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川辺川ダム建設事業計画と球磨川水系治水事業に関する質問主意書

衆議院 第157回 第12号

提出者
日本共産党
提出日
2003年9月26日
内閣転送 2003年9月29日
答弁書受領日
2003年10月7日
提出から11日
答弁の項目数
3
質問 1,864字/答弁 1,073字

質問本文

小沢和秋    赤嶺政賢

川辺川ダム建設事業計画と球磨川水系治水事業に関する質問主意書

今年五月十六日、福岡高等裁判所において川辺川利水訴訟控訴審判決が下され、国が川辺川ダム建設を前提に進めようとした利水事業が土地改良法の定めで必要な対象農民の三分の二の同意率に達しておらず、違法であると断じられた。この判決は、国が上告を断念したことで確定している。

川辺川ダム建設をめぐっては、事業認定後に漁業権や五木村内の土地について収用裁決申請が国から熊本県収用委員会に提出され、既に二年ごしで審理が行われてきた。しかし、事業計画の前提となる利水事業計画が無効になり、農林水産省から「新利水計画案を提出する」と表明されているものの裁決申請の前提条件が宙に浮いてしまい、県収用委員会の塚本侃会長からは「ダム計画に著しい変更が生じたと収用委が判断した場合は、土地収用法に定める却下裁決もありうる」(「熊本日日新聞」本年五月二十七日付)との見解が示されている。

更に来年度予算の概算要求において国土交通省は、ここ五年間毎年度ダム本体工事予算を一億円から九億円計上してきたにもかかわらず、今回は「熊本県収用委員会における審理状況、新利水計画策定に向けた取組み状況等を踏まえて」本体工事費を要求しなかった。

土地収用法の目的は、第一条において「公共の利益となる事業に必要な土地等の収用又は使用に関し、その要件、手続及び効果並びにこれに伴う損失の補償等について規定し、公共の利益の増進と私有財産との調整を図り、もって国土の適正且つ合理的な利用に寄与すること」にあるとしている。この条文に照らせば多目的ダム事業である川辺川ダム建設事業計画のうち、「公共の利益となる事業」を構成する重要部分である「利水計画」が存在せず、国としても来年度に予算も計上しないことから、土地収用法上の目的を喪失していると言わざるを得ない。

また、球磨川中流域では、「市房ダムや荒瀬ダムができた後、水害がひどくなった」との理由で川辺川ダム建設に反対している住民が多い。現に坂本村では議会、村長ともに反対している。実際、芦北郡芦北町告薄口の集落を調べたところ、一九六五年七月六日の大水害以降、七一年八月五日、七二年七月六日、八二年七月二十五日、九三年八月一日にも家屋二階部分に至る洪水被害を受けている。明治時代以来同集落に代々住んできたというある高齢の女性は、「私も五十年以上ここに住んでいるが、ダム完成以前には二階が漬かるような洪水は無かった。せめて生きているうちに安全にしてほしい」と切実に訴えていた。こうした切実な要求があるにもかかわらず、一番水位の高かった八二年の時はおろか、六五年の水害レベルに対応できる堤防工事や集落嵩上げ事業さえ着手されないまま、現在に至っている。国土交通省八代河川国道事務所の説明では、「こうした支流の合流地点で嵩上げ等をすべきところは球磨川中流域の球磨村、芦北町、坂本村に多数あるが、事業が完成したのは八箇所、現在着手は二箇所のみ」だという。

以上を踏まえ、この際長年にわたり漁民、住民の反対を受けてきた川辺川ダム建設事業は中止すべきであり、新たな利水計画策定や球磨川水系の治水事業については農民、住民、漁民等の関係者の意見を十分に反映させて検討していくべきだと考える。また、球磨川中流域の水害を防ぐための河川改修、嵩上げ工事を急いで進めるべきだと考える。

よって、以下の通り質問する。

(一) 土地収用法の前提である「公共の利益となる事業」の構成要素となる「利水計画」が違法と確定し、それに代わる新利水計画が存在せず、本体工事費の予算計上も断念した川辺川ダム建設事業計画について、国は熊本県収用委員会に提出している裁決申請を取り下げるべきと考えるが、どうか。

(二) 違法と断定された利水計画に関係する相良村等の地区では、旧来から川辺川より引いた六角水路等で田畑への用水を賄ってきた。これらの水路は川辺川ダム事業計画の推移の如何にかかわらず、地域の農業に不可欠な役割を果たしているのであり、これらの老朽化に対応した補修工事に対して国は補助すべきではないか。

(三) 球磨川中流域での支流合流点等で、過去の水害を踏まえて河川改修や嵩上げ工事をすべき箇所はどれくらいあり、工事の進捗状況はどうなっているのか。今後、人命と財産を保護するため、早急に工事を進めるべきと考えるが、どうか。検討中のものを含め、今後の計画等を詳細に示されたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

(一)について

御指摘の川辺川ダム建設工事及びこれに伴う附帯工事(以下「川辺川ダム建設事業」という。)は、洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがい用水の供給及び発電を目的として、国土交通大臣が特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)に基づき実施する事業である。一方、国営川辺川土地改良事業は、農業用水の安定供給、農業経営の規模の拡大等を目的として、農林水産大臣が土地改良法(昭和二十四年法律百九十五号)に基づき実施する事業であるところ、本年五月十六日の福岡高等裁判所の判決によって当該事業の土地改良事業計画の変更の効力が失われたことにより、別個の事業である川辺川ダム建設事業の基本計画が効力を失うものではなく、また、当該判決を受けて、現在、農林水産省等においては、川辺川に係る土地改良事業に関して新たな利水計画の策定の作業を進めているところでもあり、当該判決をもって、かんがい用水の供給という川辺川ダム建設事業の目的の一つが直ちに失われたことにはならない。

もとより、川辺川ダム建設事業は、球磨川流域の住民の生命及び財産を守るために不可欠なものであり、速やかに完成させる必要があることから、御指摘のように裁決申請を取り下げることは考えていない。

(二)について

(一)についてで述べたとおり、本年五月十六日の福岡高等裁判所の判決に伴って、国営川辺川土地改良事業の土地改良事業計画の変更の効力が失われ、当初の土地改良事業計画の状態に復することとなったところ、このような状況を受けて、球磨地域北部の農業用水の確保に向け、農林水産省、熊本県及び関係市町村が一体となって、川辺川利水訴訟原告団・弁護団との合意のもと、関係農家の意向を詳細に確認しながら、約一年間をめどとして、川辺川に係る土地改良事業に関して新たな利水計画の策定の作業を進めているところである。

御指摘の六角水路等は、球磨地域北部の一部に水を供給する施設であり、お尋ねの国の補助の取扱いについては、右の新たな利水計画との整合性に十分配慮することが必要であることから、現段階で判断することは適切ではないと考えている。

(三)について

球磨川中流域での支流合流点等における宅地嵩上げを含む河川改修事業(以下「河川改修事業」という。)は、平成十四年度までに八か所において完成している。

過去の水害実績等を踏まえ、河川改修事業については、現在六か所において実施しているところであり、現時点において候補として想定されている他の二十八か所についても、今後、必要な調査、検討を実施してまいりたい。

衆議院の原文

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