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日本政府の半導体政策に関する質問主意書
参議院 第211回 第51号お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×3承知していない ×1仮定の質問 ×1
質問本文
日本の製造業は、二〇二一年度の名目GDP全体の二十%を占め、我が国の産業の根幹をなしているが、二〇二〇年末に顕在化した世界的な半導体不足は、現在までの二年以上、日本の製造業に深刻な打撃を与えている。例えば、自動車関連産業は、我が国のGDPの一割強を占める六十兆円規模で、五百五十二万人を雇用する基幹産業であるが、自動車メーカー各社は、国内外の生産拠点で大幅な減産と操業停止を余儀なくされている。トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、SUBARUの五社の二〇二一年度実績は、計画に対し三百二十万台減少した。また、経済産業省生産動態統計調査によると、二〇二一年の生産金額も二〇一九年比で三・一兆円減少し、深刻な経済損失が発生している。同様に、家電製品やゲーム機も半導体不足による販売減少や生産停止で、二〇二二年度第一・四半期は電機メーカー五社が営業減益となった。設備需要が伸びているにもかかわらず、半導体不足により製品が出荷できず、機械・電機メーカーの受注残が六兆円との報道もある。
慢性化する半導体不足による製造業の甚大な経済損失は、国力にも影響を与えており、製造業の半導体不足を解消することが、日本経済にとって喫緊の課題であることは論をまたない。こうした状況の中で、二〇二一年度から政府が決定した半導体政策のうち、特に特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(以下「5G促進法」という。)に基づく支援策について、日本国内の製造業を支援し、経済損失を解消する国家戦略として妥当なものであるかについて、以下質問する。
一 半導体政策の立案・決定プロセスについて
我が党が、二〇二〇年末から現在まで続く車載半導体不足が日本のGDPにどのような影響を与えているかの具体的な試算について、経済産業省に問い合わせたところ、「車載用半導体の供給不足は近年の自動車生産の減産要因の一つと承知しておりますが、自動車メーカーの生産活動は様々な要因に影響されることから、車載用半導体の供給不足による影響を定量的にお答えすることは困難」との回答であった。
一方、ジーナ・レモンド米商務長官は、二〇二二年三月十五日のブラウン大学の講演において、車載半導体不足の国力に与える影響について、「自動車産業は半導体不足により(二〇二一年は)計画よりおよそ八百万台減産し、その結果二千百億ドル(約二十七・五兆円)の減収となった。一部の推定によると、半導体不足がなければ、米国の年間GDP成長は今よりも一%高かっただろう。」と発言しており、米国政府は、自動車メーカーの生産活動が様々な要因に影響されていることを踏まえつつ、車載用半導体の供給不足がGDPに与える影響を定量的に分析し、米国内の半導体産業支援について戦略的に検討し、CHIPS法を含む半導体政策を立案し推進している。
政府が国家的な課題解決に取り組む場合、現状を適切かつ定量的に把握・調査し、その原因を分析し、それに対する複数の解決策から最も効果的かつ適切な方法を検討し、政府の政策として実行していくことが必要である。
民間では、例えば、第一生命経済研究所経済調査部が二〇二三年二月十三日付けのEconomic Trendsで「コロナ以降の自動車工業の減産により、波及効果も含めた付加価値は二〇二〇年以降(中略)、累計でGDPを▲八・六兆円押し下げてきた」と発表しており、半導体不足による自動車減産で日本経済への影響の定量的な分析が行われている。米国政府や我が国の民間シンクタンクが半導体供給不足の影響を数値で分析して示し、政策を戦略的に検討しているにもかかわらず、日本政府と経済産業省がそれをできないとしているのはなぜなのか示されたい。
二 5G促進法に基づく半導体政策の妥当性について
1 政府は、5G促進法に基づく支援のため、令和三年度補正予算において六千百七十億円を計上し、経済産業大臣から特定半導体生産施設整備等計画の認定を受けたTSMC(JASM)、キオクシア及びマイクロンメモリジャパンの三社に対し助成することとしている。この三社は多額の外国資本が入っている外資系企業である。
5G促進法の目的として、第一条に「特定半導体が我が国の技術の向上により国内で安定的に生産されることが我が国における産業基盤を整備する上で重要である」と示されている。したがって、「国内で安定的に生産される」ことが目的であるならば、この法律による支援対象企業は、生産技術が保持でき、次世代技術開発が可能である国内企業でなければならない。三社は全て外資系企業であり、生産技術を日本国内に保持するという保証はないので、法律の目的を充足するためには、国内に工場があるのみならず、生産技術が我が国の国内企業で保持されることが必要であると考えるが、この点について政府の見解を示されたい。
2 特定半導体が、国内で安定的に生産し供給できることが特に求められるとすれば、5G促進法に基づき、日本政府から支援されたTSMC等は、将来的な特定半導体の逼迫の際にも、国内の半導体購入企業(電機メーカー、自動車部品メーカー等)に優先的に供給することが担保される仕組みが必要である。
例えば、TSMCは、半導体メーカーから生産委託を請け負うファウンドリと呼ばれる製造受託企業である。ファウンドリは半導体購入企業を選べるわけではなく、生産された半導体の供給先は半導体メーカーの意向で決定されるため、TSMCに日本の税金四千七百六十億円を巨額投資しても、日本の国内企業に半導体が納入され、必要な局面で日本の産業を支えるか否かは非常に不透明である。
二〇二二年六月十七日に認定されたTSMCの特定半導体生産施設整備等計画の概要によると、需給逼迫時の取組内容としては、「TSMCは、日本政府からの要請に応じ、日本の顧客向けの供給拡大について誠実に協議に応じる。」とあるが、誠実に協議に応じることのみが求められ、日本の国内産業向けの優先的な供給を義務付けているものではない。
このことから、5G促進法に基づいてTSMC等の外資系ファウンドリに巨額投資を行っても、日本企業への優先的な供給に対し拘束力を持ったスキームにしなければ、日本の国内産業を救済し、経済安全保障に寄与することを保証するものではないと考えるが、この点について政府の見解を示されたい。
3 5G促進法第三条第一項では「我が国における特定高度情報通信技術活用システムの開発供給に関係する産業の国際競争力の強化(中略)に資する」ことを、また、同条第二項では「我が国における特定半導体の生産に関係する産業の発展に資する」ことを基本理念として謳っている。しかし、TSMC等の外資系企業に支援することは、競合する国内の半導体企業の競争力を阻害することになり、国内産業の国際競争力を強化し、特定半導体の生産に関係する産業の発展に資するとの基本理念と矛盾しており、5G促進法に違反する政策ではないかと考えるが、この点について政府の見解を示されたい。
4 現下、世界的に需給逼迫が指摘されている車載半導体の大半は、四十nmクラスのレガシー半導体であり、日本経済に重大な影響を与えている製造業の半導体不足の解消に最も必要な半導体である。
昨年十月の参議院予算委員会での浜口誠議員の質疑及び衆議院経済産業委員会の関芳弘議員の質疑に対する答弁の中で、5G促進法に基づく半導体生産設備整備への支援が現状の半導体不足への対応策の一つとして答弁されているが、そうであるならば、5G促進法は、車載半導体の生産設備整備への支援にも活用できると考えられる。
一方、四十nmクラスのレガシー半導体は、5G促進法で支援を予定しているTSMCの半導体(二十八―二十二nm及び十六―十二nm)とは異なる領域であるが、5G促進法施行令では特定半導体が百nm以下と定義されているので、支援対象となる。ただし、供給が不足している四十nmクラスの車載半導体の大半は「特定高度情報通信技術活用システムに不可欠な半導体」には該当しないため、5G促進法の支援対象にならないと解釈されるが、その理解は正しいか。
5 5G促進法第二条第四項で、「特定半導体」とは、「特定高度情報通信技術活用システム(中略)に不可欠な大量の情報を高速度で処理することを可能とする半導体であって、国際的に生産能力が限られていることその他の事由により国内で安定的に生産することが特に必要なもの」として定義されている。ここで「国際的に生産能力が限られていることその他の事由により国内で安定的に生産することが特に必要なもの」とは、世界的に需給バランスが逼迫し、国内の製造業等に対し十分な供給が難しい状況でも、国内で安定的に生産し供給できる体制を整備することが特に求められる半導体と考えられる。したがって、今回政府の支援対象であるTSMC等が国内工場を建設し生産する予定の特定半導体は、世界的に逼迫しており、今後も長期的に逼迫が予想されるものでなければならない。
我が党が、二〇二〇年一月から二〇二三年二月までの半導体の需給バランスについて、用途別(パソコン、スマートフォン、データセンター、自動車)と種類別(メモリー、先端ロジック半導体、アナログ半導体、パワー半導体、マイコン)に、日本国内と世界の需給バランスのデータについて、経済産業省に問い合わせたところ、「お示しできる用途別、種類別の日本国内および世界の需給バランスに関するデータを保有していないため、お答えすることはできません。」との回答であった。この回答に鑑みれば、政府内ではTSMC等が国内工場で生産予定の特定半導体について需給状況の推移を把握していないと考えられる。
しかし、二〇二二年二月のTech Insightsによる「Semiconductor Market Overview」の需給バランスデータ及び二〇二三年二月二十日に「EE Times Japan」で発表された湯之上隆氏の記事によると、TSMC等のファウンドリ(生産委託企業)の逼迫は二〇二一年前半までであり、二〇二一年第三・四半期以降は逼迫が解消され、二〇二二年は供給過剰に転じており、TSMC等三社で生産される予定の特定半導体は、その後の需要の逼迫が現時点で解消されていると報告されている。
この報告のとおりであるならば、「国際的に生産能力が限られていることその他の事由により国内で安定的に生産することが特に必要なもの」という特定半導体の要件を、二〇二二年時点で失っているものと考えられる。このことは、5G促進法の趣旨から逸脱し、税金を使って外資系企業を支援して余剰な半導体を製造していることにならないか。さらに、こうした世界の需給バランスに関するデータを把握することなく政策決定を行なっていることについては見直すべきではないか。加えて、現状の施策で量産が進められた「特定半導体」が情勢の変化で長期的な供給過剰となった際には、どのような対応策を考えているのか、この三点について、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
御指摘の「米国政府や我が国の民間シンクタンク」の分析については、様々な仮定を置いて行われたものと承知しており、その具体的な手法については承知していないが、自動車の生産は各種の部品の需給その他様々な要因に影響されることから、半導体の供給不足が自動車の生産に及ぼす影響について定量的にお示しすることは困難である。なお、自動車産業を含む国内産業への半導体の安定的な供給に向けては、半導体の国際的な需給の動向等を適切に把握しつつ、国内の製造基盤強化に向けた補助金による支援等の施策を戦略的に講じてきているところである。
二の1について
お尋ねの「国内企業」の意味するところが必ずしも明らかではないが、特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(令和二年法律第三十七号。以下「法」という。)に基づき事業者から法第十一条第一項に規定する特定半導体生産施設整備等計画(以下「計画」という。)の認定の申請があった場合には、いずれの国の事業者であるかにかかわらず、当該申請に係る計画が同条第三項各号のいずれにも適合する場合に同条第一項の認定(以下「認定」という。)をするものであるところ、同条第三項各号においては、例えば、外国為替及び外国貿易法(昭和二十四年法律第二百二十八号)をはじめとする国内関係法令を遵守すること、特定半導体等(同項第二号に規定する特定半導体等をいう。以下同じ。)の生産が一定の期間以上継続的に行われると見込まれるものであること、特定半導体等の生産能力を強化するための投資及び研究開発等が行われると見込まれるものであること、不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)に基づく保護を受けるために必要な対策を講じているなど特定半導体等に係る技術上の情報を適切に管理するための体制が整備されていること等を認定の要件としている。
二の2について
御指摘の「日本企業への優先的な供給に対し拘束力を持ったスキーム」の意味するところが必ずしも明らかではないが、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(平成六年条約第十五号)附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第十一条は、食糧その他輸出締約国にとって不可欠な産品の危機的な不足を防止するために一時的に課すものであること等の例外的な場合を除き、他の締約国への輸出について、関税その他の課徴金以外の制限を課すことを原則として禁止していることから、法は、認定を受けた事業者に対して国内向けに優先的に出荷する義務を課してはいない。その上で、法第十一条第三項各号においては、特定半導体等の需給がひっ迫した場合における増産を含む国内における安定的な生産に資する取組が行われると見込まれること等を認定の要件としているところである。
二の3について
法第三条第二項は、「特定半導体生産施設整備等は、・・・国際的に特定半導体の生産能力が限られている状況においてもその需給の変動に対応できるよう我が国の技術の向上により特定半導体の国内における安定的な生産を確保すること、及び我が国における特定半導体の生産に関係する産業の発展に資することを旨とし、・・・行うものとする。」と規定しているところ、御指摘の事業者に係る計画の認定についても、我が国における半導体関連産業の集積や人材の育成等に資するものであり、同項の考え方に沿っているものであると考えている。また、法は、認定を受ける事業者がいずれの国の事業者であるかを問うものではない。
二の4について
特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律施行令(令和二年政令第二百五十六号)第二条は、特定半導体(法第二条第四項に規定する特定半導体をいう。以下同じ。)の性能として、演算を行う半導体については、トランジスター上に配置される導線の中心の間隔が最も短い箇所において百ナノメートル以下であるものと規定しており、また、法第六条第一項の規定に基づく特定高度情報通信技術活用システムの開発供給等の促進に関する指針(令和二年総務省・財務省・経済産業省告示第一号)においては、法第二条第五項に規定する特定半導体生産施設整備等について、演算を行う半導体の生産について特定の材料を用いて行うこと等を求めている。御指摘の「レガシー半導体」に係る生産施設の整備等に係る計画が法に基づく支援の対象となるかどうかについては、これらの要件を満すかを個別に判断する必要があると考えている。
二の5について
御指摘の「供給過剰」の意味するところが必ずしも明らかではないが、法第二条第四項は、特定半導体について、「国際的に生産能力が限られていることその他の事由により国内で安定的に生産することが特に必要なものとして政令で定める種類ごとに政令で定める性能を有するもの」と規定しているところ、「特に必要なもの」であるかどうかについては、半導体に係る需給や技術の動向その他様々な要素を勘案した上で、政令で具体的な要件を定めているところであり、加えて、二の3についてで述べたとおり、法は、認定を受ける事業者がいずれの国の事業者であるかを問うものではない。
また、当該政令を定めるに当たっては、我が国の産業の実態を踏まえるべく事業者から提供を受けた情報を活用して検討を行っている。
その上で、お尋ねの「対応策」については、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたいが、一般論として申し上げれば、特定半導体については、事業者が需給の動向を適切に踏まえつつ生産を行い、国内で安定的に供給されることが重要であると考えている。
この答弁書に出てくる定型句
お答えすることは困難 ×1趣旨が明らかではない ×3承知していない ×1仮定の質問 ×1
語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。
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