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精神医療における本人の同意に基づかない入院の在り方等に関する質問主意書

参議院 第212回 第85号お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×3承知していない ×2検討してまいりたい ×1

提出者
参議院
提出日
2023年12月8日
内閣転送 2023年12月13日
答弁書受領日
2023年12月22日
提出から14日
答弁の項目数
11
質問 3,048字/答弁 3,071字

質問本文

厚生労働省の統計によると、日本の精神病床数は、現在、三十万床を超え、入院患者は二十六万人に上る。そして、このうち約半数は、本人の意思によらない措置入院及び医療保護入院となっている。日本の精神病院のベッド数は、世界でも突出しており、全世界の五分の一の精神病床が日本にあるとのデータもある。諸外国と比べ、平均在院日数も長く、入院患者の六割強が一年以上在院し、そのうちの五割強が五年以上在院している。

二〇〇四年に厚労省が「精神保健医療福祉の改革ビジョン」の一環として、「入院医療中心から地域生活中心へ」との理念を打ち出し、「受入条件が整えば退院可能な者約七万人について、十年後の解消を図る」とした。しかし、十年後の到達点は、目標値の半分強である四万人減にとどまっている。結果として、本人の意思によらない措置入院及び医療保護入院数もわずかな減少に過ぎないものとなっている。

二〇二一年十月、日本弁護士連合会は「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議」を出した。同決議では、精神障害のある人に対する障害を理由とした人権侵害の根絶を達成するために、現行法制度の抜本的な改革を行い、精神障害のある人だけを対象とした強制入院制度を廃止して、これまでの人権侵害による被害回復を図り、精神障害のある全ての人の尊厳を保障すべきであるとされている。

厚労省は、二〇二二年三月に医療保護入院について、制度の将来的な廃止も視野に入れ、縮小する方向での検討に入ったが、同年五月には、一転、有識者検討会の報告書案から当初盛り込んでいた「将来的な廃止」「縮減」との文言を削除し、方針を後退させた。

二〇二二年九月には、国連の障害者権利委員会が障害者権利条約の国内実施状況に関する審査において、日本政府に対して、強制入院の廃止や、入院中の全ケースの見直し、インフォームドコンセントの確保、地域社会で必要な支援とともに自立した生活を育むことなどを要請している。

日本の医療保護入院の要件は、精神保健指定医の診察及び家族等の同意のみが必要で、本人の同意は不要であり、本人の意思を担保する制度も整備されていない。例えば、韓国では、医療保護入院には、保護義務者二人の同意と精神科専門医一人の診断が必要とされ、日本の制度よりも厳格であった。しかし、二〇一六年九月には、精神科医や家族の悪用を防ぐ手立てに欠けるなど患者の人権保護が不十分であるとして、本人の同意のない精神科への強制入院が違憲であるとの判決が韓国憲法裁判所で下された(Constitutional Court of Korea 2014Hun-Ka9、以下「韓国憲法裁判所判決」という。)。

また、米国では、重症精神疾患者の強制入院は裁判官が決定し、英国やオーストラリアでは精神保健審判裁判所等が決定するなど、司法審査が導入されている。

以上を見るなら、諸外国と比較して我が国の保護入院における患者の人権保護前進に向けた取組は、遅れていることが明らかである。

また、政府は、家族等の同意が要件となる理由として、「原則として、本人についての情報をより多く把握していることが期待できる」(内閣衆質一九三第一四〇号)旨答弁しているが、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)第三十三条では、「家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる」とされているのに、同意する家族の優先順位は定められていない。この点について、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案」(第百八十三回国会閣法第六五号)に対する衆議院厚生労働委員会の附帯決議(以下「精神保健福祉法案衆議院附帯決議」という。)では、「同意を得る優先順位等をガイドラインに明示し、厳正な運用を促すこと」が求められているが、このガイドラインはいまだ制定されていない。

以上を踏まえ質問する。

一 日本は諸外国に比べ、精神病床数が多く、入院期間も長い傾向にある。政府は改善を図るとしているが、取組が諸外国と比べて遅れているのはどのような理由があると考えられるか、示されたい。

二 今後、「入院医療中心から地域生活中心へ」との理念のもと、病床を減らしていくとすると、民間の精神科病院の再編が必要となると思われるが、その経営転換に係る政府の計画と、財政的助成措置などについて、説明されたい。

三 精神保健福祉法第三十三条が想定する「家族等」について、患者とその家族との関係は多様で、同居していない場合や関係が良好でない場合もあると思われる。実際に、同居している配偶者がいるにもかかわらず、本人とは疎遠であった長男が同意を行い、トラブルが発生した事例があるとも聞く。これらを踏まえ、同意権者について、優先順位を設けることを検討することが肝要と思われるが、現状での政府の認識を示されたい。

四 措置入院及び医療保護入院後、患者本人の同意なく投薬がされるケースがあると聞く。措置入院及び医療保護入院後の治療方針や投薬に関して、どのようなインフォームドコンセントがなされているか、政府は把握しているか。また、国としてはどのような在り方が望ましいと考えているか、示されたい。

五 「精神保健医療福祉の改革ビジョン」では「入院医療中心から地域生活中心へ」を基本方策としているが、この理念を具体化するには精神疾患患者の地域での生活を支え、多様化するニーズにも対応するため、退院後の生活環境相談員となる精神保健福祉士等の役割が益々重要となると思われる。役割の増大が明らかである要員の増員等の施策について、具体的に示されたい。

六 精神障害者の地域生活への移行を促進するため、精神疾患と精神障害者に対する地域社会、国民の間での正しい理解の促進が必要であると思われる。政府はこの課題について、いかなる施策を考え具体化しているのか。今後の課題を含め、示されたい。

七 国際的な機関も含めた人権関連団体から我が国に対し、本人の同意に基づかない入院を廃止すべきとの勧告等がなされている。これらを政府はどのように受け止めているか。これらを受けた具体的な施策の準備があれば示されたい。

八 韓国憲法裁判所判決の内容について、我が国においても精神保健福祉法の改正を検討する際の重要な指標となると思われる。政府は、この判決の内容について今後の精神保健福祉行政を考える上でどのような意義があると考えるか。

九 精神保健福祉法案衆議院附帯決議では、「精神障害者の意思決定への支援を強化する観点からも、自発的・非自発的入院を問わず、精神保健福祉士等専門的な多職種連携による支援を推進する施策を講ずること。また、代弁者制度の導入など実効性のある支援策について早急に検討を行い、精神障害者の権利擁護の推進を図ること。」としている。ここで指摘されている代弁者制度について、政府はどのような検討が行ってきたか。今後、代弁者制度ないしこれに準ずる本人の同意を担保する何らかの制度を導入する方針を持っているのか。

十 米国や英国、オーストラリアなどでは、強制入院に関し、司法審査を導入している。我が国においても、強制入院の際、司法審査と同等の要件を導入するべきではないか。

十一 我が国で措置入院及び医療保護入院となっている外国人の国籍別人数及び過去五年間の推移を示されたい。

右質問する。

参議院の原文・経過

政府答弁書

一について

お尋ねについては、精神科医療の提供体制等は国により異なることから、日本と諸外国の取組を単純に比較することは困難であり、一概にお答えすることは困難である。

二について

お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、一般に、精神科病院の経営の在り方については、各精神科病院において検討されるものと考えている。

また、現時点ではお尋ねの「その経営転換」に係る「財政的助成措置」はない。

三について

御指摘の「家族等」と精神障害者との関係については様々な状況があることから、御指摘の「同意権者」について一律に「優先順位を設けること」は考えていないが、「医療保護入院における家族等の同意に関する運用について」(平成二十六年一月二十四日付け障精発〇一二四第一号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長通知)により、都道府県及び指定都市(以下「都道府県等」という。)を通じて精神科病院に対して、「医療保護入院においては、その診察の際に付き添う家族等が、通例、当該精神障害者を身近で支える家族等であると考えられることから、精神科病院の管理者・・・は、原則として、診察の際に患者に付き添う家族等に対して入院医療の必要性等について十分な説明を行い、当該家族等から同意を得ることが適当である」と示しているところである。

なお、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号。以下「精神保健福祉法」という。)第五条第二項ただし書の規定により、精神障害者に対して訴訟をしている者や身体に対する暴力を行った者等については、同項に規定する家族等から除かれているところである。

四について

お尋ねの「どのようなインフォームドコンセントがなされているか」について、個々の精神科病院における状況は把握していないが、政府としては、良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針(平成二十六年厚生労働省告示第六十五号)において、「精神医療においても、インフォームドコンセント(医師等が医療を提供するに当たり適切な説明を行い、患者が理解し同意することをいう。・・・)の理念に基づき、精神障害者本位の医療を実現していくことが重要であり、精神障害者に対する適切な医療及び保護の確保の観点から、精神障害者本人の同意なく入院が行われる場合においても、精神障害者の人権に最大限配慮した医療を提供すること」等を基本的な考え方として定め、都道府県等を通じて精神科病院に対して示しているところである。

五について

お尋ねの「役割の増大が明らかである要員の増員等の施策」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、精神保健福祉士は、精神保健福祉士法(平成九年法律第百三十一号)第二条の規定により、精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神科病院等において精神障害の医療等を受けている者の相談援助を行うことを業としており、精神科病院に入院する者の早期の地域生活への移行に向けた取組の推進を図る上で重要な役割を担っているものと考えている。このため、令和元年に精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知見を有する有識者等から構成される「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会」で議論を行い、精神障害者の状況に応じ、より的確に相談援助を行うことができる人材を育成するため、精神保健福祉士の養成カリキュラムの充実等の取組を行っているところであり、今後とも、必要な取組を進めてまいりたい。

六について

御指摘の「精神障害者の地域生活への移行を促進するため、精神疾患と精神障害者に対する地域社会、国民の間での正しい理解の促進が必要である」という課題について、政府としては、例えば、令和三年度から、「心のサポーター養成事業」において、メンタルヘルスや精神疾患への正しい知識と理解を持ち、地域や職域でメンタルヘルスの問題を抱える者及びその家族等に対して可能な範囲で支援する者を「心のサポーター」として養成するための研修等を実施しており、今後、「心のサポーター」の認知度を向上させ普及を図ることが重要であると考えている。

このほか、ホームページでの周知や啓発イベントなどの取組を通じて、精神障害に関する正しい知識を普及させるとともに、国民一人一人の理解が深まるよう、引き続き必要な取組を進めてまいりたい。

七について

御指摘の「国際的な機関も含めた人権関連団体から我が国に対し、本人の同意に基づかない入院を廃止すべきとの勧告等」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、「本人の同意に基づかない入院」については、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律(令和四年法律第百四号。以下「令和四年改正法」という。)附則第三条において、「政府は、精神保健福祉法の規定による本人の同意がない場合の入院の制度の在り方等に関し、精神疾患の特性及び精神障害者の実情等を勘案するとともに、障害者の権利に関する条約の実施について精神障害者等の意見を聴きつつ、必要な措置を講ずることについて検討するものとする」とされており、これに基づいて検討してまいりたい。

八について

お尋ねについては、精神科医療の提供体制等は国により異なることから、御指摘の「判決の内容」について単純に評価することは困難であり、一概にお答えすることは困難である。

九について

御指摘の「精神保健福祉法案衆議院附帯決議」においては、「代弁者制度の導入など実効性のある支援策について早急に検討を行い、精神障害者の権利擁護の推進を図ること」とされており、当該支援策の在り方について検討するため、平成二十六年度障害者総合福祉推進事業「入院中の精神障害者の意思決定及び意思の表明に関するモデル事業」を実施したところ、同事業等により蓄積されたノウハウ等も踏まえ、精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知見を有する有識者等から構成される「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」で令和四年六月九日に取りまとめられた報告書において、「非自発的入院による患者・・・は、閉鎖処遇に置かれており、外部との面会交流が難しくなる。家族からの音信がない市町村長同意による医療保護入院者については、医療機関外の者との面会交流が、特に途絶えやすくなる。(中略)市町村長同意による医療保護入院者を中心に、精神科病院の理解のもと、精神科病院に入院する患者を訪問し、相談に応じることで、医療機関外の者との面会交流を確保することが必要となる」とされたところである。これを踏まえて検討が行われ、令和四年改正法による改正後の精神保健福祉法第三十五条の二第一項に規定する入院者訪問支援事業が創設され、同項に規定する入院者訪問支援員が入院中の精神障害者本人の希望により精神科病院を訪問し、本人の話を丁寧に聴くとともに、必要な情報提供等を行うものとされたところであり、同事業を適切に実施しながら、引き続き入院中の精神障害者の権利擁護を図ってまいりたい。

十について

お尋ねについては、日本と諸外国における精神科医療の提供体制等は異なることから、御指摘の「司法審査」を日本に導入することについては慎重に検討すべきものと考えているが、必要に応じて情報の収集に努めてまいりたい。

十一について

お尋ねの「国籍別人数及び過去五年間の推移」については、把握していない。

参議院の原文

この答弁書に出てくる定型句

お答えすることは困難 ×2趣旨が明らかではない ×3承知していない ×2検討してまいりたい ×1

語の一致で数えたものです。答弁の評価ではありません。同じ型の答弁が過去にどれだけあるかは、型を押すと出ます。

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