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聴覚障害者対策等に関する質問
参議院 第125回 第7号お答えすることは困難 ×1検討してまいりたい ×1
質問本文
聴覚障害者対策等に関する質問主意書
国際障害者年を契機とした国際連合の「国連・障害者の十年」も本年、その最終年を迎えている。我が国においては、この間、昭和五十七年三月には「障害者対策に関する長期計画」が、さらに昭和六十二年六月には「障害者対策に関する長期計画」後期重点施策が策定され、これらに基づいて障害者対策の充実が進められてきたところである。この十年を振り返ってみると、制度的な改正を含め障害者対策は進展しつつあり、すべての障害者の人格の尊厳性の回復と自立を目指す「リハビリテーション」の理念と、障害のあるなしにかかわらず同様に生活し、活動することが重要であるという「ノーマライゼーション」の理念が、国民の中に浸透してきている状況にある。
しかしながら、障害を持つ人々が障害を持たない人々と同様に、社会のあらゆる分野に参加していくためには、なお残された課題が多い。とりわけ、社会生活の基礎となるコミュニケーションにハンディを持っている聴覚障害者にとって、国際障害者年のテーマである障害者の「完全参加と平等」の実現にはいまだ多くの障壁が残されている。
以上のような観点から、今後の障害者対策、なかんずく聴覚障害者対策の推進について、以下、具体的に質問する。
一 今後の障害者対策の推進について
1 「国連・障害者の十年」の成果を定着させ、なお一層施策の推進を図っていくためには、今後とも長期的視野に立った政府全体の取組が求められている。
一方、国連においては、西暦二〇一〇年までに「全員参加の社会」をテーマに長期戦略を採択することが提案されており、また、ESCAP(国際連合アジア・太平洋経済社会委員会)では「アジア太平洋障害者の十年」の決議が採択されている。こうした国際的な動きに対応するためにも、「国連・障害者の十年」以後の障害者対策の基本となる長期計画を早急に策定すべきではないか。新たな長期計画策定に向けての政府の取組、検討状況を示されたい。
2 「障害」、「障害者」についての正しい理解の普及を図ることは、「完全参加と平等」を進めていく上での基礎的要素である。今後とも障害に対する国民の理解を深めるとともに、特に、目に見えない障害と障害者に対する国民の理解と施策の促進を重点的に図る必要があるのではないか。
また、日常生活、社会生活を含むすべての活動において、障害者の具体的な参加を進めていくためにも、障害者対策の検討の場に障害者とボランティアの代表を加える等障害者の声をできるだけ反映させることが必要ではないか。
3 ノーマライゼーションを進めていく上で、もっとも身近な行政機関である市町村の役割は極めて重要である。特に、平成五年度において措置権の町村への権限移譲が行われ、市町村において施設・在宅サービスが一元的に行われる体制が整うことから、市町村に対する財政支援が求められている。財政措置について、その内容を示されたい。
4 障害者が介護・支援を安心して受けることができるよう自治体・施設職員の確保・待遇改善などを進めるべきであると考えるが、今後の対応策を明らかにされたい。また、社会福祉事業法によって定められる社会福祉事業従事者の確保に関する基本指針の策定状況、それに盛り込まれるべき措置の具体的内容を示されたい。
二 聴覚障害者の現状と見通し
急速な高齢化の進展に伴い、聴覚障害者の増加が予測される。聴覚障害者の現状、及び今後の見通しを示されたい。
また、本格的高齢社会を目前に、聴覚障害者対策は、これまでにも増して重要性を増すと考えるがどうか。高齢化に着目した新たな対応策をとる必要があるのではないか。
三 聴覚障害者のコミュニケーションの保障について
1 聴覚障害者にとって、コミュニケーションの権利を確保することは最も重要な課題の一つである。しかし、今日ろう学校においては、音声言語による口話法による指導が中核として行われ、手話教育は授業においてほとんど取り入れられていない。聴覚障害者にとって第一言語である手話によるコミュニケーションが図られるよう、ろう学校における手話教育の確立を図り、標準手話の普及促進のための施策を積極的にとる必要があるのではないか。
また、手話通訳士の養成を計画的に進めるとともに、医療機関、図書館など公的機関への手話通訳士の配置を促進すべきではないか。
2 公共施設において、聴覚障害者が容易に利用できる福祉電話やファックスの設置を進めるべきではないか。
また、聴覚障害者の側からの緊急連絡手段の確保を図るため、ファックスを所有している聴覚障害者、ろう学校、社会福祉施設等と各警察署、駐在所を結ぶファックス一一〇番を全国的に普及させるべきではないか。
四 聴覚障害者への情報の提供について
1 今日、テレビ放送の字幕付き放送及び手話通訳付き放送は増加しつつあるとはいえ、ごく限られており、聴覚障害者が必要とする日常生活における情報の絶対量を満たすにはまだまだ程遠い状況にあると言われている。字幕付き放送及び手話通訳付き放送の実施状況を明らかにされたい。
2 テレビ放送は最大のマスメディアであり、一般テレビ番組への字幕や手話通訳の挿入の推進を図る必要があるのではないか。また、文字放送アダプター内蔵型テレビの普及を図るためメーカーへの義務付け等の措置を講じるとともに、これを日常生活用具給付事業の対象とすべきではないか。
3 平成二年度の身体障害者福祉法の改正によって更生援護施設の一種として位置付けられた聴覚障害者情報提供施設についてその整備状況を示されたい。聴覚障害者への情報手段の拡充という観点から、この施設が速やかに全国的に設置されるべきであると考えるが、聴覚障害者情報提供施設の整備方針を明らかにされたい。
五 政見放送への手話通訳設置について
1 昭和五十八年の公職選挙法の改正に伴い、立会演説会が廃止されたことにより、結果として、聴覚障害者の政見を知る機会が奪われることとなっている。聴覚障害者の参政権を保障するためにも、テレビ政見放送に手話通訳を設置するよう措置すべきではないか。
2 手話通訳の導入が直ちには困難な場合には、手話通訳設置までの当面緊急の措置として、都道府県において政見放送のビデオを貸し出し、ビデオの上映に際して手話通訳をつける等の措置の普及を図るとともに、手話通訳設置経費の国庫補助を実施都道府県のすべてにおいて行うべきではないか。
六 言語聴覚療法士の資格制度化について
言語聴覚療法士の資格制度化は、政府の「障害者対策に関する長期計画」後期重点施策にも盛り込まれている事項でもあり、長い間その実現が待たれている。計画最終年を迎えた現在、制度化に向けての状況はどのようになっているか。
右質問する。
政府答弁書
一の1について
「国連・障害者の十年」以後の障害者対策の在り方については、現在、中央心身障害者対策協議会において御議論いただいているところであり、今後、その検討結果を踏まえて、長期的な展望の下に、総合的な障害者対策の一層の充実を図ることとしたい。
一の2について
障害者問題に対する国民の理解を深めていくことは重要であると考えており、障害者の日、身体障害者福祉週間等を設け各種の啓発広報活動を実施しているところである。今後とも、こうした施策の推進を図ることにより、障害者問題全般に対する国民の理解の促進を図ってまいりたい。
また、障害者対策に関する検討を行う中央心身障害者対策協議会、身体障害者福祉審議会等の委員として障害者及びその家族等の関係者を任命するなど、障害者自身や関係者の意見を施策に反映させるよう努めてきている。
一の3について
平成五年四月一日以降に市町村が行う身体障害者更生援護施設への入所措置、更生医療の給付及び補装具の給付については、国がこれらの実施に要する費用の二分の一を負担するほか、福祉事務所を設置しない町村については、これに加えて都道府県が四分の一を負担することとしている。
また、ホームヘルプサービス事業、デイサービス事業等の身体障害者居宅生活支援事業については、その実施に必要な費用の二分の一を国が、四分の一を都道府県が市町村に対して補助している。
このほか、地方交付税においても、市町村における各種施策の実施に必要な財政措置を講じているところである。
一の4について
障害者等の介護を行う職員の確保対策については、平成四年度予算において、ホームヘルパーの手当の国庫補助基準額について大幅な増額を図るなど、その充実に努めており、今後とも所要の措置を講じてまいりたい。
また、社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)第七十条の二に規定する基本指針については、現在、中央社会福祉審議会人材確保専門分科会に相談しながらその具体的内容について検討を進めているところである。
二について
昭和六十二年に行った身体障害者実態調査によれば、聴覚障害者の総数は約三十二万人であり、その約五十八パーセントが六十五歳以上の高齢者である。今後の聴覚障害者の数については、医療技術の進歩に伴う減少要因も考えられるが、他方、高齢化の進展に伴う老人性難聴などの増加要因も考えられることから、全体としては増加するものと予測される。
高齢化に着目した聴覚障害者対策としては、老人性難聴に対応するものとして、その聴覚機能を補完するための補聴器の給付を実施するなどの施策の充実を図っていく考えである。
三の1について
聾学校における聴覚障害児の教育については、口話、キュードスピーチ、手話等のコミュニケーションの手段を選択し活用していくことが大切であるが、その具体的な在り方については、現在、聴覚障害児のコミュニケーション手段に関する調査研究を行っているところであり、その結果を踏まえ、適切な教育の方法について検討することとしている。
手話通訳者の養成については、都道府県、指定都市が行う手話奉仕員の養成事業に対して補助を行うとともに、障害者団体に対する手話通訳の指導者の養成事業の委託、国立身体障害者リハビリテーションセンターにおける養成、研修等を行ってきている。
また、都道府県及び指定都市が福祉事務所等へ手話通訳を設置する場合並びに都道府県が市町村の手話通訳設置事業に助成する場合について、補助を行ってきているところである。
三の2について
公共施設における福祉電話及びファクシミリの設置については、当該施設の設置者が、聴覚障害者の利用状況等を考慮して判断すべき事項であると考えている。
また、聴覚障害者の緊急連絡手段の確保については、現在、全国の二十九都府県の警察本部に緊急通報用ファクシミリ(いわゆるファックス一一〇番)が設置されており、未設置の警察本部においても、その設置について検討しているところである。
四の1について
字幕付き放送は、平成四年十二月現在、日本放送協会及び一般放送事業者十四社が実施しており、例えば関東地区における放送時間は、週十四時間四十三分である。また、手話通訳付き放送は、平成四年八月現在、日本放送協会及び一般放送事業者九十四社が定時番組として実施しており、例えば関東地区における放送時間は、週十三時間二十五分である。
四の2について
テレビジョン放送番組への字幕及び手話通訳の挿入は、聴覚障害者がテレビジョン放送番組の内容を理解する上で重要な役割を果たすものと認識している。放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)においても、テレビジョン放送事業者が多重放送を実施するに当たっては、同時に放送されるテレビジョン放送の放送番組の内容に関連し、かつ、その内容を豊かにし、又はその効果を高めるような放送番組をできる限り多く設けるようにしなければならないとしており、この趣旨を踏まえ、放送事業者に対し、字幕付き放送の充実について要請しているところである。また、字幕付き放送を可能とする文字多重放送の無線設備の取得に必要な資金について、日本開発銀行等による支援制度を昭和六十一年度から導入している。なお、平成四年九月から、字幕付き放送及び手話通訳付き放送を含めた視聴覚障害者のための放送に関する調査研究会を開催しており、その結果を踏まえ、適切な対策について検討を進めることとしている。
さらに、平成五年度においては、通信・放送機構が字幕付き放送の番組制作に対して新たに助成を行うなど身体障害者に対する電気通信サービスの充実に必要な措置を講じたいと考えている。
テレビ受信機への文字放送受信機能の内蔵を義務付けることについては、テレビ受信機の価格が上昇し、消費者の負担が増加するという問題があり、長期的課題として検討していくこととしている。また、身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)に基づく身体障害者の日常生活上の便宜を図るための用具を給付し又は貸与する日常生活用具給付事業の種目については、毎年新規種目を取り入れているところであるが、新規種目は、その必要性、緊急性等を総合的に勘案して優先度の高いものを選定しているところであり、文字放送受信機能内蔵テレビ受信機をこの給付事業の種目として取り入れることは困難であると考えている。
四の3について
聴覚障害者情報提供施設は、現在までに、全国で七施設の整備が図られている。今後、都道府県等からの設置要望を踏まえ、聴覚障害者に対する情報提供の充実を図る観点から、聴覚障害者情報提供施設の適切な整備に努めてまいりたい。
五の1について
政見放送への手話通訳の導入については、政見放送は極めて限られた期間内に多くの候補者について公平、公正に制作しなければならないことから、検討を要する困難な問題があり、現在、学識経験者からなる政見放送研究会の場で具体的な検討をしていただいているところである。
五の2について
聴覚障害者に対する便宜供与の実施については、各都道府県選挙管理委員会において、当該地域の実情に応じて判断されるものと考えるが、国政選挙に際し、適切な便宜供与を各都道府県選挙管理委員会が行う場合には、国が交付する選挙執行委託費全体の中で対応されるものと考えている。
六について
御指摘のような言語聴覚療法士については、その資格の在り方について関係者の意見が必ずしも一致していないことから、資格の法制化に向けての具体的な議論が進んでいない状況にある。今後も関係者の合意形成に努め、その資格の法制化に取り組んでまいりたい。
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