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じん肺対策に関する質問主意書
衆議院 第123回 第9号お答えすることは困難 ×1
質問本文
じん肺は、炭鉱、鉱山、トンネル掘削現場、鋳物職場などで長期にわたり大量の粉じんを吸い込むことによって発生する職業病である。現在も患者が増え続け、療養者は約二万名に達している。現在においても根本的な治療方法がみつからず、粉じん職場を離れた後も進行することが明らかな疾病である。じん肺患者は症状が進行するなかで、激しい咳、たん、息切れ、呼吸困難の苦しみに、自殺に追い込まれる患者があとを絶たない。
政府の石炭政策によって、北海道の炭鉱はあいつぐ閉山に追い込まれ、炭鉱離職者が急増した。八〇年以降だけでも一万四〇〇〇人にもの炭鉱離職者がつくりだされている。炭鉱で長年働いてきた労働者は、離職後一〇年、一五年経過して、じん肺が発症する場合が多い。九一年度で、全国の新規労災認定者は一一八五名(合併症を含む)であるが、北海道はじん肺最多発地域であり、労災認定される患者は全国の一割を超えている。じん肺の症状・所見を有しながら労災認定されない管理II、管理IIIの患者は、認定者の数倍いると指摘され、その多くは炭鉱離職者であるとされているが、その正確な実態すら明らかにされていない。
粉じん産業からの離職時に行われる健康診断の際、管理IIIの離職者は、管理手帳の交付を受け、年一回、無料でじん肺診断を受診することができるが、管理I、管理IIの症状・所見を有する離職者は放置され症状悪化を招いている。このことは、随時申請によるじん肺の労災認定がじん肺労災認定全体の大半を占めていることからも明らかである。
全国に多数存在する潜在患者にとって、まず自らがじん肺であるか否かを知ることが重要である。そのための集団検診の実施など離職後の早期発見、早期治療のための施策、予防、社会復帰対策など抜本的対策が急務である。
以下具体的に質問する。
一 粉じん産業から離職後に症状が進行し増悪する例が多く、じん肺の随時申請による合併症を含む労災認定がじん肺労災認定全体の八五・九%(九〇年度)であり、離職者に対する健康管理を急がなければならない。
(1) じん肺の定期健康診断は無料とし、粉じん作業従事者、じん肺有所見者に最低年一回の受診を制度化すべきではないか。また、粉じん産業からの離職者にはじん肺健康管理手帳を交付し離職後もじん肺検診を定期的に受診できるように改善すべきではないか。
(2) 自治体で単独事業として実施しているじん肺検診に対する国の補助制度を検討すべきではないか。
(3) 北海道・九州における炭鉱離職者からのじん肺発生の実態を明らかにされたい。
(4) 北海道のじん肺労災認定者は八七年以降急増し、九〇年度では一二九名にのぼっている。発病するまでに長期間が経過することからも、炭鉱離職者を放置状況におくことは症状悪化を常態化するものである。炭鉱離職者に対するじん肺の啓蒙、予防、検診など早期発見、早期治療のための具体的な施策を検討すべきではないか。
二 じん肺法では、肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸に限定して合併症と認めている。しかし、じん肺による合併症は、法的に定められた症状に限られたものではなく、肺癌、消化性潰瘍、腎疾患、肝疾患、脳障害など全身性の疾患である。医学的知見の進展に伴い、合併症の範囲についても再検討の必要があると思うが、政府の検討状況を明らかにされたい。
三 じん肺患者の生活の安定を図るため、九〇年一一月、北海道庁から労働省に対し、じん肺法に基づく就労施設等の整備について要請が行われた。じん肺法第三十五条において、政府は「就労の機会を与えるための施設」、「労働能力の回復を図る」ための就労施設等の整備を行うことになっているが、これらの施設の整備状況を示されたい。
なお、就労施設等の整備が行われていないとすればその理由は何か。
四 じん肺は、粉じんを長期間にわたって吸入することによって発生するものでありその原因は明確である。作業環境の改善、適切な防じんマスクの着用、早期発見のじん肺診断の実施など総合的な対策によって、確実に予防できる疾病であり、絶対になくさなければならない病気である。
(1) 粉じん作業従事労働者約五〇万二〇〇〇人のうちじん肺健康診断を受診する労働者は四二%(九〇年度)という低さである。この状況を改善するために、労働基準監督官の粉じん事業所への立ち入り調査を強化し、予防、早期発見の上でも健康診断の受診率を引き上げる指導が重要である。最近の粉じん事業所への立ち入り調査の件数を示すとともに、違反の状況、指導件数を明らかにされたい。
(2) 粉じん産業の屋内作業については管理濃度(作業環境評価基準)が指標として示されているが、鉱山、トンネル掘削現場などの「屋外」作業には基準が設けられていない。これらの「屋外」作業についても粉じんの法的許容濃度を定め、粉じん作業の労働環境が許容濃度以下となる作業規制を行うべきではないか。
五 北海道石炭じん肺訴訟は企業責任の立証段階に入っている。筑豊じん肺訴訟において福岡地裁飯塚支部は、昨年九月、「生きているうちに救済されるものなら救済すべきと考えます」と和解の勧告を行った。国はこの和解勧告に応ずるべきではないか。
右質問する。
政府答弁書
一の(1)について
常時粉じん作業に従事する労働者等に対するじん肺健康診断については、じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)に基づき事業者に実施を義務付けているところであり、その費用は事業者が負担すべきものである。
また、常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理二又は管理三のもの等については、じん肺法により一年以内ごとに一回のじん肺健康診断の実施を事業者に義務付けているところであり、その他の労働者については、医学的知見により、最低年一回のじん肺健康診断の実施を事業者に義務付ける必要はないと考えている。
常時粉じん作業に従事していた者で、離職の日まで一年を超えて使用していたものから請求があった場合には、じん肺法に基づき、当該離職の際のじん肺健康診断の実施を事業者に義務付けている。
また、じん肺管理区分が管理三である者に対し、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)に基づき離職の際に又は離職の後に、申請に基づき健康管理手帳を交付し、定期的に健康診断を受診する機会を与えているところである。その他の離職者については、随時、じん肺管理区分決定申請を行うことにより、じん肺管理区分が管理三に決定された場合には、健康管理手帳を交付することとしているところであり、離職者について定期的な健康診断を制度化する必要はないと考えている。
一の(2)について
労働安全衛生法に基づき、昭和四十七年度より健康管理手帳制度を設け、じん肺管理区分が管理三の離職者について、じん肺健康診断の無料受診の機会を与えることとしており、さらに、昭和六十一年度より中小企業共同安全衛生改善事業助成制度を設け、じん肺健康診断についても都道府県労働基準局長が指定した中小企業者の集団に対して補助を行っているところである。
自治体の施策については、当該自治体の判断に基づき独自に実施されているものと考えている。
一の(3)について
じん肺法第十二条の規定による書面の提出並びに同法第十五条及び第十六条の規定による申請によりじん肺管理区分が管理二以上と決定された石炭鉱業に係る労働者は、平成二年においては、在職者も含め北海道六百四十六名、九州三百九十七名である。
一の(4)について
御指摘の北海道のじん肺労災認定者は、昭和六十二年度百五十一名、昭和六十三年度百二十八名、平成元年度百三十三名、平成二年度百二十九名となっている。
炭鉱離職者を含め常時粉じん作業に従事する労働者であった者については、随時、じん肺管理区分決定の申請が可能であり、また、じん肺管理区分が管理三である者に対しては、離職の際に又は離職の後に、申請に基づき健康管理手帳を交付の上、健康診断を受診する機会を与えているところである。
今後とも本制度のより一層の活用を図るため、その周知徹底に努めてまいりたい。
二について
合併症の範囲については、医学的知見を踏まえて定められているところであり、日頃より各方面から医学的知見の集積に努めているところである。
三について
職業訓練のための施設及び労災病院等の療養施設又はリハビリテーション施設について、すべての労働者を対象として整備しているところであり、じん肺り患者に対してもこれらの施設を効果的に活用しているところである。
四の(1)について
じん肺健康診断は、毎年粉じん作業に従事するすべての労働者に対して実施することが義務付けられているものではなく、粉じん作業従事労働者約五十万二千人(平成二年)の中には、三年以内ごとに一回じん肺健康診断の実施を義務付けられている者が大多数を占めており、このため見かけ上受診率が低くなっているものである。
政府としては、粉じん作業を行う事業場も含め、的確な臨検監督を実施しているところであり、平成二年において、粉じん作業を行う事業場を含め臨検監督を行った事業場数は、十五万六千四百一件である。また、じん肺法に定める健康診断に関する規定についての違反件数は、合計千九百九十七件である。
なお、じん肺健康診断については、業界団体等への指導を通じ、その実施の徹底を図ることとし、特にじん肺健康診断の実施が不十分な中小企業者については、中小企業共同安全衛生改善事業助成制度の活用等により一層の徹底を図ることとしている。
四の(2)について
鉱山、トンネル等における屋外作業においては、作業場所、作業環境が日々変化すること、自然環境の影響を受けること等の状況により、客観的な作業環境の良否の判断の指標となる作業環境の評価基準を定めることは現状では困難である。
これらの作業においては、呼吸用保護具の着用、通気設備の設置等の対策を講ずることにより、労働者への暴露の低減を図っているところである。
五について
平成三年九月十八日に福岡地方裁判所飯塚支部において開かれた御指摘の筑豊じん肺訴訟の第三十二回口頭弁論期日において、裁判長から、話合いによる解決に向けて努力されたい旨の発言があったが、国としては、この発言は、裁判所として和解を勧告したものではないと認識している。
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