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公的年金制度の信頼性の確立に関する質問

参議院 第114回 第11号

提出者
参議院
提出日
1989年5月8日
内閣転送 1989年5月10日
答弁書受領日
1989年5月16日
提出から8日
答弁の項目数
4
質問 1,410字/答弁 1,402字

質問本文

公的年金制度の信頼性の確立に関する質問主意書

二十一世紀の本格的な高齢化社会の到来を目前にした今日、老後の所得保障の中核的制度である公的年金制度に対する国民の関心と期待の高まりにはかってないものがある。

しかるに、公的年金制度の将来を展望すると、今国会に提出された国民年金法の改正案における厚生年金保険の六十五歳支給開始年齢引上げ問題に端的に現われているように、将来の年金財政を維持するためには、給付水準の大幅なダウンと極限を超える高負担の方向が不可避であるかのごとく宣伝されている。また、こうした状況のなかで、鉄道共済年金の財政破綻を救済するための財政調整が行われようとしていることなどから、多くの国民が「自分たちが年金をもらう頃は年金財政が危なくなるのではないか」といった漠然とした不安を抱くなど、公的年金制度に対する国民の信頼は大きく揺らいでいるのが現状である。そこで、老後を託するに足る真に安定した頼りがいのある年金制度の確立を願う立場から、以下について質問する。

一 今回の財政再計算によると、厚生年金保険の保険料率は、男子の場合、現行の十二・四%が本年の十月から十四・六%となり、最終的には支給開始年齢を仮に六十五歳としても二十六・一%にまで引き上げることが必要と説明されている。こうした高負担について、保険料を実際に負担することとなる若年世代との間で世代間合意が成り立つことが本当に可能なのか、多くの国民が制度の将来、とりわけ財政基盤について大きな危惧を持っているのが現状である。

政府は、厚生年金保険の財政状況をどう展望し、これに対する国民の不安をどのような形で解消するつもりなのか、明らかにされたい。また、今回の財政再計算の結果が前回と相違している原因は一体何なのか、政府の認識を伺いたい。

二 平成三十二年度以降の厚生年金保険の保険料率は、六十歳支給のまま推移すれば三十一・五%となり、同十年度以降支給開始年齢を段階的に六十五歳に引き上げても、ピーク時の保険料率は二十六・一%にも達すると説明されている。

政府は、こうした高負担をそのまま課そうと考えているのか、あるいは適正な歯止めを考えているのかどうか、また将来の保険料負担の限界と若年世代のその負担の可能性についてはどのような見通しを持っているのか、伺いたい。

三 昭和六十年改正時における給付水準の大幅引下げ、さらには今回行われようとしている支給開始年齢の六十歳から六十五歳への引上げは、全く一方的な契約不履行とも言えるもので、民間の私保険における個人年金では到底考えられない措置である。実は、公的年金が強制適用の制度であることを奇貨として、このような給付の切下げ、負担増を重ねていることこそが、制度の将来に対する国民の信頼を揺るがしている元凶と言わざるをえない。

政府は、国民の間に根強く存在する契約不履行論についてはどのような説明をするのか、また、このような事態に立ち至った原因は、一体どの辺にあると考えているのか、見解を示されたい。

四 国民年金基金制度の改善により、自営業者等についても基礎年金に上乗せの年金給付が行われようとしていることは基本的には評価する。民間の個人年金についても、今後これを育成して老後の所得保障の有力な手段としていくために、現行を上回る税制上の措置を講ずるべきであると考えるが、政府の認識はどうか。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

厚生年金制度については、高齢化の急速な進展や平均寿命の伸長等により三十年後には老齢厚生年金受給者数が現在の三倍強にまで増大する一方、保険料を負担する被保険者数はほぼ横ばいのままであることから、支給開始年齢を現行のまま据え置いた場合には保険料率はピーク時に当たる平成三十二年度には三十一・五%にまで引き上げざるを得ないものと見込まれ、後代の負担が過大となるおそれが大きい。

このため、今回の年金制度の改正では、必要な年金額の改善とともに支給開始年齢の段階的引上げのスケジュールの明示を行うなど、将来の保険料負担を過大にならないものとし、制度の長期的安定を図っていくための所要の改正措置を講ずることとしており、これにより国民の公的年金制度に対する信頼が揺らぐことがないようにしてまいりたいと考えている。

また、今回の財政再計算の結果が前回と異なっているのは、前回再計算の基礎となっている昭和五十六年の将来人口推計に比べて今回再計算の基礎となっている昭和六十一年の将来人口推計における平均寿命が男女とも三年ほど延びていることに伴う受給者数の増大、受給期間の長期化が主な理由である。

二について

今後、本格的な高齢化社会を迎えるに当たって、後代の人々の負担を過大なものとせず、厚生年金制度を長期的により安定したものとしていくために、今回の年金制度の改正では、支給開始年齢を十分時間をかけて段階的に引き上げていくこととし、そのためのスケジュールを明示することとしており、これにより、最終保険料率は、現行の支給開始年齢を据え置いた場合には、三十一・五%まで引き上げざるを得ない見込みであったものが、二十六・一%に抑えられることとなる。

この程度の負担であれば、諸外国の例などを総合的に勘案すると国民に受け入れられるものと考えている。

三について

公的年金制度は、契約により定められた保険料拠出の範囲内で給付を行う私的年金とは異なり、老後生活の主柱となるに足る給付を主として後代の負担により保障する世代間扶養の仕組みを基本として成り立っているものであり、社会経済情勢の変化に対応して、給付及び負担の両面について必要な見直しを行うこととされているものである。

このように、公的年金制度は私的年金とはその機能を大きく異にするものであり、人口の高齢化の急速な進展の中にあって、老後の所得保障の主柱たる公的年金制度に対する国民の信頼を確保していくためには、制度の長期的な安定を確保していくことが極めて重要である。このため、昭和六十年の制度改正においては、年金の給付水準について保険料を負担する現役世代の所得水準とのバランスを失することにならないようその適正化を図ったところであり、また、今回の年金制度の改正においては給付水準を維持しつつ現役世代の負担を将来にわたって負担可能な範囲に抑えるため、支給開始年齢を長期間かけて段階的に引き上げていくためのスケジュールを明示することとしているところである。

四について

個人年金は、個人が任意に積み立てるもので家計上の余裕のある者ほど多額に行い得るものであり、また、中途解約により元利金を受け取る場合には一般的な貯蓄と同様となるものであることを勘案すれば、現行を上回る税制上の措置を講ずることについては、負担の公平、課税の中立性の観点等から慎重であるべきものと考えている。

参議院の原文

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