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沸騰水型原子力発電所の炉心シュラウド交換作業における労働者の被曝状況および再循環系配管の交換作業・点検作業における労働者の被曝状況に関する質問主意書
衆議院 第156回 第48号承知していない ×4
質問本文
「電離放射線障害防止規則」は、原子力発電所(原発)の定期検査など、放射線にさらされるおそれのある業務に従事する労働者の放射線障害を防止する目的で一九五九年に制定されたものである。その後、放射線の人体に対する影響は従来考えられていたより厳しく見るべきであることが、だんだんと明らかになり、それにともなって、同規則も逐次、改正が行われてきた。
放射線の人体に対する影響に関する最近の大きな見直しの一つとしては、国際放射線防護委員会(ICRP)による一九九〇年の勧告(ICRP公報六〇として刊行)がある。放射線業務従事者に対する年間の線量限度を五〇ミリシーベルトから二〇ミリシーベルトへと引き下げる、という内容を含むものである。
国内においても、ようやくではあるが二〇〇一年三月に、この一九九〇年勧告を踏まえて、電離放射線障害防止規則の改正が行われた。
厚生労働省(安全衛生部労働衛生課)は、その改正の内容の理解をはかる目的で、二〇〇一年十一月十二日に「電離放射線障害防止規則の解説」(中央労働災害防止協会発行)を刊行している。
そこで、この規則の改正内容のうち作業員の健康管理に関すること、および、通常の放射線業務作業(事故時の緊急対応ではないという意味で)のうち最も被曝線量が高い作業の一つとしての沸騰水型炉心シュラウド交換工事と再循環系配管交換工事ならびにこれらの点検作業の状況について質問する。
一 電離放射線障害防止規則の健康診断について
(一) 「電離放射線障害防止規則の解説」(以下、「解説」)の二五ページで、「過去の電離放射線健康診断の結果報告を検討した結果を基に」と書かれているが、この「結果報告」とは何か、また、それを「検討した」のはどのような機関か、明らかにされたい。
(二) 「解説」の二五ページで、「眼及び皮膚の検査は、改正後は六月以内ごとに一回となった」とあるが、三月以内に一回がなぜ六月以内ごとに一回となったのか、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告の該当する部分を示すなど、その根拠を明らかにされたい。
(三) 「解説」の二五ページで、「一年間で五ミリシーベルトを超えることのない労働者については、定期の健康診断において、原則として、血液、眼及び皮膚の検査は省略できることになった」と書かれているが、原則として省略できることにした理由を明らかにされたい。
(四) ICRPの放射線被曝による晩発性障害の考え方は、しきい値がなく確率的にあらわれる、そして、一年間で五〇ミリシーベルトの被曝と、毎年五ミリシーベルトずつを一〇年の被曝とは、同等の発生確率になるというように、障害の発生確率は蓄積する、というものである。それ故、「一〇ミリシーベルトを五年間」の人は毎年健康診断を受け、他方「五ミリシーベルトを一〇年」の人は一回も受けないということになったとして、同じ危険性を有しているのに、一方は診断を受け、他方は受けないということになる。一年間に五ミリシーベルトを超えることの無い労働者であっても長期間被曝労働に従事すれば発ガン等の危険は高まることになるのであり、何年かごとには血液の検査等を省略せずに行うべきと考えるが如何か。見解を明らかにされたい。
(五) 「解説」の一五三ページには、解釈例規の(4)として「検査の一部又は全部を省略でき、・・・その省略等の可否を適切に判断できるように、放射線業務従事者の『自他覚症状の有無』を新たに調査項目として加えることにした。なお、『その評価』を加えたのは・・・検査の省略等の可否を判断するものであることを明確にしたものであること」と記載されている。そして一五四ページに(9)として、「省略等の可否の判断については、別途示す(基発第五六八号、基安労発第一八号)」、としている。
三九四ページ以降に掲載されている基発第五六八号の第1の2の(2)のイに基づき聴取を行うとき、調査票や問診票のようなものはあるのか。また、誰が聴取し、その記録はどのように残すのか、明らかにされたい。
(六) 基発第五六八号の第2の2の(1)にある二五〇ミリシーベルト以上、一〇〇ミリシーベルト以上の数字の根拠は何か、明らかにされたい。
(七) 雇入れ時に正常の範囲内であった場合、その後省略を続けることにより、何年も検査をしないで健康状態をチェックできなくなることがあるが、これでは正常の範囲外になった場合も見過ごすことになり、健康診断の意味をなさないことになるが如何か。見解を明らかにされたい。
(八) 四〇二ページ以降に掲載されている基安労発第一八号に関するもので、問診票のようなものはあるのか。また、疲れやすいという自覚症状があれば省略不可というような、省略の可否を評価するための基準のようなものの有無を明らかにされたい。
二 沸騰水型原子力発電所の炉心シュラウドに関して、福島第一原発三号炉で一九九七年五月〜一九九八年九月にかけての定期検査中に、ジェットポンプなどの炉内構造物とともに取替工事が世界で初めて行われた。その後、福島第一原発一号炉(二〇〇〇年十二月〜二〇〇一年十一月)、同二号炉(一九九八年八月〜一九九九年八月)、同五号炉(一九九九年十二月〜二〇〇〇年十月)、さらには敦賀一号炉(一九九九年八月〜二〇〇一年三月)、島根一号炉(二〇〇〇年五月〜二〇〇一年四月)でも、同様のシュラウド取替工事が行われて終了している。これら五基の原子炉で行われた工事に関して、ごく部分的には、原子力学会誌や国際放射線影響学会のシンポジウム予稿などで、労働者の被曝線量に関するデータが公開されているものの、全体像が必ずしも明らかとはいえない。
(一) これらの五基の原子炉において、シュラウド取替作業にかかわった労働者の被曝線量について
�@ その定期検査全体の実際の総被曝線量はどれだけだったか、明らかにされたい。
�A シュラウド取替作業の総被曝線量はどれだけだったか、明らかにされたい。
�B 当該の定期検査において、被曝線量の人数分布を「原子力施設における放射性廃棄物の管理状況および放射線業務従事者の線量管理状況について」の形式で、原子炉ごとに明らかにされたい。
(二) 前記五基それぞれの原子炉のシュラウド取替作業における作業環境について
�@ 炉内の実効線量率はどうだったのか。測定日時、測定器具、炉内中央部の上部・中部・下部、炉壁付近(炉壁からの距離も明記のこと)の上部・中部・下部、それぞれについて明らかにされたい。
�A 被曝線量の多かった作業はどの作業か、明らかにされたい。
(三) 左記の作業件名ごとの個人最大線量と総被曝線量を明らかにされたい。
炉心シュラウド取替、ジェットポンプ取替(敦賀以外)、ジェットポンプライザー取替、スパージャー等取替、ノズルセーフエンド取替、炉内構造物切断、化学除染、炉内遮蔽取り付け、その他。
(四) 炉内の作業において外部被曝低減対策はどうなっているか明らかにされたい。
(五) 炉内の空間中の放射性物質の濃度とその測定方法、頻度を明らかにされたい。
(六) 炉内の作業において内部被曝防止対策はどうなっているか明らかにされたい。全面マスク着用による作業回数と時間を明らかにされたい。
(七) 化学除染にともなう廃樹脂の放射能汚染の程度について、放射能の種類、重量、放射能量を明らかにされたい。
三 シュラウド取替作業で発生した放射性廃棄物について、どういう種類(起源の機器など)のものが、どういう状態で、どういう容器に入れられて、どれだけ保管されているのか、保管場所はどこか、明らかにされたい。
四 再循環系配管の交換作業について
(一) 労働者の被曝状況(集団、個人等の線量について、シュラウド取替に関する被曝線量の質問と同等の内容)および作業環境(線量率等)を明らかにされたい。
(二) 再循環系配管の点検作業においてはどうなっているのか明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一の(一)について
お尋ねの「結果報告」とは、電離放射線障害防止規則(昭和四十七年労働省令第四十一号。以下「電離則」という。)第五十八条の規定に基づき事業者から所轄労働基準監督署長に提出された電離放射線健康診断結果報告書のことであり、また、「検討した」機関とは、平成九年に旧労働省労働基準局長の私的検討会として設置された「国際放射線防護委員会(ICRP)千九百九十年勧告(Pub.六十)の電離則等への取入れに関する検討会」(以下「検討会」という。)のことである。
一の(二)について
労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第六十六条第二項及び電離則第五十六条の規定に基づく健康診断(以下「電離放射線健康診断」という。)については、原則として六か月以内ごとに一回行うこととしているが、同条第一項第四号及び第五号に規定する眼及び皮膚の検査については、眼及び皮膚が局所的に被ばくする可能性が高いことから、以前は三か月以内ごとに一回行うこととしていた。しかしながら、近年の放射線業務従事者の被ばく線量の大幅な減少に伴い、眼及び皮膚に影響が生じるおそれがある程度の被ばくの可能性が極めて低くなってきたことなどから、検討会において、眼及び皮膚の検査の頻度を六か月以内ごとに一回とすることが適当である旨の報告がなされたことを踏まえ、眼及び皮膚の検査についても六か月以内ごとに一回行うこととしたところである。
なお、国際放射線防護委員会(以下「ICRP」という。)の千九百九十年勧告においては、眼及び皮膚の検査の頻度についての記述は無い。
一の(三)及び(四)について
電離則第五十六条第一項第二号から第五号までに規定する血液、眼及び皮膚の検査(以下「血液等の検査」という。)については、放射線業務従事者の年間の実効被ばく線量がICRPの千九百八十五年パリ会議の声明等において、入院等特殊な状況下での公衆の年実効線量限度とされている五ミリシーベルトを超えない場合、身体への影響の可能性が極めて低いと考えられることなどから、検討会において「過去一年間に受けた実効線量が五ミリシーベルト(管理区域の設定基準)を超えず、かつ、その後一年間に受ける実効線量が五ミリシーベルトを超えるおそれのない者に対しては、医師が必要と認めた場合に限り全部又は一部を実施することとすることが適当である」との報告がなされたことを踏まえ、一年間に受ける実効線量が五ミリシーベルトを超えることのない労働者については、定期の健康診断において、原則として、血液、眼及び皮膚の検査は省略できることとしたところである。
他方、一年間に受ける実効線量が五ミリシーベルトを超えることのない者を含め、放射線業務に常時従事し、管理区域に立ち入るすべての労働者については、六か月以内ごとに一回、医師により、同項第一号に規定する「被ばく歴の有無(被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容及び期間、放射線障害の有無、自覚症状の有無その他放射線による被ばくに関する事項)の調査及びその評価」(以下「被ばく歴の調査等」という。)が行われており、その結果、医師が必要と判断した者には血液等の検査が適切に実施されることになるため、労働者の安全と健康の確保という観点から特段の問題を生ずることはないものと考えている。
一の(五)について
お尋ねの「調査票や問診票のようなもの」は作成していない。
また、「電離放射線障害防止規則第五十六条に規定する健康診断における被ばく歴の有無の調査の調査・評価項目及び健康診断の項目の省略等の可否について」(平成十三年六月二十二日付け基発第五百六十八号厚生労働省労働基準局長通知。以下「平成十三年通知」という。)の第1の2の(2)のイに掲げる事項についての労働者からの聴取については、被ばく歴の調査等の一環として医師が実施し、聴取した事項のうち当該医師が必要と判断したものは、電離則第五十七条に規定する電離放射線健康診断個人票に記録されることとなる。
一の(六)について
昭和六十三年に電離則第五十六条を改正し、一定の場合に電離放射線健康診断を実施する医師の判断により血液等の検査を省略することができることとした際、昭和六十二年に旧労働省労働基準局長の私的検討会として設置された「電離放射線障害防止規則改正案第五十六条に規定する健康診断項目の省略の可否についての検討委員会」(以下「検討委員会」という。)において、多量の放射線の被ばくが長期的に人体に影響を与える可能性等を考慮して、業務上一年間に二百五十ミリシーベルト以上の実効線量を受けたことのある者及び業務上一年間に百ミリシーベルト以上の実効線量を受けて一定期間を経過していない者(以下「特定被ばく者」という。)については、血液等の検査を省略しないことが適切である旨の報告がなされたことを踏まえ、「電離放射線障害防止規則第五十六条に規定する健康診断の項目の省略の可否について」(昭和六十四年一月一日付け基発第三号労働省労働基準局長通知)において特定被ばく者に対する血液等の検査を省略することは適当でない旨を通達し、平成十三年、同条の改正後も、かかる通達が変更されないことを徹底するため、平成十三年通知において、同様の内容を通達したところである。お尋ねの「二五〇ミリシーベルト以上、一〇〇ミリシーベルト以上」については、ICRPの千九百七十七年勧告において緊急作業に係る実効線量の限度を百ミリシーベルトとすべきとされていたこと、学術研究の成果としてリンパ球の減少等の血液変化が現れるしきい値が五百ミリシーベルトである旨の報告がなされていたことなどを踏まえ、医学的見地等から総合的に検討を行った結果、労働者の安全と健康の確保という観点から問題のない値として報告されたものである。
一の(七)について
一の(三)及び(四)についてで述べたとおり、電離放射線健康診断においては、六か月以内ごとに一回、放射線業務に常時従事し、管理区域に立ち入るすべての労働者に対する被ばく歴の調査等が行われており、また、血液等の検査についても医師の判断に基づき適切に実施されていると考えられることから労働者の安全と健康の確保という観点から特段の問題を生ずることはないものと考えている。
一の(八)について
お尋ねの「問診票のようなもの」及び「省略の可否を評価するための基準のようなもの」は、作成していない。
二の(一)について
お尋ねの「シュラウド取替作業」とは、シュラウドの取替え及びこれに伴い実施される他の炉内構造物の取替えに係る一連の作業を指すものと考えるが、東京電力株式会社、日本原子力発電株式会社及び中国電力株式会社から提出された電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号。以下「電事法」という。)第五十四条の規定に基づく定期検査の結果を取りまとめた報告書(以下「定期検査報告書」という。)によれば、「シュラウド取替作業」が行われた定期検査における定期検査全体に係る放射線業務従事者の総被ばく線量及び「シュラウド取替作業」に係る放射線業務従事者の総被ばく線量は別表第一のとおりであり、定期検査全体に係る被ばく線量ごとの人数分布は別表第二のとおりである。
二の(二)、(三)及び(五)から(七)までについて
お尋ねの「作業環境」、「作業件名ごとの個人最大線量と総被曝線量」、「炉内の空間中の放射性物質の濃度とその測定方法、頻度」、「内部被曝防止対策」及び「化学除染にともなう廃樹脂の放射能汚染の程度」については、承知していない。
二の(四)について
定期検査報告書によれば、お尋ねの炉内での作業における外部被ばく低減対策としては、原子炉圧力容器内壁等の化学除染、原子炉圧力容器内壁への遮へいの取付け、作業時の仮設遮へいの設置等が講じられている。
三について
「シュラウド取替作業」で発生した放射性廃棄物の保管場所については、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第三十七条の規定に基づき国が認可した保安規定において、サイトバンカに保管し、又は容器に封入して必要に応じ放射線を遮へいした上で固体廃棄物貯蔵庫に保管すべき旨が定められている。また、当該放射性廃棄物の種類、状態、容器及び保管量については、承知していない。
四の(一)について
再循環系配管の交換作業については、配管の強度又は性能に影響を及ぼすもののみが電事法第四十八条第一項に基づく工事計画の届出の対象とされているため、その実施を原子力安全・保安院が把握している当該届出がなされた再循環系配管の交換作業についてお答えすると、定期検査報告書(中部電力株式会社から提出された報告書を含む。)によれば、当該交換作業が行われた定期検査における定期検査全体に係る放射線業務従事者の総被ばく線量及び再循環系配管の交換作業に係る放射線業務従事者の総被ばく線量は別表第三のとおりであり、定期検査全体に係る被ばく線量ごとの人数分布は別表第四及び別表第五のとおりである。
また、お尋ねの「作業環境」については、承知していない。
四の(二)について
再循環系配管の点検作業に係る「労働者の被曝状況」及び「作業環境」については、承知していない。
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