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感染症の危機管理における専門家発言の変遷とリスクコミュニケーション体制の強化に関する質問主意書
衆議院 第217回 第240号お答えすることは困難 ×5趣旨が明らかではない ×6
質問本文
本年六月八日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会元会長であった尾身氏は、新型コロナを総括するテレビ番組に出演し、コロナワクチンについて「若者は接種不要である」等、分科会会長を務めていた時期とは異なる見解等を含む発言を行った。この発言の一部がSNSを中心に切り抜き的に拡散され、文脈が十分に共有されないまま誤解を招き社会的混乱と公衆衛生行政への不信を生じさせ多方面から批判が集まっている。一方で、同氏の見解は感染症の重篤化リスクの変化に依拠しており発言自体に矛盾はないとの見方があることも承知している。
かかる状況に鑑みて、急速にリスクが変動する感染症の危機管理においては、政府の要職を経験した専門家が単独でメディア対応を行うことに伴うリスクが顕在化していると考える。したがって、公衆衛生上のいわゆるリスクコミュニケーションを円滑に行うためには、専門家に加え、専門的知識と報道対応能力を兼ね備えたいわゆるサイエンス・コミュニケーター(以下「科学コミュニケーター」という。)を制度的に配置し、発言内容を補足・翻訳する仕組みが重要と考える。
以上を踏まえ、政府に対し質問する。
一 尾身元会長による前記発言の内容およびSNS上での拡散状況を把握しているか。把握している場合、その概要と政府としての評価をそれぞれ示されたい。
二 前記発言が若年層のワクチン接種意欲や感染対策行動に具体的にどのような影響を与え得ると分析しているか。
三 感染症のリスク変動によって専門家の発言が変化することが、発言の一貫性が欠如していると社会に受け止められ、公衆衛生政策への信頼低下を招き得ると政府は認識しているか。認識の有無とその理由をそれぞれ示されたい。
四 感染症のリスク評価が更新される度、政府は速やかに国民へ情報提供を行う必要があると考えるが、どのような指標(重症化率、医療逼迫度、ワクチン有効性等)のもと政府広報が行われているか示されたい。
五 感染症に限らず、専門家がエビデンスに基づき行う発言がリスクの状況に応じて合理的に変遷する場合、その背景を十分に説明しなければ誤解を招くと考えるが、現行のリスクコミュニケーション体制が十分であると評価しているか。評価の根拠とともに示されたい。
六 政府広報もしくは科学コミュニケーターに準ずる者が専門家発言を補足する際、誤情報拡散防止の観点から、どのようなチェック体制(複数名レビュー、いわゆるファクトシート公開等)が必要と考えるか。
七 政府は、公衆衛生政策等における社会的伝達を橋渡しする科学コミュニケーターを恒常的に配置する制度を設ける必要があると考えるか。必要性の有無と理由をそれぞれ明らかにされた上で、科学コミュニケーターを配置する場合、その選任基準(専門性、倫理規範、報道経験等)と所管府省庁をどのように想定するか、それぞれ示されたい。
八 公衆衛生政策に限らず、政府の要職において危機管理政策を担った専門家が離職後に見解を更新する可能性を踏まえ、エビデンスに基づく政策立案の信頼性を確保するため、専門家見解の変遷をどのような手続で記録、検証し、政策に反映しているか。
九 危機管理政策の専門家の見解の変遷に伴い政策修正が必要となった場合、政府は国民および国会に対して、どのようなタイミングで情報を開示し、透明性を担保しているか。
右質問する。
政府答弁書
一の前段について
お尋ねについて、御指摘の「拡散状況」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘の「前記発言の内容」及び「SNS上で」当該内容についての指摘等があることは「把握」している。
一の後段について
お尋ねについては、個人の見解に関するものであり、政府としてお答えすることは差し控えたい。
二について
お尋ねについては、個人の見解に関するものであり、政府としてお答えすることは差し控えたい。その上で、一般論として、御指摘の「若年層」が報道機関等を通じて得た情報は、「ワクチン接種意欲や感染対策行動」に影響を与え得ると認識しており、これらへの対応として、予防接種に関する基本的な計画(平成二十六年厚生労働省告示第百二十一号)に基づき、「被接種者及びその保護者等に対し、感染症に関する情報、予防接種の効果、ワクチンの有効性及び安全性、副反応のリスク及び副反応を防止するための注意事項について、科学的知見をベースに国民の理解促進に資する情報発信を推進する」とともに、「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」(令和六年七月二日閣議決定。以下「政府行動計画」という。)に基づき、例えば、「感染症に関する基本的な情報、基本的な感染対策・・・等について、国民等の理解を深めるため、各種媒体を利用し、可能な限り多言語で、継続的かつ適時に、分かりやすい情報提供・共有を行う」とともに、「その時点で把握している科学的根拠等に基づいた正確な情報について、当該感染症に関する全体像が分かるよう、迅速に分かりやすく提供・共有する」こととしている。
三について
御指摘の「感染症のリスク変動によって専門家の発言が変化すること」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。なお、政府行動計画に基づき、例えば、「感染症対策等について適時に必要な情報提供・共有を行い、・・・国による情報提供・共有に対する認知度・信頼度の一層の向上を図る」とともに、「その時点で把握している科学的根拠等に基づいた正確な情報について、当該感染症に関する全体像が分かるよう、迅速に分かりやすく提供・共有する」こととしている。
四について
お尋ねの「どのような指標・・・のもと政府広報が行われているか」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、御指摘の「国民へ情報提供を行う」ための「政府広報」については、政府行動計画に基づき、例えば、「その時点で把握している科学的根拠等に基づいた正確な情報について、当該感染症に関する全体像が分かるよう、迅速に分かりやすく提供・共有する」こととともに、「情報提供・共有、リスクコミュニケーションに関するガイドライン」(令和六年八月三十日内閣感染症危機管理監決裁。以下「ガイドライン」という。)に基づき、例えば、「新型インフルエンザ等の発生・流行状況の情報提供・共有に当たっては、広聴を活用して情報提供・共有の対象者のニーズについて把握しつつ、WHO等の国際機関が公表する情報やJIHS等から報告・提供された科学的知見等をベースとし、・・・感染症対策等について情報提供・共有を行う」こととしている。
五及び七について
御指摘の「専門家がエビデンスに基づき行う発言がリスクの状況に応じて合理的に変遷する場合」及び「公衆衛生政策等における社会的伝達を橋渡しする科学コミュニケーターを恒常的に配置する制度」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、御指摘の「リスクコミュニケーション体制」については、例えば、政府行動計画に基づき、「国として一体的かつ整合的ないわゆるワンボイスでの情報提供・共有を行うことができるよう、記者会見を担当する広報担当官を置くことを含め必要な体制を整備する」こととしている。
六について
御指摘の「科学コミュニケーターに準ずる者」及び「専門家発言を補足する際」の具体的に意味するところが明らかではないため、お尋ねの「チェック体制」についてお答えすることは困難であるが、いずれにせよ、「誤情報拡散防止」については、政府行動計画に基づき、例えば、「偽・誤情報の拡散状況等のモニタリングを行い、その状況等を踏まえつつ、その時点で得られた科学的知見等に基づく情報を繰り返し提供・共有する等、国民等が正しい情報を円滑に入手できるよう、適切に対処する」こととともに、ガイドラインに基づき、例えば、「事実関係の誤りが明らかで社会的影響も大きいなど、偽・誤情報の拡散状況等によっては、関係省庁は、プラットフォーム事業者に対して、利用規約を踏まえた偽・誤情報に関する自主的な対応を適切に行うよう要請する」こととしている。
八及び九について
御指摘の「公衆衛生政策に限らず、政府の要職において危機管理政策を担った専門家が離職後に見解を更新する可能性」及び「危機管理政策の専門家の見解の変遷に伴い政策修正が必要となった場合」の意味するところが明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。なお、政府としては、例えば、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成二十四年法律第三十一号)第七十条の五第一項の規定に基づき、新型インフルエンザ等対策推進会議の委員は、感染症に関して高い識見を有する者その他の学識経験者から内閣総理大臣が任命しているところ、その任期において、これらの委員から御意見を伺うとともに、政府行動計画に基づき、例えば、「その時点で把握している科学的根拠等に基づいた正確な情報について、当該感染症に関する全体像が分かるよう、迅速に分かりやすく提供・共有する」こととしている。