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性同一性障害等の性的マイノリティに対する偏見や差別を助長しかねない教員採用試験における適性検査の実態とその改善等に関する質問主意書
参議院 第183回 第132号承知していない ×3
質問本文
我が国には、性同一性障害等の性的マイノリティに対する偏見や差別を助長しかねない社会の慣行や制度が少なからず存在する。特に、人々の幸福を追求する努力を支え、その実現に資するべき社会制度が、個人の人格権を危うくするなどの人権侵害を招いていては、本末転倒と言わざるを得ない。
その一例に、教員採用試験における適性検査がある。教員としての能力や適性をみるためのはずの教員採用試験において、受験者の性自認、性的指向等を問う項目を含む適性検査が、複数の教育委員会によって実施されてきた事実が明らかとなっている。
何よりも個人が尊重されるべき教育現場において、合理的な理由もなく職業選択の自由が妨げられるようなことがあってはならないと考え、今回は、特に教員採用試験の適性検査の在り方について、政府の見解を問うものである。
この問題は、平成二十四年六月十五日の衆議院法務委員会における井戸委員による質問並びに平成二十五年三月十五日及び五月二十九日の衆議院法務委員会における西根委員による質問でも指摘されているところであるが、なお明らかでない点が少なくない。
そこで、教員採用試験における適性検査の実態とその改善等に向けた政府の取組について、以下質問する。
一 教員採用試験におけるMMPI(ミネソタ多面人格目録)利用の実態について
平成十九年以降、教員採用試験においてMMPIを用いていた都道府県及び政令市の教育委員会はどこか、実態を明らかにされたい。その際、年ごとにその数と具体的な都道府県名及び政令市名を示されたい。
二 教員採用試験にMMPIが用いられることになった経緯について
MMPIが開発された目的は、「臨床的に役立ち、直接的には臨床診断に役立つ目録法を作成すること」である。当然のことながら、医療現場、精神鑑定の場での使用が前提とされている。そのMMPIが多くの教員採用試験に用いられることになった経緯につき、政府はどのように把握しているか。
三 MMPIを用いることの合理性と必要性の有無について
教員としての適性をみるための教員採用試験の適性検査において、MMPIを用いる合理的な理由はあるのか、政府の見解を明らかにされたい。また、教員採用試験の適性検査において、MMPIを用いていない教育委員会があるとすれば、それはなぜか。わざわざMMPIを用いなくとも、教員としての適性を適切に評価できる証左と理解してよいか、政府の見解を明らかにされたい。
四 心理検査が提起した問題に対する政府の認識について
平成二十四年六月十五日の衆議院法務委員会において、当時の滝法務大臣は「不用意にそういうことを導入することがどれだけ人を傷つけるか、こういうことについて、やはり認識が薄かった」と答弁している。また、法務省の平成二十五年度啓発活動年間強調事項には、(14)性的指向を理由とする差別をなくそう、(15)性同一性障害を理由とする差別をなくそうとある。
さらに、法務省の人権擁護機関が平成二十四年中に救済措置を講じた具体的事例に、差別待遇事案として、次のような採用試験における不適切な取扱い事案がある。
「(差別待遇事案)事例7 採用試験における不適切な取扱い事案 採用試験において、性同一性障害者に対する不適切な質問項目があるとの申告を受け、調査を開始した事案である。専門家からの事情聴取を行うなどして検討したところ、当該質問を含む試験を実施するに当たっては性同一性障害者に対する配慮が必要と認められたことから、その旨を当該試験を実施した者に伝えたところ、翌年度において、当該試験全体の見直しを検討する中で、当該質問項目についても改善の適否を検討するとの説明を受けた。そして、翌年度の当該試験において、当該質問は、性同一性障害者に配慮した方法で実施された。(措置:「援助」)」
これらのことから、採用試験において、職務の適性とは直接関係のない性自認、性的指向などを尋ねる項目を含む心理検査が行われていた事実は、政府も承知していたと考えられるが、この事実が提起する問題について、政府の認識を明らかにされたい。
五 教員採用試験の適性検査からMMPIを除外すべきことについて
特に問題となっているMMPIについては、教員採用試験の適性検査から除外し、性同一性障害等の性的マイノリティに対して配慮した方法で教員採用試験が適正に実施されるべきである。次世代を育成し今後の社会の根幹を基礎づける教育という現場の中で、そのうちの一制度が性同一性障害等に苦しむ人々に追い打ちをかけ、理不尽な差別や偏見を助長するようなことがあってはならないからである。
事は教員を志す人間の尊厳の問題である。教育の現場で生じていることを重く受け止め、法務省、文部科学省等が連携して、教員採用試験の見直しや必要な改善を行い、人権侵害が生じることのないよう、その成果の周知徹底を図り、真摯に対応すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
六 教育現場等における適切な配慮の必要性と今後の対応について
平成二十五年三月に関東地区私立大学教職課程研究連絡協議会が公表した実態調査によれば、教育実習の際の性同一性障害者に対するハラスメントの問題も深刻であることが指摘されている。性同一性障害等を有する教育実習生に対するハラスメント事案は、教育現場という職場風土には人権意識が希薄なのではないか、との疑いを人々に抱かせる可能性もある。
教育に対する信頼が失われていくとき、希望が絶望に変わる。閉塞感の漂う現代の日本社会にあって、これまでお題目のように唱えられてきた「個性の尊重」や「多様性の重視」といった課題に対して、真剣な取組が求められている。未来の礎となる教育を担う現場においてこそ、こうした重い課題に率先して範を垂れるべきではないか。
この問題に限らず、性同一性障害等の性的マイノリティに対する配慮の必要性については、政府においても認識があるものと考えられるが、改めて教育委員会、教育現場等における適切な配慮の必要性と今後の具体的な対応策について、政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
教員の採用選考に係る適性検査において御指摘の「MMPI」を使用した都道府県及び政令指定都市の教育委員会の数については、平成十九年度から平成二十三年度までのものは把握していないが、平成二十四年度においては十三あると承知している。その具体的な都道府県名及び政令指定都市名については、教員の採用選考に係る適性検査において「MMPI」を使用していることを公にしないとの条件で任意に情報提供がなされたものであることから、お答えを差し控えたい。
二について
お尋ねについては、把握していない。
三について
教員の採用選考において具体的にどのような適性検査を実施するのかについては、教員の任命権者である教育委員会等において適切に判断されるべきものであると考えており、政府としては、お答えを差し控えたい。また、お尋ねの教育委員会が教員の採用選考に係る適性検査において「MMPI」を用いていない理由については、把握していない。
四について
法務省の人権擁護機関が平成二十四年中に救済措置等を講じた具体的事例の中に、御指摘の「採用試験における不適切な取扱い事案」があることは承知している。同人権擁護機関では、性的指向や性同一性障害を理由とする差別や偏見の解消を目指して、啓発冊子の配布等の人権啓発活動を行うとともに、法務局・地方法務局及びその支局等において、差別等に関する人権相談に応じ、人権侵犯の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として調査し、その結果に基づき、事案に応じた適切な措置等を講じているところであり、今後とも、人権啓発活動、人権相談及び人権侵犯事件の調査処理を通じて、人権の擁護を図ってまいりたい。
五について
法務省の人権擁護機関が人権侵犯事件において救済措置等を講じた具体的事例等については、同省のホームページで公表しているところである。お尋ねの教員の採用選考は、教員の任命権者である教育委員会等において、このような事例等も踏まえた上で、適切に行われるべきものであると考える。
六について
御指摘の「性同一性障害等の性的マイノリティ」に対しても、人権擁護の観点から、当然に「適切な配慮」がなされることが必要であると考えている。御指摘の「教育委員会、教育現場等」においても人権意識の向上が図られるよう、今後とも、教育委員会等に対し、教員に対する研修などの必要な取組の実施を促してまいりたい。
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