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ホルムズ海峡を巡る情勢と存立危機事態の関係に関する質問主意書

参議院 第221回 第9号お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×2個別の事案 ×6

提出者
参議院
提出日
2026年3月9日
内閣転送 2026年3月16日
答弁書受領日
2026年3月19日
提出から10日
答弁の項目数
10
質問 5,260字/答弁 2,463字

質問本文

今般の米国とイスラエルによるイランへの武力攻撃の影響により、ホルムズ海峡が事実上封鎖された件について、存立危機事態や重要影響事態に当たるかと問われた木原稔内閣官房長官は現在の状況がこれらの事態に該当するといった判断は行っていない旨発言した。安倍政権における安保法制議論の際、ホルムズ海峡に機雷などが敷設され封鎖された場合には存立危機事態に当たる可能性があるとの具体例が示されていたが、当該例示が現実味を帯びてきたと懸念され始めている。しかし、米国の攻撃が国際法違反と評価される場合、そもそも日本は存立危機事態を認定できない。この点についての政府の立場は過去の国会答弁で明確に示されている。

一方で、高市早苗内閣総理大臣は、「我が国としてその法的評価をすることは差し控えさせていただきます。」と答弁しており、現時点では違法とも合法とも評価していないという立場である。

以下の質問で引用する岸田文雄外務大臣(当時)の答弁を今回のケースに当てはめれば、日本が存立危機事態を認定して、限定的な集団的自衛権を行使するためには、「我が国と密接な関係にある他国」である米国が「正当な自衛権を行使しているかということは、これはしっかり判断しなければならない」。しかし、米国の行為が国際法上違法か否かを政府が評価しない以上、日本が米国から限定的な集団的自衛権行使の要請を受けた場合にも、存立危機事態に当たるか判断できないこととなる。

今後の政府の判断にも関わる論点であり、仮に安保法制議論の際に想定されたホルムズ海峡への機雷敷設という事態が起きた場合でも、まずは米国の行為を国際法上どう評価するかが前提となる。

こうした点を整理するため、以下質問する。

一 平成二十七年八月二十七日の参議院農林水産委員会における安倍晋三内閣総理大臣(当時)の答弁のとおり、政府は、「存立危機事態に該当する可能性のある事例としてホルムズ海峡の機雷封鎖の例」を挙げ、その場合の自衛隊の武力行使として、機雷掃海を挙げてきた。

1 ホルムズ海峡に係る存立危機事態として政府が想定している「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生」は、前記答弁にある機雷封鎖に限られるか示されたい。限られない場合、どのような事態を想定しているか示されたい。

2 ホルムズ海峡に係る存立危機事態において、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八十八条第一項に基づき、自衛隊が防衛出動を命ぜられた場合に行使する武力として政府が想定している行為は、機雷掃海に限られるか示されたい。限られない場合、どのような行為を想定しているか示されたい。

二 令和八年三月二日の記者会見において、木原内閣官房長官は、現在のホルムズ海峡を巡る情勢に関し、事実関係等について鋭意情報収集を行っているところである旨発言した上で、現在の状況が存立危機事態及び重要影響事態に該当するといった判断は行っていない旨発言した。

1 前記発言の趣旨は、現在の状況が存立危機事態及び重要影響事態に該当するかの判断自体を行っていないということか、又は、現在の状況が存立危機事態及び重要影響事態に該当しないと判断したということか示されたい。

2 前記1において判断自体を行っていない場合、その理由を示されたい。また、今後、その判断をする考えはあるか示されたい。

3 前記1において該当しないと判断した場合、今回の事態における「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生」について、どのように判断したか示されたい。また、今回の事態において米国に対するイランの武力攻撃が発生したが、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生」に該当するか示されたい。あわせて、政府が事実関係等について情報収集を行った結果、今回の事態が存立危機事態及び重要影響事態に関係する諸法律上のどの要件に該当しないと判断したか示されたい。

三 武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第二条第四号において、存立危機事態とは、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と規定されている。そのため、「我が国と密接な関係にある他国」に該当するA国が国際法上違法な武力攻撃をB国に対して行った結果としてB国から反撃として武力攻撃を受けた場合、我が国が存立危機事態を認定し、B国に対して限定的な集団的自衛権を行使することは、国際法上違法な武力攻撃を行ったA国に加担してB国に対する武力行使を行うことになる。

しかし、A国が行った我が国と何ら関係がない国際法上違法な武力攻撃を契機としたA国とB国との武力紛争に我が国が巻き込まれることは、到底認められない。「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合と異なり、極めて抽象的・観念的である。実際に、平成二十七年八月二十六日の参議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会における中谷元防衛大臣(当時)の答弁のとおり、存立危機事態は、「我が国への直接攻撃や物理的な被害がいまだ発生をしていない場合」であることから、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号)は適用されない。

平成二十七年三月二十六日の参議院外交防衛委員会において、岸田外務大臣(当時)は、「我が国は、憲法上許容される武力行使を行うに当たっては国際法を遵守するということ、これは当然のことであります。そして、その際に、まずは国際法上、集団的自衛権を行使するために課せられている要件、一般的には、武力攻撃を受けた国からの要請又は同意があること、そして他に適当な手段がないこと、そして必要最小限度の実力行使であること、こうした要件を満たす必要があります。そして、こうした国際法上の考え方を踏まえつつ、我が国が武力行使を行うか否かについては、あくまでも新三要件を満たすか否かによることになります。しかし、いずれにしましても、国際法に従っていない国を支援することはあり得ません。ですから、仮に、ある国家が何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力の行使を行っているような場合、そういった国を支援することはあり得ないと考えております。」、「国際法上の要件、集団的自衛権の要件、そして我が国の新三要件、そして、何よりも国際法を遵守していない国を支援することはあり得ません。正当な自衛権を行使しているかということは、これはしっかり判断しなければならないと考えます。」と答弁した。また、外務省も「国連憲章上は、自衛権の発動が認められるのは武力攻撃が発生した場合であるということが明確に規定されております。したがいまして、単に武力攻撃のおそれや脅威があるだけでは自衛権の発動は認められません。よりまして、いわゆる先制攻撃や予防戦争などが国際法上認められないということは、従来から政府として申し上げているとおりでございます。」、「武力攻撃の存在というものが自衛権の発動の前提になるという考えに立って、国際法上認められない行為を我が国として支援することはないということでございます。」と答弁した。

また、平成二十七年五月二十六日の衆議院本会議において、安倍内閣総理大臣(当時)は、「日本は米国の武力行使に国際法上違法な武力行使として反対したことはありませんが、過去、米国のグレナダ派兵やパナマへの軍事介入の際に、我が国は遺憾の意を表明しています。憲法上、我が国による武力の行使が許されるのは、あくまで新三要件を満たす場合に限られます。我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるとは言えない場合や、他に適当な手段がある場合や、必要最小限度の範囲を超える場合は、新三要件を満たさないことから、武力の行使は許されず、米国からの集団的自衛権行使の要請があったとしても、断るのは当然のことであります。」と答弁した。

同様に、平成二十七年五月二十八日の衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、安倍内閣総理大臣(当時)は、「憲法上、武力の行使が許されるのはあくまでも新三要件を満たす場合に限られるわけでありまして、我が国または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したことを前提としているわけでありまして、いかなる場合に新三要件を満たすことになるかは、事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することになります。同時にまた、国連憲章上、武力攻撃の発生が自衛権の発動の前提となることから、仮にある国が何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力行使を行うことは国際法上認められていないわけでありますので、我が国が自衛権を発動してそのような国を支援することはないわけであります。」と答弁した。

1 一般論として、「我が国と密接な関係にある他国」が国際法上違法な武力攻撃を行った結果、当該武力攻撃の対象となった相手国から反撃として武力攻撃を受けた場合、我が国は当該「我が国と密接な関係にある他国」を支援することはあり得ないとの理解でよいか示されたい。

2 前記1の場合、法的には「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生」に該当しないとの理解でよいか示されたい。

四 令和八年三月二日の衆議院予算委員会において、茂木敏充外務大臣は、「今回の事態がどうであるか、それにつきましては我が国として全ての情報を把握する立場にないわけでありまして、その法的評価については答弁を控えさせていただきたいと思います。」と答弁した。また、高市内閣総理大臣は「これが自衛のための措置なのかどうかも含めて、詳細な情報を持ち合わせているわけではございません。今、外務大臣が答弁したとおり、我が国としてその法的評価をすることは差し控えさせていただきます。」と答弁した。

1 前記三の外務大臣答弁によれば、今回の事態について法的評価をしなければ、存立危機事態の要件である「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生」に該当するか判断できないと思料するが、政府の見解を示されたい。

2 前記四の内閣総理大臣答弁について、前記三の外務大臣答弁のとおり、存立危機事態の認定に当たって、「我が国と密接な関係にある他国」が「正当な自衛権を行使しているかということは、これはしっかり判断しなければならない」と思料するが、政府の見解を示されたい。

3 前記の内閣総理大臣の答弁にある「これが自衛のための措置なのか」について「詳細な情報」を収集しているか示されたい。収集していない場合、今後収集する考えはあるか示されたい。収集した結果、「これが自衛のための措置なのか」を公表する考えはあるか示されたい。

五 令和元年六月十三日、イランを訪問中の安倍内閣総理大臣(当時)は、ハメネイ最高指導者(当時)と最高指導者事務所において会談を行った。

外務省ウェブサイトによれば、「安倍総理から、ハメネイ最高指導者に対し、軍事衝突は誰も望んでおらず、現在の緊張の高まりを懸念していることを伝え、また、安倍総理から、日本は核合意を一貫して支持しており、イランがIAEAとの協力を継続していることを評価し、イランが引き続き核合意の履行継続を期待している旨述べ、イランは地域の大国であり、中東の安定化に向け建設的な役割を果たすよう要請しました。ハメネイ最高指導者からは、平和への信念を伺うことができ、また、核兵器は保有も製造も使用もしない、その意図はない、すべきではない旨の発言がありました。」とされている。また、この会談について、「日本のエネルギー安全保障上、中東地域は死活的に重要であり、イランは同地域の安定の要です。中東地域における緊張が日増しに高まっている中で、安倍総理から、直接、ハメネイ最高指導者に対し、緊張緩和と情勢の安定化を意を尽くして働きかけることができ、地域の緊張緩和に向けて、時宜を得た有意義な会談となりました。」との評価を掲載している。

1 高市内閣総理大臣の言う「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」の定義を示されたい。

2 前記の会談は、高市内閣総理大臣の言う「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」の定義に該当するか示されたい。

3 前記四の内閣総理大臣答弁に関し、積極的に情報収集を行った上で、米国、イスラエル及びイランに対して、内閣総理大臣が自ら直接働きかけ、現在の武力紛争を直ちに停止させる考えはあるか示されたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一の1について

御指摘の「ホルムズ海峡の機雷封鎖の例」については、「武力の行使」の三要件を満たすことがあり得る一例として示したものであるが、一般に、いかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、事態の個別具体的な状況に即して、政府がその持ち得る全ての情報を総合して客観的かつ合理的に判断することとなるため、お尋ねについて、一概にお答えすることは困難である。

一の2について

武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第三条第四項ただし書において、存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならないと規定されているところ、その具体的限度は、実際に発生した存立危機武力攻撃の規模、態様等に応ずるものであるため、お尋ねについて、一概にお答えすることは困難である。

二について

存立危機事態とは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態であり、重要影響事態とは、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態であるが、御指摘の「現在の状況」がこれらの事態に該当するとの判断は行っていない。これ以上の詳細については、事柄の性質上、お答えすることは差し控えたい。

三の1について

いかなる国が御指摘の「我が国と密接な関係にある他国」に当たるかについては、あらかじめ特定される性質のものではなく、武力攻撃が発生した段階において、個別具体的な状況に即して判断されるものであり、また、お尋ねの「我が国は当該「我が国と密接な関係にある他国」を支援する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として申し上げれば、自衛隊が活動をするに当たって、国際法を遵守し、国際法上違法な行為に対する支援を行わないことは当然である。

三の2について

お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、一般論として申し上げれば、いかなる国が御指摘の「我が国と密接な関係にある他国」に当たるかについては、あらかじめ特定される性質のものではなく、武力攻撃が発生した段階において、個別具体的な状況に即して判断されるものである。

四の1について

一般論として申し上げれば、国際連合憲章(昭和三十一年条約第二十六号。以下「国連憲章」という。)において自衛権の発動が認められるのは、武力攻撃が発生した場合であることから、何ら武力攻撃が発生していないにもかかわらず、ある国家が自衛権を援用して武力を行使することは、国際法上合法とは言えないものと認識している。その上で、いかなる国が御指摘の「我が国と密接な関係にある他国」に当たるかについては、あらかじめ特定される性質のものではなく、武力攻撃が発生した段階において、個別具体的な状況に即して判断されるものである。

四の2について

一般論として申し上げれば、国連憲章において自衛権の発動が認められるのは、武力攻撃が発生した場合であることから、何ら武力攻撃が発生していないにもかかわらず、ある国家が自衛権を援用して武力を行使することは、国際法上合法とは言えず、その要請又は同意があるとしても、その場合に我が国が国際法上集団的自衛権を根拠とする「武力の行使」を行うことはできないものと認識している。その上で、いかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、事態の個別具体的な状況に即して、政府がその持ち得る全ての情報を総合して客観的かつ合理的に判断することとなる。

四の3について

御指摘の令和八年三月二日の衆議院予算委員会において、高市内閣総理大臣が「これが自衛のための措置なのかどうかも含めて、詳細な情報を持ち合わせているわけではございません。」と答弁しているところ、これ以上の詳細については、事柄の性質上、お答えすることは差し控えたい。

五の1及び2について

お尋ねの「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」については、例えば、令和七年十一月七日の衆議院予算委員会において、高市内閣総理大臣が「二千十六年に安倍総理が、自由で開かれたインド太平洋、FOIPを提唱されました。そして、その後、第一次トランプ政権でアメリカが抜けた後のTPP、これをCPTPPとして日本が主導しました。さらには、二千十八年、日・EU経済連携協定、また日米豪印の枠組みなどもできてきて、ちょうど二千十六年から二千十九年にかけて、この頃というのは、本当に世界で咲き誇る日本外交を目に見える形で私は経験できたというか、知った時代だったと思っております。その取組は今も続けられてはいるんですけれども、今は、私たちが慣れ親しんだ自由で開かれた安定的な国際秩序は、パワーバランスの変化と地政学的競争の変化で大きく揺らいでおります。そんな中で、もう一度、もう一度日本が、ASEANなどとも手を組んで、日米同盟も大事にして、日・EUの関係も大事にして、しっかりと存在感を高めていく、こういったことが大事だという思いから申し上げております。」と答弁しているところであるが、その定義について定めることはなじまないと考えていることから、個別の事案が「定義に該当するか」とのお尋ねについてお答えすることは困難である。

五の3について

政府としては、現下のイランをめぐる情勢について、国際社会とも緊密に連携し、事態の早期の沈静化に向け、必要なあらゆる外交努力を行ってきている。その一環として、高市内閣総理大臣は、令和八年三月十一日に「G7首脳オンライン会議」に参加し、米国を含むG7各国に対してこうした我が国の立場を説明したところである。政府としては、今後も、様々な機会を捉え、事態の早期の沈静化に向けた外交努力を継続していく考えである。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×2個別の事案 ×6

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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