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SORA2と著作権法第三十条の四に関する質問主意書
衆議院 第219回 第19号お答えすることは困難 ×4趣旨が明らかではない ×6
質問本文
近年、動画生成AI「SORA2」の登場により、既存のアニメーションや映像作品に酷似した表現が容易に生成されるようになっている。こうした技術の出現は、著作権法第三十条の四が平成三十年改正により導入された時点で、ある程度予見可能であったと考える。
同条は、「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」であれば、「情報解析」を行うための複製その他の利用を権利者の許諾なく行うことを認めるものである。すなわち、AIによる機械学習やディープラーニング等を想定した規定であり、その運用に際しては、著作物の学習利用と、生成物による権利侵害の可能性との境界を精緻に整理することが不可欠であったと考える。
さらに、令和七年に施行されたいわゆるAI法第三条第四項においては、「人工知能関連技術の研究開発及び活用は、不正な目的又は不適切な方法で行われた場合には、犯罪への利用、個人情報の漏えい、著作権の侵害その他の国民生活の平穏及び国民の権利利益が害される事態を助長するおそれがあることに鑑み、その適正な実施を図るため、人工知能関連技術の研究開発及び活用の過程の透明性の確保その他の必要な施策が講じられなければならない」とされており、AI法第十六条においては、「国は、国内外の人工知能関連技術の研究開発及び活用の動向に関する情報の収集、不正な目的又は不適切な方法による人工知能関連技術の研究開発又は活用に伴って国民の権利利益の侵害が生じた事案の分析及びそれに基づく対策の検討その他の人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に資する調査及び研究を行い、その結果に基づいて、研究開発機関、活用事業者その他の者に対する指導、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。」と規定されている。したがって、政府はSORA2のような技術的展開を予見しつつ、制度的に適切な監視と対応を準備する責務を有していたと考える。
SORA2の発表以降、政府関係者からも問題意識を示す発言が相次いでいる。当時の平将明デジタル大臣は、令和七年十月七日の記者会見において「政府としても、私自身としても問題意識を持っている。OpenAI社には日本のルールに合うよう調整してもらう必要がある」旨を述べ、また「オプトイン方式をとるよう要請する」旨も明らかにしている。さらに、当時の城内実内閣府特命担当大臣は、同月十日の記者会見においてSORA2について「既存の作品に酷似した作品が生成されることなどに対して、知的財産権の侵害であるとの懸念の声があることは承知しております。アニメ・漫画は、世界の人を魅了し続ける我が国が世界に誇るかけがえのない宝であります。政府としても、御懸念の声に配意しつつ、適切に対応してまいりたいと思います。私、知的財産戦略、クールジャパン戦略担当大臣ですので、この点については適切に対応していく考えです。現在までの政府の対応についてでありますけれども、政府としては、OpenAI社に対し、著作権侵害となるような行為を行わないよう要請したところであります。今後の政府の対応につきましては、今後とも、政府といたしましては、AIを活用する事業者の状況も踏まえ、知的財産権に対する御懸念の声にも配意しつつ、適切に対応してまいる考えであります。」と発言している。
これらの発言は、政府自身がSORA2のような生成AI技術が著作権制度の想定を超える水準に到達したことを認識している証左といえると考える。
にもかかわらず、同月二十四日に行われた高市早苗内閣総理大臣の所信表明演説においては、「「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」を目指して、データ連携等を通じ、AIをはじめとする新しいデジタル技術の研究開発及び産業化を加速させます。」との発信がなされた一方で、著作権を守る、あるいは創作者の権利を尊重するという言葉は一切含まれなかった。政府内でAI政策を推進するにあたり、知的財産権の尊重が国家方針として同時に明示されなかったことは極めて重大であり、コンテンツ産業を基幹産業のひとつと位置付ける政府の政策一貫性に疑義を生じさせるものであると考える。
日本の基幹産業であるコンテンツ産業を守るため、以下、政府に質問する。
一 著作権法第三十条の四を立案及び運用する段階において、政府は、著作物を学習して、ユーザーのプロンプトに従い、新たな映像・画像・音声等を自動生成するAI技術の出現を予見していたか。
二 著作権者の利益を保護しつつ生成AIの発展を阻害しないための制度設計について、政府はどのような検討を行ってきたのか、可能な限り具体的に示されたい。
三 なぜ著作権法第三十条の四に関し、技術進展に応じた見直しを行わず、今日まで現行の運用を維持してきたのか。その理由及び責任の所在を明らかにされたい。
四 SORA2発表後における平デジタル大臣及び城内内閣府特命担当大臣の発言は、政府の制度上の予見義務又は監督義務を認めたものと考えてよいか。政府の見解を明らかにされたい。
五 平デジタル大臣が言及した「オプトイン方式」とは、著作物の学習段階における利用許諾の仕組みを指すのか、それとも生成・出力段階における利用制御を指すのか、政府の見解を明らかにされたい。
六 城内内閣府特命担当大臣の記者会見で触れられたSORA2に対する問合せは、日本のAI法第三条及び第十六条に基づいて行われたものと理解してよいか。仮にそれ以外の法的根拠に基づく場合は、その条文及び手続根拠を具体的に示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねの「ユーザーのプロンプトに従い、新たな映像・画像・音声等を自動生成するAI技術の出現」の意味するところが必ずしも明らかではないが、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第三十条の四を立案する段階において想定されていた人工知能関連技術(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和七年法律第五十三号)第二条に規定する人工知能関連技術をいう。以下同じ。)については、令和五年三月二十九日の参議院地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会において、政府参考人が「平成三十年の著作権法改正におきましては、・・・第三十条の四におきまして、情報解析の用に供する場合など、著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない場合には、その必要と認められる限度において方法を問わず著作物を利用することが可能であるというふうに規定をされました。この改正は、・・・文化審議会著作権分科会におきまして平成二十七年度から平成二十八年度にかけて行われました検討及びその報告書において示された方向性を踏まえたものでございます。著作権分科会での当該検討に係る報告書におきましては、柔軟な権利制限規定に関する著作物利用のニーズとしまして、大量の情報の収集、蓄積、解析等々、これにより生まれた著作物を含み得る新たな知識、情報の出力を伴ういわゆるサイバーフィジカルシステムが挙げられておりますこと。また、先ほど申し上げました知的財産推進計画二〇一六におきましてはAIによって自律的に生成される創作物といったものがその検討対象とされていたことなどから、審議会における議論の段階で想定されていたAIとしては、従来からAIの用途として挙げられておりました画像認識等の用途に用いられるAIのほか、生成系AIなどが想定されていたというふうに考えられます。」と答弁したとおりである。
二について
お尋ねの「著作権者の利益を保護しつつ生成AIの発展を阻害しないための制度設計」の意味するところが必ずしも明らかではないが、内閣に設置された「統合イノベーション戦略推進会議」が開催する「AI戦略会議」及びその下に設置された「AI制度研究会」が令和七年二月四日に取りまとめた「中間とりまとめ」では、「イノベーション促進とリスクへの対応の両立を確保するため、法令とガイドライン等のソフトローを適切に組み合わせ、基本的には、事業者の自主性を尊重し、法令による規制は事業者の自主的な努力による対応が期待できないものに限定して対応していくべきである。」と示されたところであり、第二百十七回国会で成立した人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律は、この考え方に立って立案したものである。
三について
お尋ねの「技術進展に応じた見直しを行わず、今日まで現行の運用を維持してきた」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、著作権法第三十条の四の規定と人工知能関連技術との関係に関する考え方については、令和七年四月十六日の衆議院内閣委員会において、政府参考人が「文化庁におきましては、クリエーター等の権利者からの懸念のお声を受けまして、AIと著作権の関係につきまして議論を行いまして、令和六年三月に、AIと著作権に関する考え方についてを取りまとめたところでございます。特に、AIと著作権に関するクリエーター等の権利者の懸念を払拭する観点から、AI学習のための著作物の利用であっても、いわゆる著作権法第三十条の四の要件を満たさず、権利者から許諾を得ることが必要な場合があり得ることなどをお示ししております。文化庁におきましては、この考え方につきまして、セミナーなどを通じて周知啓発を行うとともに、文化庁において設けられております相談窓口等を通じた著作権侵害に対する具体的な事例の集積を行っているところでございます。こうした周知啓発や事例の集積、そしてAIやこれに関する技術の発展、諸外国における検討状況などの進展等を踏まえながら、必要に応じた検討を続けてまいりたいと存じます。」と答弁したとおりである。
四について
お尋ねの「政府の制度上の予見義務又は監督義務」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
五について
お尋ねの「平デジタル大臣が言及した「オプトイン方式」」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いわゆる「オプトイン」は、権利者の事前の許諾を意味する言葉として用いられているものと認識している。
六について
お尋ねの「SORA2に対する問合せ」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いずれにせよ、内閣府では、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四条に規定する所掌事務に基づき、人工知能関連技術を活用する事業者の状況を踏まえ、知的財産権に対する懸念の声に配意しつつ適切に対応しているところである。