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青森県六ヶ所村を国際熱核融合実験炉(ITER)の候補地とする政府決定に関する質問主意書
衆議院 第154回 第166号
質問本文
総合科学技術会議は今年五月二十九日、「最適なサイト候補地を選定し、ITER政府間協議に臨むことが適当である」とする「ITER計画について」を承認した。その直後の六月一日には政府が青森県六ヶ所村をITER国内誘致の候補地とする閣議決定を行った。昨年の文部科学省のITER誘致地点適地選定では茨城県那珂町が六ヶ所村より高得点で優位とされていたのが、逆転で六ヶ所村に決定された。
ITERは、拡散しやすい放射性物質のトリチウムを多量に扱い、かつ運転に伴い、放射化ダストが発生する実験施設である。したがって、原子力発電や再処理工場などと同じように周辺の放射能汚染や住民の被曝の危険が伴う核施設である。青森県六ヶ所村に(放射性廃棄物)再処理工場などの原子燃料サイクル施設に加えてITERが誘致・建設されれば、巨大な核の危険が集中するとともに、六ヶ所村はITERの放射性廃棄物を含め膨大な核廃棄物の集積場とされてしまう。
すでに、誘致候補地の地元住民、全国の市民の団体と協力してITERに関する問題点を文部科学省、内閣府と五回にわたって話し合ってきた。また、昨年十月には「国際熱核融合実験炉(ITER)に関する質問主意書」を提出し、今年一月に「答弁書」を得た。しかし、なお十分説明されておらず、不満足な点がある。これまでの経過及び六ヶ所村にITERの誘致候補地が決定されたことを踏まえて、以下の点を再度質問する。
一 文部科学省核融合開発室「二〇〇二年五月三十日付『文部科学省に対する質問項目』に対する考え方」(以下「文科省回答」とする)では、六ヶ所村が候補地とされた理由として、「国策として進められている原子燃料サイクル事業と併せてITER立地を進めることにより、六ヶ所村が国際的な原子力エネルギー開発拠点として発展する可能性があること」を第一に挙げている。
(一) ほとんどの先進国が原発の使用済み核燃料の再処理やプルトニウム利用から撤退して行く中で、どの国といかなる形で原子燃料サイクルの国際的共同開発を進めようと考えているのか。
(二) 六ヶ所村の再処理工場の本格試験運転を前に、運転を凍結し、再処理工場の公正なリスク評価を行い、本音の議論を行うべきであるとの意見が原子力推進の専門家から出されている(「原子力eye」2002.7)。六ヶ所村の再処理事業では、当初の見積もりを超える予定外の経費や工事の遅れが生じており、さらに運転を開始すればトラブルや事故等によって膨大な債務と核廃棄物だけが残る重大な危険がある。再処理施設について、このような危険を含めて公正なリスク評価は行われていないと考えるがどうか。
ITERについても、再処理事業の轍を踏まないためには、当初計画を超える膨大な費用負担が生じる、及び、六ヶ所村に核廃棄物だけが残されるというリスクを公正に評価し、今から本音の議論を開始すべきと考えるがどうか。
二 原子力安全委員会は、ITER誘致先についての閣議決定からわずか三日後の二〇〇二年六月三日、「ITERの安全規制のあり方について」(以下「安全規制のあり方」とする)を発表した。その中で、同委員会は「ITERにおいては、核融合反応の固有の安全性に加えて、放射性物質の崩壊熱密度が小さい実験炉などを考慮に入れると」、原子力災害対策特別措置法による対策が講じられるという意味で、「原子力災害を想定する必要はないと考える」と述べている。
(一) 「ITER施設の安全確保の基本的考え方」(旧科技庁平成十二年七月、以下「安全確保の基本的考え方」とする)は、「設計基準事象を超える放射性物質の放出」を仮想し、「敷地外における緊急時計画(防災対策)の必要性の有無を評価することとする」と述べている。また、市民グループ等との数度の話し合いで、文部科学省は、防災計画をつくるかどうか、EPZ(防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲)をつくるかどうかは今後の課題(〇一年三月)、誘致後に安全委員会が仮想事故の評価を行う(〇一年六月)と述べていた。原子力安全委員会は、防災対策について、「安全確保の基本的考え方」や文部科学省のこれまでの発言を覆すのか。
(二) 「衆議院議員北川れん子君提出国際熱核融合実験炉(ITER)に関する質問に対する答弁書」(二〇〇二年一月二十四日、以下「答弁書」)では、「ITERを対象とした安全規制の在り方及び防災対策の必要性等については検討中」「トリチウムが環境中に放出される場合の住民の被ばく量については、立地場所に即した設計等を踏まえて、今後詳細に評価される」という回答であった。防災対策の必要性との関連で、トリチウム流出事故の危険性を含めて、どのような検討を行ったのか、その内容を明らかにされよ。とくに、ITERの「最終設計報告書」(5.5.5)に書かれている仮想事故とその際生じる被曝線量を踏まえた検討を行ったのかどうかを明らかにされよ。
(三) 「答弁書」では、「ITERを対象とする安全確保の具体的内容については、航空機がITERの建家に墜落又は激突した場合における技術的な安全性の考慮も含めて、ITERの立地場所の状況に応じ、今後詳細に評価・検討される」と回答している。六ヶ所村の南方には三沢飛行場・基地があり、ITER予定地のすぐ近くに天ヶ森射爆場(三沢対地射撃場)がある。航空機激突による事故を想定し安全性を詳細に評価する必要はないのか。
(四) 青森県の「ITER誘致提案書」(二〇〇一年七月二十七日)には「候補地四〜五�q北に国家石油備蓄基地と原子燃料サイクル施設があるものの、安全対策に万全が期されており、災害を及ぼす恐れはない」と断言している。ところが、原子力安全委員会は六ヶ所村の再処理施設のEPZを五�qとしており、ITERの予定地域はこの範囲に含まれてしまう。再処理施設は「災害を及ぼす恐れはない」とする青森県の評価を受け入れ、六ヶ所村をITERの誘致候補地に選んだのか答えられよ。
三 原子燃料サイクル施設が集中立地しまたITER誘致が予定されている地域は、地下水位が高く、地下水脈が広範囲に及んでいることが指摘されている。また、六ヶ所村およびその周辺海域には活断層またはその疑いがある断層が存在している。
(一) 「安全規制のあり方」は、「閉じこめ機能の健全性を脅かす要因」の一つに地震力を挙げている。また、昨年八月二十三日の話し合いで、原子力安全委員会は「耐震設計の評価は、実際にサイトが決まってから、そのサイトの地質構造や過去にどのような地震が起こったかなど、サイトに応じて決まる」と答えた。六ヶ所村を誘致候補地とするに当たって、地質構造や過去の地震の評価は行ったのか答えられよ。
(二) 六ヶ所村の低レベル廃棄物処分場に隣接し高βγ廃棄物処分場の建設が予定されている。ITERが六ヶ所村に建設されれば、ITERの解体廃棄物のうち高βγ廃棄物やニオブ94などの寿命の長い廃棄物はこの処分場において処分されるのか。処分を予定しているとすれば、地下五〇メートルから一〇〇メートルにある処分場の障壁の地下水による浸食はどのように評価したのか。地下水を通した広域放射能汚染の危険はどのように防止するのか答えられよ。
(三) 地震によって、ITERを含む複数の核施設が事故を起こす危険性は想定するのかしないのか。想定しないのであれば、その理由を具体的に示されよ。
四 ITERに要する費用の総額は最終処分費用を除いて約一兆三千億円、日本が誘致する場合、七千億円と見積もられている。「答弁書」では、長寿命核種を含む処分費用の見積もりは今後政府間協議で検討されるということであった。
(一) 「答弁書」では、政府間協議で長寿命核種を含む最終処分費の検討を行うということであったが、どのように検討を行い、その金額をいくらと見積もったのか答えられよ。
(二) 日本が誘致する場合に、我が国の負担七千億円には、青森県が負担を申し出ている高圧送電線の整備などを含めたサイト整備費の全てが含まれるのか答えられよ。
(三) 前述の「文科省回答」は、「ITER計画に要する費用はサイト整備費も含め、毎年度の予算の中で原子力分野の予算として所要経費を要求し、確保していく」と述べている。ITERを誘致する場合、原子力分野の予算はどんな予算をどのように削るつもりか。他の分野、例えば再生可能エネルギーや燃料電池などの研究開発を圧迫しないか答えられよ。
五 総合科学技術会議の「ITER計画について」(二〇〇二年五月二十九日)は、「最終的な参加ないしは、…費用対効果を考慮しつつ決定することが適当である」と述べている。この点について、前述の「文科省回答」は、総合科学技術会議は投入費用対効果の検討に当たり、ITERを「誘致した場合の考えられる課題として、放射性廃棄物の処理等に関する責任、万が一の不測の事態への対応等を考慮に入れた上で、参加は望ましく、誘致の意義は大きいとの判断を行っている」と述べている。
(一) 費用対効果の検討においては、定量的な評価が大事だと考えるが、今回の誘致の決定に当たって、事故や廃棄物に関わるマイナスの効果をいかに評価したのか、あるいはそれは今後の課題なのか答えられよ。
(二) ITERを誘致し運転開始後に、事故という「不測の事態」が生じ、原子力船「むつ」や高速増殖炉「もんじゅ」の開発のように、巨額の資金を追加的に投じなければならないという事態になれば、誰がその責任をとるのか。その費用は、各国が分担するのか、それとも我が国が負担するのか答えられよ。
(三) ITERの長寿命の放射性廃棄物の中には千年を超えて管理が必要な核種が存在すると考えるが、このような長期にわたって、現在の世代の人間や政府が責任をとれると考えているのか答えられよ。
右質問する。
政府答弁書
一の(一)について
原子力発電から発生する使用済燃料の再処理やプルトニウム利用に関する考え方は、それぞれの国又は地域のエネルギー情勢を取り巻く経済的、社会的な事情等により異なっており、現在、フランス、ロシア等においては、使用済燃料の再処理やプルトニウム利用を行っている。エネルギー資源に乏しい我が国では、原子力発電のエネルギー供給システムに対する貢献を一層確かなものにするため、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効に利用していくことを基本的な考え方としており、このため、諸外国における使用済燃料の再処理やプルトニウム利用に関する考え方等を踏まえつつ、技術的知見を有する国等と、原子力研究開発機関間の国際共同研究等の国際協力を適切に進めていくこととしている。
一の(二)について
青森県六ヶ所村にある日本原燃株式会社の再処理施設の安全性については、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第四十四条第一項の規定により再処理事業の事業指定を行う際に、原子力安全委員会が定めた再処理施設安全審査指針に照らし、再処理施設の基本的な設計において多重防護の考え方が適切に採用され、所要の安全確保対策が講じられていること、なお念のために異常事象が発生した場合を想定し、その場合における一般公衆への影響が適切に評価されていること等を確認している。具体的には、火災、爆発等の各種異常事象のうち一般公衆の放射線被ばくが最大となる臨界事象においても、その評価値は約〇・五七ミリシーベルトであって、一般公衆の著しい放射線被ばくのリスクの有無を判断する上での目安とされている五ミリシーベルトを下回っていることを確認しており、再処理施設が試運転を開始した後においても安全規制等に万全を期することとしている。また、再処理事業に要する資金の確保や放射性廃棄物の対策については、事業者が自らの責任において行うことが原則であると考えている。
国際熱核融合実験炉(以下「ITER」という。)により核融合エネルギーの科学的及び技術的実現可能性の実証を行う計画(以下「ITER計画」という。)では、詳細な工学設計を行うとともに、主要な機器については実機大の試作を行うなどしており、建設コストの見積りを行っている。また、ITERから発生する低レベル放射性廃棄物は、「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について」(平成十年五月二十八日原子力委員会原子力バックエンド対策専門部会報告書)等に示された方針に基づいて、現在の技術によって処分することが可能であると考えている。
二の(一)について
「ITERの安全規制のあり方について」(平成十四年六月三日原子力安全委員会決定)においては、核融合反応が、核分裂のような連鎖反応ではなく、プラズマの粒子密度や圧力の限界を超えたり不純物が混入したりすると反応が終息する性質があり、核的暴走の危険がないことや、反応生成物として核分裂生成物のような高放射性物質が生まれないため放射性物質の崩壊熱の密度は小さいことなどを考慮して、ITERの安全確保を考えるに当たって、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第二条第一号に規定する原子力災害のような事態を想定する必要はないと考えるとしたものである。
いずれにせよ原子力安全委員会は、ITERに係る事故等に関する検討を十分に行い、前述の決定に至ったものであり、従来の政府の考え方を覆すものではない。
二の(二)について
ITERに係る安全確保については、「ITER最終設計報告書」(平成十三年七月ITER理事会承認)に載せられている事例についても参考の上、トリチウムが環境中に放出される場合の影響等についての評価・検討を行っているが、放射性物質を除去又は低減する影響緩和施設の機能の維持等その具体的な内容については、今後詳細に評価・検討することとしている。
二の(三)について
ITERに係る安全確保の具体的内容については、航空機がITERの建屋に墜落又は激突した場合における技術的な安全性の考慮も含めて、ITERの立地場所の状況等に応じ、今後詳細に評価・検討されるものと考えている。
二の(四)について
日本原燃株式会社の再処理施設については、原子炉等規制法等に基づく安全審査により、技術的見地からは起こるとは考えられない事故の発生を仮想しても、使用済燃料等による災害の防止上支障がないものであると確認したものであるため、厳正に安全確保が図られているところであり、ITERの候補地の検討に当たっては、この点を考慮した。
なお、EPZは、万一に備え、原子力施設において異常事態が発生した場合を仮定し、その影響の及ぶ可能性のある範囲を技術的見地から十分な余裕を持たせつつ、あらかじめ防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲として定めるものであるが、その目安を原子力安全委員会が示しているものである。
三の(一)について
文部科学省においては、ITERサイト適地調査専門家会合を開催し、ITER誘致候補地それぞれについて、地質構造及び過去の地震の発生状況等について評価を行ったところである。その結果、青森県六ヶ所村の調査地点では、�@地盤の支持力については、第三紀岩盤(鷹架層)に岩着支持や杭基礎支持が可能であることから、サイト条件における長期面圧を十分な裕度をもって充足できると判断される、�A地震に対する地盤安定性については、支持地盤が第三紀岩盤であり、過去の地震記録に基づくと震度五を大きく上回る大きな地震の発生する可能性は小さく、付近に顕著な活断層も発見されていないことから、想定される地震動に対して地盤安定性は十分に確保できると判断される、と評価している。
三の(二)について
ITERから発生する低レベル放射性廃棄物の処分場については、青森県は県内で当該放射性廃棄物の処分を行うとしているが、その場所は現段階では未定である。
三の(三)について
ITERに係る安全確保の具体的内容については、地震が発生した場合における技術的な安全性の考慮も含めて、今後詳細に評価・検討されるものと考えている。
四の(一)について
長寿命核種を含む放射性廃棄物の処分費用については、現在政府間において協議中である。
四の(二)について
約七千億円との額は、平成十二年に行われた非公式政府間協議における考え方に基づき我が国にITERを誘致する場合の試算であり、実際のITER計画における費用負担は今後の政府間協議により決定する。
この試算には、国が行うこととされているサイト整備に係る費用は含まれているが、ITER施設までの送電線の整備に係る費用等ITERの誘致を希望した青森県が負担を提案した費用については含まれていない。
四の(三)について
ITER計画については、政府全体でその推進に取り組むとともに、所要経費については、「科学技術基本計画」(平成十三年三月三十日閣議決定)を踏まえつつ、他の科学技術上の重要政策に影響を及ぼすことがないよう、既存の施策の重点化、効率化を図り、原子力分野の予算の範囲内で確保することとしている。
五の(一)について
総合科学技術会議は、「ITERの安全確保について」(平成十三年八月六日原子力安全委員会決定)において「安全を確保することは技術的に可能と判断できる」とされていること及び放射性廃棄物の処理等の過程において費用負担や管理責任等が生じることを勘案した上で、「国際熱核融合実験炉(ITER)計画について」(平成十四年五月二十九日総合科学技術会議決定)において、ITERを誘致する場合には、「安全性の確保と放射化物の処理について、周辺住民への説明や放射化物の処理費用の必要十分な積立ても含め、十全に対応すること」に留意する必要があるとした。ITERの誘致に関する「国際熱核融合実験炉(ITER)計画について」(平成十四年五月三十一日閣議了解)は、これを踏まえたものである。
五の(二)について
ITER計画に関して不測の事態が生じた場合における費用の負担等については、現在政府間において協議中である。
五の(三)について
一の(二)についてで述べたとおり、ITERから発生する低レベル放射性廃棄物については、「RI・研究所等廃棄物処理処分の基本的考え方について」等に示された方針に基づいて、現在の技術によって適切に処分することができるものと考えている。
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