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国際熱核融合実験炉(ITER)に関する質問主意書

衆議院 第153回 第23号検討してまいりたい ×2

提出者
社会民主党・市民連合
提出日
2001年11月27日
内閣転送 2001年11月28日
答弁書受領日
2002年1月22日
提出から56日
答弁の項目数
17
質問 2,727字/答弁 4,238字

質問本文

原子力委員会は今年六月にITER計画の推進、日本へのITER誘致の方針を決定した。その後、文部科学省がITER誘致候補地の選定作業を進め、十月十八日、那珂町と六ヶ所村が「十分な適性を有している」との選定結果を発表した。誘致先の決定は総合科学技術会議と政府にゆだねられることになった。

ITERは原発などと同じように住民の被曝の危険を伴う核施設である。ITER計画には莫大な投資を必要とし、しかも、ITERから核融合実用化に至る道筋は具体的に示されてはいない。このような問題点が誘致候補地の住民や国民に対して十分に説明されないまま、日本への誘致作業が進められていることは重大である。

すでに、誘致候補となっている地元の住民、全国の市民団体と協力してITERに関する問題点を文部科学省や内閣府と三回にわたって話し合ってきたが、その経過を踏まえて、以下の点を質問する。

一 国の行政改革推進事務局は「特殊法人等の個別事業見直しの考え方」の〈日本原子力研究所〉の項で、「ITER」について「誘致に係わる費用対効果分析、我が国の原子力研究開発の現状(高速増殖炉などの実用化目標時期、道筋、実用化までに要するコストなど)など、国民にわかりやすく情報提供し、国民的議論を行い、ITER参加と誘致の適否を慎重に検討する」こととしている。

(一) ITERは巨額の投資を必要とし運転停止まで三十年という長期の計画である。ITER誘致に関する費用対効果分析、およびITER計画後の核融合の実用化に至る道筋を示されたい。

(二) 「ITER計画懇談会報告書」は、ITERへの投資は「将来の人類への保険料」と述べている。この意味をどのように理解しているのか。

(三) ITERに関するわかりやすい情報提供、国民的議論はなされてないと考えるが、今後、行う計画はあるのか。

二 第九回総合科学技術会議(八月三十日)で、原子力船「むつ」や高速増殖炉「もんじゅ」の二の舞にならないよう評価をお願いしたいと塩川正十郎財務大臣は発言した。

(一) 原子力船「むつ」の開発(一九六三年の「原子力船開発事業団」設立から九五年「むつ」廃船まで)、高速増殖炉開発(一九六七年の「動力炉・核燃料開発事業団」発足から現在まで)、それぞれにどれだけの国の予算を使ったのか。これら開発は失敗ではないか、見解を示されたい。

また、一九六八年に核融合を原子力特定総合研究に指定して以降、核融合の研究開発にどれだけの国家予算を投入したのか。これから、実用化までにどれほどの予算の投入を見込んでいるのか。

(二) 塩川大臣の発言に対して、井村裕夫氏(総合科学技術会議有識者議員)はITERの「成功の確率は高い」と答えているが、総合科学技術会議またはそのITER検討会として、ITER計画から核融合の実用化までの道筋、タイムスケジュール、全体としてのコストの検討結果を述べられたい。

(三) 塩川大臣の発言に対して、尾身幸次議員(科学技術担当大臣)は誘致が決まってから地元の反対で、できなくなるということがないように、十全の確認、必要な手だてを打つと答えている。ところが、「青森地域社会研究所」の八月の調査によれば、県民の約半数がITERについて「知らない」か「名前を聞いたことがある」程度である。主婦グループによる那珂町の調査でも、ほとんどの人が「ITERは被曝の安全基準が必要とされる施設であること」を知らないという状況である。尾身大臣や総合科学技術会議は、このような地元の状況を把握しているのか。今後、どのような手だてをとるのか。

三 平成十三年度の分野別エネルギー研究開発関連経費予算(文部科学省調査)によれば、原子力が約二千八百五十億円で全体の七十二%を占め、これに対して、自然エネルギーはわずか四%にすぎない。原子力関連に大きくシフトしているエネルギー研究開発関連の予算を全面的に見直すべきだと考えるが、どうか。

四 ITERの放射性廃棄物について

(一) ITERの国際設計チームは、ニオブ94、ニッケル59など長寿命核種の発生量をどのように評価しているのか。

(二) ニオブ94などの長寿命核種を含む廃棄物は高βγ廃棄物同様に地中処分するということであるが、超長期(一万年以上にわたる)の処分サイトの保守、管理の費用はどうなるか、ホスト国の負担になるのか。またその金額はどのように見積もっているのか。

五 文部科学省は八月二十四日、前日の市民団体との話し合いでの同省の発言に関して、我が国の原子力法令において公衆の被曝線量限度は平常時一ミリシーベルト、想定事故時のめやすとしては五ミリシーベルト、国際原子力機関(IAEA)提唱の避難を要しない範囲としては五十ミリシーベルトだと、「地球救出アクション97」に対して補足修正を行った。

(一) 事故時に国が守るべき公衆の被曝基準は五ミリシーベルトなのか。五ミリシーベルトであれば、その法的および安全上の根拠はなにか。

(二) ITERで、過度の被曝をもたらすおそれのある事故が起きた場合、我が国でもIAEAの避難を必要としない五十ミリシーベルトの基準を準用するのか。

(三) 「北海道ITER安全問題協議会」で山科俊郎委員と田中裕二氏(オブザーバー)が、また青森の「ITER誘致講演会」で苫米地顕氏(電力中央研究所)が、「トリチウム一〇〇グラムが環境中にでても周辺住民は大丈夫」との見解を表明した。一〇〇グラムが環境中に放出された場合、住民の被曝は最大で五十ミリシーベルトを超える場合があるが、これを否定するのか。このような被曝を受けても大丈夫なのか。

六 ITERで以下の災害が起きた場合、安全性は技術的に確保できると考えるのかどうか。

(一) 航空機がITERの建屋に墜落または激突した場合

(二) トリチウム輸送時に、輸送船、また輸送用のトラックが事故やテロで炎上した場合

七 ITERに関する原子力安全委員会等の安全評価、安全審査は、「基本設計」「詳細設計」「実施設計」のいずれに対して行われるのか。

八 トリチウムの海上および陸上輸送時の「テロ」に対する防護をどのように行うのか。

九 原子力委員会は八月二十三日、市民団体との話し合いにおいて、他極や米国の状況を見極めてITERに関して必要な判断を行うと述べた。

(一) 米国のITER計画への復帰がなくても、ITER計画とその日本への誘致を積極的に進めるのか。

(二) ITER計画に関するEUの費用分担の枠組みが決まるまでは、日本のITER誘致についての政府決定は延ばすのか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一の(一)について

国際熱核融合実験炉(以下「ITER」という。)により核融合エネルギーの科学的及び技術的実現可能性の実証を行う計画(以下「ITER計画」という。)におけるITERの誘致については、ITERの建設から廃止までの期間を通じ、安全の確保や放射化物処理などの責任の点も含めて必要となる費用等と、ITER計画に参加した場合に得られる核融合プラズマの自己燃焼状態の実現、核融合の開発に必要な炉工学技術等の科学技術的成果の参加極との共有等の成果に加えて、�@実験炉の機器の製作、据付け及び組立て並びに実験炉の運転等の経験の蓄積、�A核融合研究の世界的拠点の形成による技術や人材の集積等の効果を比較衡量するなどして、現在、総合科学技術会議等において議論が行われているところである。

ITER計画後の核融合エネルギーの実用化に至る道筋については、原型炉による発電の実証と実証炉による経済性の実証を経て実用化に至ると考えている。

一の(二)について

お尋ねの[将来の人類の保険料」とは、御指摘の「ITER計画懇談会報告書」にあるように、「人類存続のために、未来に起こる可能性としての現有エネルギー源の枯渇を考えるとき、そこに生じる混乱の回復に必要であると予想される巨額の費用を緩和することを目的として、現代の人々が負担すべき」費用のことを意味していると理解している。

一の(三)について

文部科学省においては、ホームページにおいてITER計画に関するページを設けるなど、インターネットを通じた情報提供に努めている。また、地方公共団体等の主催する住民を対象としたシンポジウムや勉強会等において、要請に応じ、文部科学省職員、有識者等によるITER計画の説明や意見交換への参加を行っている。さらに、文部科学省が実施したITERサイト適地調査では、誘致を希望する地方公共団体を公募した上、調査に当たった有識者による会合を公開で開催し、取りまとめた調査結果も公開している。

原子力委員会においては、通常、ITER計画に関するものも含めて議論を公開で行うとともに、ホームページにおいて、委員会資料、議事録等を公表している。また、一般の方々からの意見を踏まえ、平成十三年五月に「ITER計画懇談会報告書」を取りまとめて公表した。

今後とも一層の情報提供を行い、国民の理解を得るよう努めてまいりたい。

二の(一)について

原子力船「むつ」の研究開発に要した費用については、昭和三十八年の日本原子力船開発事業団(当時)の設立から平成七年の同船の解役終了までの間の総事業費は約千二百五十五億円である。同船の研究開発の過程で、実験航海により地上では得難い貴重なデータ等を得たと考えている。

高速増殖炉の研究開発に要した費用については、昭和四十二年の動力炉・核燃料開発事業団(当時)の設立から平成十二年度までの間の総事業費は約一兆二千九百三十億円である。高速増殖炉の研究開発においては、高速実験炉「常陽」の運転により高速炉の増殖性能を実証し、高速増殖原型炉「もんじゅ」を建設するなど、高速増殖炉の実用化に必要な貴重なデータ、経験等を得ており、現在も核燃料サイクル開発機構を中心として、実用化に向けた研究開発が継続されているところである。

核融合の研究開発に要した費用については、「核融合開発基本計画」(昭和四十三年七月四日原子力委員会決定)に基づき研究開発を行ってきた日本原子力研究所における昭和四十三年度から平成十二年度までの間の総事業費は約五千九百四十八億円である。ITER計画については、平成十二年に行われた非公式政府間協議における考え方に基づいた試算では、建設から廃止までの期間を通じた我が国の負担総額は、ITER計画に参加するだけの場合は約三千億円、我が国に誘致する場合は約七千億円と見込んでいる。ただし、実際のITER計画における費用負担は今後の政府間協議により決定する。その後の核融合エネルギーの実用化までに要する費用については、ITER計画等の成果、実証炉や原型炉の計画の具体化等を踏まえて検討されることとなる。

二の(二)について

核融合エネルギーの実用化までの道筋は、一の(一)についてで述べたとおりであるが、お尋ねの実用化までのタイムスケジュール及び全体としてのコストについては、ITER計画等の成果、実証炉や原型炉の計画の具体化等を踏まえて今後検討されることとなる。

二の(三)について

御指摘の各調査の結果については、いずれも承知しているが、政府としても、ITER計画の誘致を希望した国内三サイトの視察を行うなどして地元の状況を把握し、国民や周辺住民の理解を高める必要性は十分認識しているところであり、平成十三年十二月二十五日の第十三回総合科学技術会議に提出した科学技術政策担当大臣と有識者議員による「ITER計画に対する考え方」においても、今後政府は「ITER計画の意義について国民の理解を得る努力を行う必要がある。」とした上で「ITER計画を誘致する場合には、安全性の確保と放射化物の処理について、周辺住民への説明も含め、十分な対応を行うこと。」との考え方を示したところである。

今後とも、ITER計画の意義について、周辺住民を含め国民の理解を得るよう努めてまいりたい。

三について

エネルギー分野関連の研究開発に係る予算については、「科学技術基本計画」(平成十三年三月三十日閣議決定)に基づき、総合科学技術会議において平成十三年九月に取りまとめた「分野別推進戦略」等を踏まえつつ、エネルギーの安定供給、環境保全及び経済成長の達成に貢献する観点から、効率的・効果的なエネルギー分野関連の研究開発の推進を図るため、その重点化を行うこととしている。

四の(一)について

国際協力の下に実施された工学設計活動の結果取りまとめられた「ITER最終設計報告書」(平成十三年七月)においては、ニオブ九十四、ニッケル五十九その他の長寿命核種を含むITERの放射性廃棄物量はITERの運転満了後で約三万トンと評価されている。

四の(二)について

お尋ねの長寿命核種を含む放射性廃棄物の処分費用は、平成十二年に行われた非公式政府間協議における考え方では、各参加極が積み立てることとされている。その金額の見積り及び具体的な処分費用の分担については、今後、政府間協議において検討されることとなる。

五の(一)について

お尋ねの「事故時に国が守るべき公衆の被曝基準」が何を指すのかは必ずしも明確ではないが、試験研究の用に供する原子炉等の設置、運転等に関する規則(昭和三十二年十二月九日総理府令第八十三号)第一条の二第六号、第七条第三号等により、周辺監視区域においては業務上立ち入る者以外の者の立入制限等の措置が講じられるところ、試験研究の用に供する原子炉等の設置、運転等に関する規則等の規定に基づき、線量限度等を定める告示(昭和六十三年科学技術庁告示第二十号。以下「線量限度告示」という。)第三条等は、周辺監視区域外の線量限度として、実効線量について一年間につき一ミリシーベルト(ただし、主務大臣が認めた場合は、実効線量について一年間につき五ミリシーベルトとすることができる。)、皮膚の等価線量について一年間につき五十ミリシーベルト、眼の水晶体の等価線量について一年間につき十五ミリシーベルトとする旨定めており、これらの線量限度は、原子炉設置者等が周辺監視区域を設定するに当たり、当該区域の外側のいかなる場所においてもその場所における線量がこれらの線量限度を超えるおそれのないようにしなければならない点で、周辺監視区域の範囲を画定する機能を有する。

また、原子炉施設の設置許可等に係る審査の際には、「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」(平成二年八月三十日原子力安全委員会決定)及び同指針についての原子力安全委員会の「解説」に基づき、周辺公衆の実効線量の評価値が発生事故当たり五ミリシーベルトを超えないことを判断基準の一つとしている。

線量限度告示等に係る線量限度は、国際放射線防護委員会(ICRP)が行った千九百九十年勧告の国内制度等への取り入れについて放射線審議会が平成十年六月に行った意見具申を踏まえて平成十二年十二月に改正されたものであり、十分に安全上の根拠を有しているものと考えている。

五の(二)について

ITERは、原子力発電所のような核分裂炉とは性質が異なり、エネルギーの発生に伴って高放射性の物質を発生せず、連鎖反応ではないため核的暴走を生じない等の特徴を有することを踏まえ、ITERを対象とした安全規制の在り方及び防災対策の必要性等については検討中である。

五の(三)について

ITERに関連してトリチウムが環境中に放出される場合の住民の被ばく量については、立地場所に即した設計等を踏まえて、今後詳細に評価されるものと考えている。

六の(一)について

ITERを対象とする安全確保の具体的内容については、航空機がITERの建家に墜落又は激突した場合における技術的な安全性の考慮も含めて、ITERの立地場所の状況等に応じ、今後詳細に評価・検討されるものと考えている。

六の(二)について

トリチウムの輸送には、国際原子力機関(IAEA)の指定する試験に合格した輸送容器が用いられる。

同試験の条件においては、事故時の衝撃や熱等を想定して、九メートルの高さからの落下、摂氏八百度の中での三十分間の放置等の項目が設けられている。

七について

我が国に誘致した場合のITERの安全審査の在り方については、従来の原子力施設と同様の規制体系で規制するか否かも含めて現在検討中である。

八について

トリチウムの輸送については、警備情勢等を総合的に判断して、必要な警備を行い、防護に万全を期すこととしている。

九について

我が国のITER計画への参加、さらに我が国へのITERの誘致については、科学技術政策上のITER計画の位置付けや科学技術関係経費におけるITER計画の位置付けを考慮しつつ、各国の状況や他の参加極との協議の状況も踏まえて、我が国として適切な時期に判断してまいりたい。

なお、アメリカ合衆国のITER計画への参加は、技術及び経費上の観点からは好ましいと考える。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

検討してまいりたい ×2

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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