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奄美大島住用村戸玉地区における採石場被害に関する質問主意書
衆議院 第156回 第20号
質問本文
赤嶺政賢 小沢和秋
奄美大島住用村戸玉地区における採石場被害に関する質問主意書
奄美大島住用村戸玉地区はわずか三十所帯余の集落であるが、二十年以上前より次々に開始された四カ所もの採石場の操業により、騒音、振動、粉塵による多大な被害を受けてきた。住民地域より一番近いところでわずか三十メートル以内に位置する採石場は、現在二つの業者によって運営され、ダイナマイトや大型の削岩機を使った大々的な採石作業とダンプカーによる積み出しが展開されている。また、集落に隣接した船着場には砂利や岩石が野積みされ、着岸する砂利運搬船への積み込み作業で、その都度住民と住居に耐えがたい騒音と粉塵を浴びせている。
現状でも住民は採石場によって多大の苦痛を強いられているのに、昨年十月、鹿児島県に対して戸玉地区の住居地域よりわずかな距離しか隔てない山林に新たな採石場設置の認可申請が事業者より提出された。これに対して、戸玉地区の住民全員の署名による認可反対の意見書が住用村長に提出され、村長も県大島支庁長に対して「戸玉集落から強硬な反対意見が寄せられており村としては、戸玉集落の意見を尊重しなければならず許可については好ましくない」との意見書を上げている。
また、村長は同じ意見書の中で「(岩石採取場の区域に)文化財保護法においては、アマミノクロウサギやルリカケス、アカヒゲ、カラスバト等が確認されており、自然環境に影響を与えることが懸念される」と述べている。住用村では、過去にアマミノクロウサギの生息地にゴルフ場開発の話が持ち上がり、裁判の末、開発が取り止められた経過があるので、村長の懸念は当然のものと思われる。
そこで、次の事項について聞く。
(一) 戸玉地区住民は、既存の採石場の作業や住居地区に隣接する船着場での積み出し作業、集落内の道路を通行するダンプカーによる騒音、振動、粉塵の被害を長年にわたり受けている。騒音や振動の被害については、住用村に測定機器や要員が存在せず、客観的な被害調査が妨げられているが、この場合、被害の調査はどのように実施されるべきなのか。
(二) 戸玉地区の住居・建物の多くは、採石場の発破や集落内道路を通行するダンプカーの振動で内外の壁のヒビ割れ、柱の歪み等の傷みが生じている。また、降雨の度に採石場からの残土が堆積した河川から水があふれ、家屋が床下浸水する等、土地の嵩上げが必要な場所も出ているが、住民から要求があっても何らの調査や補償の措置がとられない。被害の調査及び補償は、どのようになされるべきか。具体的なあり方を示されたい。
(三) 採石法は、その目的に「災害の防止」をうたっているが、既に戸玉地区では粉塵、強風で飛び散る小石による被害を受けている。窓を二重にしても家屋内に入り込む細かい粒子状の粉塵や絶え間ない騒音、振動で住民の中に喘息等の呼吸器疾患、難聴等の健康と人身を損なう事態も生じている。既存の採石場による被害については、黙過されたまま長年にわたる申請の更新が県によって行われてきているが、指摘したような被害を防止する措置が二十年以上にわたって十分にとられていない場合、認可権者においては事業者に対してどのような措置をとる権限を有するのか。
(四) 既存の採石場の認可の更新に際しても、今回のような新規の認可申請にあたっても認可権者は当該採石場の操業によって最大の影響を受ける戸玉地区住民の意見を直接聴取したことがない。手続き上の問題として、地区の住環境、生活条件を大きく左右するのであるから、認可権者は戸玉地区住民の意見を直接聴取するのが望ましいと考えるが、どうか。
(五) 戸玉地区では、既存の採石場の操業で山林はもとより、長年にわたり漁港として良好な条件を形成していた太平洋側に張り出した岬の全体も削り取られ、土砂の流出、台風時の強風によって飛散する小石が住居の雨戸を貫通する等の想像を絶する被害を与えている。地区の漁港前面の湾内も、旧来は珊瑚礁によって良好な漁礁をなしていることから近場の好漁場として利用されてきたが、採石場が操業して以後、集湾内に流入する土砂により珊瑚が死滅し、魚類の棲息が全く認められない状況になったと住用村漁協は説明している。採石法においては、事業終了後の現状回復を規定していると承知しているが、当該地区のように二十年以上にわたる破壊的な開発行為で環境条件の根本的な変化を経た後、どのような現状回復措置がとられるべきなのか。
(六) 住用村教育委員会は申請が出された当該地域について、天然記念物ケナガネズミの死骸が平成十三年十二月十日に発見され、これを文化庁に報告した事実を指摘している他、特別天然記念物アマミノクロウサギや鳥類の天然記念物ルリカケス、アカヒゲ、カラスバトが確認され「貴重動物の生息地または、繁殖地の可能性が高い」と述べている。また、当該地域を流れる河川には、絶滅危惧種のリュウキュウアユの稚魚が確認されている。村当局が指摘するこれらの問題は、誰がどのような調査を行うのか。結果は誰に報告され、報告を受けた者はどのような措置をとるのか。また、国としてもこれらを保護するための措置をとっていくべきと考えるが、どうか。
右質問する。
政府答弁書
(一)について
お尋ねの騒音や振動の被害に関する調査について、住用村(以下「村」という。)から聴取したところ、村においては、従前、騒音及び振動測定機器を保有していなかったため調査を行っていなかったが、鹿児島県(以下「県」という。)の協力の下、騒音及び振動測定機器を用いた戸玉地区内の騒音及び振動に係る客観的な調査を行うことが可能となる見込みであり、本年三月下旬から四月上旬にこれを実施する予定であるとのことである。
(二)について
「採石場の発破や集落内道路を通行するダンプカーの振動」による被害に関する調査については、(一)についてで述べたとおりである。
「降雨の度に採石場からの残土が堆積した河川から水があふれ、家屋が床下浸水する等」の被害に関する調査については、戸玉地区を流れる金子川及び戸玉川の河川管理者である村に確認したところ、両河川の氾濫による被害の状況について災害記録が残されており、戸玉地区住民からの聞き取り調査及び当該災害記録により確認できる範囲では、金子川流域においては河川の氾濫による被害は生じておらず、また、戸玉川流域においては昭和六十二年十一月十一日から十二日まで及び平成二年九月十八日に床上浸水等の被害があったが、同流域には岩石採取場は存在せず、これらの被害が「採石場からの残土」に起因するものかは不明であるとのことである。なお、仮に、この両河川について、河川法施行令(昭和四十年政令第十四号)第十六条の四第一項の規定により禁止される河川区域内の土地に土石等を捨てる等の行為(以下「禁止行為」という。)があった場合には、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第百条第一項において準用される同法第七十五条第一項の規定により、河川管理者である村が禁止行為をした者に対して、原状回復等を命ずることができる。
また、お尋ねの補償については、村から聴取したところ、戸玉地区の住民の代表者である戸玉集落区長と戸玉地区において岩石の採取を行っている採石業者(以下「本件採石業者」という。)との間で締結している公害防止協定において、振動、河川の氾濫等によって被害が生じた場合には、「その責任が」本件採石業者の「責めに帰すべきものであると認められるときは、過失の有無にかかわらず誠意をもってその被害補償の協議に応じ速やかに問題を解決するもの」とされているとのことである。
(三)について
採石業者は、採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)第三十三条の二の規定により採取計画に粉じん、騒音等による被害を含む岩石の採取に伴う災害の防止のための方法及び施設に関する事項を定めることとされており、同法第三十三条の規定により採取計画を認可した都道府県知事は、採石業者が、認可を受けた採取計画を遵守しなかったときには、同法第三十三条の十二の規定により、その認可を取り消し、又は六か月以内の期間を定めてその認可に係る岩石採取場における岩石の採取の停止を命ずることができることとされている。また、都道府県知事は、岩石の採取に伴う災害の防止のため緊急の必要があると認めるときは、同法第三十三条の十三第一項の規定により、その防止のために必要な措置をとるべきこと又は岩石の採取を停止すべきことを採石業者に命ずることができることとされている。県から聴取したところ、県としては、今後、村が実施する予定である騒音及び振動に係る調査の結果等を踏まえ、本件採石業者について、これらの措置を講じる必要があるかを含め対応を検討していく予定であるとのことである。
(四)について
採石法第三十三条の六の規定により、都道府県知事は、採取計画の認可に係る処分をする場合、関係市町村長の意見を聴かなければならないこととされており、関係市町村長は、地元住民を代表して都道府県知事に対して当該意見を述べることになると考えられ、現行の手続に問題があるとは考えていない。
(五)について
採石法においては、事業終了後の原状回復について特段の定めはないが、(三)についてで述べたように、採石業者は採取計画において崩落、土砂の流出等による被害を含む岩石の採取に伴う災害の防止のための方法及び施設に関する事項を定めることとされており、事業終了後についても、同計画に従って災害の防止のための措置が講じられることとなる。
(六)について
採取計画の認可の申請に当たって、採石法施行規則(昭和二十六年通商産業省令第六号)第八条の十五第二項の規定により、採石業者は、岩石の採取に係る行為に関し、他の行政庁の許可、認可その他の処分を受けていることを必要とするときは、その処分を受けていることを示す書面又はその処分を受ける見込みに関する書面を提出しなければならず、都道府県知事は、採取計画の認可に当たって当該処分等の有無を確認している。文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第八十条第一項の規定により、ケナガネズミ、アマミノクロウサギ、ルリカケス、アカヒゲ、カラスバト等特別天然記念物及び天然記念物(以下「特別天然記念物等」という。)の現状を変更し、又は保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは文化庁長官の許可を受けなければならないとされており、県から聴取したところ、お尋ねの申請に係る採取計画(以下「本件採取計画」という。)について同項の許可を要するものであるかを判断するため、特別天然記念物等の生息が確認され、又は予想される地域において、専門家による生息調査が必要である旨、本件採取計画の申請者に教示するよう、平成十四年十一月に村を指導したとのことである。県知事は、本件採取計画の実施が文化財保護法との関係で問題が生じるものでないかを確認の上、本件採取計画の認可について判断することとなる。
また、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第八条第四項においては、事業者は、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努める責務を有すると規定されており、リュウキュウアユについても、その保護のため十分な配慮がなされるべきであると認識している。
国としては、全国的な観点から自然環境に係る調査を行っており、その結果を広く公開することなどにより、絶滅のおそれのある野生動物及び我が国にとって学術上価値の高い動物を含む自然環境への十分な配慮がなされるよう努めてまいりたい。
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