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リニア中央新幹線と環境アセスに関する質問主意書
参議院 第189回 第323号お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×1
質問本文
二〇一四年六月五日に出された中央新幹線(東京・名古屋市間)に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見(以下「環境大臣意見」という。)は「本事業の工事及び供用時に生じる環境影響を、最大限、回避、低減するとしても、なお、相当な環境負荷が生じることは否めない」、「本事業の供用時には現時点で約27万kWと試算される大量のエネルギーを必要としているが(中略)これほどのエネルギー需要が増加することは看過できない」、「言うまでも無く、本事業は関係する地方公共団体及び住民の理解なしに実施することは不可能である」といった最大級の厳しい意見であった。
また、その翌月の同年七月十八日に出された、同じく中央新幹線(東京・名古屋市間)に係る環境影響評価書に対する国土交通大臣意見(以下「国土交通大臣意見」という。)は、「環境大臣意見を勘案し、事業者が別紙の措置を講じることにより、本事業に係る環境の保全について適切な配慮がなされることが確保されるよう求める」というものであった。しかし、「配慮の確保」がどのようになされたか不明のうちに、同年十月十七日に工事の実施計画が認可されている。
そこで、以下質問する。なお、質問の趣旨がわかりかねるので答弁できない、という回答は厳に慎んでいただきたく要請する次第である。
一 環境影響評価法第三十三条には「対象事業に係る免許等を行う者は、(中略)環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない」とある。審査を行い、環境の保全が確保できると判断したから、リニア新幹線の着工を認可したと考えられるが、環境大臣意見における「これほどのエネルギー需要が増加することは看過できない」との記載につき、また、最新技術での解析を求められた地下水シミュレーション及び希少猛禽類の影響回避措置につき、国はどのように勘案し、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)から運行開始までにどのように解決すると説明を受けているのか。具体的に示されたい。
二 国土交通大臣意見に対して、事業者が解決できない場合又は説明が不十分である場合、国は本事業を中止することはあるか。また、その場合、誰が責任者なのか。
三 環境影響評価(以下「環境アセス」という。)の手続において、環境大臣は、評価書に対して参考意見を述べることができるが、一方で、補正評価書に対しては、対応や回答が不十分であっても意見を述べる権限がない。結果、事業の所管官庁の大臣である国土交通大臣によって許認可が下りてしまう、という現象がまま見られる。事実上、事業を推進しアクセルを踏む立場と、環境への配慮というブレーキをかける立場の双方を国土交通大臣が担っていることになり、自然環境の保全よりも開発が優先される余地が大きくなる危険が残っている。このことは、環境影響評価法の抱える根本的な欠陥とも考えうるが、改正による制度の何らかの見直しを図ることを国として想定はしていないのか。
四 環境アセス制度やその実績が進んでいるヨーロッパ諸国や米国では、評価の対象項目が、社会への影響、自然環境への影響、地域経済への影響、と広範囲にわたり、それらを総合的に判断する。日本では評価対象項目が「自然環境への影響」のみであるが、地域によっては「自然環境」のみならず、地域社会の「社会環境」に対しての影響、例えば、車両基地設置に伴う集落の分断や、交通量の大幅な増加などが、これまでの生活環境を一変させることがある。
以上を鑑み、環境影響評価法の評価対象項目に、「社会環境への影響」評価を加えるべきと考えるが、いかがか。
五 環境大臣意見では、「本事業は関係する地方公共団体及び住民の理解なしに実施することは不可能である」と指摘されている。加えて、国土交通大臣意見でも、丁寧な説明をすることを求めている。しかし、地域が環境協定の締結を求めているにもかかわらず、事業者はそれを拒否しているという現象がまま見られる。
また、南アルプスユネスコエコパーク事業との整合性について、具体的な保全への取組を、事業者とエコパーク運営側とが適切に進めているとは言い難い現状がある。地域住民からも、丁寧な説明がないままに測量などの作業が進められることへの不満の声が多く上がっていると聞く。
加えて、長野県下伊那郡大鹿村では、地質調査に際して、夜間作業はしないでほしい旨の住民の声に対し、夜間作業をしないと工期に間に合わないとの事業者側の都合により、夜間調査が強行された。
このように、リニア中央新幹線の着工に際し、地域住民の理解を得る努力を全力で行ったとは言い難い現状があり、環境大臣意見及びその意見を勘案するよう求めた国土交通大臣意見と齟齬が見られる。これらの事実は、事業認可の取消しにも値すると考えるがいかがか。
六 米国においては、事業の立案段階から、評価対象事業の提案だけでなく、場合によっては事業を実行しない案も含め、環境アセスのために複数案が常に義務付けられている。しかし、日本では環境への影響回避や低減措置が限定的であり、また、複数案の比較を行わない場合もある。改善のために、環境基本法の第十九条に定める国の責務である、「国は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全について配慮しなければならない」との規定にのっとり、事業立案段階での環境影響評価、いわゆる戦略アセス型の手法の実現が必要と考えるがいかがか。
七 現在の日本の環境アセスの手続は、環境アセス手続上での科学的指摘に対し、一方的に事業者の見解を明らかにするだけであり、説明責任が十分に果たされておらず、形式的なものに終わっている。
しかしながら、本来、環境アセス制度とは、双方向のコミュニケーションを経ての結論が非常に重要である。科学的指摘に対しては、科学的な反論や回答、意見の不採用の場合にはその科学的な根拠のある理由開示の義務付けが必要であると考えられるがいかがか。
右質問する。
政府答弁書
一について
中央新幹線(東京都・名古屋市間)の環境影響評価については、環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)に従い、平成二十六年四月二十三日に東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」という。)から送付された「中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書」(以下「環境影響評価書」という。)について、環境大臣は同年六月五日に意見を述べ、国土交通大臣は、当該意見を勘案し、河川などの社会資本の管理者としての観点などからの措置を加え、同年七月十八日にJR東海に対し意見を述べた。この意見を受けて、JR東海は同年八月二十六日に補正を行った環境影響評価書(以下「補正後の評価書」という。)を同大臣に送付した。
御指摘の「環境大臣意見における「これほどのエネルギー需要が増加することは看過できない」との記載」、「最新技術での解析を求められた地下水シミュレーション」及び「希少猛禽類の影響回避措置」については、補正後の評価書において、それぞれ、「省エネルギーを徹底しつつ、できる限り温室効果ガス排出量の抑制を図ります」、「水資源に関する最新の予測手法として・・・用いられている三次元水収支解析を実施しています」及び「工事開始までの継続的な確認調査及び事後調査を実施して生息状況の確認を行い、・・・必要な場合には・・・環境保全措置についても、専門家等の助言を踏まえて検討します」と記載されているところである。
二について
御指摘の「事業者が解決できない場合又は説明が不十分である場合」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十六年七月十八日の環境影響評価書についての国土交通大臣からの意見に対するJR東海の対応については、補正後の評価書に記載されており、当該記載事項が実施されるに当たっては、国土交通大臣は、鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)や環境影響評価法の規定に従って対応することとなる。
三について
環境影響評価法は、事業を実施しようとする者(以下「事業者」という。)自らが環境保全上の適正な配慮を行うことを期するものである。
環境影響評価法第三十三条から第三十七条までの規定により、事業に係る免許等を行う者等(以下「免許等権者等」という。)は、環境影響評価書の記載事項及び同法第二十四条の書面に基づいて、当該事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならず、例えば同法第三十三条においては、当該免許等に係る規定に定める基準に関する審査と環境の保全に関する審査の結果を併せて判断し、当該判断に基づき、当該免許等を拒否する処分を行うこと等ができることとしている。
これらの手続により、事業者が事業に係る環境の保全について適正な配慮を行うことを確保しており、御指摘のように見直すことは考えていない。
四について
環境影響評価法は、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第十四条の規定により、人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること等の確保を旨としていることから、環境影響評価の項目を御指摘のように見直すことは考えていない。ただし、土地等の供用等に伴う交通量の増加による大気質、騒音等への影響については、人の健康の保護及び生活環境の保全のための評価項目に当たるため、事業者が事業特性及び地域特性に関する情報等を踏まえ評価することとしている。
五について
御指摘の事例の事実関係が明らかでないため、お答えすることは困難である。
六について
事業に係る計画の立案の段階における検討については、環境影響評価法の一部を改正する法律(平成二十三年法律第二十七号)による改正後の環境影響評価法第三条の二第一項の規定により、同法第二条第二項に規定する第一種事業を実施しようとする者には、当該事業に係る計画の立案の段階において、当該事業に係る環境の保全のために配慮すべき事項についての検討が義務付けられている。
なお、その検討に当たっては、事業に係る位置等に関する適切な複数案を設定することを基本としている。
七について
環境影響評価法は、事業者自らが事業に係る環境の保全について適正な配慮を行うことを確保することを目的としている。
したがって、同法は、計画段階環境配慮書について関係行政機関等からの意見の聴取等を行う手続、事業に係る環境影響評価の項目等の選定及び環境影響評価準備書の記載事項の検討に当たり、都道府県知事等の意見を勘案するとともに、環境の保全の見地から意見を有する者の意見に配意する手続、環境影響評価書に対する免許等権者等の意見を勘案する手続等を定めている。
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