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大韓航空機事件の真相究明に関する質問
参議院 第127回 第1号
質問本文
大韓航空機事件の真相究明に関する質問主意書
一九八三年(昭和五八年)九月一日、大韓航空〇〇七便が大幅な空路逸脱をした結果、カムチャッカ及びサハリンにおいて旧ソ連の領空を侵犯し、乗客・乗員二六九名の生命が犠牲になった事件に関し、我が国の国会は衆参両院において、それぞれ本会議における全会一致の決議をもって、政府に対し、事件の全貌を明らかにすることを要求している。
昨年七月二日、三日の両日、旧ソ連の各国で多数の人々に講読されている新聞「イズベスチヤ」の紙上に、大韓航空〇〇七便の機体から、旧ソ連側が秘かに回収していた、いわゆるブラックボックス(フライト・レコーダーとボイス・レコーダー)の内容を公開し、その原テープをICAO(国際民間航空機関)に引き渡すことをエリツィン・ロシア共和国大統領に要請する「意見広告」が掲載され、国際的に大きな反響をよび、ロシア共和国政府は本年一月八日、右原テープをICAOに引き渡した。
私は、右「イズベスチヤ」紙上に「意見広告」を掲載した「日本の市民たち」の一員として、右原テープのICAOへの引渡しに際し、これを機にICAOがこの事件の真相究明を求める国際世論に応えて、公正な調査活動をおこなうことを要望する諸活動をおこない、その後の経過を注目してきたところである。
しかるに、去る六月一四日、ICAO理事会が承認したとされる「報告書」は、事件直後の一九八三年(昭和五八年)一二月にICAOが発表し、大多数の専門家から批判された、「最終報告書」とほとんど変わらない、説得力のないものである。せっかくICAOが大韓航空〇〇七便の原テープを入手しながら、遺族をはじめとする国際世論の期待を裏切る「作文」で、真相究明の作業を中途半端なものに終わらせるようなことは絶対に許されない。本年九月一日には、事件発生後、満一〇年を迎える区切りの時期に当たり、非自民党新内閣の真相究明のための合理性のある基本姿勢を期待して、次の疑問点について、質問する。
一 政府は去る六月一四日にICAO理事会が承認決議をしたとされる今回の報告(英文)に関し、私が要請した日本語訳文の作成を拒んでいるが、国会に対し、正確な日本語訳文を事件一〇周年に当たる来る九月一日までに提出する考えはないか(仮にその考えがない場合にはその理由を明らかにされたい。)。
二 今回の報告書はロシア共和国政府がICAOに引き渡したフライト・レコーダーとボイス・レコーダーの原テープの解析作業によって、明らかになった研究結果に基づいて作成されたものと判断されるので、この点に関して質問する。
1 ICAOが右報告書作成のために、組織した調査委員会(もしくは「チーム」)の名称及び構成メンバーの氏名、国籍、略歴を明らかにされたい。
2 右調査委員会(もしくは「チーム」)が作成した「ワーキング・ペーパー」「議事録」等の文書番号と作成年月日を明らかにされたい。
3 政府は右報告書作成のための原テープ解析作業もしくはその後の作業にどのように関与したのかを明らかにされたい。
4 ICAOは右報告書において左記に記すフライト・レコーダーのパラメーターの記録を一切公表していないのであるが、このうち、大韓航空〇〇七便のフライト・レコーダーからは確認することができなかった記録はどれであるのかを明らかにされたい。
(1)補助翼の位置、(2)昇降舵の位置、(3)方向舵の位置、(4)フラップ・ハンドルの位置、(5)フラップの位置、(6)前縁フラップの位置、(7)スポイラーの位置、(8)スピード・ブレーキ・ハンドルの位置、(9)油圧圧力、(10)着陸装置レバーの位置、(11)スクワット・スイッチの位置、(12)電波高度計による高度、(13)ILSとVORの選択した周波数、(14)マーカー(アウター、ミドル、インナー)、(15)フライト・ディレクターのモード、(16)航法モード・スイッチ、(17)速度・モード・スイッチ、(18)高度モード・スイッチ、(19)オートスロットルの使用、(20)スティック・シェイカー、(21)ナセル温度、(22)火災警報、(23)客室与圧警報、(24)推力レバー角度、(25)逆推力、(26)イベント・マーカー
5 政府が公表した「昭和五八年九月一日大韓航空機を要撃したソ連機の交信記録」(一九八三年九月七日公表)のうち、大韓航空〇〇七便が「方向を変えた」とか「減速している」とかの左記の記録に対応する時間帯については今回の「報告書」の内容と明らかに矛盾するので、フライト・レコーダーの秒単位の関連パラメーターの記録を明らかにされたい。
(1)時刻〇三時〇九分〇〇秒発(八〇五)そうだ、目標は方向を変えた。
(2)時刻〇三時二二分〇二秒発(八〇五)目標は減速している。
(3)時刻〇三時二二分二九秒発(八〇五)いや違う、減速している。
6 政府が公表した「自衛隊のレーダーデータによる大韓航空機の高度及び速度等」(一九八五年二月二八日公表)において、大韓航空〇〇七便に高度及び速度の変更が認められている、一九八三年九月一日午前三時一二分から、同二九分に至る時間帯については、今回の「報告書」の内容と明らかに矛盾するので、フライト・レコーダーの秒単位の関連パラメーターの記録を明らかにされたい。
三 今後、政府は現在ICAOが原テープを所有するフライト・レコーダーやボイス・レコーダーの複製テープを国会に提出することにより、今回のICAOの報告書に対する、遺族や研究者らの不満を解消するために努力する考えはないか(仮にその考えがない場合にはその理由を明らかにされたい。)。
右質問する。
政府答弁書
一について
平成五年六月十四日に公表された大韓航空機撃墜事件に関する国際民間航空機関(以下「ICAO」という。)事実調査最終報告書は、中立的立場にあるICAO事実調査団(以下「調査団」という。)により作成されたものである。日本政府としてもこの報告書を最大限尊重するとともに、ICAOによる調査の中立性、一貫性性を損なわないために、調査の内容を独自に解釈して発表するといったことは差し控えるとの立場をとっている。このため、同報告書訳文を国会に提出することは考えていない。
二の1について
調査団の名称としては、ICAO FACT-FINDING INVESTIGATION TEAM(ICAO事実調査団)が通常使用されていた。
調査団の構成員、国籍及び略歴は以下のとおり。
団長 Mr.K.FROSTEL(フロステル)、フィンランド
ICAO事務局航空技術局事故調査課技術専門官
前回昭和五十八年の調査団員、昭和五十五年から現職
団員 Mr.R.T.SLATTER(スラター)、連合王国
同局運航・耐空性課技術専門官
前回昭和五十八年の調査団員、昭和五十八年から現職、パイロット出身
Mr.M.C.F.HEIJL(ハイル)、オランダ
同局航空規則・航空交通業務・捜索救難課長
前回昭和五十八年の調査団員、平成三年から現職、航空管制官出身
Mr.J.V.AUGUSTIN(オーガスティン)、セント・ルシア
ICAO事務局法律局法律担当官、平成元年から現職
なお、前記四名のICAO事務局からの参加者に加え、次の四名が、この作業支援のためにICAO事務局によって短期契約で雇用された。
Mr.B.GAUSTAD(ゴースタッド)、ノールウェー
前ICAO事務局航空技術局航空規則・航空交通業務・捜索救難課長
Mr.F.A.L.OLIVEIRA(オリヴェイラ)、ポルトガル
前同局気象課長代理
Mr.CHIPPINDALE(チッペンデール)、ニュー・ジーランド
コンサルタント
Mr.CAIGEL(カイゲル)、カナダ
フライト・レコーダー専門家
二の2について
調査団は調査報告書以外にはワーキング・ペーパー及び会合の議事録を作成していない。なお、調査団が作成した報告書は、理事会への中間報告書(平成五年三月十一日作成、文書番号C-WP/9742 RESTRICTED)、最終報告書(平成五年五月二十八日作成、文書番号C-WP/9781 RESTRICTED)及び最終報告書追補(ソウルにおけるシミュレーション結果に基づく追加の部分で、平成五年六月八日作成、文書番号C-WP/9781 ADDENDUM RESTRICTED)のみである。
二の3について
ICAOによる本件事実調査について、我が国政府としては、平成四年十二月、他の事件関係国とともにICAOに対して本件事実調査再開を訴えるとともに、調査団への資料提供及び四万米ドルの資金協力を行っており、ICAOを通じての真相究明を促進すべく努めてきたところである。フライト・レコーダー及びボイス・レコーダーの「原テープ」解析作業及びその後の作業については我が国を含む関係四か国がオブザーバーとして立ち会ったことはあるが、作業自体は、中立性の観点から調査団のみによって行われたものであり、我が国を含め関係四か国は関与していない。
二の4について
フライト・レコーダーの「原テープ」は、平成五年一月八日ロシアからICAOに引き渡され、調査団に解析の作業が委ねられたものである。
調査団は、右委託を受けて、中立的立場で「原テープ」を解析しており、フライト・レコーダーに記録されているパラメーターは最終報告書一・一四・三・三・一において、また記録されていないパラメーターは、一・一四・三・三・二において公表されているがそれ以外は明らかでない。
二の5及び6について
フライト・レコーダーの「原テープ」は、平成五年一月八日ロシアからICAOに引き渡され、調査団は中立的立場でこの「原テープ」を解析したが、フライト・レコーダーの秒単位の関連パラメーターの記録については公表されていない。また、我が国政府はこの記録を保有していない。
三について
昭和五十八年九月に発生した大韓航空機撃墜事件については、事件発生後、同年九月十三日採択された衆・参両院決議を受けて我が国政府としては一貫してICAOを通じての真相究明を促進すべく努めてきたところである。本件ICAOにおける事件再調査については、平成四年十二月八日及び九日の二日間にわたってモスクワで開催された韓国、ロシア、米国及び我が国の四か国会合における合意に基づいて、ロシア政府等が関連の資料をICAOに引き渡し、これらの資料に基づいてICAOの場で調査分析を行う旨の要請がなされた。これを踏まえ、平成四年十二月十八日のICAO理事会において事件の再調査が決定されたものである。
この他、我が国政府としてはICAOを通じての真相究明を促進すべく、調査団への資料の提出、四万米ドルの資金協力を行ってきたことは二の3についてにおいて述べたとおりである。このような我が国政府の努力をも背景として、今般ICAOから最終報告書が公表されるに至った次第である。この最終報告書をもって、本件に係るICAOにおける調査は終了したものとする旨、ICAO理事会で決議されており、我が国政府としては、御質問にあるようなフライト・レコーダー及びボイス・レコーダーの「複製テープ」を国会に提出する考えは持っていない。
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