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自賠責保険における脳損傷に係る障害認定に関する質問主意書

参議院 第193回 第86号趣旨が明らかではない ×1

提出者
参議院
提出日
2017年4月20日
内閣転送 2017年4月25日
答弁書受領日
2017年4月28日
提出から8日
答弁の項目数
4
質問 2,124字/答弁 828字

質問本文

交通事故などにより「むち打ち損傷」が起きたとされたものの、実際には中枢神経系の損傷である脳損傷だったという症例が見られている。WHO(世界保健機構)による二〇〇七年の報告では、「外傷性脳損傷という、静かに進行しながらも無視されて来た流行病に対する世界的な闘いに取り組むべきである。」と呼びかけられているところである。

脳損傷の診断については、身体性機能障害である運動障害・感覚障害・神経因性膀胱・脳神経麻痺、精神障害である高次脳機能障害・てんかんなどに対する系統的・学際的な神経学的検査法が有効だとされている(千六百名を超える患者を診察した石橋徹・相馬啓子・安田耕作・篠田淳の四人の医師による共同論文「軽度外傷性脳損傷の実際 学際的アプローチと多重的脳画像診断学」二〇一五年十月参照)。

自賠責保険における後遺障害の等級の認定は、「原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う」こととされているが(「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」二〇〇一年金融庁・国土交通省告示)、労災保険における脳の器質的障害に関する概念の整理が自賠責保険において徹底されていない。

すなわち、労災保険においては、労災認定基準の医学的な根拠である「精神・神経の障害認定に関する専門検討会報告書」(二〇〇三年)で、脳損傷など脳の器質的障害は「高次脳機能障害」及び「身体性機能障害」として現れると整理されているが、自賠責保険においては、脳損傷による精神障害のひとつである「高次脳機能障害」という言葉が一人歩きし、「身体性機能障害」が軽視されており、脳の器質的障害に関する概念が混乱している。

そこで、以下の四点について政府の見解を問う。

一 労災認定基準である「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」(二〇〇三年)では、画像所見が認められないものの、脳損傷のあることが医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失が認められる場合には、後遺障害として認定することとされている。

また、厚労省の「画像所見が認められない高次脳機能障害に係る障害(補償)給付請求事案の報告について」(二〇一三年六月十八日付厚生労働省労働基準局労災補償部補償課長通知)においても、画像所見が認められない場合であっても障害等級第十四級を超える障害の残る可能性があると認められている。

したがって、原則として労災保険に準拠することとされている自賠責保険においても、これらの労災認定基準等と同様の考え方に基づいて後遺障害の認定を行うべきではないか。

二 厚労省の「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準改正の留意点等について」(二〇〇三年八月八日付厚生労働省労働基準局労災補償部補償課長通知)においては、「精神・神経の障害認定に関する専門検討会報告書」を業務の参考とするよう指示されている。

したがって、自賠責保険における後遺障害の認定においても、同報告書を業務の参考にすべきではないか。

また、自賠責保険における後遺障害の認定に当たっては、同報告書に基づき、脳損傷による高次脳機能障害だけでなく、脳損傷による身体性機能障害(運動障害・感覚障害・神経因性膀胱など)も視野に入れ、総合的に判断すべきではないか。

三 労災保険においては、「認定基準の要件を満たしている疾病については原則的に業務上の疾病として取り扱われ」、「認定基準に該当しない疾病であっても業務と疾病との間の相当因果関係の存在が認められる疾病については、業務上の疾病として取り扱われる」とされる(労働省労働基準局編著「労災保険・業務災害及び通勤災害認定の理論と実際」中巻十五から十六頁)。

前記のとおり、自賠責保険における等級認定は「原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う」こととされていることから、自賠責保険においても、労災保険に準じた認定基準の策定と運用をすべきであり、事故等と疾病との因果関係の認定について、労災保険より厳しい認定基準の策定や運用をすることは許されないのではないか。政府の見解を示されたい。

四 労災保険においては、認定基準の根拠となる報告書や、労災の認定にあたる専門家、具体的には中央労災医員・地方労災医員・労災協力医・地方じん肺診査医などの氏名が公開ないし開示されている。

原則として労災保険に準拠することとされている自賠責保険においても同様に、認定基準の根拠や認定にあたる専門家の氏名を公開すべきではないか。具体的には、損害保険料率算出機構「自賠責保険における神経系統又は精神の障害に関する認定システムについて(報告書)」(二〇〇三年十二月)など、従来公表されていない認定基準の根拠となる一切の文書や、自賠責保険審査会の委員ないし専門部会委員の氏名を公開されたい。

また、労災保険では、障害認定の審議内容について、調査結果復命書が請求した被災者に開示される。自賠責保険においても、自賠責保険審査会の審議内容が、請求した被害者に開示されるべきではないか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)における御指摘の「後遺障害の認定」については、「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成十三年金融庁・国土交通省告示第一号)に基づき、各保険会社等において、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う必要があると認識しており、国土交通省において、御指摘の「これらの労災認定基準等」を踏まえ、一般社団法人日本損害保険協会等に対し、労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じた適正な対応が図られるよう、同協会等の会員に対する周知を依頼している。今後とも関係府省間で一層の連携を図りつつ、引き続き、自賠責保険の的確な運用に努めてまいりたい。

二について

自賠責保険における御指摘の「後遺障害の認定」については、厚生労働省の「精神・神経の障害認定に関する専門検討会」が平成十五年六月に取りまとめた「精神・神経の障害認定に関する専門検討会報告書」を参考に損害保険料率算出機構において同年十二月に策定された「自賠責保険における神経系統又は精神の障害に関する認定システムについて(報告書)」に基づき身体性機能障害の状態も検討しつつ、総合的に判断が行われていると認識している。

三について

御指摘の「事故等と疾病との因果関係の認定について、労災保険より厳しい認定基準の策定や運用をすることは許されない」の意味するところが明らかではないが、「自賠責保険においても、労災保険に準じた認定基準の策定と運用をすべき」との御指摘については一についてで述べたとおりである。

四について

御指摘のような情報の「公開」又は「開示」については、損害保険料率算出機構において自ら判断すべきものと考えているが、現状の取扱いは、個別案件の損害調査を公平かつ客観的に行う観点から、「公開」又は「開示」することによる影響を配慮したものであると承知している。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

趣旨が明らかではない ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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