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「児童権利条約」の批准に関する質問主意書

衆議院 第116回 第21号検討してまいりたい ×1

提出者
衆議院
提出日
1989年12月14日
内閣転送 1989年12月16日
答弁書受領日
1989年12月22日
提出から8日
答弁の項目数
6
質問 2,256字/答弁 857字

質問本文

衆議院議長 田村 元 殿

「児童権利条約」の批准に関する質問主意書

本年一一月の国連総会において子どもの権利条約が全会一致のコンセンサスで採択された。一九五九年の子どもの権利宣言をさらに発展させ、単なる宣言的条項ではなく子どもの直面する問題にこたえた内容をもった今回の「児童権利条約」は、日本の子どもにとっても画期的な意義をもっている。日本の子どもは経済大国などといわれるその陰で、平和的に生存する権利、健康的で文化的な生活権、環境権、教育への権利、文化にたいする権利などあらゆる面で深刻な事態におかれているのが実態である。「児童権利条約」の早期批准によって日本の子どもの権利を保障し、子どもが自主性、主体性を確保できるように条件をつくりあげることが政治の緊急課題となっている。

日本の子どもをめぐる問題は多岐にわたるが、条約に関する基本的問題について以下、質問する。

一 政府は国連総会においてこの条約に賛成を表明した。しかし、署名するにいたっていない。日本政府の人権感覚は、国際人権規約を国会承認を得るために国会に提出したのが同条約の国連採択後一三年も経ってからであったように、きわめて後進的姿勢といわざるをえないものであるが、今回のこの「児童権利条約」に関してはそうしたことがあってはならない。

一九九〇年早々にも署名のための開放が実施される見通しであるが、その場合ただちに署名して、批准の意思を鮮明にすべきではないか。

また、批准を先延ばしすることがあってはならない。早期批准の見地にたち、そのための準備をいそぐべきと思うが、どうか。

二 本条約は、「子どもは表現の自由への権利を有する」(第一三条)、「締約国は、子どもの思想、良心および宗教の自由への権利を尊重する」(第一四条)、「締約国は、子どもの結社の自由および平和的な集会への自由の権利を認める」(第一五条)ことを明記している。子どもにもこうした権利が固有の権利としてあるということをあらためて確認したことは、子どもの権利が実際上保障されていない今日の日本の実態に照らして重要な意義をもっている。また、子どもの「固有の権利」を尊重してこそその自立を促し将来の社会発展の推進力にふさわしい成長を保障できる。子どもは保護される権利と同時に、その子の発達や能力に応じて「表現の自由」「思想・良心・宗教の自由」「結社・集会の自由」が尊重されなければならないと思うが、どうか。

三 条約は子どもの「表現の自由」および「思想・良心・宗教の自由」を認めたわけだが、日本ではこれらの条項がとくに重要である。

日本軍国主義による中国やアジア諸国への侵略戦争の事実を社会科では教えないとか、戦後日本の原点である広島・長崎の原爆被爆とその実相を削除して、子どもの「表現の自由」を保障する前提となるべき事実を正しく子どもに伝えないことはいうまでもなく、学校教育に「日の丸」「君が代」を強引に押しつけ、公教育に特定の思想・信条をもちこむことはこの条約に照らしてもやめるべきと思うが、どうか。

四 本条約の特徴の一つは第十二条で、「自己の見解をまとめる力のある子どもに、その子どもに影響を与えるすべての事柄について、自由に自己の見解を表明する権利を保障する」とのべ、さらに「その際、子どもの見解が、その年令および成熟に従い、正当に重視される」と規定したことである。「厚木基地周辺の飛行機騒音を無くして勉強できる環境をつくってほしい」、「三宅島の自然をまもってほしい」、「通学路の危険を防止してほしい」、などなど子どもの生活にかかわるすべての問題にたいして子どもが意見表明することを権利として保障し、その見解を尊重すべきではないか。

五 条約前文は、「子どもが、人格の全面的かつ調和のとれた発達のために、家庭環境の下で、幸福、愛情および理解ある雰囲気の中で成長すべきであることを認め」ている。しかし、日本の子どもは深刻な状態におかれており、この改善が急務となっている。

�@ 条約第九条は子どもを親から分離することを次のように禁止している。「締約国は、子どもが親の意思に反して親から分離されてはならないことを確保する」。しかし、日本の子どもは、親の単身赴任、長期出張のもとで愛情ある家庭で育つ権利が保障されていない状況におかれている。こうした現状を是正するために政府は法的規制を含めて強力な措置をとるべきだと思うが、どうか。

�A 条約第一八条は「親の第一次養育責任に対する援助」を規定している。その二項では「締約国は、親および法定保護者が子どもの養育責任を遂行する際に適当な援助を与え、かつ子どものケアのための機関、施設およびサービスの発展を確保する」と明記されている。この規定に照らせば、親が低賃金のため養育費をわずかしか確保できないとか、長時間労働のため子どもと接する時間もほとんどないといった状況、あるいは、保育所や学童保育など児童福祉のきわめて不十分な実態などは早急に抜本的是正をはからなければならないのではないか。またそのための施策を早急に具体化する考えはないか。

六 条約第四二条はこの条約の原則および規定を広く知らせることを締約国の義務と規定している。政府は子どもをふくめてすべての国民がこの条約について知ることができるようにするため、�@条約の日本語訳をつくり配付すること、�A政府広報誌に積極的に掲載すること、をただちに実施すべきではないか。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

御指摘の条約が児童の諸権利を規定し、児童の保護に資することを目的としたものであることから、我が国はその趣旨を積極的に評価し得るものと考え、国連における無投票採択に参加したものである。

他方、御指摘の条約の署名及び締結については、我が国国内法との整合性等をも勘案し、今後、政府部内で検討していくこととなる。

二及び四について

御指摘の条約の各条文が定める権利及び義務の具体的内容については、今後、政府部内で詳細に検討していきたい。

三について

学校教育においては、学習指導要領等に基づき、中立かつ公正に、児童生徒の発達段階に応じた適切な教育を実施しているところである。

なお、国旗、国歌については、児童生徒の教育にとって必要とされる基礎的、基本的内容として指導するものであり、特定の思想・信条を学校教育に持ち込むものではない。

五の�@について

政府としては、家庭において児童が健やかに成長することができるよう、児童を養育する家庭を支援するための施策を講ずるとともに、労働者の職業生活と家庭生活の調和が図られるよう就業条件の整備に努めているところである。

五の�Aについて

政府としては、すべての児童が心身ともに健やかに育成されるよう、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)等に基づき、地域の実情に応じた保育所の整備、保育需要の多様化に対応した乳児保育・延長保育等の特別保育、留守家庭児童の児童館等における指導、母子家庭に対する児童扶養手当の支給等の施策を講じているところであり、今後ともその充実に努めてまいりたい。

なお、一般に、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するための最低賃金制度の適正な運営に努めるとともに、ゆとりあるライフスタイルの定着を促進する等のため、労働時間の短縮に努めているところである。

六について

日本語訳は、御指摘の条約の内容を詳細に検討する過程で慎重に作成していくこととなる。政府広報誌に御指摘の条約の概要を紹介すること等に関しては、今後、検討してまいりたい。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

検討してまいりたい ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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