浜岡原発の耐震設計の前提となる地震の想定が間違っており、地震動(最大速度)の想定が過小評価であるという指摘が専門家からなされている。よって東海地震発生時に浜岡原発の四基の原子炉が放射能放出事故を絶対起こさないという保証はない。防災上の観点から、中部電力に対する浜岡原発即時停止命令の発令をも含めた緊急措置を講ずる必要があると考えるが、これについての政府の見解を明らかにされたい。

十四 石橋克彦神戸大学教授は、朝日新聞本年一一月一日の「論壇」において、(鳥取県西部地震によせて)「この地震は、日本列島のほぼ全域が大地震活動期に入っていることをあらためて示したと考えられる。」、「原発の耐震設計審査指針の改訂と全国の原発の耐震性の総点検は一刻の猶予もならない。」と主張している。このことからも、耐震安全性に対する不安は、浜岡原発にとどまらず、日本列島全域に設置されているすべての原子力施設について言えることである。よって、すべての原子力施設について、老朽化・事故歴等を勘案した、耐震安全性についての早急な再検討が必要であると考える。これに対する政府の見解を明らかにされたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

駿河湾から四国沖までの区域では、これまでマグニチュード八程度の大規模な地震が六百年余りにわたり百年から百五十年程度の間隔で繰り返し発生しているが、当該区域のうち駿河湾西岸の区域では、百四十年余りにわたり大規模な地震が発生しておらず、また、現在においても地殻のひずみの蓄積が進行している状況にあることから、近い将来に東海地震が発生する可能性が高いと考えられている。

政府としては、東海地震について、異常な地殻の変動等の現象が現れた場合に大規模な地震が発生するおそれがあると認めることは可能であるが、御指摘の文献等に係る現象を根拠として地震発生の切迫性の程度を把握することは、現在の科学技術の水準においては不可能であると考えている。

二及び三について

浜岡原子力発電所三・四・五号機での地震動の評価については、いずれも、マグニチュード八・〇の想定東海地震、マグニチュード八・四の千八百五十四年安政東海地震及びマグニチュード八・五の限界的な規模の地震として南海トラフ沿いに想定される地震を想定しており、その際、震源断層破壊の進行についても考慮に入れて検討している。

浜岡原子力発電所三・四・五号機の解放基盤表面での地震動及び周波数特性に関する計算手法及び計算式については、断層モデル及びいわゆる大崎の手法を用いており、詳細についてはそれぞれ「地震断層を考慮した地震動スペクトルの推定(昭和五十四年)」及び「Guideline for Evaluation of Basic Design Earthquake Ground Motions(昭和五十四年)」に記述されている。

これらに基づく地震動及び周波数特性の計算値は、浜岡原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(三号原子炉の増設)の添付書類の六-五-百五十ページ(基準地震動の応答スペクトル値)、六-五-百七十九ページ(S1地震動対象地震の応答スペクトル)及び六-五-百八十ページ(S2地震動対象地震の応答スペクトル)に記載されている。

また、浜岡原子力発電所一・二号機については、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(昭和五十三年十一月八日及び昭和五十六年七月二十日原子力安全委員会決定。以下「耐震設計審査指針」という。)の策定前に設置許可がされており、耐震設計に用いる地震動等の評価に際して、前述のような計算手法等を用いていない。しかし、浜岡原子力発電所一・二号機についても、三・四・五号機と同じ地震動を用いて計算した結果、耐震安全性が確保されていることが確認されている。

四から八までについて

お尋ねの点については、前提とされる条件等が不明確であるので、答弁を差し控えたい。

九について

原子力発電所の耐震安全性の審査に当たっては、一般電気事業者及び卸電気事業者に対して、詳細な地質調査を行った上で当該地点に解放基盤表面としての要件を満たすものが存在することを確認すること、その解放基盤表面での最大速度振幅の金井式による計算をすること等を要求している。御指摘の日野町観測点においては、このような詳細な地質調査が行われていないため、解放基盤表面としての要件を満たすものが確認できるか否かは不明であることから、右観測点が解放基盤表面としての要件を満たすとの前提に立って最大速度振幅の値を評価することは差し控えたい。

十について

政府としては、従前から申し上げているとおり、金井式は、地震工学の分野において妥当性が十分認められており、今日もなお広く使用されている経験式であると認識している。

なお、四から八までについて及び九についてで述べたような事情から、科学技術庁の強震観測網(Kネット)データの実測値と金井式に基づくお尋ねの計算結果とを比較することはできない。

十一について

鳥取県西部地震震源付近の地下の活断層については、これまで、その存在が広く確認されてはいなかったものの、その存在を示唆していた学説の評価を含め、現在、各種機関において調査が進められているところであり、調査の結果を踏まえ、今後必要に応じ耐震設計審査指針等の相当性等につき検討を進めていく所存である。

十二について

安全審査の指針類は、新たな知見が得られれば、その内容を適切に評価し、その結果を反映していくべきものである。

耐震設計審査指針については、平成七年(千九百九十五年)兵庫県南部地震の状況を踏まえて設置された「平成七年兵庫県南部地震を踏まえた原子力施設耐震安全検討会」(以下「耐震安全検討会」という。)において検討が行われ、右地震の状況等に照らしても、耐震設計審査指針の妥当性が損なわれるものではないことが確認されている。

しかしながら、耐震安全検討会の報告書にも示されているように、耐震設計においては、常に最新の知見を反映するなど耐震安全性に対する信頼性を一層向上させていくための努力を不断に進めていくべきものであり、政府としては、現在においても最新の知見の収集分析に努めているところである。

十三について

二及び三についてで述べたとおり、浜岡原子力発電所の安全上重要な施設については、マグニチュード八・〇の想定東海地震、マグニチュード八・四の千八百五十四年安政東海地震及びマグニチュード八・五の限界的な規模の地震として南海トラフ沿いに想定される地震を想定して安全性の検討を行っており、政府としては、浜岡原子力発電所の東海地震に対する安全性は十分に確保されているものと認識している。

なお、今後とも、必要に応じ、防災上の措置を適切に講じていく考えである。

十四について

原子力発電所の耐震設計の審査に当たっては、耐震設計審査指針等に基づき、次のような事項を確認している。

1 地点選定に当たって活動性の認められる活断層を避けていること

2 重要な建物・構築物を岩盤に支持させていること

3 耐震設計に用いる地震力については、解放基盤表面における地震動に基づいて評価していること

4 想定されるいかなる地震力に対しても十分な耐震性を有していること

このため、原子力発電所の耐震設計については、耐震上の安全性に問題はないものと認識している。

また、耐震設計審査指針策定前の発電所についても、現在の指針に基づいた評価を行い、安全性を確認し、平成七年に、その結果を公表しているところである。

したがって、御指摘のような耐震安全性についての再検討を行うことは、現時点では考えていない。

なお、原子力発電所については、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第五十四条の規定に基づき、一定期間ごとに、通商産業大臣の検査を受けなければならないこととされており、設備の性能及び機能が技術上の基準に適合していることの確認を行って、供用期間中における設備の健全性を維持するなど、老朽化対策にも万全を期している。

参議院の原文

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