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生活保護費に関する質問主意書
参議院 第219回 第77号趣旨が明らかではない ×1
質問本文
保険料を四十年間納付した場合の満額の老齢基礎年金受給額(以下「年金額」という。)よりも、東京二十三区などの生活保護受給額の方がはるかに多いケースがあることが報じられるなど、年金額と生活保護受給額とのアンバランスが指摘されている。令和五年度の生活保護費負担金の実績は約三・六兆円であり、その半分の約一・八兆円を医療扶助が占めている。また、生活保護費負担金の四分の三は国費である。
現在、現役世代の社会保険料負担の軽減に係る議論が進んでいる。政府においても、高齢者の医療費の窓口負担割合やOTC類似薬の保険適用についての見直しなどが議論されている。このような社会情勢の中、巨額の国費が投じられている医療扶助の適正化は必須である。
医療扶助をコントロールする機関は福祉事務所である。生活保護受給者は福祉事務所に医療扶助を申請し、保護が必要と認めた福祉事務所が医療券等を発行した後、指定の医療機関を受診することとなっている。しかし、この手続が形骸化し、医療券発行を省略して直接医療機関を受診するケースが後を絶たず、複数の医療機関の受診により医療扶助が増大する原因となっている。
医療扶助の適正化については、ケースワーカー等による頻回受診・多剤・重複投薬等の指導、後発医薬品の使用の原則化、オンライン資格確認の導入による頻回受診傾向の把握等の取組が行われてきた。福祉事務所では、生活保護受給者について、誰が、いつ、どこで医療機関を受診したかという情報は把握できる。しかし、受診した診療科や薬剤の処方内容までは把握できず、指導には限界がある。医療扶助の適正化を進めるためには、医療機関と同様に、福祉事務所に対しても生活保護受給者に係る電子カルテや電子処方箋へのアクセス権限を与えることが必要である。また、取組の強化に伴い、福祉事務所の事務負担の増加やマンパワー不足等が課題になると考える。
以上を踏まえて、以下質問する。
一 前記報道を踏まえ、年金額と生活保護受給額のバランス及び生活保護受給額の水準の在り方についてどのように考えるか、政府の見解を示されたい。
二 医療扶助の適正化が要請されている中、福祉事務所の権限が弱く十分な対応ができていない現状に対し、政府が十分な予算や人材を措置し、福祉事務所の権限強化を図るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
三 生活保護受給者の多くが、福祉事務所が指定する医療機関以外の医療機関を受診している現状に対する政府の見解を示されたい。
四 医療扶助の適正化策として、生活保護受給者に対し、院外処方薬局を一つに限定するなどの抜本的な対応が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。
五 医療扶助の定率又は定額負担など、生活保護受給者に対し一定の自己負担を求める考えがあるか、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、令和七年六月十二日の参議院厚生労働委員会において、福岡厚生労働大臣(当時)が「生活保護は、年金を含めた収入であったり資産、働く能力など、あらゆるものを活用した上でもなお生活に困窮する方を対象に、最低限度の生活を保障する最後のセーフティーネットでございます。一方、老齢基礎年金は、現役時代に構築した生活基盤であったり貯蓄などと合わせて老後に一定の水準の生活を可能にするという考え方で設計されておりまして、また、収入であったり資産にかかわらず、保険料の納付実績に応じた給付が権利として保障されるものでございます。それぞれの役割であったり仕組みが異なりますため、この給付水準の単純な比較というのは適切ではないと考えておりまして、その給付水準についてはそれぞれの制度において適切に設計されるものと考えています」と答弁しているとおりであり、御指摘の「年金額と生活保護受給額のバランス」を取って「生活保護受給額の水準」が定められるものではないものと考えている。
生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第一条においては、「最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と規定されているところ、同条に規定する最低限度の生活の水準については、一般国民の消費実態との均衡等を考慮しつつ、同法第八条の規定に基づき、保護基準が定められているところである。
二について
御指摘のように「福祉事務所の権限が弱く十分な対応ができていない」とは考えていないが、いずれにせよ、厚生労働省においては、都道府県又は市町村が設置する福祉事務所(社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第十四条第一項に規定する福祉に関する事務所をいう。以下同じ。)において、医療扶助の適正な実施に必要な体制が確保されるよう、都道府県、市及び福祉事務所を設置する町村(以下「都道府県等」という。)に対して、「生活困窮者自立相談支援事業等実施要綱」(平成二十七年七月二十七日付け社援発〇七二七第二号厚生労働省社会・援護局長通知別紙)に基づく「医療扶助適正化等事業」等により、「頻回受診」、「重複処方」、「多剤投与」等に係る対策の実施に必要な人件費等に対する財政支援を行っているところである。
三について
御指摘のように「生活保護受給者の多くが、福祉事務所が指定する医療機関以外の医療機関を受診している」とは考えていないが、いずれにせよ、医療扶助の医療の給付については、生活保護法第三十四条第二項等の規定、「医療扶助運営要領」(昭和三十六年九月三十日付け社援発第七百二十七号厚生省社会局長通知別紙。以下「運営要領」という。)等に基づき、原則として、生活保護受給者の申請に基づき、福祉事務所において、指定医療機関(同項に規定する指定医療機関をいう。)の中から、医療の給付を委託する医療機関を選定し、当該医療機関で受診することとしているところ、福祉事務所において適切な指導が行われているものと考えている。なお、例えば、運営要領においては、「被保護者である患者が急迫した状況にある・・・ときは、福祉事務所長は、指定医療機関等に当該状況を説明して、・・・各給付を行なっても差しつかえないこと」としているところであり、こうした状況においては、御指摘のように「福祉事務所が指定する医療機関以外の医療機関を受診」することも可能であると承知している。
四について
お尋ねに関しては、厚生労働省において、都道府県等に対し、二についてで述べた「医療扶助適正化等事業」による「適正受診指導等の推進」の取組として、「令和七年度生活困窮者自立相談支援事業費等負担金及び生活困窮者就労準備支援事業費等補助金に関する交付方針等について」(令和七年五月二十七日付け厚生労働省社会・援護局地域福祉課事務連絡別紙)に定める「生活保護受給者が複数薬局にかかっている場合に、可能な限り一ヵ所の薬局に整理する取組」等の実施に必要な人件費等に対する財政支援を行っているところである。
五について
御指摘の「生活保護受給者に対し一定の自己負担を求める」ことについては、平成二十九年十二月十五日に社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会が取りまとめた報告書において、「窓口負担を求めるべきという考え方については、・・・最低生活保障との両立が難しくなるという懸念や、必要な医療の受診まで抑制され、むしろ長期的には医療費が増えるという懸念、仕組みによっては医療機関の未収金やケースワーカーの事務負担の増加につながるといった懸念もあることから、反対する意見が多数であった」とされており、その導入には課題があるものと認識している。