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核エネルギーの機微核技術(SNT)等に対する基本的姿勢に関する質問主意書
参議院 第178回 第17号お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×3
質問本文
日本は、本年三月十一日に東京電力福島第一原子力発電所における核エネルギーの制御不能による空前絶後とも言うべき大事故によって塗炭の苦しみを受けている。実際に当該事業所内については、原子炉や放射性物質障壁が壊滅し、再建不能であり、他方、事業所外については、ヨウ素131等価で数万テラベクレル以上の大量の放射性物質が外部放出した深刻な事故である。大気中への放出は、現在発表されているところでは、七十七京ベクレルであったとされている。このようなことから国際原子力機関(IAEA)は、国際原子力事象評価尺度(INES)に照合して「七」と評価した。これは、最悪のレベルであり、最悪の事態である。この大事故により福島県民をはじめ多くの国民等が被ばくし、六か月を経過したところである。今もって原子力災害対策特別措置法第十五条によって発動された五回の緊急事態宣言は、解除されず未収束のレベルである。依然として、当該原子力発電所の事故は収束していない。政府・東京電力によれば、今もって時間当たり二億ベクレルの放射性物質が放出(八月十八日現在)されている。
政府においては、原子力政策大綱、エネルギー基本計画等の見直しが検討されているが、各党においても様々の論点について議論を深めている最中である。論点の一つには、機微情報もある。必ずしも機微情報の定義は明確ではないが、核防護(PP)の視点からも幅広く、かつ、深く議論を進めるべきものである。過日、青森県六ヶ所村の再処理工場を訪問した際にも事業者側の説明には、PPが頻繁に出てきた。議論すべき論点であることから以下質問する。
一 核エネルギーに関する機微情報の定義等について
巷間、機微核技術(SNT)については、軍事的に利用される可能性のある核技術、すなわちウラン濃縮技術、再処理技術、MOX燃料、高速増殖炉、重水技術等を指しているとも言われている。この機微核技術が日本国内において保持され、核保有国以外で保持しているのは日本だけとも言われている。まず、素朴な点から以下質問する。
1 政府は、機微核技術をどのように定義付けているのか。加えて、機微核技術に関する情報と機微情報との違いは、あるのか。あるならば、両者の相違を明確にされたい。
2 日本に機微核技術は存在するのか。
3 この機微核技術を一度手放せば、再取得することはきわめて困難であるとも言われているが、見解を問う。
4 国際原子力機関(IAEA)における「INFCIRC/225/Rev.4」の「4.3.1」には、「The State should take steps to ensure appropriate protection of specific or detailed information the unauthorized disclosure of which could compromise the physical protection of nuclear materials and nuclear facilities.」とある。すなわち「国は不法に開示されると核物質及び核施設の防護を損ねるおそれがある個別のまたは詳細な情報の適切な防護を保障するための措置をとらなければならない」とのことであり、核防護(前記IAEA文書を直訳すると核物質及び核施設等の防護)に関して守秘しなければならない情報と定義している。この定義に関して、我が国は、いかなる内容を具体的に定義しているのか。特に、「不法」とあるように法律に反してということであるから、法律上の具体的かつ厳密な定義付けが、求められている。当該法律とその定義の内容について、政令・省令等を含めて具体的に示されたい。
5 言うまでもなく、核物質及び核施設等の防護に関する秘密事項を、漏洩することは、法律的には処罰される対象となる。すなわち核物質及び核施設等の防護の機微情報の全体的な範囲と比較すると、より狭い範囲を秘密情報と考えることになる。両者を同値と考えると、過度の秘密化により混乱を招くものと考えられることから秘密化部分とそれ以外に範囲が分けられるものと考えられる。
前記IAEA文書によれば、適切な防護を保障するための措置として核物質及び核施設等の防護に関する情報の一部を秘密にすることとしている。機微核技術等に関する情報が、一般に広く拡散・普及することは、核テロ防止などの点からも最大限防止し、一定の範囲を秘密にし、漏洩しないようにすべきである。言い換えれば、秘密事項に関して、明確で具体的な定義付けが求められていると言える。ここが定まっていないと実行上種々の混乱を招くものと考えられる。秘密の定義の内容(種類や範囲等)に関する政府の見解を問う。
6 前記5の見解を示す際に併せて、前記IAEA文章の解説書である「TECDOC‐967」において、核物質及び核施設等の防護に関する秘密事項とすべき情報が、設計基礎脅威(DBT)など九項目が例示されているが、これらについても、比較対照的かつ具体的に説明されたい。
二 東京電力福島第一原子力発電所の「事故時運転操作手順書」など事故原因究明に必要な書類の提出について
九月八日、経済産業省原子力安全・保安院は、衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員長が、東京電力に対し、福島第一原子力発電所の「事故時運転操作手順書」など事故究明に必要な書類の提出を求める再要請を行ったことを発表した。同委員長は、過去にも原子力安全・保安院を通じて同様の要請をしていたようである。東京電力は、「核物質防護上、公開できない」として手順書の大部分を黒塗りして提出した。報道によれば十二ページ中九ページが黒塗りとのことである。手順書以外の書類については、提出そのものを拒否したとしている。同委員長は「不十分な内容」として資料の再提出を求め、また、福島第一原発一号機と同型の原発がある日本原子力発電にも同じ書類の提出を要請している。このような黒塗り手順書の提出や書類の不提出について、法的合理性があるかどうかは、まさに核物質及び核施設等の防護に関する定義等が、法律上明確になっているかに依存するものである。
実際に東京電力側は、知的財産や核物質防護上の問題があるとして提出部分について第三者に公開しないよう求めていたようである。ここに論点が二つある。一点目は、秘密事項についていたずらに過度な秘密事項化が生じてはならないことである。二点目は、福島第一原子力発電所の大事故のような事態を想定していない時点において、原子力安全神話がまかり通る中での秘密事項の種類と範囲などの定義設定になっている可能性があることである。すなわち、大事故発生時の事故原因究明への適正な対応(一定の制約下における開示を含む)がなされなければならないにもかかわらず、開示をしない可能性を指摘できることである。これは、東京電力という一事業者の裁量性が秘密事項において入り込む隙間がある場合は、大事故原因等の本質的解明を妨げることにもなりかねないとも言える。特に大事故の原因解明等において、裁量性が入り込まない担保を、どのように確保するかが重要と考え、以下質問する。
1 報道されている一連の出来事について、政府の承知しているところを日時を明確にした上で、その経緯を具体的に明らかにされたい。
2 東京電力が同委員長に対して全資料等の全面的提出ができない具体的な理由、具体的な法的根拠や、抵触する核物質防護に係る具体的な事項などについては、一事業者の裁量等に任されるべきではなく、政府が明確に示すべきである。見解を問う。
3 前記の1及び2に関連して、実用炉規則における核物質防護秘密の保持に関する規定における詳細な事項についても十分な説明をすべきであり、事業者の裁量性に基づくものではないとの明確な見解を示すべきである。すなわち、政府の主導によって、詳細な事項の開示・不開示の具体的な指針を明確にすべきである。見解を問う。
三 機微核情報の適正管理に関する統一的な基準等の明確化について
1 機微核情報の適正管理の統一的な基準の策定について
行政、特に政府において情報セキュリティの確保を行う場合には、統一的な基準が必要と思われる。その基準に基づいて戦略を策定し、関係行政機関、省庁の縦割りを超えて横断的・統一的に行うことが重要である。
例えば、我が国において、核物質及び核施設等(核発電を含む、日本では原子力発電)の防護に関係している行政機関として、経済産業省は商用発電炉、研究開発途上の発電炉など、文部科学省は試験研究炉、国土交通省、警察庁、消防庁は緊急時の対応を行い、さらに公安調査庁等がテロ対策を行っているものと考えられるが、これらの異なる行政機関における統一的な基準を明確にすることが重要である。
仮に統一的な基準がなく、個々の機関での情報管理の在り方が異なる場合、特に秘密事項についての管理判断が行政機関によって異なると、混乱を招く。ある行政機関の関係情報は公開され、同様の関係情報が、別の機関では公開されないことなどは、あってはならないことである。
もし統一的な基準を策定していない場合、何故、策定していないのか、その理由を明確に示されたい。また、国として統一的な基準を策定して、判断が錯綜しないように厳密な情報管理を行うべきであると強く要請するが、政府の見解を問う。
2 国と地方自治体間における統一的な基準の策定について
前記1と同様に、国と地方自治体間においても統一的な対応ができなければならない。今回の東京電力福島第一原子力発電所の大事故による放射性物質の対応においても、国は統一的な対応ができず、政府内の混乱ばかりか、地方自治体と連携できなかったことで大きな混乱が生じ、国民等の不安をいたずらに助長する結果となった。
同様に、機微核技術に関する適正な統一基準についても混乱が生ずることが十分考えられ、国と地方自治体間の統一的な基準の存在を確認する必要がある。もし統一基準がなければ、その理由を明らかにするとともに、その策定を強く求めるものであるが、政府の見解を問う。
右質問する。
政府答弁書
一の1及び2について
お尋ねの「機微核技術」について確立した定義はないと承知しているが、例えば、原子力の平和的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(昭和六十三年条約第五号)においては、「機微な原子力技術」(Sensitive nuclear technology)について、公衆が入手することのできない資料であって濃縮施設、再処理施設又は重水生産施設の設計、建設、製作、運転又は保守に係る重要なもの等をいう旨規定している。また、こうした資料は我が国に存在する。
なお、お尋ねの「機微核技術に関する情報と機微情報との違い」については、御指摘の「機微核技術に関する情報」及び「機微情報」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。
一の3について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、一般に、濃縮施設、再処理施設又は重水生産施設の設計、建設、製作等の技術を基礎段階から確立することは困難であると承知している。
一の4から6までについて
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第六十八条の三の規定により、原子力事業者等は、正当な理由がなく特定核燃料物質の防護に関する秘密を漏らしてはならないこととされている。特定核燃料物質の防護に関する秘密の具体的内容については、製錬施設に関しては核原料物質又は核燃料物質の製錬の事業に関する規則(昭和三十二年総理府・通商産業省令第一号)第六条の二第二項第十五号に、加工施設に関しては核燃料物質の加工の事業に関する規則(昭和四十一年総理府令第三十七号)第七条の九第二項第十五号に、原子炉施設に関しては試験研究の用に供する原子炉等の設置、運転等に関する規則(昭和三十二年総理府令第八十三号)第十四条の三第二項第十二号、研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設置、運転等に関する規則(平成十二年総理府令第百二十二号)第三十五条第二項第十五号、実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和五十三年通商産業省令第七十七号。以下「実用炉規則」という。)第十五条の二第二項第十五号及び実用舶用原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和五十三年運輸省令第七十号)第二十七条の二第二項第十五号に、使用済燃料貯蔵施設に関しては使用済燃料の貯蔵の事業に関する規則(平成十二年通商産業省令第百十二号)第三十六条第二項第十五号に、再処理施設に関しては使用済燃料の再処理の事業に関する規則(昭和四十六年総理府令第十号)第十六条の三第二項第十五号に、廃棄物埋設施設に関しては核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の第一種廃棄物埋設の事業に関する規則(平成二十年経済産業省令第二十三号)第六十二条第二項第十五号及び核燃料物質又は核燃料物質によつて汚染された物の第二種廃棄物埋設の事業に関する規則(昭和六十三年総理府令第一号)第十九条の三第二項第十五号に、廃棄物管理施設に関しては核燃料物質又は核燃料物質によつて汚染された物の廃棄物管理の事業に関する規則(昭和六十三年総理府令第四十七号)第三十三条の二第二項第十五号に、使用施設等に関しては核燃料物質の使用等に関する規則(昭和三十二年総理府令第八十四号)第三条の三第二項第十二号に、車両による運搬に関しては核燃料物質等車両運搬規則(昭和五十三年運輸省令第七十二号)第十七条の二第六項に、受託貯蔵に関しては核燃料物質の受託貯蔵に関する規則(平成十二年総理府令第百二十五号)第三条第二項第十五号に、それぞれ規定されている。
また、これらの府省令において規定されている特定核燃料物質の防護に関する秘密の具体的内容のうち御指摘の「九項目」に相当するものを各項目ごとに示すと、次のとおりである。
設計基礎脅威 主務大臣が別に定める妨害破壊行為等の脅威に関する事項及び特定核燃料物質の防護のために必要な措置の評価に関する詳細な事項
防護されなければならない個々のターゲット(標的となる核物質の所在情報等) 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令(昭和三十二年政令第三百二十四号)第二条第一号イ、ロ及びホに掲げる特定核燃料物質(取扱いが容易な形態のものに限る。)の貯蔵施設又は核燃料輸送物等のうち同号イ、ロ及びホに掲げる特定核燃料物質(照射されたものを含む。)が収納されたものに関する詳細な事項
原子力施設の核物質防護計画 特定核燃料物質の防護のために必要な体制に関する詳細な事項
核物質防護システムの設計の特徴を示す施設固有の図面、図表、見取図又は配置図 特定核燃料物質の防護のために必要な設備及び装置に関する詳細な事項
侵入検知システム、警報システムの配線、緊急時の電源及び緊急警報等の場所を示す警報システムのレイアウトの詳細 特定核燃料物質の防護のために必要な設備及び装置に関する詳細な事項
施設内及び施設外の防護用通信システムの詳細 特定核燃料物質の防護のために必要な連絡に関する詳細な事項
警備員の行動 見張人による巡視及び監視に関する詳細な事項
輸送情報 特定核燃料物質の工場若しくは事業所内若しくは原子力船等内の運搬又は核燃料輸送物等のうち防護対象特定核燃料物質が収納されているものの運搬に関する詳細な事項
緊急時対応計画 緊急時対応計画に関する詳細な事項
二の1について
お尋ねの経緯については、次のとおりである。
平成二十三年八月二十六日、衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員長(以下「委員長」という。)から経済産業省に対し、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所の事故時運転操作手順書、特に非常用復水器及び格納容器スプレーの取扱いに関する部分を含むものの提出を求められ、同月三十日、原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)は東京電力に対し、当該手順書の提出を要請した。
同年九月二日、東京電力から保安院に対し回答があり、経済産業省は同日に開催された衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員会理事会(以下「理事会」という。)に当該回答を提出した。当該回答は、知的財産の保護や核物質防護の観点から開示することが適当でないと判断した部分を不開示とするものであった。
理事会における協議の結果、同日、委員長から経済産業省に対し、福島第一原子力発電所第一号機の事故時運転操作手順書やシビアアクシデント発生時における手順書等の資料の提出を求められ、同月六日、保安院は東京電力に対し、当該資料の提出を要請した。
同日、東京電力から保安院に対し回答があり、経済産業省は同月七日に開催された理事会に当該回答を提出した。当該回答は、知的財産の保護や核物質防護の観点から開示することが適当でないとの判断から当該資料を不開示とするものであった。
理事会における協議の結果、同日、委員長から経済産業省に対し、当該資料の提出を改めて求められるとともに、秘密会による委員会の開会など、当該資料の詳細な内容を開示することが可能となる条件を提示することも求められた。また、福島第一原子力発電所の第一号機と同型機である日本原子力発電株式会社敦賀発電所一号機についても、事故時運転操作手順書やシビアアクシデント発生時における手順書等の提出を求められた。
二の2及び3について
二の1についてで述べた保安院の東京電力に対する要請は、東京電力に任意の協力を求めたものであり、要請に対応して開示する資料の範囲については、東京電力において実用炉規則第十五条の二第二項第十五号の規定等を考慮して判断すべきものと考えている。
三について
お尋ねの「統一的な基準」の意味するところが必ずしも明らかではないが、核物質及び核施設等の防護に関する情報のうち、特に防護の必要性の高い特定核燃料物質の防護に関する秘密については、一の4から6までについてで述べたそれぞれの府省令において、具体的な内容を統一的に規定するとともに、原子炉等規制法第六十八条の三第三項において、国の行政機関又は地方公共団体の職員及びこれらの職員であった者に秘密保持義務を課しているところである。
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