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生活保護における障害者加算に係る精神障害者保健福祉手帳の取扱いに関する質問主意書
参議院 第221回 第69号
質問本文
生活保護における障害者加算の認定は、「生活保護法による保護の基準」(昭和三十八年四月一日厚生省告示第百五十八号。以下「告示」という。)第二章の二の(二)の規定に基づき行われる。身体障害については、「身体障害者福祉法施行規則」(昭和二十五年厚生省令第十五号)別表第五号の身体障害者障害程度等級表に定める等級又は「国民年金法施行令」(昭和三十四年政令第百八十四号)別表に定める障害の程度に該当する場合に障害者加算が認定される。身体障害者障害程度等級表と身体障害者手帳の等級は一致しているため、身体障害者手帳の等級により障害者加算の認定が可能である。
一方、精神障害については、告示に精神障害者保健福祉手帳(以下「精神障害者手帳」という。)の等級に係る記載はなく、国民年金法施行令別表に定める障害の程度に該当する場合に障害者加算が認定される。「生活保護法による保護における障害者加算等の認定について」(昭和四十年五月十四日社保第二八四号。以下「昭和四十年通知」という。)及び「精神障害者保健福祉手帳による障害者加算の障害の程度の判定について」(平成七年九月二十七日社援保第二一八号。以下「平成七年通知」という。)においては、障害基礎年金の裁定が行われるまでの間は、精神障害者手帳に記載する障害の程度に基づき暫定的に障害者加算を認定できるとしている。しかし、昭和四十年通知においては、障害基礎年金の支給要件に該当しない旨の裁定又は認定がされた場合には、障害者加算の認定を取り消すものとされている。この場合、自治体は、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第六十三条に基づき、既に支給された費用の返還を求める決定を行うことがある。
また、障害者加算の認定に当たり、障害基礎年金の受給権を有する者が不利益を被る構造となっている。障害基礎年金の受給権を有しない者については、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和三十八年四月一日社発第二四六号)第七の二の(二)のエの(イ)及び「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和三十八年四月一日社保第三四号)第七の問六十五において、障害の程度の判定は「障害の程度が確認できる書類」に基づき行うこととされ、同書類には精神障害者手帳が含まれるとされている。この場合、「同手帳の一級に該当する障害は国民年金法施行令(略)別表に定める一級の障害と、同手帳の二級に該当する障害は同別表に定める二級の障害とそれぞれ認定するものとする」とされている。
つまり、障害者加算について、同じ精神障害を抱え同じ精神障害者手帳を持つ者でも、障害基礎年金の受給権を有する者は、障害基礎年金の裁定が優先され、かつ、精神障害者手帳に基づく認定が取り消される可能性がある。それに対し、障害基礎年金の受給権を有しない者は、精神障害者手帳に基づく認定が確定する。
内閣府が実施した令和六年地方分権改革に関する提案募集においては、複数の自治体が共同で、「精神障害を有する生活保護受給者に対する障害者加算の認定方法の統一」を提案事項として提出している。同提案事項では、「精神障害については、障害年金の裁定請求権を有しない者の方が、障害者加算の認定を受けるのに有利な状況となっており、生活保護制度上、公平な取扱いが行われているとは言いがた」く、「同じ精神障害者であっても、障害年金の裁定請求権の有無に伴い、最終的な障害の程度の判定を、精神障害者保健福祉手帳の等級又は障害年金の等級(障害年金の裁定結果)のいずれかで行うこととなり、認定処理事務が複雑」になっているとしている。また、「生活保護費に過支給が生じる可能性もあり、過支給額の返納(返還)に関する新たな事務処理が発生する懸念がある」とし、「障害年金の裁定請求権の有無にかかわらず、精神障害者保健福祉手帳で障害者加算の認定を行えるよう改正を求める」としている。
以上を踏まえて、以下質問する。
一 生活保護における障害者加算の認定に際して、平成七年の精神障害者手帳の導入から現在に至るまで、精神障害者手帳の等級に基づく障害者加算の認定に係る規定を告示に加えていない理由を示されたい。
二 身体障害については、身体障害者手帳の等級又は身体障害者障害程度等級表に定める等級に該当する場合には、障害者加算を認定できることとなっている。これに対して、精神障害については、昭和四十年通知及び平成七年通知により精神障害者手帳の等級ではなく障害基礎年金の裁定が優先されている理由を示されたい。
三 前記二において、障害者加算の認定に係る取扱いが、身体障害者手帳と精神障害者手帳の間で異なる理由を示されたい。また、身体障害者手帳と精神障害者手帳の取扱いを比較した場合、精神障害者を差別した取扱いとなっていると思料するが、政府の見解を示されたい。
四 前記の提案事項について、提案団体及び追加共同提案団体の自治体名を示されたい。また、それぞれが提案された年月日を示されたい。
五 現行制度において、障害基礎年金の受給権を有しない者は精神障害者手帳により障害者加算の認定を受ける。一方、受給権を有する者は、障害基礎年金の裁定次第で障害者加算の認定取消しが行われ、自治体から過大支給として返還を求められる事態が発生している。障害基礎年金の受給権を有する者が逆に不利益を被る現状について、政府の見解を示されたい。
右質問する。
政府答弁書
一から三までについて
御指摘の「生活保護における障害者加算」は、例えば、令和七年六月二十四日に開催された第五十二回社会保障審議会生活保護基準部会の参考資料「生活保護制度の概要等について」において示しているとおり、障害により「追加的に必要となる居住環境の改善のための費用や点字新聞などの雑費等の経費を補填」することをその趣旨として設けられたものであることを踏まえ、原則として、障害の状態に応じて一定の所得保障を行うことを目的としている障害基礎年金の障害等級(国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第三十条第二項に規定する障害等級をいう。以下同じ。)に基づき認定することとしている。これは、障害基礎年金の受給者は、生活保護法による保護の基準(昭和三十八年厚生省告示第百五十八号。以下単に「告示」という。)において示す「症状が固定している者及び症状が固定してはいないが障害の原因となつた傷病について初めて医師又は歯科医師の診療を受けた後一年六月を経過した者」(以下「症状が固定している者等」という。)であり、また、一般的に当該経費の必要性があるといった考え方を前提としている。
なお、身体障害者については、症状が固定している者等であり、また、当該経費の必要性を判断できる書類として、身体障害者手帳(身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第十五条第一項に規定する身体障害者手帳をいう。以下同じ。)が存在することから、身体障害者手帳の等級(身体障害者福祉法施行規則(昭和二十五年厚生省令第十五号)別表第五号の身体障害者障害程度等級表の等級をいう。以下同じ。)に基づき認定することも可能としている。
他方で、精神障害者については、精神障害者保健福祉手帳(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第四十五条第一項に規定する精神障害者保健福祉手帳をいう。以下同じ。)は、「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領」(平成七年九月一日付け健医発第一一三二号厚生省保健医療局長通知別紙)において示しているとおり、「各方面の協力により各種の支援策が講じられることを促進し、精神障害者の社会復帰の促進と自立と社会参加の促進を図ることを目的」として交付されているものであるところ、その交付を受けている者が、必ずしも、症状が固定している者等ではなく、また、居住環境の改善のための追加的な費用等の必要性があるとは限らないことから、原則として、障害基礎年金の障害等級に基づき御指摘の「障害者加算」を認定することとしている。ただし、「障害基礎年金の受給権を有する者」のうち「裁定が行われ」ていないものについては、障害基礎年金の障害等級に基づく認定ができないことを踏まえ、「障害基礎年金の裁定が行われるまでの間」、「暫定的に」、精神障害者保健福祉手帳が精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令(昭和二十五年政令第百五十五号)第六条の一級又は二級に該当し、かつ、症状が固定している者等である場合には、居住環境の改善のための追加的な費用等の必要性があると推認し、認定を行うこととし、さらに、「障害基礎年金の受給権を有しない者」については、障害基礎年金の障害等級に基づく認定を行い得ないことを踏まえ、例外的に、当該場合には、当該必要性があると推認し、認定を行うこととしているものである。こうした取扱いが、お尋ねのように「精神障害者を差別」するものであるとは考えていない。
こうした「障害者加算」の制度として、告示においては、「障害者加算」の認定に当たり、原則として参照するものとして、障害基礎年金の障害等級又は身体障害者手帳の等級について定めており、お尋ねのように「平成七年の精神障害者手帳の導入から現在に至るまで、精神障害者手帳の等級に基づく障害者加算の認定に係る規定を告示に加えて」はおらず、「精神障害については、昭和四十年通知及び平成七年通知により精神障害者手帳の等級ではなく障害基礎年金の裁定」を原則とし、「障害者加算の認定に係る取扱いが、身体障害者手帳と精神障害者手帳の間で異な」っているものである。
四について
お尋ねの「提案団体」及び「追加共同提案団体」については、内閣府のホームページで公表している「令和六年 内閣府と関係府省との間で調整を行う提案についての最終的な調整結果について」の「厚生労働省」の「個票」の「令和六年 地方分権改革に関する提案募集 提案事項」の中の「精神障害を有する生活保護受給者に対する障害者加算の認定方法の統一」において、「秋田県、宮城県、秋田市、能代市、大館市、男鹿市、鹿角市、由利本荘市、潟上市、北秋田市、にかほ市、三種町、八郎潟町、栃木県、川崎市」及び「花巻市、ひたちなか市、相模原市、浜松市、名古屋市、豊橋市、小牧市、寝屋川市、倉敷市、徳島県、高知県、長崎市、諫早市、熊本市、宮崎県、特別区長会」と示しているとおりである。また、お尋ねの「それぞれが提案された年月日」については、「提案団体」は、全て令和六年五月十日であり、「追加共同提案団体」は、倉敷市及び諫早市が同年六月四日、豊橋市が同月六日、その他の団体は同月五日である。
五について
四で御指摘の「提案団体」及び「追加共同提案団体」から、御指摘のように「障害基礎年金の受給権を有する者」のうち「障害基礎年金」の「裁定次第で障害者加算の認定取消しが行われ」るものについて、「障害基礎年金の受給権を有しない者」に比べ、「不利益」が生じている旨の指摘があることは承知しているが、他方で、「障害基礎年金の受給権」の有無を問わず、精神障害を有する生活保護受給者の全てについて、精神障害者保健福祉手帳のみに基づき、「障害者加算」の認定ができるようにすることについては、一から三までについてで述べたとおり、居住環境の改善のための追加的な費用等を支援するといった「障害者加算」の制度の趣旨等を踏まえると、慎重に検討すべきものと考えている。