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大韓航空007便による旧ソ連領空侵犯及び撃墜事件の全貌の解明に関する質問

参議院 第125回 第5号

提出者
参議院
提出日
1992年12月2日
内閣転送 1992年12月7日
答弁書受領日
1993年1月12日
提出から41日
答弁の項目数
7
質問 2,388字/答弁 1,652字

質問本文

大韓航空〇〇七便による旧ソ連領空侵犯及び撃墜事件の全貌の解明に関する質問主意書

一九八三年九月一日、大韓航空〇〇七便が大幅な空路逸脱をした結果、カムチャッカ及びサハリンにおいて旧ソ連の領空を侵犯し、ミサイル攻撃を受けて、乗客・乗員二六九名の生命が犠牲になった事件に関し、事件直後、衆参両院は全会一致の決議をもって、政府に対し、事件の全貌を解明することを要求している。

私はこの事件の犠牲となった人々の遺族やねばり強い真相究明の志をもった航空運航業務に従事する人々、学者、研究者、ジャーナリスト、国会議員ら多彩な人々によって組織された「大韓航空機事件の真相を究明する会」の代表理事として、微力ながら事件の直後から、今日に至るまで、事件の真相を解明する努力を続けてきた立場から、また、去る七月二日、旧ソ連の各国で発行されている新聞「イズベスチャ」の紙上に、大韓航空〇〇七便からソ連側が回収したブラックボックスの公開を求める「意見広告」を掲載した「日本の市民たち」の一員として次の疑問点について、質問する。

一 政府は従来、この事件の真相の解明に当たってはICAO(国際民間航空機関)の加盟国として、ICAOを通じての真相究明の活動を積極的に推進していく方針をしばしば国会において、繰り返し表明してきているがこの基本方針は現在においても変更はないか明らかにされたい。

二 私は去る九月十一日、エリツィン・ロシア共和国大統領が記者会見の場で、大韓航空〇〇七便の飛行記録(フライトレコーダー、ボイスレコーダー等)を近く韓国側に引き渡すと言明した旨の報道を受けて、「平成四年九月二十二日付、渡辺美智雄外務大臣あての要請書」を、同僚議員(瀬谷英行議員)と連名で提出し、また直接、小西正樹外務省官房審議官(国際連合局付)にも申し入れる等の方法により、一九九二年九月二十二日からカナダのモントリオールで開催されたICAO総会において、次の二点について日本政府としての主張をするように要請した。

1 新たな、かつ重要な証拠の出現にかんがみ、大韓航空機事件の事故調査を早期に再開すること。

2 事件関係国が四国(韓、露、米、日)にわたり、その犠牲者も十四ヵ国にわたることにかんがみ、当該飛行記録(フライトレコーダー、ボイスレコーダー等)そのものを、ICAOがICAO加盟国である旧ソ連(その義務を継承しているロシア共和国)に対し、引渡しを要請すること。

右の要請に対し、

イ 政府の考えは賛否いずれであるのか、明らかにされたい。

ロ また、政府は右私たちの要請を受けた後、ICAOの機関において、具体的な発言等をされた事実があれば、その会議の議事録番号を明らかにされたい。

(また、何も行動をされなかった場合はその理由を明らかにされたい。)

三 最近の報道によれば、韓国を訪問したエリツィン・ロシア共和国大統領が、韓国大統領に対し、直接、大韓航空〇〇七便のブラックボックス及び三本の録音テープを手渡したとされるので、この点に関して質問する。

1 政府は今までロシア共和国政府又は韓国政府に対し、旧ソ連政府が大韓航空〇〇七便の機体から回収したフライト・レコーダーとボイス・レコーダーの「複製テープ」の提供を要請した事実があったか。(仮に、要請した事実が一度もないとすると、なぜ、要請しなかったのか。)

2 大韓航空〇〇七便のフライト・レコーダーとボイス・レコーダーの「原テープ」は現在はどこにあるのか。(エリツィン大統領は訪韓前の韓国記者団との会見の席上、右の「原テープ」をICAOに提供する用意がある、と言明したと報じられているが政府は右のエリツィン発言をどのように評価しているのか。)

3 政府は、私のような、この事件に関する国会決議を重視し、事件の真相解明に重大な関心を有する国会議員に対し、あらゆる方途をもって真相解明のための根本資料であるフライト・レコーダー及びボイス・レコーダーの「複製テープ」を入手し、資料として交付する考えはないか。

(仮にその考えがない場合はその理由を明らかにされたい。)

四 政府が去る十月十五日、ロシア共和国側より、ICAO(具体的には在モスクワのカナダ大使館)を通じて入手したロシア語表記の資料によれば、事件直後に防衛庁が公表した大韓航空機の航路図(「防衛アンテナ」一九八三年十月号にも掲載)及び一九八五年二月二十八日に防衛庁が大出俊衆議院議員に提出した「自衛隊のレーダーデータによる大韓航空機の高度及び速度等」と題する文書等は「事実とは相当異なる資料」だったと評価せざるを得ないように思う。

1 防衛庁が従来公表した大韓航空機事件に関する右資料について、今日の時点で政府はどのように評価しているかを明らかにされたい。

2 運輸省が公表した東京国際対空通信局のテープ及び関係資料によれば今回、ロシア側の資料で明らかになった、ボイスレコーダー録音開始後二九分目に当たる「国内便三一三、こちら東京」の通信の発信者及び受信者(所属航空会社名及び便名)は、どのようなものと推認が可能であるか明らかにされたい。

五 エリツィン・ロシア共和国大統領は、去る十一月十九日、韓国国会で行った演説の中で、この大韓航空機事件を最終的に解明するため、(1)事件の関係国のすべての文書を研究する国際的な多国間専門委員会を設置するように提案し、かつ(2)ロシア共和国は旧ソ連国家保安委員会(KGB)や旧ソ連共産党中央委員会に保管されている同事件に関するすべての文書を公開する用意があると明言されているが、政府は事件関係国の立場において、右のエリツィン演説に対してどのようにこたえ、今後、事件の真相の解明のために具体的にどのような行動をする用意があるのかを明らかにされたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一及び五について

御指摘の大韓航空機撃墜事件については、平成四年十二月八日、九日の二日間にわたってモスクワで開催された韓国、ロシア、米国及び我が国の四か国会合において、関連の資料がロシア政府等から国際民間航空機関(以下「ICAO」という。)に引き渡され、ICAOの場で調査分析が行われるべきことが合意された。これを受けて我が国政府は、韓国、ロシア及び米国政府と共に、ICAO理事会で新資料を踏まえた調査再開を強く呼び掛け、平成四年十二月十八日、調査再開が決定されたところである。このように、我が国政府としては、ICAOを通じての真相究明を今後とも進めてまいりたいと考えている。

二について

平成四年九月二十二日から開催されたICAO第二十九回総会においては、飛行記録等の資料の扱い方及びICAOのかかわり方をめぐる国際的動き、我が国以外の本件事件の当事国たる韓国、ロシア及び米国の動向等を見極める必要があったことから、我が国政府としては、御指摘の要請のような主張を行わなかった。

しかしながら、同総会後、韓国、ロシア、米国及び我が国の四か国で会合が開催され、その結果を踏まえて、我が国政府がICAO理事会の場で調査の再開を強く呼び掛けたことは一及び五についてにおいて述べたとおりである。

三の1について

我が国政府は本件事件に関する新資料が発見されしだい開示するよう累次にわたり旧ソ連政府及びロシア政府に申し入れてきたところであるが、フライト・レコーダー及びボイス・レコーダーの内容については、平成四年十月十五日、ロシア政府から、ICAOを通じて、書面にて入手したので、その「複製テープ」の提供は要請していない。いずれにせよ、フライト・レコーダー及びボイス・レコーダーの「原テープ」はロシア政府からICAOに引き渡され、その調査分析が進められているところである。

三の2について

フライト・レコーダー及びボイス・レコーダーの「原テープ」は、平成五年一月八日にロシア政府からICAOに引き渡され、現在はICAOが保管している。

御指摘のエリツィン・ロシア大統領の発言及びこのほどの引き渡し実現については、今後のより一層の真相究明に資するものとして、これを評価している。

三の3について

韓国、ロシア、米国及び我が国の間で本件に関する会合が開催され、その後ICAO理事会において本件調査再開が決定された結果、フライト・レコーダー及びボイス・レコーダーの「原テープ」を含む関連の資料が調査のためICAOに引き渡され、ICAOの場で真相究明が進められることとなったことは一及び五についてにおいて述べたとおりである。したがって、我が国政府としてロシア政府あるいはICAOに対し、ロシア政府がICAOに提出済みの「原テープ」の「複製テープ」を我が国政府に対しても改めて提供するよう要求することは考えていない。

なお、我が国政府としては、ICAOにおける調査が容易になるように協力していく所存であり、この過程で入手した資料の内容は、可能な限り公開してまいる所存である。

四の1について

防衛庁が公表した御指摘の資料は、自衛隊の業務の遂行に伴って得られた記録を公表したものであり、客観的なものであると認識している。

いずれにせよ、一及び五についてにおいて述べたとおり、関連資料がICAOに引き渡され、ICAOの場で調査分析が行われることとなったので、これによって一層の真相究明が進むことを期待している。

四の2について

運輸省は、昭和五十八年当時に大韓航空〇〇七便に関係するすべての交信記録を公表したが、平成四年十月十五日にロシア政府からICAOを通じて入手した資料にある「国内便三一三、こちら東京」という交信を、東京国際対空通信局が行った記録はない。

なお、昭和五十八年九月一日午前三時二十六分頃に、東京国際対空通信局が、「中華航空(呼び出し電話略号はDYNASTY)三一二便、こちら東京です。」と交信した記録はある。

参議院の原文

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