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ALPS処理水の海洋放出に伴う漁業への影響並びに北海道の赤潮被害対策に関する質問主意書
参議院 第212回 第99号お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×3
質問本文
東京電力は、漁業者との約束を反故にし、二〇二三年八月二十四日から福島第一原発の汚染水(いわゆるALPS処理水)の海洋放出を開始した。すでに三ヶ月が経過したが、漁業に大きな影響が出ている。
中国へのホタテ貝の輸出は二ヶ月連続でゼロで、十月の水産物の輸出額は十四億円(前年比八十三・八%減少)と農林水産省が公表している。北海道をはじめホタテ貝やナマコなどは、中国に輸出されており、輸出の停止による在庫の滞留、産地価格の下落によって生産者や流通業者、地域経済への影響が出ている。
親から漁業を継承した宮城県の青年は、「職業選択を間違えたかもしれない」と述べるなど将来への不安をつのらせている。ALPS処理水が原発からの排水と大きく違うのは、核燃料が溶け落ちたデブリに接触し、汚染された水という点である。市民団体や専門家からは汚染水の発生を防止する対策や提案が出されている。聞く力があるのなら、海洋放出を続けるのではなく、中止すべきである。
また、二〇二一年九月に発生した北海道太平洋沿岸での赤潮被害から二年経過したが、資源を回復するための支援は引き続き必要となっている。
よって、漁業、水産業の経営の安定化を図るため、以下質問する。
一 八月二十四日に海洋放出を開始して以降、放出したALSP処理水は何トンになるか。放出した期間と放出量、放出したタンクの数を明らかにされたい。
二 海洋放出は三十年以上、続くと見込まれる。今後、海洋放出が繰り返されることから、漁師人生そのものが放出のなかでの生活になる。漁師の夢や希望を奪うことにならないか、政府の見解を示されたい。
三 八月二十四日以降、岸田文雄内閣総理大臣、西村康稔経済産業大臣が、直接説明した漁業協働組合や経済団体等の団体名を明らかにされたい。
四 政府は九月に「水産業を守る政策パッケージ」(総額千七億円)を決定し、十一月には補正予算として「ALPS処理水関連の輸入規制強化を踏まえた水産業の特定国・地域依存を分散するための緊急支援事業」(八十九億円)を決定した。
1 「輸出先の転換対策」は輸出減が顕著な品目(ホタテ貝、ナマコ等)の一時買取・保管支援や海外も含めた新規の販路開拓を支援するものであるが、採択件数と予算の執行額を明らかにされたい。
2 「国内加工体制の強化対策」は、輸出先国のニーズに応じて、国内加工ができる体制整備を行うものであるが、「既存の加工場のフル活用に向けた人材活用等の支援」と「国内の加工能力強化に向けた、加工/流通業者が行う機器の導入等の支援」の採択件数と予算の執行額を明らかにされたい。
3 ホタテ貝の輸出の減少によって産地価格は低下し、ホッキ貝やツブ貝など、その他の水産物の価格にも影響を与えている。消費を拡大するため、ホタテ等を学校給食などで活用すべきと考えるが、利用状況、支援策を明らかにされたい。
4 政府が海洋放出を決めた以上、責任を持つのは当然だが、漁業、水産関係者からはスピード感が足りないとの意見が出ているが政府の見解を示されたい。
5 二〇一一年三月十一日の東日本大震災、福島第一原発事故以降、福島県では十二年間で、仲買人が半減し、買取能力が低下している。これを回復するための仲買人などの流通業者への対策を強化する必要があるが、支援策を明らかにされたい。
6 政府は、「一部の国・地域の措置を受け輸出に係る被害が生じた国内事業者には、東京電力が丁寧に賠償を実行」すると説明しているが、賠償方針、基準及び相談件数を明らかにされたい。
五 二〇二一年九月に北海道の道東の太平洋沿岸で毒性プランクトンによる赤潮漁業被害が発生した。被害総額及び赤潮発生メカニズムと継続的な海底環境の調査及び今後の発生予防対策を明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
御指摘の「八月二十四日に海洋放出を開始して以降」、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)において、御指摘の「ALPS処理水」の海洋への「放出」(以下「海洋放出」という。)を三回実施してきており、一回目として令和五年八月二十四日から同年九月十一日までにタンク十基に入った合計七千七百八十八立方メートルが、二回目として同年十月五日から同月二十三日までにタンク十基に入った合計七千八百十立方メートルが、三回目として同年十一月二日から同月二十日までにタンク十基に入った合計七千七百五十三立方メートルが、それぞれ放出されたところであると承知している。
二について
お尋ねについては、「「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」の実行と今後の取組について」(令和五年八月二十二日廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議・ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議決定)において、政府は「ALPS処理水の処分に伴う風評影響の懸念やなりわい継続に対する不安に対処するべく、今後、(中略)これらの対応に政府としてALPS処理水の処分が完了するまで全責任を持って取り組んでいく」こととしていることを踏まえて、引き続き、責任をもって必要な対策に取り組む考えである。
三について
御指摘の「直接説明した」の具体的に意味するところ及び御指摘の「漁業協働組合や経済団体等」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、東京電力が海洋放出を開始した令和五年八月二十四日以降、例えば、岸田内閣総理大臣又は西村経済産業大臣(当時)は、全国漁業協同組合連合会、北海道をはじめとする地域の漁業協同組合、日本経済団体連合会、日本商工会議所等と面会し、海洋放出に伴う水産物の消費拡大等に向けた取組等について意見交換を行ってきているところである。
四の1及び2について
令和五年度予算予備費で措置された御指摘の「ALPS処理水関連の輸入規制強化を踏まえた水産業の特定国・地域依存を分散するための緊急支援事業」のうち、新規需要開拓等事業については、令和五年十二月二十日時点で、採択した件数は一件であり、交付決定した額は約百一億円である。代替販路開拓事業費補助金による補助事業については、同日時点で、採択した件数は一件であり、交付決定した額は約五十億円である。国内加工体制の強化対策事業については、同日時点で、採択した件数は一件であり、交付決定した額は約五十一億円である。
四の3について
お尋ねの「支援策」としては、海洋放出に伴う風評影響を受けていると認められる水産物について、政府において、学校給食や子ども食堂等へ提供する取組に対する補助事業を実施するとともに、各都道府県教育委員会等に対し、当該補助事業も活用しつつ、学校の状況や地域の実情に応じて、学校給食における国産水産物の活用に取り組むよう周知しているところである。お尋ねの「利用状況」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、学校給食等におけるホタテ等の国産水産物の利用量については、網羅的に把握しているものではなく確定的にお答えすることは困難であり、また、当該補助事業の実施状況については、令和五年十二月二十日時点で、当該水産物を学校給食等へ提供する事業が十二件実施されているところである。
四の4について
お尋ねについては、政府として、これまで、農林水産省、経済産業省、復興庁及び外務省が令和五年九月に取りまとめた「「水産業を守る」政策パッケージ」に基づき、漁業者団体等によるホタテ等の輸出の減少が顕著な品目についての海外を含む新たな需要の開拓等への支援を既に実施しているところであり、また、令和五年度補正予算においても、例えば、国内販路拡大等支援事業について漁業者団体等による水産物の販路拡大のための取組への支援に係る経費を措置し、既に当該支援の対象となる事業者を決定したところであるなど、迅速な対応を行ってきていると考えており、引き続き、全国の水産業支援に万全を期してまいりたい。
四の5について
御指摘の「仲買人などの流通業者」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、水産物の卸売業者や仲卸業者(以下「卸売業者等」という。)に対する支援策については、例えば、卸売市場における倉庫、冷蔵庫等の整備に必要な資金に係る支援として、株式会社日本政策金融公庫による食品流通改善資金の利用が可能であるほか、福島県内の消費地の卸売市場において同県産の水産物の消費拡大に取り組む同県内の卸売業者等に対し、令和五年度復興会計特別予算における福島県産水産物消費拡大事業により販売促進に係る経費を支援しているところであり、また、卸売業者等が生産者、販売事業者等と連携して生産性の改善等を行う取組に対し、令和五年度一般会計予算におけるバリューチェーン改善促進事業によりその経費を支援しているところである。
四の6について
お尋ねの「賠償方針」については、東京電力において、「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」(令和三年四月十三日廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議決定)における「画一的に賠償期間や地域、業種を限定することなく、被害の実態に見合った必要十分な賠償を迅速かつ適切に実施」との方針に基づき、東京電力が令和四年十二月二十三日に取りまとめた「福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の放出に伴い風評被害が発生した場合の賠償基準について」等に沿って、漁業者等の個別の事情を伺いながら当該賠償を行っているものと承知している。また、お尋ねの「相談件数」については、東京電力に寄せられる相談の内容等が様々であることから、一概にお答えすることは困難である。
五について
お尋ねの「被害総額」の具体的な範囲が必ずしも明らかでないが、北海道庁が令和五年二月十六日に公表した「令和三年九月に北海道太平洋沿岸で発生した赤潮による被害の状況について」においては、「数量は、赤潮発生後一箇年が経過した二千二十二年九月末までの漁獲状況等から推定」、「金額は、数量に被害前五箇年の平均単価を乗じて推定。ただし、赤潮発生後に一部魚種に顕著な単価の増減が見られたため当該部分について補正」、「「うに」については、再生産までの知見を踏まえ四年間の被害を推定」、「「たこ」「つぶ類」「その他」について、複数年の影響が見込まれるが、漁場が沖合で被害状況の全容把握が困難なこと、隣接海域を越える移動や今後の資源動向に不明な点も多いことから、現時点(発生後一年)で把握した一年分の被害を推定」及び「次年度以降、必要に応じ更新」とした上で、令和四年九月末時点における被害額の合計は九十億七千百万円とされており、そのうち、「うに」にあっては六十九億三千三百万円、「さけ」にあっては七千四百万円、「たこ」にあっては七億二百万円、「つぶ類」にあっては十二億四千百万円、「その他」にあっては一億二千百万円とされているものと承知している。
お尋ねの「赤潮発生メカニズム」については、政府として、これを解明するため、令和三年度補正予算、令和四年度第二次補正予算及び令和五年度補正予算に計上している北海道赤潮対策緊急支援事業において、北海道庁等と連携して、赤潮の発生に影響する海洋環境に関する情報の収集及び分析に取り組んでいるところであり、現時点において確たることをお答えすることは困難である。
政府としては、同事業において、お尋ねの「継続的な海底環境の調査」については、漁業者等が漁場の環境を把握するために海中で行う調査に対する支援を、お尋ねの「今後の発生予防対策」については、北海道庁等と連携して、赤潮による漁業被害を防止するために赤潮の発生を予測する手法の開発並びに当該発生のモニタリングに係る技術の開発及び移転を、それぞれ行っているところである。