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いわゆる人質司法に関する質問主意書

衆議院 第212回 第138号お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×11個別の事案 ×3

提出者
立憲民主党・無所属
提出日
2023年12月8日
内閣転送 2023年12月13日
答弁書受領日
2023年12月22日
提出から14日
答弁の項目数
14
質問 3,895字/答弁 3,936字

質問本文

我が国の刑事司法制度については、長年「人質司法」という言葉で、捜査当局・裁判所が否認又は黙秘する被疑者・被告人に対し、接見等禁止や保釈を許さないなど長期にわたって拘禁し、それを自白させる圧力として利用しているとの批判がある。最近では、二〇二〇年十一月、日本弁護士連合会から「『人質司法』の解消を求める意見書」が出されているほか、二〇二二年十一月、国連に設けられた自由権規約委員会から「第七回日本定期報告審査に係る総括所見」などにより、我が国の未決拘禁の在り方について、国内外から様々な問題点が指摘されている。また、二〇二三年五月、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチから出された「日本の『人質司法』」と題する報告書では、我が国の刑事司法制度における人権侵害を指摘し、内閣総理大臣・政府に対して、「法の適正手続きと公正な裁判に関するすべての人の権利を、弁護人へのアクセスの問題や保釈を含めて、完全に尊重するための刑事司法制度改革を行うことを公に約束すること」などが提言されている。

以下、「日本の『人質司法』」を踏まえ、質問する。

一 国連の「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の第二選択議定書及び「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」の選択議定書を署名、批准し、国際法に基づく個人通報制度へのアクセスを日本法の下でも保障することを求める意見があるが、我が国が両選択議定書を署名、批准していない理由は何か。また、国際法に基づく個人通報制度を我が国へ導入することについて政府の見解を示されたい。

二 「日本の『人質司法』」には、「保釈申請への対応を、無罪の推定と個人の自由に関する国際基準に沿った運用に改善すること。」との提言があるが、これに対する政府の見解を示されたい。

三 「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」と規定する刑事訴訟法第八十九条第四号は必要的保釈の例外を定めるものであるにもかかわらず、そのような証拠がない場合にも日常的に使用されているとの批判があるが、これに対する政府の見解を示されたい。

四 刑事訴訟法では、一つの事件について、起訴前の被疑者を勾留延長により最長で二十三日間、逮捕・勾留することを認めているが、警察や検察は、被疑者から自白を引き出すため、例えば、殺人事件について、死体遺棄罪で逮捕・勾留したのち、殺人罪でも逮捕・勾留する実務や、一つの経済事件について、一定の期間ごとに逮捕・勾留するなど、実質的に同じ事件を分割して逮捕・勾留を繰り返し、長期間被疑者を拘禁しているとの批判がある。これに対する政府の見解を示されたい。

五 憲法第三十四条では「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。」とされており、判例によれば同条は弁護人依頼権及び防御権保障のための接見交通権を含むものと解釈されていること、及び我が国も批准している「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第十四条第3項(b)では「防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ並びに自ら選任する弁護人と連絡すること。」と定められていることを踏まえ、逮捕後直ちに被疑者に対し弁護人選任権について告知し、法テラスや当番弁護士制度について教示し連絡をする機会を与えるとともに、特に弁護人と連絡する必要性の高い取調べ中を含め、全身体拘束期間を通して秘密を保持しながら弁護人に速やかにアクセスできるようにするべきと考えるが、この点について政府の見解を示されたい。

六 現行法においても、取調べへの弁護人立会いが否定されていないこと、また、前述のように取調べ中も含め被疑者が弁護人と連絡をできること(弁護人の立会い)を確保することが政府の義務と考えられることなどから、取調べにおける被疑者の黙秘権を実質的に保障するなどのために、全被疑者が取調べにおける全過程で弁護人立会いを受けられるように、政府は捜査当局に対し指示を発するべきとの意見がある。法務・検察行政刷新会議報告書(令和二年十二月)では、「被疑者取調べへの弁護人の立会いについての様々な意見が示されたところであり、令和元年六月までに施行された平成二十八年改正刑事訴訟法の三年後検討が予定されていることから、法務大臣において、前記各意見の趣旨も十分に斟酌し、検討のために必要十分な資料を収集・分析した上で、三年後検討の場を含む適切な場において、弁護人立会いの是非も含めた刑事司法制度全体の在り方について、社会の変化に留意しつつ、刑事手続の専門家以外の多様な視点も含めた幅広い観点からの検討がなされるよう適切に対応すること。」とされているが、取調べへの弁護人立会いについて、現在までにどのような検討が行われているのか。

七 被疑者・被告人が逃亡や証拠の隠滅を計画していることを示す十分な証拠がある限られた場合にのみ接見等禁止を請求すべきとの意見があるが、これに対する政府の見解を示されたい。

八 国連の被拘禁者処遇最低基準規則(ネルソン・マンデラ・ルールズ)が「被拘禁者は、必要な監督のもと、定期的に家族および友人と」「文通、利用可能な場合は遠距離通信、電子、デジタル及び他の手段」により「連絡を取ることを許されなければならない」と定めていることなどを受けて、被拘禁者が、必要な監督のもと、定期的に家族及び友人と電話や電子メール、ビデオ通話などの手段により連絡を取ることを許す制度とすべきという声がある。この点について、政府の見解を示されたい。また弁護人との接見について、先日公表された、法制審議会刑事法(情報通信技術関係)部会の試案では、被疑者・被告人がオンラインで弁護人等との接見については制度の導入が見送られたと聞いている。しかし、オンライン接見に関しては、全国五十六の弁護士会及び弁護士会連合会から、その実現及び法制化を求める会長声明等が公表されており、被疑者・被告人の立場に置かれた国民が迅速かつ十分な弁護人の援助を受けることができるようにするために、その必要性は明白であると考えるが、この点についても、政府の見解を示されたい。

九 「日本の『人質司法』」では、被疑者が黙秘権を行使しても取調べは止まらず、捜査官が被疑者に対し、質問に答え、容疑とされた犯罪を自白するよう迫り続けるといった捜査・取調べが行われていると指摘されており、被疑者が黙秘権を行使した場合には取調べを終了し、被疑者の黙秘権を保障するべきとの提言がある。被疑者が黙秘権を行使した場合に捜査当局はどのような対応をとっているのか、また、被疑者が黙秘権を行使した場合の取調べについて、犯罪捜査規範に規定はあるのか否かについて示されたい。

十 「日本の『人質司法』」には、「すべての被疑者・被告人と弁護人が、検察が被告人に対して裁判で提出予定か、または被告人に有利な証拠や無実を証明する捜査証拠や資料など、すべてにアクセスできるようにすること。」との提言があるが、これに対する政府の見解を示されたい。

十一 刑事訴訟法が録音・録画を義務付けている取調べ以外の任意取調べや参考人の取調べ等について、その適正さを疑われる事例も指摘されていることから、全刑事事件の取調べ全過程について、すべての被疑者や参考人等への取調べも含めて、電子的に記録するなどの保護措置を実施し、その記録を被告人に提供し、裁判で使用できるようにすべきとの声もある。取調べの録音・録画制度を導入した「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(平成二十八年法律第五十四号)の附則に基づく検討を行うために設けられた「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」において、全面的な取調べの録音・録画に関する意見はあったのか。あった場合には、その内容及び課題を示されたい。

十二 国連の「あらゆる形態の抑留・拘禁下にある人々を保護するための原則」は、判断や決定の能力を損なう「暴力や脅迫、取調べ方法には、いかなる被拘禁者もさらされてはいけない」としており、この原則に則り、取調べ全過程に弁護人が立ち会う権利を定めること、及び取調べの時間や方法に厳しい制限を設けることを含む、自白強制的な取調べをなくす措置を採用すべきとの意見があるが、これに対する政府の見解を示されたい。

十三 第五次日本政府報告書に対して、国連自由権規約委員会が二〇一八年に示した総括所見が、代用刑事施設制度(代用監獄)の廃止を勧告し、代用監獄が自白を得ることを目的とした長期間に及ぶ人権侵害を伴う取調べの危険性を高めることに懸念を表明していることから、この総括所見に沿って、捜査、勾留、訴追の機能を分離させる措置をとることとの意見があるが、これに対する政府の見解を示されたい。

十四 法務省から独立した資格のある医療者が、拘禁中の被拘禁者の心身の状態を定期的にモニタリングし、評価する体制を確立し、その医療記録を被拘禁者と弁護人に開示し、かかりつけ医を受診できるようにすることとの意見があるが、これに対する政府の見解を示されたい。

十五 病気等に罹患している者の勾留に際し、捜査機関が刑事収容施設に対して「留置に耐えられるか否か」という照会を行うことが実務上確立されているが、留置に耐えられるという基準について定めた根拠規定は何か。また、「留置に耐えられる」という基準の定義ないし意味内容について、政府の見解を示されたい。

右質問する。

衆議院の原文・経過

政府答弁書

一について

御指摘の「「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の第二選択議定書及び「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」の選択議定書」は、個人通報制度について規定しているものではないと承知している。その上で、個人通報制度は、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号)の第一選択議定書及び拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約(平成十一年条約第六号)第二十二条に設けられているところ、その受入れに当たっては、我が国の司法制度や立法政策との関連での問題の有無や個人通報制度を受け入れる場合の実施体制等の検討課題があると認識している。個人通報制度の受入れの是非については、各方面から寄せられている意見も踏まえつつ、政府として真剣に検討を進めているところである。

二及び三について

御指摘の「保釈申請への対応を、無罪の推定と個人の自由に関する国際基準に沿った運用に改善すること」及び「そのような証拠がない場合にも日常的に使用されている」の意味するところが必ずしも明らかではないが、お尋ねは、保釈に関する裁判所又は裁判官の判断及びその評価に関わるものであり、政府としてお答えする立場にない。

四について

御指摘の「実質的に同じ事件を分割して逮捕・勾留を繰り返し」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として、逮捕及び勾留は、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)等が定める要件や司法審査等の手続に基づいて、適正に行われているものと承知している。

五について

御指摘の「法テラスや当番弁護士制度について教示し連絡をする機会を与える」の意味するところが必ずしも明らかではないが、捜査当局においては、刑事訴訟法の規定に基づき、被疑者を逮捕したとき、又は逮捕された被疑者を受け取ったときは、直ちに弁護人を選任することができる旨を告げているものと承知している。

御指摘の「全身体拘束期間を通して秘密を保持しながら弁護人に速やかにアクセスできるようにする」の意味するところが必ずしも明らかではないが、同法第三十九条の規定により被告人及び被疑者と弁護人の接見交通権は十分保障されており、取調べ中に被疑者から弁護人と接見したい旨の申出があった場合、取調べを行う検察官等は、当該申出があった旨を直ちに弁護人に連絡し、また、取調べ中の被疑者について弁護人から接見の申出があった場合、検察官等は、できる限り早期に接見の機会を与えるように配慮しているものと承知している。

六について

法務省においては、刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十四号)附則第九条の規定により行う検討に資するよう、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」を設けており、被疑者取調べへの弁護人の立会いについては、同協議会における協議の対象となり得ると考えているが、現時点においては、具体的な協議は行われていないものと承知している。

七について

御指摘の「被疑者・被告人が逃亡や証拠の隠滅を計画していることを示す十分な証拠」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として、刑事訴訟法第八十一条の規定により接見等禁止が認められるためには、被疑者及び被告人のいずれの場合も、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があることが必要であり、個々の事案ごとにこのような理由の有無を判断して接見等禁止の請求が行われているものと承知している。

八について

前段のお尋ねについては、御指摘の「被拘禁者」の具体的な範囲が必ずしも明らかではないが、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成十七年法律第五十号)において、未決拘禁者の外部交通については、面会及び信書の発受を認めており、当該面会及び信書の発受の相手方について規定する同法第百十五条及び第百三十四条では、刑事訴訟法の定めるところにより許されない場合を除き、相手方の範囲に制限なく、許すものとしている。政府としては、関係法令に従い、御指摘の「被拘禁者処遇最低基準規則」等の国際連合の決議の趣旨を踏まえながら、適切に対応しているものと承知している。

後段のお尋ねについては、現在法制審議会において調査審議が行われている情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備の在り方に関するものであり、政府としては、まずは、その議論の状況を見守っていきたいと考えている。

九について

前段のお尋ねについては、何人も自己に不利益な供述を強要されないことは、憲法第三十八条第一項の定めるところであり、刑事手続において、刑事訴追を受けるおそれのある者に対し、不利益な供述を強要するようなことがあってはならないことは当然であるが、捜査機関においては、個別具体的な事案に応じ、必要な捜査を行っているものと承知しており、一概にお答えすることは困難である。

後段のお尋ねについては、御指摘の「黙秘権を行使した場合の取調べ」については、その態様は様々であり、個別の事案に応じて異なることから、一概にお答えすることは困難であるが、犯罪捜査規範(昭和三十二年国家公安委員会規則第二号)は、適正な被疑者取調べの確保等について規定しており、例えば、同規則第百六十八条第一項において、「取調べを行うに当たつては、強制、拷問、脅迫その他供述の任意性について疑念をいだかれるような方法を用いてはならない。」と規定しているところである。

十について

御指摘の「すべての被疑者・被告人と弁護人が、検察が被告人に対して裁判で提出予定か、または被告人に有利な証拠や無実を証明する捜査証拠や資料など、すべてにアクセスできるようにする」の意味するところが必ずしも明らかではないが、検察官による証拠開示については、例えば、刑事訴訟法第二編第三章第二節の規定において、検察官が取調べを請求した証拠について被告人又は弁護人に開示することはもとより、その証明力を判断するために重要であると認められる証拠であって一定の類型に該当するものや、被告人又は弁護人が明らかにした主張に関連すると認められる証拠についても、被告人又は弁護人から開示の請求があった場合には、被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度と開示によって生ずるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、開示をしなければならないこととされている。

十一について

御指摘の「全面的な取調べの録音・録画」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会」においては、刑事訴訟法第三百一条の二の規定による取調べの録音・録画制度における録音・録画の対象とする範囲が限定的であるとの懸念を表明する旨の意見が紹介される一方で、供述の任意性が争われる事件の割合が低い中で当該範囲を拡大する必要性には疑問がある旨の意見等が示されたものと承知している。

十二について

御指摘の「自白強制的な取調べをなくす措置」の意味するところが必ずしも明らかではないが、刑事訴訟法第三十九条第一項は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人と立会人なくして接見をすることができる旨を、同法第百九十八条第二項は、被疑者取調べに際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない旨を、同法第三百一条の二第四項は、同条第一項各号に掲げる事件について、逮捕又は勾留されている被疑者を同法第百九十八条第一項の規定により取り調べるとき等においては、原則として、被疑者の供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録媒体に記録しておかなければならない旨を、同法第三百十九条第一項は、強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑いのある自白は、これを証拠とすることができない旨をそれぞれ定めており、これらの規定等により、被疑者取調べの適正な実施が確保されているものと考えている。

十三について

御指摘の「捜査、勾留、訴追の機能を分離させる措置」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として、勾留中の被疑者に対するものを含め被疑者取調べは適正に行われているものと承知しており、代替収容制度が御指摘のような危険性を生じさせるものとは考えていない。

十四について

御指摘の「法務省から独立した資格のある医療者が、拘禁中の被拘禁者の心身の状態を定期的にモニタリングし、評価する体制」の意味するところが必ずしも明らかではないが、刑事施設においては、被収容者の心身の状況を把握することに努め、被収容者の健康及び刑事施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものと規定する刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第五十六条を踏まえ、被収容者に対する適時適切な医療に努めているところである。

十五について

御指摘の「病気等に罹患している者の勾留に際し、捜査機関が刑事収容施設に対して「留置に耐えられるか否か」という照会を行うことが実務上確立されている」及び「留置に耐えられるという基準」の意味するところが明らかではなく、お答えすることは困難であるが、刑事訴訟法第六十条では、裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、同条第一項各号のいずれかに当たるときは、これを勾留することができる旨規定されている。

衆議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×3趣旨が明らかではない ×11個別の事案 ×3

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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