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核兵器廃絶に向けた我が国の取組に関する質問主意書
参議院 第177回 第265号趣旨が明らかではない ×1
質問本文
広島・長崎に原爆を投下された我が国は唯一の被爆国である。原爆(核分裂反応)を経験したばかりか、ビキニ環礁での水爆実験(核融合反応)で発生した死の灰によって被爆した第五福竜丸事件をも経験している。
我が国はこれらの戦時型核エネルギーによる被爆を直接的に三度も経験しただけでなく、もんじゅのナトリウム漏れ事故、JCO事故、今回の東京電力福島第一原子力発電所事故などの原子力災害も経験しており、こうした核エネルギー等の平和的利用の途上での受難の歴史も、国際社会において稀有のことといえる。
そこで、以下質問する。
一 唯一の被爆国である我が国の今後の取組について
1 我が国は、特に核兵器の非人間性と残虐性を世界に訴えるとともに、核兵器廃絶に向けたリーダーシップを発揮すべきである。そこで、核兵器の使用は如何なる理由があっても許されない「絶対悪」との思想に基づき、断固たる決意で核兵器の廃絶を推進すべきであると考えるが、政府の見解を問う。
2 我が国は、前文で述べた経験と教訓を踏まえて、国際社会に対する発言力をより一層強化することが重要である。これに関し我が国は、外交上、世界を先導できる「力」があると確信すべきであり、これらを十分に駆使すべきとの見方がある。私も同様の思いであるが、政府の見解を問う。
3 2の「力」の行使に当たっては、戦略的、体系的に「日本の経験と教訓」を世界に知らしめることが効果的であることは言うまでもない。例えばICT(情報通信技術)を駆使して、サイバー空間「広島と長崎の被ばく経験と教訓」を構築し、燃えて尽きる人間の姿などを視覚化することにより、人間が人間に対してかくも残虐になれるかを示すことも時には重要なやり方であると考える。このような手法について、政府の見解を問う。
4 3の視覚化したデータベースを各国に贈呈するプロジェクトも必要ではないか。この「視覚化データベース贈呈プロジェクト」で贈呈するデータベースには、従来のアナログデータも使用するが、爆心地の高温・高圧下での人間の被害状況、放射性物質が人体に与える急性健康被害、晩発性健康被害、子どもへの影響など、種々のシミュレーション分析をCGなどを駆使して視覚化した内容を含むものである。もとより、従来のアナログデータだけで真実は尽きるが、CGなどを駆使したこのような試みは効果的な展開方法の一つであると考える。このような手法について、政府の見解を問う。
二 核兵器廃絶に向けたソフト的アプローチについて
国際社会において、我が国は唯一の被爆国である。このことが核兵器廃絶を訴える力になっていることは言うまでもない事実である。また、実際に国際社会を動かす一定の力になっていることも事実である。
しかし、我が国が国際社会において、それをさらに動かす力(リーダーシップ)を発揮するためには、核燃料の再処理技術の確保・維持のようなハード的なものだけではなく、ソフト的アプローチの視点から、いかなる力を創りだし、結集することができるのかについて、その手順等を含めて具体的に検討していくことが重要であると考えるが、政府の見解を問う。
三 核兵器廃絶に向けた環境醸成のための多面的アプローチについて
1 国際社会における諸国間の状況は、誠に厳しいものがある。紛争やテロ、暴力の連鎖が絶えず、さらに、不安定な世界の安全保障、地球環境の悪化、世界経済の低迷など、難題が山積している。
貧困、抑圧、差別、飢饉などの経済的・社会的に不正常な状態は「構造的暴力」と言われるが、これを提唱したのは、ノルウェーのヨハン・ガルトゥング博士である。
彼は、平和=戦争のない状態と捉える「消極的平和」の考え方に加えて、貧困、抑圧、差別などの「構造的暴力」がない「積極的平和」を提起し、平和の理解に画期的な転換をもたらした。一九五九年に、オスロ国際平和研究所(PRIO)を創設し、ヨーロッパの平和研究を主導してきた。
今や彼の主張する「構造的暴力」が、世界に蔓延しており、これこそが、紛争や戦争を引き起こす要因である。であるならば、この「構造的暴力」から人間を解放する「人間の安全保障」への貢献こそが我が国の進むべき一つの方向であると考える。
我が国は、「人間の安全保障」に特別の思いで取り組んできたところであり、公明党は党の理念に則り、これを大きく推進してきたところである。「人間の安全保障」への貢献について、政府の見解を問う。
2 「構造的暴力」が不信を増幅し、反目を再生産している。不信を信頼に、反目を理解に変えるためには、地道な取組が必要である。そのために、国際社会における①「対話」、②「文化交流」、③「青少年交流」の拡大に力を注ぐべきである。
このような指摘をする人は少なくないと思われるが、我が国は、多面的に多くの努力を傾注してきているものと思う。
①、②、③に関して政府は、如何なる具体的な行動、予算措置等を行っているか。最近、五年程度の政府の取組について明らかにされたい。
また、特に未来世代の役割を考えると③の「青少年交流」の拡大は、大きな重みを持つものであると考えるが、政府の見解を問う。
3 ③の「青少年交流」は、極めて重要な交流である。この点については、日本の教育制度を抜本的に改革する必要がある。例えば、大学生活の四年間のうち、一年間は海外で生活することを必須化することや、高校においても交換留学を推進することが必要である。また、「構造的暴力」の撲滅や持続可能な開発に向けて、毎年十万人の学生や企業の従業員を最低一年間海外に送り出す国家プロジェクトを策定することも必要である。このことは二十年先、三十年先において有力な人材を輩出することになると考える。政府の見解如何。
4 ソフト的アプローチの一つの方法として、①「対話」、②「文化交流」、③「青少年交流」の拡大などを進める一方、一般の生活における知恵や中小・ベンチャー企業が有する平和的技術やノウハウなどについて、途上国等への移転を進めることが重要である。
例えば、IRENA(国際再生可能エネルギー機関)等諸機関への関与の強化・拡充を進めることにより、途上国に対する再生可能エネルギーの技術移転を進めることは、森林伐採などを押しとどめ、環境劣化などからもたらされる負の循環を細くすることに繋がる。
さらに、貧困等の拡大を未然に防ぐことにもなる。貧困撲滅等に貢献することは、一定の「構造的暴力」を減少させることであり、結果として我が国の信頼を勝ち取ることになる。従って、それが外交力の強化・拡充にも繋がり、国際社会における発信力を増すことになる。
これらを結集することが、核拡散防止条約再検討会議の日本開催への一定の貢献になりうると考えるが、政府の見解を問う。
四 核兵器廃絶宣言都市への支援について
核兵器廃絶などを宣言している市町村の数はどの程度あるのか、また、その数は現在定常状態なのか、政府の把握しているところを明らかにされたい。核兵器廃絶などを宣言する市町村が増加することも核兵器廃絶の推進にとって重要であり、核兵器廃絶などを宣言する市町村に対して、政府から何らかの支援措置があってしかるべきである。このような支援措置を含め、核兵器廃絶の推進に向けた様々な環境を醸成していくことが必要であると考えるが、政府の見解を問う。
五 核兵器廃絶に向けた署名運動について
非核三原則の徹底、核兵器廃絶に向けた学校教育の推進、国民との対話の中で、核兵器廃絶に向けた一大国民署名運動を推進すること、場合によっては他国にも呼びかけて国際社会に署名運動を拡大することも重要なアプローチであり、検討に値するものと考える。このような署名運動の推進・拡大について、政府の見解を問う。
右質問する。
政府答弁書
一の1及び2について
唯一の戦争被爆国として核兵器使用による惨禍を二度と繰り返してはならないと考え、平和で安全な核兵器のない世界を目指し、核軍縮に向けた現実的かつ着実な取組を粘り強く行ってきており、今後ともこのような取組を行うことによって、国際社会において主導的な役割を果たしていく考えである。
一の3及び4について
核兵器使用の惨禍の実相を広く国際社会に伝え、将来の世代に引き継いでいくことは重要であると考えており、御指摘のような情報通信技術の活用を含め、様々な取組を進めて行くことは有益であると考える。
二及び三の4について
一般に、環境、貧困削減等の幅広い分野に関し、我が国が有する技術、知見等を活用した取組を進めることは、国際社会において我が国が主導的な役割を果たすことにつながるものであり、ひいては国際会議の我が国への開催誘致にも資するものであると考える。
核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号)の運用検討会議の我が国への開催誘致については、これまでの会議開催地の実績、開催地決定の手続等に留意する必要があると考える。
三の1について
我が国は、テロ、災害、感染症、貧困等、人間に対する直接的な脅威に対処するため、個々の人間の保護と能力強化を重視する「人間の安全保障」の考え方を推進しており、この考え方を「政府開発援助大綱」(平成十五年八月二十九日閣議決定)の基本方針の一つとして掲げ、その実践に努めている。
また、「人間の安全保障」に関し初めてとなる平成二十二年の国際連合総会決議第二百九十一号の採択を働きかけるなど、国際社会における「人間の安全保障」の考え方の普及に主導的な役割を果たしている。
今後とも、これらの取組により、国際社会における「人間の安全保障」の考え方の推進に貢献していく考えである。
三の2について
お尋ねの「対話」の意味するところが必ずしも明らかではないが、外交ルートを通じた国際社会との意思疎通を積極的に図っているほか、外務省において、二国間のものとして新日中友好二十一世紀委員会、地域レベルのものとして日・アフリカ交流フォーラム、地球規模の課題に関するものとして人間の安全保障シンポジウム等、様々な国際的取組に対し資金を拠出し、又は参加しているところである。
国際社会における文化交流については、外務省において、在外公館を通じた日本文化の紹介及び相手国の文化及び高等教育の振興、良好な対日感情の醸成等のための文化無償資金協力を実施しているほか、独立行政法人国際交流基金において、海外における日本語普及事業、日本研究・知的交流事業、文化芸術交流事業等を実施している。
国際社会における青少年交流については、国際的な相互理解の促進、友好親善の発展、良好な対日感情の形成等の観点から重要であると考えている。このため、外務省において、東アジアを中心とする各国の青少年との交流を行う二十一世紀東アジア青少年大交流計画等を実施している。また、内閣府において、世界各国の青年との交流を行う青年国際交流事業を実施している。
三の3について
青少年の海外における体験は、国際的に活躍できる人材を育成する上で重要であることから、高校生及び大学生の海外留学等について、引き続き支援に努めていく考えである。
四及び五について
核兵器廃絶を求める宣言等を行った市町村(特別区を含む。)の数は、平成二十三年八月一日現在、千四百九十八であると承知しており、これまで着実に増加してきていると認識している。
御指摘のような署名運動を含めた市町村等の取組は、核兵器廃絶に向けた機運を維持し、強化していく上で重要であると認識しており、今後とも市町村等と協力しつつ、核兵器廃絶に向けた取組を進めていく考えである。
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