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関西電力の原子炉圧力容器上ぶた問題に関する質問主意書
衆議院 第155回 第10号承知していない ×1
質問本文
東京電力株式会社が、シュラウドのひび割れを隠し、「予防保全」の為として取り替えていたこと等が明らかとなり、地元立地県当局・周辺住民を初め、社会的に大きな批判が起きている。経済産業省の原子力安全・保安院は、他の電力各社に対して、自主検査の内容等に関する調査を行うよう指示を出した。
このような中で、同じく「予防保全」の為として取り替えられた、原子炉圧力容器上ぶた(以下、上ぶたという)にひび割れ等が起きていなかったのかという問題が浮上してきている。
関西電力株式会社は、二〇〇二年一〇月八日、関西の市民団体(グリーン・アクションと美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会)との交渉の中で、上ぶたのひび割れ問題に関して、「ひび割れやその兆候はなかったのか」との質問に対し、「ひび割れやその兆候が一切なかったとは言っていない」「問題となるような損傷はなかった」と答えた。これは、ひび割れ等が存在していた事を強く示唆している。
よって以下、関西電力の上ぶた問題について質問する。
一 関西電力の「問題となるような損傷はない」との見解について
関西電力は、別紙一にあるとおり、大飯三・四号炉を除く九基の原発で、一九九三年から一九九五年にかけて、上ぶたの検査を行っている。関西電力が一〇月八日に公表した資料[別紙二]では、「損傷本数」はいずれも「ゼロ」となっている。また、このうち、美浜一・二・三号炉、高浜一・二号炉、大飯一・二号炉の七基については、一九九六年から一九九九年にかけて取り替え工事を開始し、現時点では、これら七基全てで上ぶたは取り替えられている。関西電力は上ぶた取り替えにあたって、一九九〇年代初頭にフランス等で上ぶたにひび割れが多発する事故が起きており、関西電力の原発上ぶたに損傷はないが、念のために「予防保全」として取り替える旨発表している。
しかし、上記のとおり、本年一〇月八日の市民団体との交渉では、「ひび割れやその兆候が一切なかったとは言っていない」「問題となるような損傷はなかった」と繰り返し答えている。関西電力のこの回答は、損傷を「問題となるような損傷」と「問題とならないような損傷」に区別しているものと考えられる。また、「問題となるような損傷」の定義を明らかにするよう問うても、関西電力は何ら明らかにしていない。また、関西電力は、政府に対しては「損傷本数ゼロ」と報告している事も認めた。
ひび割れ等の発見は、検査機器の精度と密接な関係をもっている。上記交渉で、検査に使用した機器の精度について質問したところ、関西電力は「十分な精度」と一般論を繰り返すばかりであった。円周方向の割れも見つけることができるような回転式コイルを使っているのか等の具体的質問に関しては、一切回答していない。
(一) 政府が報告を受けた「損傷本数ゼロ」の内容は、「問題となるような損傷ゼロ」という趣旨で報告を受けたのか、それとも、「ひび割れやその兆候はない」という趣旨で報告を受けているのか、明らかにされたい。
(二) 政府は、「問題となるような損傷」の定義について、関西電力から報告を受けているのか、明らかにされたい。
(三) 政府は、関西電力が上ぶた検査に使用した機器の精度について報告を受けているのか、明らかにされたい。
二 「予防保全」のための上ぶた取り替えについて
関西電力は、上ぶた取り替えについて、「損傷はゼロ」だが「予防保全」のために取り替えたと述べている。美浜二号炉の場合、取り替え工事を開始したのは一九九九年である。上ぶたの最後の検査は一九九五年一二月である。この間の約四年間、一度も上ぶたの検査は行われていない。
そもそも、「予防保全」とは、「現時点」で損傷はないが、将来損傷の発生が予想されるため、予防的に機器の健全性を確保する観点からとられる措置である。しかし、関西電力が最後に検査を行ったのは、取り替えの四年前である。これでは、最終検査から取り替えまでの四年間にひび割れ等が存在していたのかどうかは分からない。すなわち、ひび割れが存在していたことも十分予想される。事実、アメリカのスリーマイル島原発一号炉では、一九九九年の上ぶた検査では損傷がゼロだったにもかかわらず、二年後の二〇〇一年の検査では損傷が八本も見つかっている[「PWR Materials Reliability Program Responseto NRC Bulletin2001-01″-Electric Power Research Institute August2001」、「Public MeetingBetween NRC and NEI and PWR Licensees to Discuss Bulletin 2002-02″-Nuclear RegulatoryCommission August 23 2002」より]。このように、関西電力の言う「予防保全」の為の取り替えは、ひび割れ等を隠すためのものではないのかという疑念がつきまとう。
(一) 政府は、関西電力から、上ぶた取り替え時の損傷の有無に関する報告を受けているのか、明らかにされたい。
(二) 報告を受けていないのであれば、どのような根拠で「『予防保全』のための取り替え」に許可を与えたのか、明らかにされたい。
(三) 許可の根拠が「関西電力が『予防保全』のためとして申請したのでそれを信じて」というのであれば、東京電力事件の教訓から、上ぶたにひび割れなどが存在しないことを確認するための措置をとる必要があると思うが如何か。また、その予定があるのか、明らかにされたい。
三 とりわけ、上ぶたを交換していない四基の原発での即刻の検査の必要性について
関西電力は、上ぶたを交換していない高浜三・四号炉、大飯三・四号炉の検査について、「当面必要ない」と述べている。その理由は、上記四基は、炉頂部の温度低減化工事を行っているためだと述べている。関西電力による予測では、改良工事による温度低下は、高浜三・四号炉で三一〇℃から二九四℃に、大飯三・四号炉で三〇七℃から二八九℃であるという。運転時間は現時点で、高浜三・四号炉で一二万時間超、大飯三号炉で八万時間超、大飯四号炉で七万時間超となっている。
すでにフランスでは、これ以下の温度・運転時間で上ぶたにひび割れが生じている。また、これら四基の原発の上ぶたはインコネル六〇〇製である。今年上ぶたそのものに大穴が空いたアメリカのデービス・ベッセ原発等、損傷が起きているのはインコネル六〇〇製の上ぶたである。
ところが、大飯三・四号炉では、これまで一度も渦電流探傷検査(ECT検査)が行われていない。また、高浜三号炉の検査は一九九三年一一月、高浜四号炉の検査は一九九四年一月であり、それ以降八〜九年間検査は一切行われていない。
(一) これらの実態に照らし合わせれば、インコネル六〇〇製の上ぶたをもつ上記四基について、ひび割れ等の検査を即刻行う必要があると考えられるが、監督官庁としての見解を明らかにされたい。
(二) 政府として、関西電力が言うように、「検査は当面必要ない」との考えであれば、その根拠を明らかにされたい。また「当面」とは、どれほどの期間を考えているのか、明らかにされたい。
四 上ぶたの検査方法について
関西電力は、上記に述べた「精度を明らかにしないECT検査」の他に、�@耐圧による漏洩検査、�A外観検査を行っており、上ぶたの健全性は確保されているという。この耐圧検査は、通常運転時と同じ一五七気圧をかける検査であるという。しかし、損傷が見つかったフランスのビジェ原発では、二〇七気圧(運転時の設計圧力は一五五気圧)をかけた耐圧試験で水漏れが見つかっている。
デービス・ベッセ原発の上ぶた損傷を受けて、アメリカの原子力規制委員会(NRC)は、外観検査、すなわち目視検査では損傷を見逃すとして超音波検査などの補足的検査を勧告している。
また、関西電力では、上ぶたの検査について、何年に一度行うという、検査の期間についても定めがないという。海外で事故などが起きた時に、「水平展開」として「自主的」に検査を行うという。昨年から今年にかけて、デービス・ベッセ原発を初め、アメリカでは上ぶた損傷が頻発している。にもかかわらず、現時点では「検査は当面必要ない」と繰り返している。
これらの実態に照らせば、関西電力の耐圧漏洩検査と外観検査は極めて不十分だと言わざるを得ない。
(一) 通常運転時と同じ一〇〇%の圧力しかかけない関西電力の耐圧漏洩検査では、ひび割れ等は発見されないと考えるが、見解を明らかにされたい。
(二) 目視による外観検査ではひび割れ等が見落とされると考えるが、見解を明らかにされたい。
(三) 上ぶたの検査について、何年に一度行うというような、検査の期間が定められていなかったことを政府は知っていたのか。知っていたとすれば、検査の期間を定める必要がないことについて、妥当と判断した根拠は何か、明らかにされたい。
五 現在供用中のものに点検を限ることについて
現在関西電力は、経済産業省の指示にしたがって、東京電力の不正事件のような不正等がなかったかどうか点検する作業にとりかかっている。ところが、この作業の適用範囲として「現在供用中の設備に限る」との原則を立てている。これは政府の点検指示の趣旨に反しているのではないか。
東京電力の場合は、すでに取り替えたシュラウドの検査不正も問題になっており、けっして現在供用中のものに問題が限られているわけではない。
(一) 今回経済産業省が関西電力に指示した点検は、供用中のものに限られているのか、明らかにされたい。
(二) 点検を供用中のものに限るという関西電力の態度は、東京電力の不正に端を発している今回の点検指示の趣旨に反していると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
六 取り替えた古い上ぶたの検査について
関西電力は、以前取り替えて現在保存されている上ぶたについては、取り出して検査する気はないし、「その必要性は認められない」と述べている。その理由は、現在供用中のものではなく、費用もかかるし被ばくもするというものである。他方、四国電力は、取り替えた古い上ぶたも検査の対象とすると新聞報道されている[二〇〇二年九月二十一日 毎日新聞]。
取り替えた古い上ぶたに、本当にひび割れ等がなかったのか、関西電力が政府に対し虚偽の報告をしていなかったのかを確認するためには、原子炉サイトに保管されている取り替えた古い上ぶたを再検査する必要がある。また、古い上ぶたを破壊検査にかけてはじめて、渦電流探傷検査の精度も明らかになる。
上記の観点から、取り替えた古い上ぶたを検査する必要があると考えるが、政府としての見解を明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
平成十三年八月二十日、原子力安全・保安院において、関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)と米国における原子炉容器上部ふた(以下「上部ふた」という。)の損傷事故について意見交換を行った際、国内の加圧水型原子炉を有する電力会社においては、平成三年のフランスのブジェー三号機での上部ふたの損傷事例を踏まえ、これまでに当該部位の検査を実施し問題が無いことを確認している旨の説明を関西電力から受けたが、関西電力の検査について説明を受けることは当該意見交換の主たる目的ではなかったため、それ以上詳細な内容については確認しなかった。
今般、改めて関西電力から聴取したところ、関西電力として御指摘の「ひび割れやその兆候が一切なかったとは言ってない」との回答をした事実は無く、また、「問題となるような損傷はなかった」とは上部ふたの渦電流探傷検査の結果損傷は発見されなかったという趣旨であり、「問題となるような損傷」と「問題とならないような損傷」とを区別する趣旨ではなく、当該検査に使用した機器は回転式コイル等を使用し、深さ三ミリメートル程度以上のひび割れを検出することが可能なものであったとのことである。
二について
お尋ねの関西電力による上部ふたの取替えに当たり、関西電力からは、取替え前の上部ふたにおける損傷の有無は報告されていない。上部ふたの取替えに係る工事計画については、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号。以下「電事法」という。)第四十七条第三項の規定に基づき、取替え後の上部ふたが電事法第三十九条第一項の規定による技術基準に適合しているかなどを審査した上で認可したところであるが、取替えの理由は当該審査の対象とされておらず、取替え前の上部ふたにおける損傷の有無を改めて確認する特段の必要があるとは考えていない。
三について
お尋ねの上部ふたを交換していない四基を含む加圧水型原子炉の上部ふたについては、電事法第五十四条の規定による定期検査(以下「定期検査」という。)における上部ふた等の漏えい検査(通常の運転時と同じ圧力下における原子炉冷却材の漏えいの有無を目視等で確認する検査をいう。以下同じ。)により安全上の問題が無いことを確かめていることから、それ以外の検査については事業者の自主的な対応に任せることが適当と考えている。
なお、関西電力からは、現在、大飯発電所三号機及び四号機並びに高浜発電所三号機及び四号機の上部ふたについて渦電流探傷検査を実施するための準備を進めており、準備ができ次第、検査を実施する予定であると聞いている。
四について
お尋ねの「耐圧漏洩検査」及び「外観検査」は、定期検査における上部ふた等の漏えい検査を指すものと考えるが、安全上問題となる貫通き裂は当該検査により確実に発見でき、また、原子炉冷却材の漏えいを検知する放射線モニタ等が運転中常時稼働していることから、これを併せて考えれば検査方法に特段の問題があるとは考えていない。定期検査については、電気事業法施行規則(平成七年通商産業省令第七十七号)第九十一条第二号に基づき、直近の定期検査が終了した日以降十三月を超えない時期に実施することとしている。
なお、事業者が自主的に行う法令に基づかない自主点検における上部ふたの検査の実施頻度等については、事業者にゆだねられており、承知していない。
五について
お尋ねの指示は、事業者が過去に実施した自主点検についての調査を指示するものであるが、当該調査の対象は現在使用中の機器等に係る自主点検に限定しているわけではなく、また、関西電力からは、既に取替え済みで現在使用していない機器等について過去実施した自主点検についても調査を行う予定であると聞いている。
六について
取替え後保存してある上部ふたの検査については、現時点において、検査を行うべき特段の理由がなく、また、検査の際に作業を行う者が相当の被ばくをすることが予想されるなどの問題が考えられることから、特に検査を行うことが必要とは考えていない。
なお、四国電力株式会社からは、御指摘の「取り替えた古い上ぶたも検査の対象とする」との予定はないと聞いている。
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