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アイヌ施策推進法の見直しに関する質問主意書
参議院 第216回 第45号趣旨が明らかではない ×1
質問本文
「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(以下「アイヌ施策推進法」という。)は、施行から五年が経過し、見直しの年を迎えた。自見はなこアイヌ施策担当相(当時)は二〇二四年七月、札幌市内で「民族として誇りを持って、尊重される社会を実現するために、心を一つに力を合わせていきたい。推進法の見直しの議論をスタートさせたい」と述べ、伊東良孝アイヌ施策担当相は同年十月、アイヌ施策推進法の「施行状況等の検討を行うため、アイヌの人々の意見などを広く伺う意見交換会を開催する」考えを明らかにしている。
アイヌ民族は、明治期以降の国や北海道による同化政策によって、土地や資源を奪われ、強制移住を強いられるとともに、文化や言語を否定され、民族の権利を奪われ、生活基盤を根底から破壊された。差別と偏見の中で、生活苦が何世代も連鎖し、生活環境や進学においても格差に苦しんでいる。
二〇〇七年に国連総会は「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を採択し、日本では、二〇一九年四月にアイヌを「先住民族」と規定したアイヌ施策推進法が成立した。
国連宣言以降、世界では先住民族へ謝罪する動きが広がっているが、日本では政府によるアイヌ民族への謝罪がなく、また、アイヌ施策推進法には先住民族の権利(自決権、土地権、生業の権利など)の規定がないなど、国際水準から大きく立ち後れている。
私は、二〇二四年四月十五日の参議院決算委員会において、アイヌ施策の見直しに当たって、アイヌの人々や団体が広く参加できる仕組みを作ること、国連人権条約監視機関の勧告を踏まえた施策の具体化、参議院国土交通委員会の附帯決議に沿った対策を求めた。
そこで、以下質問する。
一 政府は北海道内外で意見交換会を始めていると承知しているが、現在の取組状況を明らかにされたい。また、伊東アイヌ施策担当相は、アイヌ民族との意見交換会を行う考えを明らかにしているが、関東や関西を含めてどのようなかたちで意見交換、意見集約を進めるのか明らかにされたい。
二 北海道が公表した二〇二四年度道民意識調査の結果では、交流サイトなどを含むアイヌ民族への差別や偏見について、回答した道民の二十六・九%が「直接見聞きしたことがある」と答えている。
自由権規約委員会は、「日本の第七回定期報告に関する総括所見」(二〇二二年十一月三十日)を公表している。主な懸念事項及び勧告において、「委員会は、(中略)締約国に対し、優先事項として、パリ原則に沿った独立した国内人権機構を設置し、同機構に対して適切な財政的及び人的資源を配分することを求める。」としている。
アイヌ施策推進法案に対する参議院国土交通委員会の附帯決議の四は、「本法第四条の規定を踏まえ、不当な差別的言動の解消に向けた実効性のある具体的措置を講ずること。」としているが、アイヌ施策推進法施行後、どのような措置を講じたのか明らかにされたい。
三 アイヌ語は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)によって、消滅の危機にある言語の中でも「極めて深刻」な危機にある言語の一つに認定されている。母語として話せるアイヌの人は数人しかいないと言われている。
1 言語は文化の基盤である。母語としてのアイヌ語の話し手育成を、緊急課題として位置付ける必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
2 二〇二四年九月に北海道で行われた北欧の先住民サーミに学ぶ学習会でアスラック・ホルンバルグ氏(サーミ評議会議長)は、「毎年十数名がサーミ言語の教育を受ける環境をつくり、受講者が四百人を超えた。地元の学校でサーミ語の教育を受けることが可能になった」と紹介された。
私が、二〇二一年四月十九日の参議院決算委員会においてアイヌ語の話し手の早急な育成を求めたところ、加藤勝信官房長官(当時)は、アイヌ施策推進法の「趣旨にのっとって対応していきたい」と答弁した。政府は、これまでアイヌ語の話し手育成をどのように進めてきたのか。また、今後の育成計画や予算を明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねについては、令和六年の秋以降に、アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(平成三十一年法律第十六号。以下「アイヌ施策推進法」という。)の施行の状況についてアイヌの人々等に説明した上で、アイヌの人々の意見等を広く伺う意見交換会を北海道内の各地及び東京都において開催してきたところ、今後も引き続き同意見交換会を開催するとともに、アイヌ施策推進法の施行の状況や、今後講ずる措置についての検討を行い、その後、当該検討の結果を、内閣府特命担当大臣(アイヌ施策)を座長とするアイヌ政策推進会議に報告することを予定している。
二について
お尋ねについては、アイヌの人々に対する差別の解消のためには、アイヌの歴史や文化の魅力について、国民の理解を深めることが重要と考えており、関係省庁が連携して、アイヌの歴史や文化に関する教育活動の推進、アイヌ政策推進交付金等による全国各地でのアイヌの歴史や文化に関するイベントの開催への支援、アイヌ施策推進法第二条第三項に規定する民族共生象徴空間(以下「民族共生象徴空間」という。)におけるアイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統及び文化に関する知識の普及啓発、各種人権啓発活動や人権に関する相談などの実施等、各般の取組を進めている。
三の1について
政府としては、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化が置かれている状況に鑑み、「アイヌ施策の総合的かつ効果的な推進を図るための基本的な方針」(令和元年九月六日閣議決定)において、アイヌの人々が抱える課題の解決を図るために必要な取組として、「政府は、存続の危機にあるアイヌ語の復興に向けた取組・・・に今後とも一層努める」としており、この方針に沿って当該取組を進めていく考えである。
三の2について
文化庁において、市町村等への支援を通じたアイヌ語の学習に活用可能なアイヌ語アーカイブの作成及び公益財団法人アイヌ民族文化財団を通じたアイヌ語の指導者や話者の育成、民族共生象徴空間におけるアイヌ語体験プログラムの実施等に継続して取り組んでいるところである。また、今後については、お尋ねの「今後の育成計画」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、こうした取組を着実に進めていくとともに、そのために必要な予算の確保に努めてまいりたい。