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畜産業におけるアニマルウェルフェアに関する質問主意書
参議院 第193回 第37号お答えすることは困難 ×1
質問本文
命の源である食に対する国民の関心は高い。特に適切な飼養管理が薬剤耐性菌リスクを低減し食の安全性の確保に有用である観点や、倫理的消費(エシカル消費)を求める観点から、動物福祉(以下「アニマルウェルフェア」という。)に配慮した飼育が海外で急速に広がっている。例えば欧州の複数の国やオーストラリア等でケージフリーの卵生産システムが半数以上を超えてくるなど、アニマルウェルフェアの五つの自由(飢えと渇きからの自由、苦痛、傷害又は疾病からの自由、恐怖及び苦悩からの自由、物理的、熱の不快さからの自由、正常な行動ができる自由)を目に見える形で達成しつつある。
わが国の畜産業においてアニマルウェルフェアを推進するためには課題が多いが、政府は外国人観光客の増加を目指しており、三年後に二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控えている中で、前記五つの自由を担保したアニマルウェルフェアの考え方に基づく飼養管理システムへの早急な転換が必要な時期に来ていると考えられる。
以上に鑑み、政府のアニマルウェルフェアに対する考え及び今後の対応について質問する。
一 政府が把握している諸外国のアニマルウェルフェアの動向を示されたい。
二 わが国でのアニマルウェルフェアの推進において、「正常な行動ができる自由」が課題であることは、公益社団法人畜産技術協会策定の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」にも記載があるが、政府は「正常な行動ができる自由」の確保に向け、現状の飼養管理システムの改善を図るための計画を策定しているか。
三 政府は、わが国のアニマルウェルフェアの向上に関し達成すべき目標を設定しているか。また、その目標の達成時期はいつか。
四 平成六年に厚生省が都道府県宛に通知した「と畜場の施設及び設備に関するガイドライン」には、と畜場の新設及び改築等が行われる場合としつつも、係留所の要件として「獣畜の飲用水設備が設定されていること。」と記載されており、また公益財団法人日本食肉生産技術開発センターの「食肉処理施設家畜の取扱・処理改善指針」や国際獣疫事務局の陸生動物衛生規約第七・五章でも飲用水設備の整備は必要とされている。しかし、わが国の牛と畜場の五十・四%、豚と畜場の八十六・四%では動物が清潔な水を飲む飲用水設備を整備していないとする調査結果もある。政府は、食肉処理施設に飲用水設備の整備を完了するための計画を策定しているか。また、その達成時期の目標はいつか。
五 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、参加するアスリートや海外からの観光客でも安心して食べられる、アニマルウェルフェアの五つの自由を担保した飼養管理システムで生産された畜産物を提供することが望ましいが、これに関する政府の取組を示されたい。
六 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会では、特にアスリートは有機食品にこだわることも多いと考えられるが、現在国内認証を得た有機畜産物の生産量は大変少ない。有機畜産物の調達確保に向けた政府の考え方を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねについては、二千五年以降、国際獣疫事務局において、加盟国に対し義務を課すものではないが、「陸生動物衛生規約」における動物福祉に関する勧告が順次採択されていると承知している。また、網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、欧州連合では、欧州連合指令に基づき、加盟国のそれぞれの法令において、家畜の動物福祉に関する事項が定められるべきこととされており、また、米国及びカナダでは、生産者団体によるガイドライン等において、家畜の動物福祉に関する事項が定められていると承知している。
二及び三について
政府としては、動物福祉について、お尋ねの「計画」や「目標」は設定していないものの、御指摘の「正常な行動ができる自由」を含む動物福祉における「五つの自由」が全ての動物においての基本的な理念であることを踏まえ、動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律(平成二十四年法律第七十九号)による改正後の動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)第二条第二項において、「何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない」ことが基本原則として規定されたと認識しており、これを受けて、同法第七条第七項の規定に基づく産業動物の飼養及び保管に関する基準(昭和六十二年総理府告示第二十二号)において、この旨を一般原則として位置付けたところである。
また、政府としては、公益社団法人畜産技術協会が策定した「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」に基づく適切な飼養管理の推進を図るとともに、動物福祉への配慮に関する事項をその内容に含むものである農業生産工程管理の認証取得に取り組む農家に対する支援等を行っているところである。
四について
と畜場については、と畜場法(昭和二十八年法律第百十四号)に基づき、公衆衛生の見地から必要な規制を行っており、と畜場が備えるべき構造設備の基準については、と畜場法施行令(昭和二十八年政令第二百十六号)第一条及び第二条において規定している。
御指摘の「と畜場の施設及び設備に関するガイドライン」は、と畜場の設置の許可を行う都道府県等に対して、新設、改築等が行われると畜場の構造設備に関する望ましい基準として示しているものであり、と畜場の獣畜の飲用水設備の設定は同令に規定する構造設備の基準に含まれるものではないため、政府として、その設定に関する具体的な計画を定めることは考えていないが、当該ガイドラインに沿ってと畜場の新設、改築等が行われるよう、都道府県等を通じて引き続き指導してまいりたい。
五及び六について
二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会における畜産物の調達及び提供の在り方については、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会において検討されるものであり、政府としてお答えする立場にないが、現在、同委員会においては、畜産物の提供事業者に対し、動物福祉の考え方に対応した飼養管理指針に照らして適切な措置が講じられている畜産物の調達を義務付け、かつ、有機畜産物の調達を推奨することを検討していると承知している。
政府としては、二及び三についてでお答えしたとおり、公益社団法人畜産技術協会が策定した「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」に基づく適切な飼養管理の推進を図るとともに、動物福祉への配慮に関する事項をその内容に含むものである農業生産工程管理の認証取得に取り組む農家に対する支援等を行っているところであり、また、有機畜産物の生産に必要となる施設の整備に取り組む農家に対する支援等を行っているところである。
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