取適法の4つの義務と11の禁止行為(2026年1月施行)
取適法(中小受託取引適正化法)は、下請法を改正して2026年1月1日に施行されました。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。発注する側(委託事業者)に4つの義務と11の禁止行為を定めています。
下請法からの主な改正点
- 特定運送委託を追加:発荷主が運送事業者に物品の運送を委託する取引も対象に。運送以外の荷積み・荷下ろし・荷待ちを無償でさせることは「不当な経済上の利益提供要請」
- 従業員基準を追加:資本金で当たらなくても、従業員300人(役務提供委託等は100人)で当たることがある
- 協議に応じない一方的な代金決定の禁止:協議を拒む・無視する・先延ばしにする、説明をしないまま代金を決めること(据え置きを含む)
- 手形払の禁止:電子記録債権・ファクタリングも、支払期日までに満額の現金を得にくいものは不可
- 面的執行の強化:事業を所管する省庁にも指導・助言の権限。報復措置の禁止の申告先にも加わった
規模の要件
| 取引の内容 | 発注する側 | 受ける側 |
|---|---|---|
| 製造委託・修理委託・情報成果物作成委託(プログラム)・役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理)・特定運送委託 | 資本金3億円超 | 資本金3億円以下(個人を含む) |
| 資本金1千万円超3億円以下 | 資本金1千万円以下(個人を含む) | |
| 常時使用する従業員300人超 | 常時使用する従業員300人以下(個人を含む) | |
| 情報成果物作成委託(プログラム以外)・役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理以外) | 資本金5千万円超 | 資本金5千万円以下(個人を含む) |
| 資本金1千万円超5千万円以下 | 資本金1千万円以下(個人を含む) | |
| 常時使用する従業員100人超 | 常時使用する従業員100人以下(個人を含む) |
取引ごとに判断します。従業員の基準は、資本金の基準に当たらない場合に使います(両方に当たる場合は資本金の基準)。
義務と禁止行為の一覧
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 義務 | 発注内容等の明示義務(第4条) 電話や口頭だけの発注、「詳細は別途」のままの発注は義務違反になります。改正で、電子(メール・システム等)で示すのに受注者の承諾は要らなくなりました。 |
| 義務 | 書類の作成・保存義務(第7条) 記録が無いと、支払期日や減額の有無を後から説明できません。 |
| 義務 | 支払期日を定める義務(第3条)・支払遅延の禁止 受領後60日を過ぎると支払遅延です。過ぎた日数に年14.6%の遅延利息がかかります。違反のうち最も多いのが支払遅延です。 |
| 禁止 | 支払遅延(手形払等の禁止) 改正で手形払いは禁止になりました。電子記録債権・ファクタリングも、支払期日までに代金満額の現金を得にくいものは認められません。 |
| 禁止 | 協議に応じない一方的な代金決定の禁止(第5条第2項第4号) 協議を拒む・無視する・先延ばしにする、説明や根拠を出さないまま代金を決める(据え置く)ことが禁止になりました。労務費・原材料・エネルギーの上昇、納期の短縮、数量の減少なども協議を求める理由になります。 |
| 禁止 | 減額の禁止 受注者に責任が無いのに、発注時に決めた代金を後から減らすことは禁止です。 |
| 禁止 | 買いたたきの禁止 通常支払われる対価に比べて著しく低い代金を不当に定めることは禁止です。 |
| 禁止 | 受領拒否・返品の禁止 注文したものの受け取りを拒むこと、受け取った後に不当に返すことは禁止です。 |
| 禁止 | 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止 受注者の利益を不当に害する変更・やり直しは禁止です。 |
| 禁止 | 不当な経済上の利益提供要請の禁止 自社のために金銭や役務を無償で提供させることは禁止です。運送の委託で、運送以外の作業(荷積み・荷下ろし・倉庫内作業)を無償でさせることもこれに当たります。 |
| 禁止 | 購入・利用強制の禁止 正当な理由が無いのに、自社の指定する物の購入や役務の利用を強制することは禁止です。 |
| 禁止 | 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止 有償で支給した原材料の対価を、それを使った給付の代金の支払期日より早く相殺・支払わせることは禁止です。 |
| 禁止 | 報復措置の禁止 申告したことを理由とする不利益な取扱いは禁止です。改正で、申告先に事業を所管する省庁も加わりました。 |
割引困難な手形の交付の禁止もあります(手形払そのものが禁止になりました)。遅延利息は、受領後60日を経過した日から支払う日までの日数に、年14.6%です。
よくある質問
取適法と下請法の違いは?
取適法は下請法を改正したもので、2026年1月1日に施行されました。特定運送委託の追加、従業員基準の追加、協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払の禁止などが加わり、親事業者は委託事業者、下請事業者は中小受託事業者と呼び方が変わりました。
発注書はメールで出してもよいですか?
はい。書面か電磁的方法で発注内容を明示します。下請法では電磁的方法に受注者の承諾が必要でしたが、取適法では不要になりました。
支払期日は何日以内ですか?
給付を受領した日(役務提供委託は役務の提供をした日)から60日以内で、できる限り短い期間に定めます。過ぎた場合は年14.6%の遅延利息がかかります。