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厚生労働省関連の束ね法案に関する質問主意書
参議院 第198回 第26号
質問本文
複数の法律を改正等しようとするときにこれらを束ねて一本の法律案として国会に提出する「束ね法案」は、法律案を束ねることによって国会審議の形骸化を招来するとともに、国会議員の表決権を侵害しかねないものである。また、どの法律がどのように改正されるのか等が国民に分かりづらくなり、適切な情報公開とはならないおそれもある。束ね法案はこのような問題点を有するため、政府は、束ね法案の国会提出に当たっては、束ねる必要性等について説明責任を十全に果たすべきである。
以上を踏まえ、政府が今国会に提出した法律案のうち、厚生労働省関連の「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案」(閣法第二五号。以下「健康保険法等束ね法案」という。)、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」(閣法第三八号。以下「女性活躍推進法等束ね法案」という。)、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」(閣法第五四号。以下「薬機法等束ね法案」という。)の三本の束ね法案について、以下質問する。
一 政府は、私が提出した「束ね法案に関する質問主意書」(第百九十回国会質問第三三号)に対する答弁書(内閣参質一九〇第三三号)において、束ね法案を国会に提出する場合の基準を述べている。すなわち、「法案に盛られた政策が統一的なものであり、その結果として法案の趣旨・目的が一つであると認められるとき、あるいは内容的に法案の条項が相互に関連して一つの体系を形作っていると認められるときは、一つの改正法案として提案することができる」としている。この基準にある「法案に盛られた政策が統一的なもの」について、政府は「政策が統一的なもの」に当たるかどうかをどのように判断しているのか明らかにされたい。
二 健康保険法等束ね法案の主な内容は、(1)保険者間で被保険者資格の情報を一元的に管理する仕組みの創設及びその適切な実施等のために医療機関等へ支援を行う医療情報化支援基金の創設、(2)医療及び介護給付の費用の状況等に関する情報の連結解析及び提供に関する仕組みの創設、(3)市町村において高齢者の保健事業と介護予防を一体的に実施する枠組みの構築、(4)被扶養者の要件の適正化、(5)社会保険診療報酬支払基金の組織改革である。この(1)から(5)の各政策はそれぞれ背景が異なり、牽連性も弱いように考えるが、各政策が互いにどのような関係にあるため前記一の基準にいう「政策が統一的なもの」に当たると政府は判断しているのか、具体的に説明されたい。
三 健康保険法等束ね法案は題名及び理由に「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るため」と掲げているが、政府の政策は、通常、ある制度を現状より適正かつ効率的なものにするために企図されるはずであり、その政策を実現するための法案の趣旨・目的は、当然、その制度の適正かつ効率的な運営を図ることにあるはずである。健康保険法等束ね法案について、前記二の(1)から(5)の各政策内容の関係性ではなく、「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図る」という点をもって、「政策が統一的なもの」であり前記一の基準を満たすことになると政府が判断しているのであれば、医療保険制度に関わる政策を実現するための法案はどのような内容であっても「一つの改正法案として提案することができる」ことになってしまうのではないか。これでは「政策が統一的なもの」という基準は有名無実化し、適当ではないと考えるが、政府の見解を示されたい。
四 健康保険法等束ね法案には、国民年金法の一部改正が含まれるが、同法改正の何が健康保険法等束ね法案の題名及び理由として掲げられた「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るため」に当たるのか明らかにされたい。
五 女性活躍推進法等束ね法案は、「女性活躍の推進」と「ハラスメント対策の強化」という二つの政策の実現を内容としているが、前者を実現するための女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の一部改正にはハラスメント対策を強化する内容は含まれておらず、また、後者を実現するための各法律の一部改正は必ずしも女性へのハラスメントだけを対策強化の対象とするものではない。両政策が互いにどのような関係にあるため前記一の基準にいう「政策が統一的なもの」に当たると政府は判断しているのか、具体的に説明されたい。
六 女性活躍推進法等束ね法案の題名からは、その内容にハラスメント対策の強化が含まれることを知ることができない。改正内容の二つの柱のうちの一つが題名から分からないということは、国民の知る権利の保障や情報開示の観点から望ましいことではないと考えるが、政府の見解を示されたい。
七 薬機法等束ね法案の改正内容のほとんどは医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)と薬剤師法の改正により実現されるように思われるが、両法律だけでなく覚せい剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)についても薬機法等束ね法案で改正することとしている。覚せい剤取締法、麻薬取締法及び血液法の改正内容が薬機法や薬剤師法の改正内容とそれぞれどのような関係にあるため「一つの改正法案として提案することができる」と政府は判断しているのか、前記一の基準に則して説明されたい。
八 薬機法等束ね法案の理由には、「医薬品、医療機器等が安全かつ迅速に提供され、適正に使用される体制を構築するため、医療上特に必要性が高い医薬品及び医療機器について条件付きで承認申請資料の一部省略を認める仕組みの創設、虚偽・誇大広告による医薬品、医療機器等の販売に係る課徴金制度の創設、医薬品等行政評価・監視委員会の設置、薬剤師による継続的服薬指導の実施の義務化、承認等を受けない医薬品、医療機器等の輸入に係る確認制度の創設等の措置を講ずる必要がある。」とあるが、覚せい剤取締法、麻薬取締法及び血液法の改正内容はこの理由のどれに当たるのか、それぞれ明らかにされたい。
右質問する。
政府答弁書
一について
お尋ねの「政策が統一的なもの」に当たるかどうかについては、個々の法案に盛られる政策の内容に応じて判断されるものであると考えている。
二から四までについて
医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案(以下「健康保険法等改正法案」という。)は、医療保険制度の適正かつ効率的な運営を実現するため、保険者事務の適正な実施、予防・健康づくりに資する保健事業の充実及び良質な医療の効率的な提供のために必要な措置を講ずるものである。具体的な改正内容としては、健康保険法(大正十一年法律第七十号。以下「健保法」という。)、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号。以下「国保法」という。)及び高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号。以下「高確法」という。)の改正により、被保険者番号を個人単位化し、電子資格確認による被保険者資格確認の仕組みを導入することで、資格確認の効率化を図ること、健保法、社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)、国保法、高確法及び介護保険法(平成九年法律第百二十三号)の改正により、医療及び介護給付の費用の状況等に関する情報について、連結して解析し、地方公共団体、研究機関等の幅広い主体に提供するための枠組みを設け、保健事業の効率化を図ること等を盛り込んでいる。また、お尋ねの「国民年金法の一部改正」については、国民年金第三号被保険者の認定は健康保険の被扶養者の認定と一体的に行っており、健康保険法等改正法案で設ける国内居住要件に係る認定も一体的に行っていく必要があることから、これにより、医療保険制度の適正かつ効率的な運営に資するものであると考えている。このため、健康保険法等改正法案に盛られた政策は統一的なものであると考えている。
五について
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案(以下「女性活躍推進法等改正法案」という。)は、女性をはじめとする多様な労働者が活躍できる就業環境を整備するため、各企業が、当該企業における課題を踏まえて最適な雇用管理の改善のための取組を主体的に講じることを促進する仕組みを整備し、これらの労働者がその能力を十分に発揮できるようにするものであることから、女性活躍推進法等改正法案に盛られた政策が統一的なものであると考えている。
六について
既存の法律の一部を改正する法律案においては、改正される法律の数が三以上である場合には、題名の簡潔性の要請もあり、当該法律案の第一条で改正される法律の名称を当該法律案の題名に規定し、その他の改正される法律の名称については、題名には含めない取扱いとすることが通例である。
なお、女性活躍推進法等改正法案に関しては、厚生労働省のホームページに概要等を掲載しており、引き続きその内容の周知等に努めてまいりたい。
七及び八について
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案は、医薬品、医療機器等が安全かつ迅速に提供され、適正に使用される体制を構築すること等を目的としている。
覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号。以下「覚取法」という。)の改正については、医薬品として用いる覚醒剤原料の患者による携行輸出及び携行輸入に関する許可制度(以下「携行輸出入許可制度」という。)の創設等を内容としている。また、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「薬機法」という。)の改正においても、薬機法第十四条等に規定する承認等を受けない医薬品、医療機器等の輸入に係る確認制度(以下「輸入確認制度」という。)を創設することとしているところ、携行輸出入許可制度において許可を得た場合は輸入確認制度における確認を要しないこととしており、覚取法の改正と薬機法の改正は法案の条項が相互に関連して一つの体系を形作っていると考えている。
また、輸入確認制度に違反する罪について麻薬取締官及び麻薬取締員が司法警察員として職務を行うことを麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号。以下「麻向法」という。)に規定することとしており、薬機法の改正と麻向法の改正は法案の条項が相互に関連して一つの体系を形作っていると考えている。
安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(昭和三十一年法律第百六十号。以下「血液法」という。)の改正については、原料血漿の製造業者に対する勧告制度の創設等を内容としている。また、薬機法の改正においても、医薬品である血液製剤の安定供給の観点から、血液法上の勧告に従わなかった原料血漿の製造業者に対して業務の停止を命ずることができることとする改正を行うこととしており、血液法の改正と薬機法の改正は法案の条項が相互に関連して一つの体系を形作っていると考えている。
また、これらの改正内容は理由において「承認等を受けない医薬品、医療機器等の輸入に係る確認制度の創設等の措置」として位置付けられているところである。
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