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高速増殖原型炉「もんじゅ」の安全審査に関する質問主意書

参議院 第156回 第1号

提出者
参議院
提出日
2003年1月27日
内閣転送 2003年1月29日
答弁書受領日
2003年2月7日
提出から11日
答弁の項目数
2
質問 2,614字/答弁 795字

質問本文

福井県敦賀市に立地する高速増殖原型炉「もんじゅ」は、一九九五年にナトリウム漏れ火災事故を起こし、以降七年間運転を停止している。高速増殖炉は日本で一般的に運転されている軽水炉型原発とは異なり、液体ナトリウムで炉心を冷却するシステムである。液体ナトリウムは空気中で熱が加えられると自然発火するし、水と接触すると爆発的な水ナトリウム反応を起こす。しかし、高速増殖炉も原子力発電と同様に最終的には水を沸騰させ、発生した蒸気をタービンに吹き付けて回転させ発電する仕組みである。どこかで熱を伝えるためナトリウムと水を近づける必要がある。そこで炉心をめぐるナトリウムの一次系、水が沸騰してタービンを回す三次系、その間で一次系ナトリウムの熱を受け取り、三次系の水に熱を伝えるナトリウムが流れる二次系という三サイクル構造になっている。最も危険が大きいのは、二次系ナトリウムの熱を三次系の水に伝える蒸気発生器である。ナトリウムと水が蒸気発生器内をぐるぐる回っている伝熱管の厚さ一ミリもない薄い壁一枚を隔てて接している。もしこの壁に小さなピンホールができただけでも水ナトリウム反応の爆発が起きる。小爆発が他の伝熱管も同時に破壊し、次々と爆発が広がる現象に発展していく可能性がある。これを高温ラプチャー現象と呼んでいる。また、一次系が窒素雰囲気で満たされているのに対し、二次系配管室は普通の空気であり、摂氏五百度に熱せられたナトリウムが噴出すれば直ちに発火し、大きな火災事故を引き起こす。蒸気発生器の崩壊は、それ自体、二次系ナトリウムの大量放出であり、施設全体を大火災に巻き込み、建屋そのものを崩壊させるおそれがある。

「もんじゅ」に運転許可を与えた安全審査は、このように想定される非常に過酷な事故の発生があっても、施設全体の健全性が保たれることを証明するものでなければならない。ところが、一九九五年十二月八日に発生した「もんじゅ」のナトリウム漏れ火災事故は、最悪の事故に比べれば小規模だったにもかかわらず、火災温度は予想以上に高温となり、施設の健全性を維持するための設備や機器類を崩壊寸前のところまで追い込んだ。安全審査に甘さがあり、日本の原子力安全規制システムの欠陥であると厳しく指摘されたものである。

さて、核燃料サイクル開発機構は事故から六年後の二〇〇一年六月六日に設置変更許可申請をし、経済産業大臣は二〇〇二年五月九日これを妥当とし、同日、妥当性についての判断を原子力安全委員会に諮問した。原子力安全委員会は同年十二月十二日に妥当であるとの答申を出した。これを受け経済産業大臣は十二月二十六日、この設置変更の申請を許可した。しかし、この設置変更許可申請には、耐震設計基準の見直し、蒸気発生器内の細管を検査するETC(渦電流探傷検査)装置の欠陥、二次系の太い配管が真っ二つに切れる大口径破断の可能性、二次系配管室の床ライナーの耐熱強度問題など、多くの問題が検討不十分のまま取り残されている。中でも、設置変更許可申請で機器の新増設が行われたにもかかわらず、それらに義務付けられている「単一故障を仮定した安全解析」が行われていないという問題は最も重大である。なぜなら、原子力安全委員会自身が義務付けた要件すら満たしていない設置変更許可申請に対し、経済産業大臣と原子力安全委員会が妥当と判断し認可を与えたことになるからである。これが事実であれば、原子力安全規制当局の責任は極めて重いと言わざるを得ない。よって、以下質問する。

一 核燃料サイクル開発機構から経済産業省に提出された「もんじゅ」の原子炉設置変更許可申請は、「もんじゅ」原子炉施設の事故時における安全対策について、原子炉施設の安全性評価のために想定する二つの事故に備えるため、二つの「異常影響緩和機能機器」の新増設が行われた。その一つは、重大な火災事故につながる「二次系冷却材漏洩事故」時に、漏洩したナトリウムを速やかに抜き取り、火災と床ライナー腐食を抑えるために設ける「緊急ドレン系」である。もう一つは、「蒸気発生器伝熱管破損事故」時に伝熱管破損部から高温の水若しくは蒸気が噴出したことを検知して、「高温ラプチャー現象」を防止するための「カバーガス圧力計」である。

「異常影響緩和機能機器」のうち、安全上不可欠な系あるいは機器については、「もんじゅ」の安全審査でも参考にすることが義務付けられている「発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針」(以下「審査指針」という。)によって、重要度に応じて分類することが指示されている。今回新増設が行われた二つの「異常影響緩和機能機器」については、「もんじゅ」の設置変更許可申請書の補正申請(二〇〇一年十二月十三日)では、いずれも重要度の高い「MS-2」クラスとすることが申請された。

さらに、審査指針は重要度の高いクラスに分類された機器については、事故時に確実に機能を発揮することを確認するため、事故の安全解析において「単一故障を仮定した解析」を行うことを求めている。つまり、「異常影響緩和機能機器」に指定された系あるいは機器について、関連する機器の一つが故障などで機能しなくなる「単一故障」を想定し、それでも、事故によって発生する異常を抑制する機能を発揮できることを確認しなければならない。ところが、この二つの機器については、審査指針が求める「単一故障を仮定した解析」を行った形跡がない。

1 「もんじゅ」の設置変更許可申請で新増設が行われることになった「緊急ドレン系」と「カバーガス圧力計」は、ともに重要度の高いクラスの「異常影響緩和機能機器」であることに間違いはないか。

2 これら二つの機器について、審査指針が求める「単一故障を仮定した解析」は行われたか。

3 行われているのであれば、その解析の全文を公表されたい。

二 新増設された二つの「異常影響緩和機能機器」について、審査指針が求める「単一故障を仮定した解析」が行われていないのであれば、審査指針の要件を満たしていない申請を二〇〇二年五月九日に経済産業大臣が「妥当」という判断を下したのはなぜか。

三 同様に原子力安全委員会は、自ら求めた審査指針の要件を満たしていない設置変更許可申請を妥当とした経済産業大臣の判断を、改めて妥当と結論したのはなぜか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一の1について

お尋ねの「緊急ドレン系」とは二次ナトリウム充てんドレン系を指すものと考えるが、二次ナトリウム充てんドレン系及びカバーガス圧力計の「発電用軽水型原子炉施設の安全機能の重要度分類に関する審査指針」(平成二年八月三十日原子力安全委員会決定)に基づく重要度分類は、異常影響緩和系のクラス二(MS-2)である。

一の2及び3、二並びに三について

お尋ねの「単一故障を仮定した解析」とは、「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」(平成二年八月三十日原子力安全委員会決定。以下「評価指針」という。)Ⅱの5.2の(2)にいう「単一故障を仮定した解析」を指すものと考えるが、評価指針Ⅱの5.2の(2)は、原子炉施設において事故等が発生した場合の影響について評価指針に基づき安全確保の観点から解析を行う際に、原子炉停止、炉心冷却又は放射能閉じ込めの機能ごとに、その機能を担う機器の単一故障(単一の原因によって一つの機器が所定の安全機能を失うことをいい、従属要因に基づく多重故障を含む。)であって、当該解析の結果に最も厳しい影響を与えるものが発生したと仮定すべき旨を定めたものである。

お尋ねの「異常影響緩和機能機器」である二次ナトリウム充てんドレン系及びカバーガス圧力計は、原子炉停止、炉心冷却又は放射能閉じ込めのいずれの機能をも担う機器ではなく、評価指針に基づく解析において単一故障の発生を仮定すべき機器には該当しない。

このため、平成十三年六月に核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第二十六条第一項の規定に基づき核燃料サイクル開発機構が行った変更の許可の申請(平成十三年十二月になされた補正後のもの)は「審査指針の要件を満たしていない申請」又は「審査指針の要件を満たしていない設置変更許可申請」であるとの御指摘は当たらないと考える。

参議院の原文

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