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生活保護受給者に対する公的保険制度適用に関する質問主意書

参議院 第162回 第29号

提出者
参議院
提出日
2005年6月10日
内閣転送 2005年6月15日
答弁書受領日
2005年6月21日
提出から11日
答弁の項目数
4
質問 1,855字/答弁 1,302字

質問本文

我が国の現在の社会保障制度は、先人達の長年の努力によって勝ち取ったものであるが、その後の度々の修正や追加の結果、諸制度が複雑に絡み合っており、そこには制度の谷間が少なからずできてしまっている。異なる制度である以上、谷間ができるのは当然と居直るのではなく、常に谷間を埋める改善を考え実行することは、為政者の義務であると認識する。

現在の我が国の社会保障制度の柱を成す医療保険制度及び介護保険制度は、国民皆保険の趣旨にのっとり、社会における支え合いを実現している。

介護保険制度において、生活保護受給者で六五歳以上の者は第一号被保険者として制度に参加している。具体的には、生活保護費算定の際に収入から介護保険料分を差し引くことで実質保険料を生活保護財政から負担し、実際に利用した介護給付費の一割に当たる自己負担分を介護扶助として生活保護財政で負担している。

これに対して、生活保護受給者で四〇歳以上六五歳未満の者の大多数は、第二号被保険者になることができず、介護保険の適用除外となっている。これは介護保険法第九条第二項において、第二号被保険者を医療保険加入者に限定していることによる。

国民年金法第一八条によれば、生活保護を受けていた者が、本人に悪意なく裁定請求が遅れたり、裁定に日時を要した場合には、年金受給権が遡及して認められ、既往分の年金が一括して支給される。この場合、生活保護法第六三条に基づき、生活保護費用の返還を求められることになる。その際、被保護者が満六四歳で介護保険の被保険者ではない場合、それまで受けてきた介護扶助の全額を返還させられるのに対し、六五歳以上の場合は一律介護保険の被保険者であるから介護保険料相当額と自己負担分である介護費用の一割のみを返還させられるに過ぎない。ALSなどの特定疾病患者であれば、受ける介護扶助は多額であり、全額を請求されるとせっかく一括支給された年金から相当な額あるいは全額を持っていかれてしまい、その後支給される年金だけでは再び生活保護を受けざるを得なくなることが容易に想定される。

別の見方をすれば、一般に介護保険制度において、第二号被保険者の位置づけは、制度の支え手であり、特定疾病患者しか介護サービスを利用できない。したがって、四〇歳以上六五歳未満の生活保護受給者の介護サービスの利用は、六五歳以上の生活保護受給者と比べ、当然に少ないのであり、六五歳未満の大多数を適用除外し、六五歳以上を適用とすることは、介護保険財政上、不合理である。

以上の認識に立って、以下質問する。

一、平成一一年度から平成一五年度の五年度間において、生活保護受給中に、年金の一括支給が遡及して認められ、既往分の医療扶助費をその一括支給された年金から差し引かれたケースのうち、返還請求された生活保護費の額が一括支給された年金額を上回ったケースの年度ごとの件数と、そのうち再び生活保護を受けることになった件数を明らかにされたい。

二、平成一二年度から平成一五年度の四年度間において、生活保護受給中に、年金の一括支給が遡及して認められ、六五歳になるまでの既往分の介護扶助費をその一括支給された年金から差し引かれたケースのうち、返還請求された生活保護費の額が一括支給された年金額を上回ったケースの年度ごとの件数と、そのうち再び生活保護を受けることになった件数を明らかにされたい。

三、介護保険制度における第二号被保険者を医療保険加入者に限定している理由は、保険料徴収を医療保険者に行わせるという実務的便宜からであると理解してよいか。

四、介護保険という単一の制度上において、生活保護受給者を年齢によって差別的に取り扱い、本人の希望にかかわらず六五歳未満の医療保険未加入者を適用除外としている介護保険法第九条第二項の規定は、国民皆保険の原則に反し、法の下の平等を定めた憲法第一四条に違反し、かつ憲法前文にある「人間の尊厳」を侵すものではないか。

五、国民健康保険法第六条第六項は、年齢に関係なく生活保護受給者をすべて適用除外としている。その理由について、平成一五年七月一七日の参議院厚生労働委員会において当時の坂口厚生労働大臣は、生活保護受給者には保険料の負担能力がないため、他の被保険者の保険料負担や国保財政に与える影響が大きいためという趣旨の答弁をしている。この答弁内容と、介護保険制度において六五歳以上の生活保護受給者が保険料を負担していることとの整合性を説明されたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一及び二について

生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)に基づく保護は、本来、同法第六条第一項に規定する被保護者(以下「被保護者」という。)が資力を有しない場合に行われるものであるが、急迫の場合等において保護が行われた際の同法第六十三条に基づく保護に要した費用の返還については、被保護者の資力を返還額の限度としており、一括支給された年金が資力として認定された場合、その額を上回る額の返還を請求されることはない。なお、年金等の収入があったことを契機として被保護者が保護を要しなくなる場合には、保護の実施機関は、被保護者の世帯の自立更生に必要な額等を勘案しつつ返還額を決定しているところである。

三について

介護保険制度は、被保険者が保険料を負担し、被保険者自らが要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)になった場合に必要な介護サービスを受けるものであるが、四十歳以上六十五歳未満の被保険者(以下「第二号被保険者」という。)の負担する保険料は、高齢者の介護を社会全体で支援するという性格も有しているものである。また、六十五歳以上の者と比較した場合、就労や稼得の形態が多様である四十歳以上六十五歳未満の者については、地域で一元的に保険料を徴収するよりも、就労や稼得の形態に合わせて職域と地域に分けて保険料を徴収した方が効率的である。これらのことから、第二号被保険者については、その保険料を全国を単位として一定のルールで算定し、医療保険者が医療保険の保険料として徴収することとし、四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者を第二号被保険者としているものである。

四について

介護保険制度は、要介護状態等にある被保険者に対して必要な介護サービスに係る給付を行うものであるが、三についてで述べたように、第二号被保険者については、その保険料が高齢者の介護を社会全体で支援するという性格も有していること等から、四十歳以上六十五歳未満の医療保険加入者を介護保険制度の第二号被保険者としており、介護保険の被保険者とならない四十歳以上六十五歳未満で要介護状態等にある被保護者については、生活保護制度において介護扶助が行われることにより、必要な介護サービスを受けることができるので、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第九条第二号の規定は、法の下の平等に反するものではなく、また、人間の尊厳を侵すものでもないと考えている。

五について

国民健康保険制度においては、健康保険法(大正十一年法律第七十号)の被保険者等についての適用を除外しており、被保護者についても、保険料の負担能力がないことや、その多くが医療扶助を受けており、他の被保険者の保険料負担や保険財政に与える影響も大きいこと等から、従来から被保険者から除外しているものである。

一方、介護保険制度においては、介護ニーズの高い高齢者を等しく被保険者とすることにより、普遍的に介護費用の保障を行うという観点から、六十五歳以上の被保護者も被保険者としているものであり、両制度の被保険者の範囲について異なることは、必ずしも整合性を欠くものではないと考えている。

参議院の原文

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