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関西電力美浜原発三号機事故の労働災害等に関する質問主意書
衆議院 第162回 第37号
質問本文
原発の下請労働者の労災はこれまで隠されてきて、癌や白血病などによる死亡も、なかなか実態が明らかにされてきていない。したがって、昨年八月の関西電力(以下関電という)美浜原子力発電所三号機の二次冷却水漏洩事故の労災の全容解明に取り組むことは、これからの原発労災解明や対策につながる重要な契機になるものである。
この関電の事故は、火力発電所のタービン建屋の事故と同じもので、原発とは結びつかない普通の事故というものではない。そのことは、関電自身が、その「定期安全レビュー」の中で、一九八六年アメリカのサリー原発における二次系冷却水配管破断事故や一九七九年のスリーマイル島原発事故で二次冷却水喪失が炉心溶融事故になったことを記述していることによっても明らかである。
関電美浜原発三号機事故は、原発本体の事故につながりかねない重大な内容をもつ事故であった。しかも、この事故では、下請作業に入っていた木内計測の四人(後にさらに一人増えて五人)の労働者が気道の火傷によって窒息死し、他の六人がひどい大火傷を負って入院するという重大な事態を生じた。
それだけに、被災の実態をきちんと調査する必要がある。そこで、事故発生直後の昨年八月十日に、現地において提供を受けた被災直後の写真を精査してみると、表一のリストのように、事故発生時にタービン建屋内で定期点検準備作業に従事していた企業名と、企業ごとの登録作業員数が明らかになった。
関電の報告によると、実際に、タービン建屋内にいたのは下請会社百四人と関電社員一人の合計百五人、そのうち、事故発生時には、一階に六十人、二階に二十人、三階に二十五人がいたということである。下請仕事は企業ごとに内容が異なるから、ほぼまとまった場所で行われる。したがって、企業別に労働者が建屋内のどこでどういう仕事をしている時に、事故に遭遇したかはすべて明瞭になるはずである。
建屋内にいたすべての労働者が、百四十度Cを超える十気圧に加圧された八百トン、学校プール三つ分の大量の高温・高圧の熱水の中に置かれ、百度Cを超える高温蒸気にさらされた事故であった。したがって、火傷や肺をはじめとする気管支に障害は出なかったかなど、全員の健康調査は当然のことである。
この事故で、木内計測の十一人だけが死傷者となり、他の十三社の九十四人は、同じ条件の中にいて何の被害も受けなかったというのは、普通では考えられない事態である。
よって、次のとおり質問する。
(一) 関電は、二次系冷却水の大量漏洩については、「定期安全レビュー」の中で、一九八六年アメリカのサリー原発でも同様の二次系冷却水配管の減肉による破断事故で死傷者が出たこと、また、一九七九年同じくスリーマイル島原発では二次冷却水喪失が原子炉本体に影響を及ぼして炉心溶融の大事故になったことを示していた。
政府は、昨年八月の関電美浜三号機事故が、原発本体の事故につながりかねない重大な内容をもつ事故であったと考えているか。それとも、原発事故につながる心配は全くない普通の事故と考えているのか。
(二) この「定期安全レビュー報告書」で、関電は「一九七五年から計画的に肉圧測定を行っており、検査したが問題になる減肉はなかった」としていた。この時、国は、何ヶ所か抜き打ち的に測定して、減肉の状況をチェックして、関電の報告書に間違いがないかどうか独自の検査を行ったのか。
さらに、この「定期安全レビュー報告書」で、関電が「サリー原発のような事故は起こらない」としたことに対して、通産省(現・経済産業省)が、「確率論的安全評価」などを行って「妥当なもの」としてきたことを、政府は今でも正しい評価であったと考えているのか。
(三) 表一に掲げた企業ごとに、その社員がそれぞれ何人で、どこで事故に遭遇し、健康調査の結果どんな被害を受けていたのか、明らかにされたい。
(四) さる二月二十八日の予算委員会第五分科会において、尾辻厚生労働大臣から、「(事故)当日に現地の福井労働局に重大災害対策本部を設置して、福井労働局及び所轄の敦賀労働基準監督署により災害調査を詳細に実施した結果」「(下請ごとの)リーダーへの聞き取りをして確認したと。」「本災害において十一名以外の者については被災者がいなかった」「こういうふうにさっき報告をしております」と答弁があった。
関西電力の事故の「最終報告書」においても、死傷した木内計測の十一人の労働者の中で、タービン建屋一階で発見された人は五人、二階で発見された人は六人とされて、それぞれ場所も示されている。
関電の発表による一階の六十人の中で木内計測の五人が死傷し、二階で働いていた二十人の中で木内計測の六人が死傷したことになる。一階でも二階でも、木内計測の社員だけが全員死傷し、他の下請企業の社員は全く被害を受けなかったというのは、あまりにも不自然なことである。
現地の労働基準監督署が、事故当日に「調査を詳細に実施した」のであれば、前記質問(一)の内容については、百五人の労働者一人一人について、事故発生時にどこで作業をしていたか、建屋外へ逃げ出すまでに何分の時間を要したか、さらに体の火傷の状態はどうだったか、百度Cを超える高温蒸気を吸い込んだのか、肺をはじめとする気管支に障害は出なかったのか、気管支の火傷の度合いはどうであったかについては、医療機関の全員検診の結果も含めて掌握しているものと考えられる。
そこで、労働基準監督署が「詳細に実施した」としている調査内容と結果を具体的に明らかにされたい。
(五) 五人の犠牲者は気道の火傷による窒息死であっただけに、建屋内にいた全労働者の気管支をはじめ検診を行うことは労働災害に取り組む立場から当然のことである。
この点で、タービン建屋三階にいた関電社員一人についても、また、関電消防隊など、事故直後に救援に入った関係者についても検診は行ったのか、厚生労働省の取組みを報告されたい。
(六) 労働災害を防ぐための、労働安全衛生に責任を負う管理者は現場にいなかったのか。
関電職員は、事故発生当時、タービン建屋周辺に何人いたのか。タービン建屋内にいた関電社員は、三階の一人を除いて、他にいなかったのか。
三月十二日に、原子力安全・保安院は、関電美浜原発三号機の配管の肉圧測定や管理業務を関電は下請の「日本アーム」という企業に丸投げしていたことを明らかにした。
通常、関電が定期点検や定期点検準備作業を行う時、作業の全体を指揮監督する管理者や労働安全管理者を置かないことになっているのか。点検業務の丸投げで元請けとなった日本アームの社員は、事前準備作業を指揮監督する管理者や労働安全管理者を置かなくてもよいことになっているのか。
以上のことについて、厚生労働省は、特に行政指導を行わず、監督上の行政責任は負わないことになっているのか。
右質問する。
政府答弁書
(一)について
平成十六年八月九日に関西電力株式会社(以下「関西電力」という。)の美浜発電所三号機(以下「美浜発電所三号機」という。)において発生した二次系配管の破損事故(以下「本件事故」という。)による原子炉への影響については、同年九月二十七日の美浜発電所三号機二次系配管破損事故調査委員会において、原子炉の安全に係る系統は正常に作動しており、原子炉圧力、一次冷却材温度等の主要なパラメータは、平成五年四月十九日付けで申請のあった関西電力株式会社美浜発電所三号機原子炉設置変更許可申請書記載の安全評価解析で想定した「主給水管破断」事故の解析結果を上回る影響を示していなかったことを確認した。また、本件事故による二次系配管の破損により冷却水が系外に流出したが、美浜発電所三号機は、加圧水型軽水炉と呼ばれるものであり、当該冷却水中に放射性物質は含まれておらず、周辺環境への放射線による影響は認められていない。
しかしながら、本件事故は、原子力発電所で発生したものであり、かつ、死傷者十一人という前例のない深刻な結果をもたらしたことから、政府としては、本件事故を原子力発電所における重大な事故と受け止めている。
(二)について
平成十二年五月に関西電力から当時の資源エネルギー庁に提出のあった「美浜発電所三号機定期安全レビュー報告書」中の「事故・故障等の経験反映状況」において、「昭和六十年頃からPWR点検計画として計画的な肉厚測定が行われており、当時、特に異常な減肉を示している部分は認められなかった」という記述がある。
この「事故・故障等の経験反映状況」については、平成十二年五月に当時の資源エネルギー庁が取りまとめた「関西電力株式会社美浜発電所三号機定期安全レビューの評価について」において、事故・故障等発生時の対応措置、トラブル経験の反映の仕組み、緊急時の措置が確立し、これらが適切に実施されているかという視点から、国は専門家の意見を聴いて評価を行ったが、国自らが配管の減肉に係る状況を検査により直接確認はしていない。
また、関西電力の右報告書中の「事故・故障等の経験反映状況」において、「サリー発電所二号機のような事象は発生しないと考えられた」という記述がある。当該記述を含めた報告書全体については、当時、関西電力が行った確率論的安全評価等により美浜発電所三号機の安全性の特徴が総合的に把握されていることから、国は妥当なものと評価した。
国としては、本件事故を受け、再発防止のため、平成十六年十二月に電気事業法施行規則(平成七年通商産業省令第七十七号)を改正し、検査対象設備や検査方法等の明確化を図るとともに、「原子力発電所の配管肉厚管理に対する要求事項について」(平成十七年二月十八日付け原院第一号原子力安全・保安院通達)を電気事業者に対して発出し、同通達に定める検査対象箇所の選定、測定ポイント及び検査実施時期の設定等に係る遵守事項について、各電気事業者が配管減肉管理を実施する場合にこれらを遵守するよう要請することなどを通じて、安全管理の徹底に努めているところである。
(三)について
所轄の敦賀労働基準監督署が行った聞き取りによれば、本件事故の発生時に美浜発電所三号機のタービン建屋及びタービン建屋と原子炉建屋の間にある中間建屋(以下「タービン建屋等」という。)の内部にいたことが確認されたのは、別紙に掲げる事業者の労働者であり、事業者別及びタービン建屋等の階層別の労働者数並びに労働者の被災の状況は、別紙のとおりである。
(四)について
本件事故は、タービン建屋を南北に均等に三区分した場合の北側区域の二階で発生した。別紙に掲げる各事業者に対して所轄の敦賀労働基準監督署が行った聞き取りの結果により、本件事故の発生時にタービン建屋等の内部にいた百五人の労働者の場所ごとの数は、タービン建屋の南側区域では一階二十五人、二階六人、三階三人、中間区域では一階二十九人、二階零人、三階七人、北側区域では一階二人、二階十二人(うち木内計測株式会社の労働者五人が死亡、六人が負傷)、三階零人、南側区域か中間区域かは特定できないが、いずれかの区域の三階で十一人であり、また、中間建屋では、一階四人、二階二人、三階四人であること及び被災した木内計測株式会社の十一人の労働者(以下「被災労働者」という。)以外の者は、本件事故の発生直後、直ちに退避しており、いずれも被災していないことを確認している。なお、被災労働者は、本件事故の発生時には、全員がタービン建屋の二階の本件事故により破損した二次系配管の付近で作業しており、そのうち五人は一階に退避したところを救護されたものである。
(五)について
お尋ねの「検診」は実施していないが、敦賀労働基準監督署が行った聞き取りや、関西電力が行った被災状況の確認の結果に加え、被災労働者以外の者について、労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)第九十七条の規定に基づく労働者死傷病報告や、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)の規定に基づく労災保険給付の申請が行われていないことからも、被災労働者以外に被災した者はいなかったものと承知している。
(六)について
事業者は、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第十条の規定に基づき、一定の規模の事業場ごとに総括安全衛生管理者を選任しなければならず、また、同法第十一条の規定に基づき、一定の業種及び規模の事業場ごとに安全管理者を選任しなければならないこととされている。
関西電力からの報告によれば、本件事故の発生時には、関西電力が美浜発電所について選任した総括安全衛生管理者及び安全管理者(以下「安全管理者等」という。)は、タービン建屋とは別の同発電所内の事務所にいた。本件事故の発生時にタービン建屋内にいた関西電力の職員は一階に一人であり、タービン建屋の周辺にいた人数については確認できなかった。
また、株式会社日本アームは、本件事故の発生した日には、タービン建屋内での作業を開始していなかったことなどから、安全管理者等を選任する義務はなく、安全管理者等は置かれていなかった。
厚生労働省においては、従来から労働安全衛生法に規定する安全管理者等の適切な選任等について周知及び指導を行ってきたところであるが、本件事故を踏まえ、平成十六年十月二十五日に、関西電力に対し、所轄の福井労働局から、事業場の責任者を中心とする安全管理活動の適切な実施等の事故の再発防止対策の徹底について、改めて指導を行ったところであり、今後とも適切に対処していく所存である。
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