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建設業退職金共済制度に関する質問主意書
参議院 第171回 第171号
質問本文
建設業退職金共済制度は建設現場で働く日雇い労働者の雇用と生活を守るため、中小企業退職金共済法に基づき国によって作られた退職金制度と理解している。しかし、独立行政法人勤労者退職金共済機構建設業退職金共済事業本部(以下「建退共」という。)は膨大な剰余金を留保する一方、建設会社による共済証紙購入費の目的外使用や、四十一万人にも及ぶ退職金未払いの可能性など、その運用の問題点がたびたび指摘されている。
そこで、以下のとおり質問する。
一 建退共のホームページに掲載されている資産運用残高及び利回り状況(建退共・給付経理)によると、資産額は機構設立の平成十五年以降、概ね横ばいで平成十九年度末は八千七百二十三億九千三百万円となっている。この額は、建退共として適正と考えるか。適正とすればその根拠を併せて示されたい。
二 平成二十年度末の資産総額見込み額はいくらか。また見込み額が提示されない場合、前年度末と比べ増額、減額どちらになるか示されたい。
三 建退共給付経理における利益剰余金については、平成十九年十一月十五日の衆議院総務委員会でも剰余金の額の大きさが問題として指摘されている。政府の答弁では、平成十八年度末は八百二十一億円で、厚生労働省ホームページによると平成十九年度末は七百六億円となっている。平成二十年度末の決算は本年六月末までに厚生労働省に提出されると承知しているが、その見込み額を示されたい。また見込み額が提示できない場合、平成十九年度末と比較し、増額となるのか、減額となるのか見通しを示されたい。
四 利益剰余金のあるべき姿に関しては、労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会等で検討されていると聞いているが、前述の衆議院総務委員会での質疑以降、これまでどのような検討がされ、どのような結論が出たのか、部会の開催日ごとに示されたい。また、結論が出ていないとすればいつ頃結論を出すのか。
五 建退共のホームページによると「共済契約者である事業主が共済手帳の交付の手続きを取っていないということであれば、事業主(共済契約者)を指導します」としている。直近五年間の指導件数を年または年度ごとに示されたい。
六 平成十年七月六日付けの読売新聞大阪版は「ゼネコン、証紙代流用の疑い 建設労働者の退職金共済券配布確認十一% 大阪」の見出しで、大阪府や大阪市の調査で共済証紙購入費相当額として工事請負費に計上された三億六千万円のうち、実際に労働者に証紙が渡ったのは一一%の三千九百万円だけだったとし、「労働省は『問題が大きい』として所管の特殊法人を通じ、全国規模の実態調査をする」と報じている。政府は当時、この報道を受けて実際に全国規模の調査を実施したのか。調査していればその概要を、調査していなければその理由を示されたい。また、このようなゼネコンによる着服の現状はどのようになっているのか。根絶されているというのであれば、何を根拠にそのようなことが言えるのか。
七 建退共と業務委託先とはオンライン化されており、リアルタイムで共済契約者管理データを把握できるシステムが確立されていると聞いている。このシステムの初期投資額と年ごとのランニングコスト、システムの納入メーカーを明らかにされたい。
八 平成十九年十月二十四日の衆議院厚生労働委員会で、建設現場労働者の退職金が四十一万人分未払いとなっている可能性があることが明らかになり、舛添厚生労働大臣は「実態調査を今、一生懸命やらせていますけれども、今のような事情があって大変難しい。ただ、今後とも努力はするというふうに申し上げておきたいと思います」と調査への取り組みを約束している。その後、未払い分の正確な実態は把握できたのか。できたとすれば、その結果を明らかにされたい。また、調査が終了していないとすればなぜ時間がかかっているか、今日までどのような調査を行い、いつまでに実態を把握し明らかにできるのか示されたい。さらに、前述の共済契約者管理データシステムをこの調査に活用すれば速やかに実態が把握できるのではないかと思慮するが、なぜそうならないのか。
九 掛金の納付の月数が二十四カ月以上で、かつ、過去三年間以上手帳の更新実績がない被共済者の最新の人数を示されたい。
十 厚生労働省独立行政法人評価委員会が平成二十年八月二十七日付けで発表した「独立行政法人勤労者退職金共済機構の中期目標期間の業務実績の最終評価結果」によると、前述システムを活用し共済手帳の更新を二年間行っていない共済契約者に対し要請文書を送付し、さらに「履行の意思有り」と回答した共済契約者のうち二年後においても履行の改善がみられない共済契約者に対し再度要請文を送付しているとされている。再要請件数は十八年度三千五十二件、十九年度千四百五十六件とされているが、再要請をした共済契約者のその後の履行状況はどのようになっているのか。また、それでも履行されていない共済契約者に対し、どのような取り組みをしているのか。さらに、要請文を送付したうち、「履行の意思なし」等と回答した件数は平成十六年度以降平成十九年度まで各々何件か。その共済契約者に対してはどのような働きかけをし、どのような成果があったのかそれぞれ明らかにされたい。
十一 平成十四年十一月五日付けで厚生労働大臣から総務大臣あてに出された「特殊法人に関する行政評価・監視の結果(勧告)に基づく改善措置状況について(回答)」によると、共済証紙による掛金納付方式の見直し策としてICカードや磁気カードを活用した口座引き落とし方式など検証を行っている、としている。しかし、前述「独立行政法人勤労者退職金共済機構の中期目標期間の業務実績の最終評価結果」では「新方式の導入は時期尚早」とし、「制度の適正な履行に全力を挙げて取り組む」としている。新方式のモニター実験には総額でいくらかかったのか。この経費は結局全くの無駄になったということか。また、なぜ「時期尚早」だったのか、「制度の適正な履行に全力を挙げて取り組む」ため、具体的にどのような対応をしているのか。
十二 共済手帳への共済証紙の未貼付について、掛金収納額(累計)と共済手帳への共済証紙貼付の確認額(累計)との差額は、平成十八年度末で千二百八十二億円と承知しているが、最新の額はいくらか。
右質問する。
政府答弁書
一について
独立行政法人勤労者退職金共済機構(以下「機構」という。)は、中小企業退職金共済法(昭和三十四年法律第百六十号。以下「法」という。)第七十八条第一項の規定に基づいて作成した基本方針に沿って、業務上の余裕金を運用しており、御指摘の建設業退職金共済制度(法第二条第五項に規定する特定業種退職金共済契約に係る退職金共済制度のうち建設業に係るものをいう。以下同じ。)における給付経理の資産額は、適正なものであると考えている。
二及び三について
平成二十年度の貸借対照表等の財務諸表については、いまだ機構から提出を受けていないが、少なくとも同年度の国際金融情勢等の影響にかんがみれば、お尋ねの資産及び利益剰余金はいずれも減少となるものと考えている。
四について
御指摘の部会については、これまで平成二十年九月五日、同年十月二十一日及び平成二十一年三月二日に開催し、利益剰余金の在り方に関する検討を行っているところである。これまでの審議において、利益剰余金については、その原資が被共済者の退職金の支給のために事業主が納付した掛金、運用益等であることにかんがみると、本来被共済者に還元されるべき性格のものであるが、平成十九年度に損失を計上したこと、市場の低迷が長期化する可能性があること及び建設労働者の福祉の増進を図るため事業の安定的な運営が肝要であることにかんがみると、現時点においては、積極的に取り崩す状況にはないという共通認識が示されているところである。
また、その結論を得る時期については、「独立行政法人整理合理化計画」(平成十九年十二月二十四日閣議決定)における措置期限が原則として平成二十二年度末とされていることにかんがみ、遅くともそれまでに措置できるよう、結論を出していただくこととなると考えている。
五について
機構から聴取したところによると、御指摘の指導は被共済者からの相談等に基づき事実関係を確認した上で必要に応じて口頭により随時行われているものであることから、その合計件数をお示しすることは困難とのことである。
六について
御指摘の報道がされたことも踏まえ、平成十年七月から、特殊法人勤労者退職金共済機構において、どの程度の元請事業主が下請事業主を選定するに当たり建設業退職金共済制度への加入を指導しているか、どの程度の発注者が下請事業主の当該制度への加入を指導するよう元請事業主に指導しているか、及びどの程度の下請事業主が元請事業主から共済証紙を受領しているかについて、全国調査を実施したものである。同年十二月に取りまとめられた調査結果によると、していると答えた者の割合はそれぞれ十・六パーセント、三十二・四パーセント及び三十三・九パーセントであった。
機構から聴取したところによると、平成十六年に実施した同様の全国調査において、していると答えた者の割合はそれぞれ四十八・三パーセント、五十二・四パーセント及び五十八・六パーセントであったとのことであり、このような改善状況にかんがみれば、共済証紙の貼付状況についても改善されてきていると考えている。
七について
機構から聴取したところによると、御指摘のシステムに要した初期費用は千七百三十二万五千円であり、そのランニングコストの契約額は、平成十六年度から平成十九年度までが年間二百六十八万九千六百八十円、平成二十年度が百三十三万四千五百五十円であり、当該システムは株式会社アイネスが納入したとのことである。
八について
機構から聴取したところによると、前回の更新から三年を経過することとなった被共済者について、その住所を把握し、就労の現況等を確認した上で、必要に応じて共済手帳を更新し、又は退職金を請求するよう要請する手続(以下「調査」という。)を行っているところであり、平成十九年度においては、三万九千四十七件中、共済手帳の更新に至ったものが三千八百五十三件、退職金の支給に至ったものが二千五百七件あったとのことである。さらに、今年度以降も調査を継続して行うとともに、これまで対象とならなかった被共済者についても同様の調査を行うこととしているとのことである。
また、調査の対象の抽出には被共済者管理システムを活用しているところであるが、被共済者の住所の把握等については個々の確認作業が必要となることから、調査には一定の時日を要するものと考えている。
九について
お尋ねの人数は、平成二十年三月末時点において四十一万三千百六十三人である。
十について
機構から聴取したところによると、平成十八年度及び平成十九年度に再要請を行った共済契約者のうち履行を確認することができたものの数は、それぞれ千百二十五件及び二百十六件とのことであり、再要請を行ってもなお共済契約者が履行しない場合には、共済契約を解除する旨を通告することとしているとのことである。
また、御指摘の要請文に対して「履行の意思なし」と回答した共済契約者数は、平成十六年度が五千八百九十三件、平成十七年度が五百四十二件、平成十八年度が千八百九十七件、平成十九年度が千百四十六件とのことであり、「履行の意思なし」と回答した共済契約者に対しては、建設業退職金共済契約解除申請書を送付し、それを機構に提出するよう要請しているが、その結果、適正な履行に至る場合もあるとのことである。
十一について
お尋ねの費用は八千六百六十九万円であるが、当該支出については、機構に設置された「建退共制度における掛金納付方法のあり方検討会」において、新たな掛金納付方式の導入に係る実務的な問題点の整理及びその解決策の検討を行うために必要なものであったと考えている。
また、機構から聴取したところによると、新たな掛金納付方式の導入の前提となるICカードの普及状況、導入のための費用負担等にかんがみ、同検討会においては「時期尚早」であるとの意見があったものであり、共済証紙の貼付が適切に行われるよう、共済手帳及び共済証紙の受払簿を普及させるための共済契約者に対する指導等に取り組んでいるとのことである。
十二について
お尋ねの差額は、平成二十年三月末において千二百五十八億円である。
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