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福島第一原発の状況及び放射能放出量に関する質問主意書
参議院 第177回 第143号お答えすることは困難 ×1承知していない ×1
質問本文
東日本大震災の津波災害による福島第一原発の事故は、過去に例のない膨大な量の高濃度の放射性物質を大気中と地中と海洋に撒き散らす結果となった。それにより、周辺市町村の多くの住民が避難生活を余儀なくされているとともに、農産物はもちろんのこと工業製品にいたるまで、日本のブランドを地に貶めることとなった。今後、長期にわたる放射能汚染との闘いを国民に強いることは明らかである。
発災後、いったんスクラム停止した福島第一原発の原子炉への対応に関しては、スクラム停止後は極めて起こり難い事象とされている再臨界事象についての技術的な評価や判断が事前に実施されていなかったのか、あるいは発災後そのような評価や判断が迅速にできなかったのか不明であるが、そのような杞憂だった可能性もある事象に惑わされていたようにも見受けられる。無秩序な放射性物質の撒き散らしを長期にわたって容認し続け、適切な対策のための舵を切るのが遅れ、未だに改めようとしない理由を政府は明らかにすべきである。
よって以下、福島第一原発について質問する。
一 政府は福島第一原発の原子炉について、今後再臨界が起きる可能性があると考えているのか。再臨界が起きる可能性があるというのであれば、それはどのような状況において起きるのか。専門家による定量的な評価を示されたい。
二 再臨界が極めて起こり難い事象であるとの見解については、ABWR=改良型BWR(沸騰水型原子力発電プラント)に対しては、ゼネラル・エレクトリック社が作成し、米国原子力規制委員会が承認した設計認証(DCD)があり、その内容は、今回の福島第一原発の事象にも当てはまると推測される。政府は、このような技術的な見解に反対するだけの合理的な理由をもっているのか。その上で、有効性が十分ではない一方で有害性が明らかである放水という措置をこれからも続けていくつもりなのか。
三 福島第一原発三号機、四号機の使用済み核燃料プールの水の量について、発災後どのような経過であったのか。政府の認識の変化を時系列で示し、その変遷の根拠を詳細に示されたい。
四 政府の判断によって、これまでに大気中と海洋に放出した放射能量(総ベクレル数)の推定値を、主な核種毎に示されたい。その上で、経済開発協力機構原子力機関が一九九五年十一月に公表した、チェルノブイリ事故後十年の放射能による健康への影響に関する報告書二十頁の表1(OECD/NEA,“Chernobyl Ten Years on Radiological and Health Impact”, Page 20 of 70 Table 1)にならって、今回の放射能放出量の規模を定量的に示されたい。現時点での状況が示せない場合は、いつ示せるのか。
五 放射性物質の飛散は水素爆発の可能性をコントロールできるかどうかにかかっているが、燃料棒の被覆管の表面積のうち、ジルコニウムが酸化されていない面積の割合は、一号機、二号機、三号機でそれぞれ何パーセントか。
六 発災後、非常用の無停電バッテリーが稼働していた間に記録された過渡現象記録装置の記録は現在どのように保全されているのか。すでに解析は行われているのか。記録を公開し、被害拡大の原因分析のため、広く世界からの叡智を集めるべきと考えるが、今後の記録公開についての政府の考え方を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島第一原子力発電所」という。)の原子炉施設のうち原子炉内に燃料が装荷されている第一号機から第三号機までについては、制御棒に含まれるホウ素に加え、原子炉内に注入したホウ酸により、核分裂を生じさせる中性子を吸収できることから、再臨界に至る危険性は極めて低く、今後も適切にホウ酸を注入していくことにより、再臨界を防止できるものと考える。
また、独立行政法人原子力安全基盤機構の専門家も、これと同様の考え方を有していると承知している。
二について
米国原子力規制委員会が承認した、改良型沸騰水型軽水炉に関する御指摘の「設計認証(DCD)」においても、仮に再臨界が生じた場合には、未臨界状態に戻すためにホウ酸を注入することとしている。福島第一原子力発電所の第一号機から第三号機までは全て沸騰水型軽水炉であるが、一についてでお答えしたとおり、原子炉内に適切にホウ酸を注入していくことにより、再臨界を防止できるものと考える。お尋ねの「放水という措置」とは、原子炉内への注水措置のことを指すと考えられるが、当該措置は原子炉を冷却するために引き続き講じていくことが必要なものである。
三について
お尋ねの福島第一原子力発電所の第三号機及び第四号機の使用済燃料プールの水量の発災後の経過の詳細については、全交流電源喪失により水位監視装置が作動していないため、把握できていない。現在は、スキマサージ槽の水位監視装置による使用済燃料プールからの溢水確認、コンクリートポンプ車のブームに取り付けたカメラによる水位確認及び同ブームから使用済燃料プールの水面まで熱電対をつり下げた距離を計測することにより行う水位確認を、可能な範囲で行っているが、これらによって確認するデータは確度の低いものであり、お答えすることは差し控えたい。
四について
福島第一原子力発電所から大気中に放出された放射能量について、主要な放射性物質ごとに、経済産業省原子力安全・保安院が独立行政法人原子力安全基盤機構による原子炉の状態等の解析結果を基に試算を行ったところでは、ヨウ素百三十一が十三万テラベクレル、セシウム百三十七が六千百テラベクレルと推定される。また、原子力安全委員会がモニタリング測定の結果から逆算することにより試算を行ったところでは、ヨウ素百三十一が十五万テラベクレル、セシウム百三十七が一万二千テラベクレルと推定される。なお、原子炉格納容器内の圧力を抑制する措置により大気中に放出された放射能量に限った試算は行っていない。
海洋に放出された放射能量について、主要な放射性物質ごとに東京電力株式会社が試算を行ったところでは、福島第一原子力発電所の集中廃棄物処理施設並びに第五号機及び第六号機のサブドレンピットに滞留していた放射性物質を含んだ水の放出による放射能量は、ヨウ素百三十一が六十六ギガベクレル、セシウム百三十四が四十二ギガベクレル、セシウム百三十七が四十二ギガベクレルと推定され、また、第二号機取水口付近の立坑からの放射性物質を含んだ水の漏えいによる放射能量は、ヨウ素百三十一が二千八百テラベクレル、セシウム百三十四が九百四十テラベクレル、セシウム百三十七が九百四十テラベクレルと推定される。
五について
お尋ねの「ジルコニウムが酸化されていない面積の割合」については把握していない。
六について
福島第一原子力発電所の原子炉施設等の事故記録については、電源の未復旧等の事情により、これまで収集が完了していなかったが、経済産業省においては、平成二十三年四月二十五日に、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第六十七条第一項の規定に基づき、東京電力株式会社に対し、福島第一原子力発電所の事故の今後の適切な応急の措置の実施のため、過渡現象記録装置に記録されている原子炉圧力容器内の水位及び圧力等の記録等について可及的速やかに報告すること、また、当該記録等が放射性物質の濃度の高い区域に存在し収集が困難な場合等その報告が困難であると見込まれる場合には、当該記録等の保管状況、報告時期の見通しその他の状況について確認し、その結果について速やかに報告することを命じたところである。当該命令に基づき、東京電力株式会社から当該記録等が提出された場合には、速やかに公開する所存である。また、政府としても、必要に応じて当該記録等の解析を行うこととしている。
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