ことばで探す › 参議院 第205回
偽装滞在者に関する質問主意書
参議院 第205回 第28号お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×2
質問本文
令和三年七月に参議院行政監視委員会に対して不適正な永住審査等に関する苦情が申し立てられたとの報告が私のもとに届いている。苦情の概要は「不適正な永住審査によって意に反して永住許可の身元保証人にされている」というものであった。また、「出入国在留管理庁に対して不正な手段をもって永住許可申請が行われたことについて情報提供を行ったが、特段の対応はなされていない」という内容も含まれていた。
偽装滞在者については、出入国在留管理基本計画において「適正な出入国在留管理を行う上で看過できない問題」とされ、出入国在留管理庁職員を中心に作成された出入国在留管理実務六法においても偽装滞在は「偽装旅券を使用した不法入国や上陸審査を受けずに上陸した不法上陸の事案と比べても、行為の悪質性や結果の重大性において劣るものではない」とされている。この偽装滞在者には「永住者」の在留資格を有する者(以下「偽装永住者」という。)も含まれる。偽装永住者は形式的には永住者であるため、在留活動や在留期間に制限がなく、他の外国人が永住許可申請を行う際の身元保証人になることもできる。したがって、偽装滞在者の中でも偽装永住者は特に看過できない存在であるといえる。
「永住者」の在留資格も出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)第二十二条の四に定める在留資格の取消し対象であるが、偽装永住者の把握は極めて困難である。法務省の広報資料によると、平成二十九年から令和二年の間に入管法第二十二条の四第一項第二号の取消事由によって取り消された在留資格は三百二十五件であるが、そのうち「永住者」はわずか二件である。このことは偽装永住者の把握がいかに難しいかを示すものであり、一般人からの情報提供は偽装永住者の実態を解明するための有力な端緒情報であるといえる。
以上を踏まえて、以下質問する。
一 偽装滞在者について、政府で規定している定義があれば示されたい。
二 偽装滞在の悪質性や行為の重大性について、政府の見解如何。
三 婚姻関係の実態を偽装して日本人の配偶者等の在留資格を取得する「偽装結婚」は代表的な偽装滞在の一つとされる。これに関連して、婚姻当初は日本人配偶者と良好な婚姻関係にあったものの、その後、婚姻関係が悪化した外国人が、婚姻関係が良好であるかのように偽装して日本人の配偶者等の在留資格の在留期間更新許可または永住許可を受けた場合、当該外国人は偽装滞在者に該当するか。
四 東京地裁平成二十五年十二月三日判決において、入管法第二十二条の四第一項について「当該外国人が現に有する在留資格を取り消すか否かは法務大臣の合理的な裁量に委ねられていると解される」と判示されている。偽装永住者に関する情報提供によって在留資格取消事由が判明した場合に、入管法第二十二条の四第二項に基づく当該外国人に対する意見聴取を行うこともないまま、在留資格取消の手続を開始しない旨の判断をすることは、事実上、偽装永住者の存在を法務大臣が看過するものであるが、これは法務大臣の合理的な裁量の範囲にあるといえるか。
五 外国人が、日本人配偶者から離婚を求められている事実を出入国在留管理庁に秘して日本人の配偶者等の在留資格の在留期間更新許可または永住許可を受けた場合、不利益事実の秘匿という不正の手段によってこれらの許可を受けた者であることから、当該外国人は入管法第七十条第一項第二号の二の在留資格等不正取得罪に該当するか。
六 日本人配偶者の同意を得ずにその氏名を在日身元保証人として永住許可申請書に記載し、これを出入国在留管理庁に提出することで、出入国在留管理庁が管理する保有個人情報等を取り扱う情報システム(出入国在留管理庁保有個人情報等保護管理規程第二条に規定する「情報システム」をいう。)に身元保証人に関する不実の記録をさせる行為は、刑法第百五十七条第一項の電磁的公正証書原本不実記録罪の犯罪の構成要件を満たすか。
七 法務大臣が在留資格取消の手続を開始しない旨の決定をした場合においても、在留資格等不正取得罪または電磁的公正証書原本不実記録罪及びその両方が成立すると考えられる場合に、出入国在留管理庁職員には告発を行う義務が課せられるか。
八 入管法第二十二条の四第一項第二号の取消事由による永住者の取消件数が極端に少ない状況を鑑みるに、偽装永住者の実態を把握するための体制の整備や強化が必要であると考えられる。例えば、偽装滞在者に関する情報提供のうち偽装永住者に関するものを専門に収集・分析する組織や部署を設置する、永住許可後すぐに離婚している場合(離婚調停や離婚裁判の申立を行っている場合を含む)、当該外国人や身元保証人に対して意見聴取や参考となる書類(夫婦関係が記載されている調停調書や訴状、判決文等)の提出を求める等が想定される。このことに関連して、偽装永住者の実態の把握のための体制について、現状はどのようになっているか。また、体制の整備や強化の必要性について、政府の見解如何。
なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。
右質問する。
政府答弁書
一、二及び八について
お尋ねの「偽装滞在者」の定義については、我が国の現行の法令において規定しているものはないが、偽装結婚、偽装留学、偽装就労など、偽変造文書や虚偽文書を行使するなどして身分や活動目的を偽り、あたかも在留資格のいずれかに該当するかのごとく偽装して不正に上陸・在留許可を受けて在留する者、又は、必ずしも当初から活動目的を偽っていたわけではないが、現に有する在留資格とはかけ離れて不法に就労等する者のことである。
御指摘の「偽装滞在」は、不正の手段で上陸・在留許可を受けるという行為の悪質性においても、本来であれば受けることのできない許可を受けて、本邦に上陸・在留するという行為の結果の重大性においても、不法入国や不法上陸と同様である。
また、御指摘の「偽装滞在者」は、表見上、あくまでも合法的に在留していることから、そもそも違反に関する情報を得ることが難しく、その実態を把握することは困難であるが、警察、地方出入国在留管理局等の関係機関においては、緊密に連携しつつ、一般の方々や退去強制手続を執られた者等からの情報の収集、関係機関間の情報の交換等を行い、在留資格の取消手続を実施している状況にあるところ、引き続き、在留資格の取消制度を的確に運用するために必要な体制の整備について検討を続けてまいりたい。
三について
御指摘の「婚姻当初は日本人配偶者と良好な婚姻関係にあったものの、その後、婚姻関係が悪化した外国人」の意味するところが明らかではなく、また、御指摘の「偽装滞在者」の定義については、我が国の現行の法令において規定しているものはないことから、お尋ねの事例が「偽装滞在者」に該当するか否かについては、お答えすることは困難である。
四について
お尋ねの「偽装永住者に関する情報提供によって在留資格取消事由が判明した場合」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「偽装永住者」に関する情報提供を受け、その情報の内容等により、在留資格の取消事由に該当する疑いがある場合には、所要の調査を行った上で、必要に応じて、意見聴取を実施し、在留資格を取り消すかどうかを判断しているところである。
五及び六について
犯罪の成否については捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断されるべき事柄であることから、政府としてお答えすることは差し控えたい。
七について
お尋ねの「法務大臣が在留資格取消の手続を開始しない旨の決定をした場合においても、在留資格等不正取得罪または電磁的公正証書原本不実記録罪及びその両方が成立すると考えられる場合」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百三十九条第二項は、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」と定めているので、右の要件を満たす場合には、原則として公務員には告発義務が課せられていると解される。
似た質問主意書
件名と質問本文の冒頭の意味が近いものを、前もって計算しておいた表から近い順に8件並べました(multilingual-e5-large)。同じ言葉を使っていなくても出ます。論点が少しずれていることもあります。